恋愛問答――この感情は……? 作:若杉優太(テト/teto)
「ふぅ……今日のレイシフトも終わったな……」
かなり疲れた様子でカルデアの廊下を、人類最後のマスター・藤丸立香は歩いていた。
今日も彼は変わらず、朝から連続してレイシフトを行い、身体に疲労を溜め込んでいる。
「(また、明日も……レイシフトか……)」
フィニスカルデアの時は常に前向きでレイシフトを行えていたのだが、ノウムカルデアに来てからは気分が落ち込んでしまうことが多くなった。
マシュや英霊達と会う時は笑顔で接することができるが、一人になった途端に気分が落ち込む……そんな現象に悩ませられている。
現に今も暗い気持ちでマイルームに戻ろうしている最中だ。
「(まぁ、明日も早いし……深く考えるのは止めよう……)」
早々に考えを切り上げ、ふと廊下の奥を見ると、そこには見覚えのある英霊が居た。
その英霊の名前は――
「フェイカー……!」
「……ッ!立香……!」
見間違える筈もない、目元のアイシャドウや幼少期のイスカンダル……つまりアレキサンダーに似た格好の彼女は間違いなくフェイカーだ。
疲労が溜まっていた足も、フェイカーを見た瞬間に疲労を忘れて、すぐさま彼女の元へと立香は駆け寄った。
「会いたかったよ、フェイカー!」
「ああ……!私も会いたかったよ立香……」
笑顔で再会を喜ぶ立香に、フェイカーも屈託のない笑みを返す。
「最近、レイシフト続きで中々フェイカーとも他の英霊とも会う時間が少なくなっててさ……本当はもっと皆と交流したいんだけどね……」
「そうか……お前も、大変なんだな……」
会って早々に悩み事を呟く立香の姿にフェイカーは少し顔を歪める。
しかし、次の瞬間にフェイカーの顔は覚悟が決まったような顔へと変化した。
「立香……実はな、お前に伝えたいことがあるんだ……」
「え?伝えたいこと……?」
突然のフェイカーの言葉に困惑しつつも、立香は彼女の言葉に従い、耳を澄ます。
意を決した様子の彼女から出た言葉……それは立香が予想もしてない言葉だった。
「立香……お前が好きだ。良ければ、私と付き合ってほしい……」
「……ッ!?」
堂々とした態度でフェイカーは立香を真っすぐと見つめ、胸の内を告白した。
どんな回答が返ってきても構わない……数日前に王から励まされた言葉を思い出し、目を瞑って回答を待つ。
だが、先に返ってきたのは言葉ではなく手の温もりだった。
「もちろん!僕もフェイカーが好きだから……!これから、一緒に居てね……ッ!」
「……ッ!ああ!私も、大好きだ……ッ!!」
若干、目の端々に涙を浮かべつつ、立香はフェイカーの手を両手で固く握る。
そんな立香を見て、フェイカーも涙を頬に伝わせながら握られた手を握り返した。
「(泣かないって、決めてたんだがな……でも、お前が泣いてくれる程に喜んでくれたんだ。それだけで私は……)」
人格者である立香であれば他の著名な英霊と付き合うことを選んでもおかしい話ではない。
だが、立香はイスカンダル王の影武者に過ぎない名無しの自分を”好き”と言ってくれた……それもほぼ即答に近い形でだ。
フェイカーはその事実にひたすら感激し、これからも立香を守っていき愛することを強く誓うのだった――
……
…
「よかったな……フェイカーよ……」
立香とフェイカーが互いに想いを伝え合っている所から少し離れた陰で、イスカンダルは密かにその様子を観察していた。
その目はまるで我が子を見るように穏やかな目だ。
「うぬは生前、余に忠誠を尽くしてくれた……ならば今は余ではなくマスターに忠誠を尽くすがよい……」
一通りのことを見たと判断し、イスカンダルは満足げにその場を後にする。
願わくばマスターと己が影武者が結ばれ、自分に花嫁姿を見せてくれることを想像し、イスカンダルはどこまでも穏やかに微笑みながらカルデアの廊下を上機嫌で歩いていくのであった。
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ヘファさん欲しかった……