白い、白い空間。頭が回らない。しかし、その少女の笑顔の意味だけは分かる。
——このトリガーは?
思わず聞いてしまった純粋な疑問だが、何故だか聞いてはいけない気がした。
——これは治癒のトリガー!何もかもを元に戻す絶対のトリガー!実験では死体も動き出したのよ!
そうなんだ。と言う言葉を口にする。まるで他人事のように、そう紡ぐ。全く感情が共有できない。分かち合えない。
——私だけのトリガー!ついに出来た!これで!お父さんも、お母さんもみんな———
新しい朝が来た。窓辺に差し込む光がそう告げる。瞼の裏を赤く染めるその光は、憎たらしいほどに堂々と輝き焼き付ける。
見ていた夢はとても楽しい夢だった気がする。
そんな感想も体を起こし、服を着替えるとどうでも良くなる。いつもと変わらない素晴らしい一日の始まりだ。今日も一日暇を潰そう!
って思ってリビングに出ると。不審者がいました。サングラスをおでこより上あたりかけ、にやにやとした顔でこちらを見つめながらコーヒーを嗜む不審者が。
皆さん。不審者にあった時はすぐに逃げるべきです。大至急家に帰るべきです。戸締りもしっかりしましょう。では、その家に不審者がいる場合、どうするか。皆さん、もうお分かりですね……
「イチ……イチ……ゼロっと」
「あぁぁぁああ、ごめんごめん。悪ふざけが過ぎたってだから通報は勘弁!!」
「……で?何しに来た」
俺の目の前には齢二十にもなりそうな少年がいる。そんな彼は綺麗な正座をして目を合わせてくる。
「いや、さとりさんが近界へ行くって言うから見送りにね?」
「そうか、悠一。それはありがとう。だが、俺が行くのは来週だ。少し早かったな」
「そうなんだ。ま、俺もしばらく忙しいから一応ね」
はっはっは。いやいや、可愛い後輩がお見送りだなんてとても素晴らしい。なんと嬉しいことだろうか……
「——よし、質問を変えよう。どうやって入った」
「玄関からだけど」
「どこからなんて聞いてねぇ!どうやって鍵のかかったドアを開けたかって聞いたんだよ」
「え?鍵だけど?」
なんでそんなこと聞くの?みたいな顔しないでくれ。
「よし、お前を殺してその鍵をつくった鍵屋も始末する」
すまない、仕事をしただけの鍵屋さん。俺の安全のために死んでくれ。
「ごめんごめん!合鍵だよ!瑠花ちゃんの!合鍵!」
「お姫様の?」
そんなの渡したっけ?
……あー渡したな、そういえば。安全のためだとかの理由で。ま、今の状況を鑑みるに全くもって安全のために使われてないんだがな。
「なんでお前がそんなん持ってるんだよ」
「……いや、先週瑠花ちゃんと一緒に来てたでしょ?先にさとりさんが帰った日。あの後、話聞いて見送りしたいって言ったらすんなり貸してくれたよ」
何やってるんだあのバカ王女。
「ま、理由はわかった。用件もわかった。その上で、もう一度聞く。何しに来た?違う用があるんだろ」
こいつがそんな事で来るわけない。いや、来ることもあるが、そんなことを知った上でそんな用事で来るやつじゃない。
「うん。まぁね」
してやったりみたいな顔はもういいから、お前が視た未来を言え。
「——うん。視えたよ」
「そうか。それで?俺はどうなる?死ぬか?捕まるか?それとも——」
「死ぬね。確率的には八割かな」
八割の死か……ま、余裕だな。二割もあるんだ生きていられる。
「それでも行くんでしょ?」
「当たり前だ。それに最近どうも頭が悪い」
いや、この間もそうだが何か大事なことを忘れてる気がするんだよ。
普段の俺なら『忘れるくらいなら大事じゃない』と結論付けるところだが、どうもそれができない……
「え?さとりさんのバカさ加減は今にはじ、痛っ!!」
「知能のことじゃねぇ。それにお前よりはバカじゃねぇ」
「おれ的には絶対に止めたいんだけどな……」
「止められると思うか?」
「……どうだろう」
この間、この俺に面と向かって弱くなったとか言ってきて、その自信のなさかよ。
「ま、いいや。お前がなんと言おうと、俺は行くし、止めるなら……覚悟しとけ」
立ち上がって悠一を睨む。なんとしてでも行かなければいけない。そうだこの感覚この感情。いつしか生まれたこの衝動の真意を知るためにも、行かなきゃだな。
「ほら立て。飯行くぞ」
「はーい」
ちょうど近くのファミレスがランチを始める時間だ。俺はいつものAランチ。
「悠一お前、Bにしろよ。俺のエビフライと交換で肉一切れよこせ」
「ん?いいけど、損してない?」
「俺がそれを一口食べたいって思っただけだ。それを損とは俺は言わない」
そんなもんかと言い、店員に注文を伝える。
料理が来るまでの時間で、俺が行くルートの提案をした。
「いや、ここは
俺の出したタブレット端末を指でなぞりながら、そう言う。
俺が過去に旅をして手に入れた地図。それをダウロードして、立体図に起こしたものだ。
「いや、プレジデウムは最近戦争してたぞ。て言っても何年か前だけど」
「え、そんな情報無かったけど」
「あ、違う違う。庇護国のどっかだ。そういえばちょうど終戦したのも四年前だったか」
「侵攻があった年に終戦ね……無関係だとは思えないんだけど」
いや、そこは違うんだよな。侵攻時この国と周辺の庇護国は真反対に位置していた。そう言う点では一番無関係の国と言ってもいい。もちろん遠征したと言う考えもあるが、わざわざ一番遠い時にやるとは思えない。何よりこの国は専守防衛を謳ってる。しかし……
「いや、それとは関係ねぇ。だが、戦争ふっかけたのその庇護国だって言うんだ」
「あり得ないでしょ。そんな防衛を他国に任せるような弱い国が戦争始めるなんて」
最もな疑問だ。
「そう、だからこそそんな疑惑のある国。行かない方がいい」
「なるほどねー。んじゃ行くのはグラデスだ」
さて料理もきたし、一時中断だな。いただきますをするか。
食後のコーヒーを頼み、それが来るのを待ち。話し合いを再開する。
「てか、お前未来読めるのにそういうのはわかんねぇのか?」
要は、プレジデウムの情報だ。
「いや、俺の視た未来のほとんど。さとりさん死んでる未来だから。そんなのわからない」
わからないのか。微妙に使えないな。
「んじゃその後のことだな。グラデスを出たら次に行けるのは
あそこは比較的戦争のない国だし、安全な国とも言える。ま、強いて言うなら武道家根性の人間が多い国だ。
毎年武道会があると噂の国。ま、グラデスに行ってからマーシャなんて面白い限りじゃないか。剣から拳。楽しみだ。
そこから行けるのは……
「何その国?聞いたことない」
「近界で唯一の金属錬成技術を持った国かな。情報でしか知らないけど、興味はある」
どうやって金属が生まれるのか……
基本国の核はマザートリガーつまり、国全体がトリオンの塊だ。それならどうやって金属が生まれるのだろうか、トリオンでマグマでもつくったか?いや、それでは時間という概念が邪魔になる。第一、マグマなんてトリオンから作れない。
いやー。興味は尽きない。
「んでもって次が……」
そんなこんなで話を進め、その後のプランを決定していった。ま、その都度で変更はあるだろうが、メインプランはこれで決定だろう。
オリジナル設定を幾つも出してしまいました。
それと迅さんがどんどん変な方向に……
きっと行くところまで行ってしまいますね。
お読みくださり、ありがとうございました。