どこまでも真っ暗な世界。何も見えない。
私はずっとここにいるのかな?
ねぇ、みんな助けてよ。みんなどこにいるの? どうして助けに来てくれないの?
暗闇の中でずっと……杏ちゃんとタマちゃんを失って酒呑童子を宿して、私は意識を失って……今いるここはどこなの?
そんなことを思いながら真っ暗な世界を彷徨い続ける。何もかもが挫けそうで諦めてしまいそうで……そんな時、私の目の前に白い光が現れる。
『ここがどこか、だってぇ?』
(誰?)
光の中から突然聞こえてきた男の人の声。どこかで聞いたことのあるような、覚えのある声。
『誰でもいいだろうそんなこと……まぁ、そうだな。今の俺には名乗る名前がねぇんでな、仮の名として黒き勇者……とでも呼んでくれや』
(じゃあ黒き勇者さん、ここはどこなの?)
普通だったらこんな簡単に信じたら駄目だとわかってる。けど、なんでかな……この人は信用しても大丈夫だと、そう感じてる。
黒き勇者っていう偽名もどこかで見たことあるような人にそっくりの印象だと思う。というかそのままな気がする。
『ここはお前の精神世界さ。弱っちぃ精霊を使った後にクソ強え精霊を宿したことで身体がついていけなかったんだよ。その影響で精神に異常が発生し救済阻止としてお前は無意識に精神世界にやってきてしまったのさ』
(じゃあ、そのうち目が覚めるの?)
『さぁな? そんなもんお前しだいさ……ったく器じゃねぇ人間の体に取り込まれちまうなんて……俺も神失格だなぁ』
(貴方は神様なの?)
『あぁ? んま、元だけどな。今は魂だけの存在さ。この時代に俺の器となる人間の体があったんだが、何故か今はお前の回復のためだけに取り込まれている』
(ご、ごめんなさい!)
『はっ! 別に構いやしねぇよ。お前が死ぬことで俺の器になにかあったらそれこそ面倒だからな』
(優しいんだね!)
『ぶん殴るぞ?』
もう殴ってるよ!? 精神世界なんだよね!? 今、ものすごく痛かったよ!?
涙目になりながら睨みつける。
(超痛かったんだけど!?)
『知るかそんなの! ったく!』
黒き勇者さんは、ちょっと苛ついたように舌打ちをする。
『いいか? 1から説明しようと思ったが面倒になった。テメェがこの精神世界から出るのも残るのもテメェ次第だ。テメェが仲間に会いたい、そんな感じの強い気持ちを持ち続けていれば必ず帰れる』
どういうことだろう? ちょっとよくわからないけど……要するに私がみんなに会いたいって思っていればいいってことかな。
『まぁ、好きなやつに会いたい、でもいいがな。俺の器……井嵩優斗のことが好きなんだろ?』
(ひゃ!? にゃ、にゃんでそのことを!?)
『何だ、図星かよ……つまらねぇなおい』
それは流石にひどいと思う。キレそう……凄くキレそうだよ。
『まぁ、そんなことはいい』
(どうしたの?)
『お目覚めの時間だぜ? お姫様』
黒き勇者さんはそう言って、少し微笑んだ気がした。
『もうこれ以上ゆうちゃんに近づくのはやめてもらえないかな?』
あの言葉から考えられること、それはあの少女が友奈と仲のいい友達だという線だが、そこらへん全くわからない。
そもそも友奈は自分のことをあまり話したがらない。自分に自身がないからか、それとも話したくない何かがあるからなのか……前者はあまり考えられないがありえない話ではない。友奈はどこか周りに気を遣う傾向があるからな。
自分に自身がないからか周りに合わせている……それなら俺の中で辻褄が合うが、なんとも言えんのが悲しいところだな。
「ハハ……わからねぇ」
「何がわからないの?」
「うおぉ!? ち、千景!?」
なぜか隣に千景がいた。気配全く感じなかった……恐るべし郡千景!!
「何に驚いてるのよ……」
なんか呆れたような目をされたんだが……俺が悪いの?
「貴方……高嶋さんが目覚めたから来たんじゃないの?」
「えぇ!? そうなの!?」
「なんで知らないのよ……」
「いや、だって妹に会いに来ただけだし……」
「えっ……?」
ん? 俺何か言ったか?
「貴方、妹さんがいたの?」
「あっ……」
やっべぇ……口すべらした。
「はぁ……いるよ。今も病室にな」
「なにか病気に?」
「いや、そういう類じゃない。あのバーテックスが襲来した日にちょっと、な」
「そう……」
まぁ、ちょっとした力に覚醒したけどそれを異性がたくさんいる町中に出せないから、なんて言えるわけがない。だから意味ありげに言ってみたけど、効果があったのか、千景は目を伏せた。
「ごめんなさい。そういうことを聞くべきじゃなかったわね。病室にいるのだもの」
「別に構わないさ。そんなの……」
「貴方の妹さんも空を見上げるのが怖くなったのね」
「………………んん?」
ちょっと待って? え、なんで……どうしてそんな話になった??
「ごめんなさい。今更聞かなかったことになんてできないと思う。だけど、誰にも話さないようにするわ」
ごめん。俺の方こそごめん。なんかわからないけど、勘違いするようなこと言ってごめんなさい。
「あー何だったら千景も来るか? 多分友奈のその……お見舞いまでには間に合うと思うけど」
「私なんかが行っても迷惑にならないかしら?」
「お前それ……いや、まぁいい。はぁ……ならねぇよ迷惑になんざ」
「それだったら……ついて行ってもいいかしら?」
「あぁ、別にいいぞ」
返事をすると千景は少し嬉しそうな顔をする。
(……そんな嬉しそうなこと言った覚えはねぇぞ)
まぁ、いいか。
〜病室〜
「あぁ、やっと来てくれたんだ〜。そちらの人は兄さんの彼女さん?」
「……悪かったな。あと、次そんなこと言ったらぶちのめすぞ愚妹よ」
「あはは〜兄さん顔怖いよ〜?」
この妹は一体どこからそんな煽りを覚えてくるのだろうか? 事と場合によって俺正気でいられる自信ねぇわ。
「春風さんのマネ〜」
「野郎ぶっ殺してやるわぁぁぁ!」
「えっ!? ちょ、落ち着いて!?」
いつも冷静?クールな千景に落ち着けと言われるとは……というかちょっと焦った千景可愛かったですはい。
「……ちっ! 絶対ぶっ殺してやるぞ春風さん……」
今はこんなことをしている場合ではない。そう自分に言い聞かせて怒りを沈める。
「う~んと、兄さんの彼女さんじゃないなら貴女は誰なの? あ、私は兄さんの妹の真奈っていうの」
「えぇと、私は郡千景。彼とは……ただの友達よ」
「お前さり気なく酷いぞ」
ただの友達って……俺仲間ですらないのか……。
「……冗談よ」
その若干微笑んで言うのは、意外とドキッとくるからやめてほしい。
「はぁ……まぁいい。今日は顔合わせで来ただけだからな。千景はもう友奈のところへ行ったほうがいい」
「貴方は来ないの?」
「……俺は、まだ行けそうにねぇ」
申し訳無さそうに謝りながら言うと、千景は「……そう」とだけ呟いた。
「私はもう行くわ。貴方も顔を見せるのならちゃんと来てね。それじゃあね、真奈ちゃん」
「ばいば~い!」
扉が締まる音が聞こえ足音が遠ざかっていく。俺と真奈の間に会話はない。
真奈はなぜかウキウキとした雰囲気を見せているが、俺は……ようやく見つけた精霊について考えていた。
鳳凰……日本や中国で有名な聖獣の一体。滅多に姿を表さない想像上の生物。鳳凰の卵は不老長寿の霊薬となるらしい。
そう、不老長寿の霊薬となる元……それが鳳凰の卵である。ならば、鳳凰自体もその要素を持っている可能性があるのではないか……俺はそう考えた。
あの白紙の本。アレは俺が望んだ情報をいつの間にか白紙のページに刻み込んでいた。それを読んでようやく二人を生き返らせる方法を思いついた。
馬鹿なことは自覚しているが、これしかないと思う。その方法とは、鳳凰を精霊として身に降ろすことだ。
「真奈……」
「どうしたの?」
ベッドの上で寝そべりながら顔をこちらに向けてくる。
「俺は二人を助けたい。球子と杏を……」
「でも、兄さんのやろうとしていることは人としての生を侮辱している行為だよ?」
「わかってる。でも、それでも俺は……」
ふわり。そんな擬音がつくかのように俺の頭に柔らかく優しい手が置かれる。
「私は、兄さんのしたいようにしたらいいなって思うなぁ。だって、兄さんはその二人が好きなんでしょ?」
「……そう、だな。仲間としては好きだよ」
「うん! だったら兄さんの好きにしたらいいと思う。私はまだ出会ったことがないからわかんないけどね」
何だよそりゃ……俺はそう苦笑いを浮かべる。
「だから、ね……兄さ――」
時が止まった。俺の頭の上に置かれていた手から温度を感じなくなる。顔を上げれば真奈は固まって動かない。
樹海化が始まるからだ。それはつまり……
「バーテックスが来たのか」
たとえどんな敵だろうと容赦はしない。その結果、
「たとえこの命を散らしたとしても……俺は俺の守りたいものを守る」
次回「我が身に降りよ、鳳凰」
お楽しみに。
春風ストーリーいりますか?
-
ぜひ書いてほしい
-
書かなくていい
-
第一章・乃木若葉の書を書き終わったらで