美しき舞う花と黒き勇者   作:プロトタイプ・ゼロ

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今回投稿させて頂くのは、俺自身かなりお世話になっているゆーしゃKuroもといゆーしゃ 様から頂いたストーリーです。一部本人から頂いた文字を変えていますが、そこはご了承ください。


番外編ストーリー(ティア・ユットマン)

 

《I will never forget. So don't forget you too.》

 

 

 

 

 

 熱い。この灼熱のような熱さは異常だ。ここはやはり…………。

 

 

「さすがに休憩しますか」

 

 

 ゲームのやりすぎで熱がこもりまくったゲーム機をシャットダウンし、金髪の少女は背伸びをして後ろのクッションにもたれかかった。

 

 ────彼女の名はティア・ユットマン。長い金髪の髪は艶やかで、ふわっとしている。身長は15歳にしては高い方で、169cmだ。ちなみに一部学校へ改装された丸亀城に、自室を勝手に増築している。

 

(四国……勇者となって、ここに来て……随分慣れましたものですね。……ひょっとして環境適応能力が高いんでしょうか)

 

 ティアは真っ暗なモニターに映る自分を見つめる。一番昔の記憶は春風という男に出会った辺りだ。

 

 ────そう、ティアに過去の記憶はない。故郷がどこか、なぜここにいるのか、どうやって勇者になったのかさえ、覚えていない。春風の話では、単に観光に来ていた外国人か日本在中の外国人……いずれにせよ日本国外の人間であると予想される。

ただ、そんな人間がなぜ勇者の力を持っているのか、勇者を導く巫女の姿もなかったので、謎は深まるばかりだ。

 

「……あ、そうだ。千景に借りていたゲームを返しに行かなくては」

 

 やることを見つけたティアは、一つのゲームソフトを手に取り部屋を出る。最近のやることと言ったら、ゲーム、鍛錬、戦闘……この三つだ。少しは女の子らしいこともすべきだと思ってはいるようだが、それでも性にあわないようで、よく千景とゲームを共有している。

 

「失礼します。千景、借りていたゲームを返しに……あぁ、友奈も来ていたんですか」

 

「やっほーティアちゃん!」

 

 教室に入って、元気な声と共に手を大きく振るのは、高嶋友奈。そして、その隣で携帯型ゲーム機を握る黒髪の少女は、ティアにゲームを貸した郡千景だ。

 

 室内なのだから、そんなに手を振らなくてもいいだろうと、オーバーアクションな友奈を横目に、ティアは千景にゲームソフトを手渡す。

 

「ありがとうティアさん。このゲーム、どうだったかしら」

 

「ストーリーが心にグッときました。バトルも楽しめましたし、文句なしです」

 

「それは良かったわ。あなたなら気に入ると前から思っていたの」

 

「さすがですね」

 

 千景とティアがそんな会話をしていると、友奈が頬をプクッと膨らませて、千景とティアの間に顔を挟んでくる。無視しすぎたようだ。

 

(高嶋友奈……この元気さと明るさは尊敬しますが……ワタシには眩しすぎますね)

 

 そんなことを思いながら、徐に友奈の頭を撫で始める。予想だにしない展開に、さすがの友奈も驚きを隠せなかった。が、すぐ猫のように、ティアの手に擦り寄ってきた。

 

「て、ててぃ、てぃっ……ティアさんっ!」

 

「落ち着いてください」

 

「そ、そうね……えぇ、私は冷静よ。至って……レイセイ……」

 

「目が怖いですよ」

 

 羨ましいのか、千景は両手をわきわきとさせて友奈に触れるか触れないかのギリギリで留まる。

 

「ぐんちゃんにも撫でて欲しーなー?」

 

「た、高嶋さん……!」

 

「ぐんちゃ〜ん♪」

 

 友奈の了承を得た千景は、餌に飛び付くように友奈の頭を撫でたり、頬を揉んでみたりと割と大胆に撫でくりまわす。どちらが猫かもうわからない。

 

「……ごゆっくり」

 

 そんな二人を邪魔する訳にもいかず、ティアはこっそりと教室を出ていった。

 

「おーティア! 千景教室にいたかー?」

 

 ちょうど教室を出た瞬間、友奈とはまた違った元気さを持つ小さな少女、土居球子と遭遇する。

 

「いるにはいますが、どうしたんですか?」

 

「すっごい暇だからさー、千景にゲームで挑もうかと思ってなー!」

 

「……あー。今はやめておいた方がいいです。絶対吊るされます」

 

「お、おおぅ……そんなにヤバめな状況なのか」

 

「今はまぁ……お楽しみ中なので」

 

「あぁ、察しの良いタマはなんとなくわかったゾ……」

 

 本当に変なところで察しがいい。最初は何だこの子供はと思ってしまったティアだが、今は話しやすい良い会話相手だ。

 

「あっ! もータマっち先輩! ティアさんに迷惑かけちゃダメだよ?」

 

 球子を追いかけてきたのか、伊予島杏が駆け寄ってきた。

 

「あ、あんずぅ、タマそんなに迷惑かけちゃう子じゃないぞ……あれ、な、ないよな!? ティア!? ……ちょ、こっち向いてくれ! そして否定してくれー!」

 

(別に迷惑ではないですが……この反応は面白い)

 

(涙目タマっち先輩……カワイイ♡)

 

 本は嫌いではないティアは、たまにオススメの本を杏から借りることがある。興奮気味に感想を聞いてくる杏の反応が面白いから、というのが半分だが。

 

 こうしてティアが他者の反応……表情の変化を面白く思うのには理由がある。いかんせんティアは感情表現というものが苦手だ。もちろん楽しいことや悲しいこと、嬉しいこと、その喜怒哀楽を感じることは出来るのだが、表情筋が硬いようでほぼ変化がない。しかし、笑顔は恥ずかしくて見せたくないのが本音だ。

 

 夜な夜な表情筋のマッサージをしているくらいには気にしているので、当初球子に怖がられたり反応がなくてしょんぼりされた時はかなり落ち込んだものだ。

 

(まぁ今はそれも面白いですが)

 

 球子と杏と別れ、ティアは球子の表情を思い出しながら通路を曲がる。……と、お腹辺りに何か柔らかいものがぶつかった。

 

「きゃあっ!?」

 

「─────ッ!!!」

 

 少女の悲鳴と同時に、ティアは持ち前の反射神経で手を伸ばして、ぶつかって突き飛ばしてしまった少女の背に手を回す。

 

「ふぅ……すみません、よそ見をしていて……大丈夫ですかひなた」

 

「え、えぇ、はい! こちらこそすみませんティアさん。私も考え事をしてまして……」

 

 ぶつかった少女、ひなたの身体を起こすと、ティアは自分のお腹に何がぶつかったのか理解した。理解して、目を逸らしてひなたの瞳を見つめることにした。

 

(今日はよくエンカウントしますね……)

 

 上里ひなた……勇者をサポートする巫女のひとり。ティア自身も随分お世話になってしまっている。うどんよりカップラーメン派なのだが、ひなたが作るうどんなら話は別だ。

 

「怪我はしてないですか? あなたが怪我をすると若葉に何を言われるか……」

 

「大丈夫ですよ。それに若葉ちゃんもそこまで責めたりしませんから。……あ、そうそう。若葉ちゃんといえば、何やら用事があるようでティアさんのこと、探していましたよ?」

 

「風雲児様が探しているのであれば、すぐに行かなくてはなりませんね。ありがとうございます、ひなた。今度カレーうどんとやらを食べさせてください」

 

「仕方ないですねぇ……って、もういない!? 最近二人でいるようですが……一体何をやっているんでしょうか……」

 

 そんなひなたを置いて、忽然と姿を消したティアは通路を走る。自室に駆け込むと、壁に立てかけてあった剣を手に取り、部屋を飛び出してまた走る。

 

「《天叢雲剣》────ッ!」

 

 銀の両刃が鞘からのぞかせる。勇者となったティア使う武器は、両刃剣……ヤマタノオロチの尾から見つかったと言われる神剣 《天叢雲剣》だ。

 

 前方に生大刀を携えている若葉を見つけると、ティアはさらに、加速する。

 

「ハァァッ!!!」

 

「来たか……ッ!」

 

 ティアは瞬時に剣を引き抜き、床を蹴り、天井を蹴って上方から振り下ろす。もちろん若葉がそれで斬られるとは思っていない。振り向きざまに抜刀し、意図も容易く受け止めた。

 

「さて、初の二連勝はいただきますよ」

 

「悪いが、今回は負ける気がしないなッ!」

 

 そう言って若葉が腕に力を入れたのと同時に、ティアは腕を組んでバネのように使って、若葉が押し上げる力を利用して空中で反転する。

 

 これは別に喧嘩というわけではない。こうして真剣勝負をしているのだ。ちなみに今までの戦況はティア120勝、若葉119勝だ。どちらも譲らず、二連勝は未だにない。

 

 生大刀と天叢雲剣。どちらも勇者の力の源である、いわゆる神器。それを二人は普段着で振り回す。

 

「燃えろ────ッ!」

 

(ッ!? 天叢雲剣の力か……!)

 

 刹那、剣から極僅かな粉塵が散る。粉塵は若葉に一定距離まで接近すると、パッと弾けるように燃え上がった。もちろん加減はしているので、これは単なる目眩しに過ぎない。

 

「もらった────ッ!」

 

「甘いッ!」

 

 だが若葉も負けていない。高熱を帯びた天叢雲剣をまたもや受け止めると、鍔迫り合いに持っていく。

 

(なんて熱さだ……! これが……優斗と同じように固有の力を持つ神器……ッ!)

 

 精霊宿しに匹敵する力の片鱗を見せたティアは、何とか押し返そうと踏みとどまる。

 

(やはり、技術力では若葉が上……ならば……!)

 

 その瞬間、若葉のすぐ目の前で火花が散る。それは何度も何度も鬱陶しいほど弾け、若葉の気を散らす。

 

「くっ……こんなもの!」

 

 瞳を閉じなければ消えない火花。若葉なら瞳を閉じたままでも、ティアに一撃を与えることが出来るだろう。だが、閉じた瞬間はどうだろうか。

 

「────ふっ」

 

 予想通り瞳を閉じた若葉を見て、ティアは口角を少し上げる。これでもまだ、自分に勝つ確信が持てないのだから……楽しいと感じざるを得ない。

 

 若葉は瞳を閉じた瞬間、ティアがそれを狙って後退することを予測していたのか同じく後ろへ飛び退くと、カッと目を見開いてティアに急接近する。────そして放たれるは若葉最大の一撃だ。

 

「一閃緋那汰ァァァーッ!!!」

 

「ぐぅっ……ッ!?」

 

 ティアはその一撃を受け止めるも、押し負けて床に倒れ込んだ。

 

「ッ、はぁッ……はぁッ…………勝負、あったな……!」

 

「負けました。やはりあなたは強いですね」

 

「……いや、ティアが本気を出せば負けていた。実戦なら、こうはいかない」

 

「そうでしょうか」

 

「現に、息が上がっているのは……はぁッ……私の、方だしなっ」

 

 正直なところ、ティアも充分疲れている。ただ表情筋が硬くてわかりづらいだけだ。

 

「まぁ、勇者服も身に纏ってないですしね。今度は着てやってみますか?」

 

「……そうだな、それもいいかもしれない」

 

 そんな、いい汗を流した程度にしか思ってない二人にツッコミを入れる勇気ある者が一人いた。

 

「お前ら、ここをぶっ壊す気か?」

 

 ティアは鞘に刃を納め、目の前に立つ真っ黒な少年……井嵩優斗を見つめる。十人十色な勇者の中でも、特に異色の存在。男でありながら勇者の力を持つ者。

 

 “ぶっ壊す”という言葉に、ティアも若葉も同じように首を傾げる。

 

「優斗、何を言ってるのか理解出来ないのですが」

 

「室内で神器を振り回すバカがどこにいるんだ?」

 

「ここにいますが」

 

「自覚あんのかよ……せめて外でやってくれ」

 

「小さいくせに態度は大きいですね……」

 

「……なんか言ったか」

 

「いえ別に」

 

 ティアは背を向け、その場を去ろうとする。自分自身も異色な存在であることは自覚しているが、自分とはベクトルの違う存在。気にならないわけがなかった。

 

 ────だから仕掛けてみた。

 

「封印……」

 

 誰にも聞こえないように、ボソリと呟く。だが、どうやら勘づかれたようだ。ティアはすぐに抜剣し、優斗に斬りかかった。

 

「凪咲ッ!?」

 

「優秀な神器ですね、本当に……ッ!」

 

 優斗がその体内に保管している神器。それを取り出せないように封印したつもりだったが、その一つの神器に気付かれ、封印の寸前で出現される。不意の一撃を防がれてしまった。

 

(なるほど……確かにこれは、強い)

 

 優斗が所持する神器の一つ────凪咲。氷という一つの属性を自在に扱う、五尺以上はある大太刀。

 

「いきなり何すんだ」

 

「ちょっと遊んで頂けたらと思いまして」

 

 ティアはそう言うと天叢雲剣を構え、口を結ぶ。

 

(なんなんだ一体……でもティアは本気みたいだし、こっちもそれなりに────)

 

 優斗がそんなことを思っている間に、ティアは瞬時に接近する。大きな身体を屈ませ、剣を振り上げた。

 

「重……ッ!!?」

 

 咄嗟に凪咲で防ぐが、優斗はそのまま打ち上げられ、天井に背を打った。

 

「その程度ですか、優斗! こんなんじゃ追撃を許して死────ふっ、さすがの判断力ですね」

 

 ティアは自身の足元の異変に気付き、うっすらと笑みを浮かべる。足が凍りつき、地面から離れない。完全に拘束された。

 

(だが、拘束したところでこの部屋の中じゃ狭すぎる……! 若葉もいるし戦いづらいな)

 

 優斗は窓に視線を移すと、天井を蹴って、そのままガラスを突き破った。外ならば余裕で凪咲を振り回せる。

 

「……若葉」

 

「な、なんだ……?」

 

「今、窓を壊したのは優斗ですからね」

 

「あ、え?」

 

「それじゃ────」

 

 あとで怒られるのが嫌なので、目撃者の若葉に一応そんなことを言っておく。ティアは発火し、足を拘束する氷を一気に溶かすと優斗を追って窓から飛び降りた。

 

「……まぁ、追いかけてくるだろうと思ったよ!」

 

「反撃してくると思っていましたよ……ッ!」

 

 下で待ち構えていた優斗と、飛び降りたティア。この状況、ティアは空中にいて優斗の一撃が避けることが出来ないと、普通なら思うだろう。

 

(だがティアには炎がある……! 優斗の攻撃を回避してしまえば、あとは接近して一撃をお見舞いしてしまえば……まさか、あの優斗に勝つのか……!?)

 

 若葉は窓から見下ろして、その戦いを見届ける。若葉達と比べて異色の二人……どちらが勝つのか、予想出来ない。騒ぎを聞きつけ、千景や杏たちも集まってきた。

 

「《天叢雲剣》────ッ!!!」

 

「行くぞ……凪咲────ッ!!!」

 

 刹那、炎と氷が空に咲く。天叢雲剣をジェットのように使うティアは、高速で優斗に接近する。

一方で、優斗は避けられると予想して超広範囲に氷霧領域を展開していた。

 

 目に見えるほどの大きさの氷結晶。その一つにでも触れれば対象は瞬時に凍りつく。

 

「炎纏ッ!」

 

 が、しかし、ティアは天叢雲剣を後方に向けたまま更に加速する。右足に炎を纏い、ドロップキックのような構えで優斗目掛けて落ちていく。

 

 細氷は砕けない。ただ、ティアに触れる前に溶かされていく。

 

(なぜだか知らんが、焔香と雷花が出てこねぇ……凪咲、殺さないように加減しろよ!)

 

───OK!派手にかましちゃっていいよ!

 

 ティアの蹴りに合わせ、優斗は凪咲を薙ぎ払う。それと同時に、残っていた氷結晶を一点に掻き集める。

 

「……っ! 凍る……!?」

 

「……全てを凍らせろ、アブソリュートゼロ (絶対零度)

 

 拡散してダメなら一点集中だと言わんばかりに、ティアの神器を凍らせる。炎ごと凍結させてしまい、その影響で足に纏う炎も消えた。要はただのドロップキック……いや、落ちる少女だ。

 

「────よっ……と。お前見た目に反して無茶するんだな」

 

 さすがにこのまま落ちたら骨折間違いなしなので、優斗は凪咲を地面に突き刺すと、何とかティアをキャッチして抱きかかえた。……体格差があるのでこのお姫様抱っこもコレジャナイ感が凄いが。

 

「……はぁぁ、なんとなく理解しました。今日のところはワタシの負けでいいです」

 

「……何を理解したんだよ。というか、またやるのかよ」

 

 黒き勇者……男であるが、さすがに勇者と呼ばれる素質はあるようだ。心のどこかでホッとしているティアは、火力を上げて凍った天叢雲剣を溶かした。

 

「また手合わせ願います。今度は皆さんもご一緒にどうですか?」

 

 ティアは、自身が飛び降りた窓を見上げ、一部始終を見守っていた勇者たちに声をかけた。

 

 ─────せめて変身させてくれ。五人の勇者の心の声が重なった瞬間だ。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 ティアは今日一日を、湯船に浸かって振り返る。

 

 

(若葉たちは、きっとこれから……もっともっと強くなる。強くなれる。優斗は未知数……あれに勝つにはどうすればいいのやら……ですね)

 

 異国から来た自分を快く迎え入れてくれた勇者たち。そんな彼女たちと一人の少年に、いつか心に秘めた「ありがとう」を言える日を、待ち遠しく思う。

 

「さて、今日の晩御飯はチリトマトのカップ麺にしますか。……粉チーズ残ってましたっけ……」

 

 下着を着用し、まだ濡れている髪を揺らしながらティアはカップ麺が詰め込まれたダンボールを漁る。好物のチリトマトカップ麺を見つけ、冷蔵庫も漁り始める。

 

 これが一勇者の日常。ティアの、とある一日の出来事だ────。

主人公の第2の精霊

  • いるんだよクソが!!
  • いらねぇんだよクソが!!
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