お久しぶりです!!
ずいぶんと時間がかかりましたが、最新話投稿です!!
俺とティア以外の勇者システムに新しいアップデートが追加された。それは、バリアシステム。なんでも精霊降ろしによる負の感情が溜まるのをどうやって防ごうかと考えていたらしい春風さんが突然思いついたそうだ。
「そうだ、それをバリアに変換しよう」と。正直言って何言ってんだこの人って思ったし、そもそも精霊降ろしにそんなデメリットがあったことすら初耳なんだが……どうしたらいいと思う?
「取り敢えず笑ってたらどうです?」
「そうだよなぁ……ははは……はぁ……」
「これは相当やられてますね……主に心が」
アレからなんやかんなあってティアとは仲良くなった。今では一緒にゲームをする仲と言っても過言ではない。たまに一緒に千景からゲームを借りに行ったりしてる。そういう時って大抵千景と友奈が一緒に居てハイライトのない瞳でティアが睨まれているけど……結局あれなんでなんだ?
ちなみに俺とティアには勇者システムのアップデートがない。そもそも俺達二人の力は若葉達の勇者システムとは少し違う。
若葉達の勇者システムが神樹そのものを使っているのに対し、俺らの勇者の力はどこから来るのかが全く不明である。そのせいか、あの天才三好春風を持ってしてもどう改造すればいいのかわからないらしい……ちょっと待てや。なんや改造って!
ま、まぁ……そんなわけでバリアシステムが搭載された今の勇者5人は、5人纏めて俺と戦うことでようやく黒星を得ることができるレベルまで強くなった。元々のステータス自体が高い若葉や友奈が積極的に攻撃し、メンバーの中では一番の防御力を誇る球子がなぜか大きくなってる盾(アップデートによって神器が進化したらしい)で俺の剣撃を防ぎ、新しい能力として自分の存在感を変化させられるようになった千景が不意打ちをしたり、メンバーの司令塔である杏が戦力を組んで時には遠くから矢を放ってくるというスタンスに落ち着いた。
これが中々厄介なせいか俺も十回模擬戦して2回3回は負けてしまう。そもそも千景の存在感を探知できないから攻撃されるときはほとんど堪頼りになる。
それでも人型バーテックスにはまだまだ及ばないだろう。奴らは一人一人が基本スペックが高すぎるからな。ヴァルゴ・バーテックスはそもそも俺達のことを見下し油断していたから勝てた、それだけに過ぎない。
もしも、もしもヴァルゴ・バーテックスが油断さず俺達に向かってきていたら……おそらく勝てなかっただろう。
そういえば春風さん曰く、このバリアシステムはバーテックスの攻撃にのみ反応するって言ってたな。俺と模擬戦したとき全員バリアシステム発動してたし……。
『オレがいるからな』
お前かぁ……お前のせいかぁ。
『そりゃあ、オレってバーテックスだしぃ? ぶっちゃけお前よりも強いしぃ?』
言い方うざってぇけど、お前この前夢の中で俺に負けてたよな?
『えぇ? 知らねぇ……なぁ』
……気にするだけ無駄だなうん。ウルフ・バーテックスはしたわけじゃない。ただそれでもウルフ・バーテックスが他のバーテックスを憎んでいるのを知って協力関係になった。おかげで俺は勇者の力だけじゃなく、バーテックスの力を出すこともできるようになった。と言ってもまだちゃんと引き出せている訳では無いがな。
『まぁ、どうでもいいけどよ、そろそろ奴さん来やがるぜ?』
……その言い方からしてバーテックスか?
俺がウルフにそう問いかけたと同時に世界が止まった。
「どうやら、来たようですね。ワタシにとっては今回が初戦です。慎重にいかなくてはいけませんね」
隣から気合の入った声が聞こえてくるが、当の本人は真顔に等しい無表情。全く説得力がないが本人曰く「表情筋が硬い」だけらしいので緊張はしているのだろう。
「本当に……もう、誰も死なせたくねぇな」
ボソリといった言葉を最後に……俺達は神樹の結界へ入った。
『ハハっ! 早速世のため人のために働くとしますかぁ!』
「いや戦わせねーよ?」
『なんでぇ!?』
「優斗……何処に向かって喋ってるんです?」
〜〜〜〜〜〜〜〜
「やああああっ!!」
『はっ! しゃらくせぇ!』
桜の勇者服を身に纏った高嶋友奈の渾身の拳を、スコーピオン・バーテックスはその
その後ろから若葉が居合の構えのままスコーピオン・バーテックスの懐に入り、勢いよく鞘から刀身を抜き放つ。だが、その隙をついた攻撃まスコーピオン・バーテックスにはお見通しのようで、朱槍を回転させながら盾のようにして防ぐと、吹き飛ばされながらも上空から殴りかかろうとしていた友奈の方へ若葉を吹き飛ばした。
「わわっ!?」
「くっ……すまない友奈」
「大丈夫だよ! まだなんとかなる!」
なんとかうまく着地した二人は、スコーピオン・バーテックスのことを警戒しながら遠くの方で様子を見守っている仲間のもとに戻る。
「やはり……」
「若ちゃんも感じた?」
「友奈もか? あぁ、スコーピオンのやつ、初めて来たときよりも強くなっている。私達のように鍛錬してきたのか……それとも」
「元々あの強さだったのか、でしょ?」
何もない空間……そう思っていた場所が揺らぎ薄く影が生まれる。影は形となり赤い色となりながら千景の姿となる。
「千景!」
「駄目ね……気配を消していたのに気づかれてた。相当な手練よアイツ」
チラッと瞳をスコーピオン・バーテックスに向ける。相手は少しニヤつきながらいつでも殺しに行けるよう構えている。だが、その場から動くことはない。若葉達が相談しているのを察して敢えて待っているからだ。
余裕がある、見下されている……そう捉えることもできるが――勇者達とスコーピオン・バーテックスの間にはそれほどまでに、強さの差がありすぎる。
その差は絶望的。今までの鍛錬が何なんだったんだと言いたいぐらい若葉達の技量も全てもスコーピオン・バーテックスには届いていない。
「あの様子を見るにまだ本気を出したわけではなさそうですね。なら、本気を出される前に倒すのはどうでしょうか?」
「見てぇだな。なら途中参加しても、文句言われねぇだろうな」
「そうだな、誰も文句は……ん?」
ナチュラルに会話に参加してきた声に若葉達は揃って首を傾げる。
「どうした?」
「どうかしましたか?」
「「「「「いつからそこにいたんだ(の)(かしら)!?」」」」」
心底驚いた感じでいつの間にか会話に混じっていた二人の方に顔を向ける一同。全く気配がしなかったことに若葉は驚いた。
「いつからって……『やはり……』の当たりからだな」
「ほぼ始めからじゃないか!!」
あたりにも優斗が飄々と言うため若葉は思わず生太刀で斬り上げようとしてしまうが、その瞬間若干青筋を立てた友奈に羽交い締めされる。
「ま、まぁまぁ……若葉ちゃん、優斗くんは後で殴ればいいから今はアイツを倒すことを考えよ?」
「そうね。無駄な時間を過ごすつもりはないわ」
「……そうだな。すまないみんな」
「あれ……俺が悪いの? ティアは?」
「ふっ……流石黒き勇者プギャ」
「はっ倒すぞてめぇ!」
会話だけ見れば戦闘中にふざけているように見えるが、一同は決して油断なくスコーピオン・バーテックスから目を離していない。
「取り敢えず、いつものようにはいかねぇってことはわかるが……」
勇者が二人も増えたにも関わらず相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべるスコーピオン・バーテックス。自らの実力に自信がある証拠であり、その目つきを見ればこちらを見下していながらも決して油断していないのがわかる。
「どうやら、完全に敵として認定されてるみたいですね」
「あぁ、流石は大英雄の姿をしてるだけはある」
「??」
優斗の呟きにみんなが首を傾げる。
「スコーピオン・バーテックスの姿は、アイルランドの英雄だよ。それも光の御子と呼ばれたクー・フーリンだ。あの赤い槍は恐らく投げれば必ず必中すると言われる伝説上の槍ゲイ・ボルクだ」
「つまり、一筋縄ではいかないってことか」
「正解だよ若葉」
優斗は若葉に視線を向けニヤッと微笑むと、いきなりトップスピードでスコーピオンの元まで駆け寄る。だがスコーピオンからすれば想定内なのか特に動揺するわけでもなく冷静に後ろに下がる。その瞬間、炎を纏った焔香がスコーピオンの首が会った場所を過ぎ去る。
「ちっ!」
そのまま雷花を振り上げるも、回転するゲイ・ボルクに弾き飛ばされてしまう。
『なんだぁなんだぁ? ちっとも強くなってねぇじゃねぇか。そんなんじゃオレは倒せねぇぜ?』
「うるっせぇなぁ……」
槍が目前まで迫ってくるのを地を蹴って素早く移動することで回避する。その瞬間、優斗の後ろから飛び出した友奈が槍を蹴り上げ、スコーピオンの後ろに回っていた千景が鎌で斬りつけた。
『うおぉ!? へぇ~』
今回始めてつけることに成功した唯一の傷。それにスコーピオンが笑う。そして、そのスピードが、増した。
「がっ!?」
いきなり風のように速くなったスコーピオンの動きに対応できなかった優斗は、そのまま蹴り飛ばされ友奈を巻き込む形で地面に倒れる。
気配を消して近づいていた千景だが、そこは歴然の猛者の勘なのか、余裕そうに槍で鎌を受け流す。
「やるしかねぇか友奈!」
「うん! わかった!」
友奈をどかし焔香と雷花を地面に突き刺した優斗は、体内から凪咲を呼び出し水平に構えると黒炎を纏いその姿を変える。友奈は腕を交差させると力一杯叫んだ。
「我が身に降りよ! 鳳凰!」
「来い! 酒呑童子!」
黒い和風騎士と鬼を模した勇者服を身に纏った二人は、上昇した身体能力をフルに使ってスコーピオンへ迫る。
優斗の斬撃、友奈の拳。その2つがスコーピオンにダメージを与えていく。友奈がスコーピオンを殴り飛ばし、優斗が追撃として凪咲を振るう。
精霊降ろしの負担。それも友奈の場合本来ならば使うことができないはずの強力な妖怪の力。そのため友奈の体が耐えられず血が吹き出す。
「高嶋さん!!」
遠くで千景の叫び声が耳に入るが、友奈は全く心配していなかった。なぜなら
「全く、もう少し自分の体を大事にしてくれ」
凪咲の能力で友奈の傷口を凍らせた優斗がいるからだ。凪咲の持つ氷の力は凍傷の類が存在していない。ゆえに傷口を凍らせたところで痛みになることはない。その特性を知っているからこそ優斗は発動した。
「ワタシを忘れてもらっては困ります」
まるで蜃気楼のようにゆらりと影が動く。それはいつからこそにいたのか、そう思うほどの違和感のなさ。気づいたときにはスコーピオンは焔の刃に斬られていた。
『へぇ……』
スコーピオンが敵を見つけたときにはゆらりゆらりと影が動き、ティアの姿がその場から掻き消える。そしてまたスコーピオンの肉体に焔の刃で斬りつけられる。
『ずいぶんとうざってぇ戦い方だなぁおい!!』
スコーピオンの宿す英霊が誇る強さは速さだ。たった一歩でトップスピードでティアの懐に入ったスコーピオンは、槍の柄でティアの横腹を弾き吹き飛ばす。
「くっ!」
吹き飛ばされたティアは空中で一回転し着地するが、その瞬間にはスコーピオンの槍が迫っていた。
「っ!!」
背を後ろへ曲げ倒れないようにバランスを保つ。朱槍ゲイボルグがティアの目前を通り過ぎる。
『やるじゃねぇかぁ!!』
「しつこい男は嫌われますよ?」
『あいにくオレはしつこい女に追われる側なんでなぁ!!』
「シッ!!」
まるで五月雨のように突き出された槍が、無数の槍となってティアに襲いかかる。それを突然割って入ってきた若葉が大太刀で防ぐ。
スコーピオンは一度距離を取り、先程からちまちまと矢を撃ち出してくる杏へ向けて走り出した。
「なっ! 逃げろ杏!」
「はわわ……」
『おらぁ!! 死に晒せぇぇぇ!! ゲイ……ボルグゥ!!』
走りながら杏の心臓に向けて投げつけられたゲイボルグがまっすぐ飛んでいく。杏は咄嗟のことで逃げ出すことができず、またあのときのように死んでしまうのかと歯を強く噛みしめる。
だが、
「やら……せるかぁ!!」
杏の前に飛び出した小さな勇者が盾を構え、ゲイボルグの勢いを削る。
「こなくそーーーー!!」
ギュルギュルギュルと音を立てながらゲイボルグが盾を削るが、球子は構えた盾の角度を変えゲイボルグの軌道を変える。それにより、ゲイボルグは杏の横を通り地面に突き刺さった。
「はぁ、はぁ……杏はぁ!! タマが守る!!」
汗を滝のように流しながら球子がスコーピオンを睨みつけ声を上げる。
「おりゃあ!!」
『うおぉ! あっぶねぇ』
スコーピオンもまさか自慢の必殺技が不発に終わるとは思っていなかったようでポカンとしていたが、その隙をついた友奈の飛び蹴りをバク転して避ける。
「私達は諦めない!!」
「たとえどれだけ絶望が降り注ごうが、必ず希望に変えてみせる!!」
友奈の隣に立つ若葉も大太刀を構え、すぐに攻撃できるようにする。
「もう貴方たちに私達の日常を壊されるわけにはいかない」
「勇者は諦めが悪いからな」
千景が優斗が杏が球子が……みんなが瞳を希望を宿しスコーピオンと相対する。
『はぁ……本気、出すか』
その様子を見たスコーピオンはだらりと腕を垂らすと、肉体から黒い瘴気を溢れ出させる。その瘴気は周囲に絶望的な威圧感を与え、膝をつかせる。
「がっ……な、なんだこれ!?」
凪咲を地面に突き刺しなんとか立ち上がった優斗が見たものは、黒い鎧に包まれた巨大なサソリだった。
「これが……スコーピオン・バーテックスの本来の姿というわけですか」
隣りにいたティアも冷や汗を抱きながら剣を構える。
戦いはまだ、終わらない。
どうだっでしょうか?
良ければ感想などをください!!
もしサイドストーリーを作るなら誰のが欲しいかな?
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