豪鬼(仮)   作:Sanae001

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No.8 私も!じゃないんだよ

 

 「そう言えば、今日行くこと玉狛連中には伝えてるのか?」

 信号待ちの何気ない会話だ。

 「もちろんです。私はあなたとは違って、いきなり行ったりなどしません」

 いや、確かに朝急に来て連れ出したのは悪かったが、なんか言い方に棘があるんだよな。

 「こっちにだって準備というものがあります」

 別に『三十秒で支度しな!』といったどこぞの空賊まがいのことは言っていない。

 あ、化粧とかそういう話か。

 「あ、化粧とかの準備ね。悪かったな。ま、お前可愛いし化粧なんていらない……グっ!」

 運転中に脇を攻撃するのはやめろ。

 てか、こいつも大人になったもんだ。俺なんて……っと、そう考えるとなんか虚しくなってきたので押し黙ることにする。

 

 

 しばらく運転をし、十数分で玉狛支部に到着する。時刻はティータイムを楽しむのにちょうど良い時間、夕方。夕陽が川の水面に輝く。

 久しぶりに玉狛まできた気がする……って言うか、なんか凄い賑やかだな。胸騒ぎというか、嫌な予感がする。

 「ご苦労さまです。さとり」

 お互いほぼ同時と言ったところだろうか。ドアハンドルに手をかけ、外へ出る。

 「こっちこそ、今日はありがとな。それじゃ俺はこれで……」

 「あなたも行くのでしょう」

 「え?」

 まじで、今入るの?

 「ですから……ってすごく嫌そうな顔ですね」

 え、嘘。顔に出てた?

 いや、別に嫌というわけではないんだがね。なんだろう。今入るのはまずい気がする。この前捨てたはずの勘が警鐘を鳴らしている。

 

 「とにかく、行きますよ」

 「ちょうどいいし、林藤のおっさんにも伝えとくか。どうした?」

 ……。

 俺に、さも先行しろと言わんばかりにその場に留まる。

 ま、そんなおかしなことが起こるはずもないだろうしな。

 腹を括って入るとするか。えっと……鍵、鍵っと。

 

 鍵を開け中に入る。より賑やかな雰囲気が漂ってくる。それと一緒に甘い匂いも。クッキーでも焼いているのか。この声は陽太郎と桐絵か?後はレイジと林藤のおっさんか。悠一と京介はいないみたいだな。

 

 「入るぞ……って何やってるんだお前ら」

 俺が扉を開け中に入り、目に入ったのはクッキーを焼くレイジ。その横で洗い物をする宇佐美(うさみ)(しおり)

 「あ、瑠花さん。いらっしゃい……ってさとりさん!?」

 「よ、栞。久しぶりだな。お姫様を送るついでに来たんだ。クッキーでも焼いてたのか?」

 見れば分かると言えばそれまでだが、コミュニケーションは大事。些細なことでも話題にあげる。

 「そうなの。レイジさんが手伝ってくれてさ」

 「俺は特に何もしてないぞ」

 素直じゃないなこのゴリラは。お礼は素直に受け止めろ。俺の後ろからヒョコっと顔を出す姫様。

 「陽太郎はいますか?」

 この姫様は来て早々に弟かよ。

 そう言うと、待ってましたと言わんばかりに、奥から出てくる林藤(りんどう)(たくみ)陽太郎(ようたろう)そして桐絵。

 「あ!るかねーちゃん!さとり!」

 そしてお決まりの姉弟の抱きつき。全くどこまでもブレねぇなこいつら。

 「よう、久しぶりだな。さとり」

 「あれ、さっちゃんだ!この間はありがとね。また連れてってよ、あのお店」

 あの店というのは、吉祥寺の二宮と面接をしたあの店だ。昼飯に行こうとなり、悠一も交えて三人で行った。そう言えばあの時、クッキーを手土産に買って行ったっけ。

 「おう。それはいいが、さっきまでやけに賑やかだったと思ったんだが……」

 あ、目が泳ぐ。なんだその顔……陽太郎もまずそうな顔をしてるし。

 「陽太郎、何してたんだ?俺にも見せてくれよ」

 

 

 

 「——きゃああああああ!?」

 スゲー!組体操って初めて見た。

 ぐるぐる回ってらぁ。桐絵がこれでもかってぐらい陽太郎を振り回してる。ストレス溜まってんのか?

 「さとり!すぐに止めなさい!」

 はいはい。

 「おい、もういいぞ。姫様びっくりしてるから。やめてやれ」

 近づいて回ってきた瞬間をキャッチする。陽太郎を胸で受け止め、それに伴いバランスを崩した桐絵も抱き寄せる。

 「え、さっちゃん?」

 「危ないから、やめとけ。な?」

 ほれ。っと言ってお姫様に陽太郎を渡す。いつものお説教だ。ま、こんなことだろうとは思っていたけどな。さてと———

 

 「おっさん。話がある」

 「え?なになに」

 うるせぇ。お前には話してねぇよ桐絵。

 「ちょっと大人な話だ。向こうでクッキー齧ってろ」

 ここじゃなんだし場所移すか。

 「いいぜ、話ってのを聞いてやるよ」

 

 

 支部長室に移動して、お姫様に説明したことをそのまま伝えた。

 そうか。と一言置いて、考え込む。

 数分も経たないうちに考えるのを止め、向き直る。

 「行ってきていいぞ。ま、俺がこんなこと言わなくても、お前は行くんだろうけどな」

 「まぁな。差し当たって信託の国(オラクルム)に行こうと思ってる」

 「そうか、あそこは寒いからな。気をつけろよ……てか、まじで一人で行くのか?誰か一緒にとかじゃなくて?」

 「あぁ。人数的には後二人は行けるけど」

 

 「あたしも行く!!」

 

 

 桐絵……連れて行けるわけねぇだろ。盗み聞きなんてしやがって。

 「桐絵。言っとくが俺は一人で行くぞ」

 「なんでよ!あたしも行くわ!」

 なんでだよはこっちのセリフだ。  

 

 「遊びじゃねぇんだぞ」

 「そんなのわかってる!」

 「人と戦うかも知れないぞ」

 「それもわかってる。でも、さっちゃん一人より、私がいれば戦いも捗る!……確かにさっちゃんは強いし」

 

 そうじゃないんだよ。

 

 「それに、なんだってできる!私なんて足手纏いかも知れない」

 「いや、そういうことじゃない。下手したら……死ぬんだぞ」

 「そんなの前からわかってる!」

 

 だから、違うんだ。桐絵。そういうことを言いたいんじゃない。ここまで言っても伝わらないのか。

 

 「でも、でもさ!あたしも強くなった」

 「違うんだって!!」

 「——っ!?」

 

 「……いや、すまん。ちょっと焦りすぎた」

 

  そう言って、屋上へ逃げるようにいってしまった。




 昨日投稿できなかったのでもう一件投稿いたします。
 編集日 2/26
「まぁな。差し当たってコンフィドに行こうと思ってる」
 ↓
「まぁな。差し当たって神託の国(オラクルム)に行こうと思ってる」
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