豪鬼(仮)   作:Sanae001

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 力が入らない。動くことも話すことも。寒い。そうかこれが死ぬと言う事。生きとし生きる全てのものが、平等に持っているもの。

 ——敵はカギュウだ!……退け!

 カギュ、ウ……?なんだそれは…いや、もうどうでもいいか。
 
 ——ねぇ、父様(ちちさま)。この子まだ生きてる!

 チチ、サマ……?だからなんだそれは。
 眠い……いや、眠るように死ねるか。それはいい事だな……

 ——イバラ!お前の娘だろ!どうにかしろ!



No.12 どいつもこいつも萎れてらぁ

 

 「京介、飲んでるか?」

 「さとりさん。はい、美味しくいただいてます」

 何だこいつ。いつにも増して言葉遣いが丁寧だ。これにはマナー講師もニッコリだな。

 

 「なんかあったか?」

 様子がいつもと違う。そう、これは自然と口に出た質問だ。

 「俺、玉狛(ここ)に来て半年以上経ったんですけど、まだまだ連携とか取れてないなと」

 何だそんなことか……

 玉狛には独自のトリガー技術がある。レイジや桐絵の持つトリガーがいい例だ。個での強さを最大限発揮できるのが玉狛の利点。

 それにランク戦から除外されているから、連携はそこまで重要じゃないはずだ。もちろん取れることに越したことはない。

 

 「見ました。四年前の、大規模侵攻前の旧ボーダーでのさとりさんの連携」

 そんなのどこから見つけたんだよ。本部のやつは大体消して来たはずだぞ。

 「すごいの一言です。的確に指示が出せて、みんなが戦いやすいよう戦況をコントロールして、本当に見事でした」

 あれは黒歴史だろ。周りをコントロールできてる気になってただけだろ。

 

 「……京介。お前は器用な人間だ。俺があった中でも上位に入る。下手したら俺よりもだ。なら、そこから導き出される答えは一つ」

 「なんですか?」

 「努力しろ。使えるもの全てを使い、考えて、考えて、思いついて、実行して、行動して、学習しろ。反省しろ。成長しろ。やれることは全部やれ。そうすれば強くなる」

 当たり前のことだけど、それができずに腐る連中ばかりだ。ボーダーもこの考えが徹底されていれば、もっと強くなるのだがな……

 「当然のことじゃないっすか?」

 「それができてる奴が少ねぇから、言ってるんだなーこれが」

 「そんなもんすか」

 「当たり前のことをやってれば、結果はそれなりについて来る。それより先、強くなりたいなら、一回死んでみるのもありかもな」

 

 おいおい、冗談だよ。固まるな。

 

 「ま、こんなのは基礎の基礎だ。本当に連携を学びたいなら、俺が帰って来てからにはなるが、俺の下で働け。ボーダー以外のバイト全部辞めてな。教えられることはあるはずだ。もちろん報酬ははずむぞ」

 

 それじゃと伝えて、俺はある人物の元へ向かう。

 

 

 「よう、悠一。こんなところにいたか」

 「さとりさん」

 何だ?どいつもこいつもしけた顔してる。

 屋上で一人とか、お前意外と暗いとこあるよな。

 「悪いな、悠一。お前の警告無視して決めてよ」

 「止められなかった……」

 しけた顔がよりしけっていく。そのうち萎びそうな勢いだな。

 まったく……

 

 「そんなお前にいいこと教えてやる」

 

 こいつはいつも、一人で勝手に抱え込んで、勝手に責任感じて、勝手に落ち込むバカだ。

 

 「お前(子供)如きが、責任を持つなんざ百年早ぇ!!いいか、この旅は俺が!この俺が考えて準備して勝手に決めたものだ!そこにお前が責任を感じる必要がどこにある!」

 「……でも」

 でももヘチマもねぇ!

 「未来が視えてるからなんだ!視た人間は責任終えってか!? はっ!誰だそんなバカなこと言ったのは。いいか、お前はガキだ」

 「もう十九だけど。おれ」

 そう言うとこがガキっぽいって言ってんだ。

 「まだ(・・)十九だ!お前より年上の人間はボーダーにだっているだろ!城戸さんや忍田さん。なんだったら太刀川にだっていい……甘えると言うことを覚えろ」

 

 人一倍責任感が強いこいつに、甘えると言う選択肢があるのかは知らないが、まだガキなんだ。子供は大人が守るものだ。

 「おまえ、四年前もそんな顔してたな……結局大勢の人間が死んで、一週間以上部屋に篭ったな」

 

 「……そ、それは」

 その時なんて、こいつはまだ中坊だろ。なんでそんなことになったんだか……

 「何故お前は死んだ人間ばかり気にする。少しは救った人間のことを考えろ。お前は大勢を救った。それが事実で真実だ」

 あの時も俺がもっと上手くやれていれば、よかったのか。

 

 「今回のことだってそうだ。なんでお前は俺が死ぬ未来しか視ない。生きる未来を視てみろよ。その方が面白いだろ」

 「……そんな無責任なことできない、視たからには、視たなりに最善になるように」

 そうだな、人としてはそう言うのが正しいのだろう。だが、

 「お前は、俺の話何も聞いてなかったのか。全無視ですか、そうですか」

 若干否定しようとしてるが、させんぞい。

 「お前に責任は求めない。ここまで言ってもわかんないならもう言わんぞ。あ、じゃあ明言してやる。宣言してやる。宣誓してやる」

 

 ——絶対に帰って来る。

 

 したり顔で言ってやった。少しだけ表情が柔らかくなったか?ま、今はそれだけでいい。

 

 「じゃ、あとは一人で考えな」

 

 そう言って後にする。

 全くどいつもこいつも変なことで悩んでやがる。さて、俺も下に降りてお開きにしてやるかね。

 

 

 

 どうやら下では片付け始めていたみたいで、それぞれがテキパキと行動している。

 「よ、さとり。悪いな忍田が先に帰ってから、自然とお開きになってな」

 林藤のおっさんが咥えタバコをしながらこちらへ向かって来る。

 「いや、俺もお開きにしようと思ってたとこだったから全然……ってかおっさんは何もしないの?」

 「俺は仕事がまだあるんでな」

 そういえば幹部組は昨日会議してたな。俺は基本参加しないけど……

 「……何もないのか?林藤さん」

 「ん?なにがだ?」

 いや、言わせんなよ。

 

 「なんてな……まぁ、気をつけて行ってこい。後あれだ、瑠花ちゃんは戦争するなとか言ってたみたいだけど、自己防衛はしろよ」

 「は?当たり前だ」

 やられたらやり返す?いや、やられそうになったらやる。だ。正しいかどうかは後で確かめればいい。迷うぐらいなら動けってな。

 

 と、おっさんと話してる間に片付け終わってるし、悠一もいつの間にか降りて来てる。一言締めの挨拶でも言ってやるか。

 

 「ま、なんだ。今日は俺のために色々やってくれたみたいで感謝する。とりあえずは三ヶ月は旅をする予定だ。帰って来るのは色々考えた結果、十二月くらいになった。その間こっちの世界は頼んだぞ。ボーダー最強部隊!」

 

 そう言って俺は玉狛支部を後にする。

 さぁ。いよいよ明日。俺の人生最大のイベントが始まる。玄界にやり残した事はなし。準備万端。やる気満々。楽しみで眠れない以外は特に心配事もない。あとは帰って寝るだけだ。

 不思議と足取りが軽い。不安が無くなったわけではない。あぁそうか、楽しみんだな。ここ数年なんとなくで過ごしてたから……楽しもう。思いっきり楽しもう!

 

 




 いま わかれーのーときー

 ということで出発前夜でした。
 次回からネイバーフッドが舞台になります。
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