良ければ今回の初戦闘について感想ください。やる気出ます。というか出します!
精霊降ろし……それは人の身に妖怪などの存在しない気配を敢えて身に移しその能力を借りることを指す。若葉達勇者に搭載されているシステムの一つであり、精霊降ろしを行う際精霊について詳しく知っておくとより精霊の力を引き出せるようになる。
詳しいことはよくわからない。だが、このシステムが本当に搭載されているのであれば、その代償は凄まじいものになると簡単に予想できる。その代償がどんなものなのかまでは予想できないので俺は……
「というわけで、知っている情報を吐いてもらおうか?」
「いきなり人ん家に来て言うことがそれとは……恐れ入ったよ」
「巫山戯るのはやめろ。アンタなら知っているはずだ。あのシステムに起こる代償を!! 若葉達が背負うことになるものを!!」
「ふむ……勇者システムに組み込まれている精霊降ろしの代償ねぇ……そうだね、正直なところ僕にもわからない」
「は?」
「誤解しないでほしいが、僕だって出来ないことの2つや3つはあるんだよ? なんて言ったって人間だからね。かろうじて精霊降ろしをシステムとして組み込むことまではできたけど、その代償となるのがどんなものなのかまでは僕にもわからないんだ」
自分で天才を自称するほど頭いい春風さんでもわからないなんて……俺はどうしたらいい? 何をすればいいと言うんだ。
もし代償について何も考えずに精霊降ろしをアイツらが使ったらどうなってしまう? もしその代償が危険なものであれば? 命に関わるものであればどうすればいい?
わからない。俺にはわからない。俺はただ少し人よりも察しがいいだけなんだ。
「やれやれ……どういう心境の変化なのかな~。君がそこまで彼女たちを心配するなんて」
「別に……いいんだろ」
「そうだね。僕が気にすることではないし興味もないけど、それでも一応僕は君の保護者代わりだからね……物凄く年齢が近いけど」
いやたしかにそうかも知れないけどさ……嘘でもいいから「興味もない」の部分だけは取り除いてほしかった。
「まぁ、もうすぐバーテックスどの戦いが始まるかもしれないし、俺が気をつけていればなんとかなるだろ」
「ほう? 随分と言うじゃないか」
「そう思ってないと胃に穴が開きそうで怖いんだよ」
おいこら笑ってんじゃねぇ! こちとら真剣なんだ!
「す、すまないねぇ……以前の君を知っている身としてはどうしてもキャラが合わない気がしてね」
「そんなの自覚済みだ……」
俺は元々こんなキャラじゃねぇからな。合わないように見えても仕方ないが……それにしても笑い過ぎじゃないか?
「まぁ、精霊降ろしの件については僕もまだ考えている途中でね、上の連中が勝手なことを言わなければもっと深めに研究してからシステムに組み込んだけどねぇ」
「そのせいで現段階での精霊降ろしの代償がわからずじまいと……」
「そうだよ。上の連中もやってくれるよ。これでもし何かあれば僕の面目丸潰れだからね。おそらくそれを狙っているんだろうけどさ……」
「そのために勇者を犠牲にするつもりかあの愚か者共は」
心の底から怒りがこみ上げてくる。なぜあんな腐った連中がトップにいられるのか謎でしかない。
「代償のことはいい。じゃあ、現段階で判明している精霊はどんな感じなんだ?」
こればかりは聞いておかないと安心できない。
「そうだね、では説明しようか――」
〜〜〜〜
「今回初戦闘だね!
「友奈は元気だなぁ……タマは誇らしいぞ!」
勇者メンバーで一番テンションが高いのは高嶋友奈だった。初めての戦闘はあまりにも早く来た。
ひなたが神樹から受けた神託ではまだ先立ったはずなのに……
「案外神樹なんて頼りにならないな……」
「そういうのは言うもんじゃないぞ。神樹様のおかげで私達は戦えるんだ」
「はいはい……」
小さく呟くように愚痴る俺を見て若葉が叱る。
俺は全く信じてないが、若葉は……いや今現在四国に住む人の殆どが神樹の存在を信じている。その理由は簡単で四国にはバーテックスが入ってこれないように大きな壁が存在するからだ。
3年前のあの日、人々を守ろうと神々は四国に集まりその力を持って巨大な壁を作ったと聞いている。その影響により今まで人々を喰い散らかしていたバーテックスは壁の結界に阻まれてしまったらしい。
そういえば俺が初めてこの壁に触れたときなぜかはわからないが弱い電流のような感じで弾かれたことがあった。まるで俺のことを人として認識していないのではないかと勘違いした。
「来たようだな」
視線を向ければ結界を超えて無数の白い星達が神樹を破壊しようとやってきた。その様子を見て俺以外の勇者達に緊張が走る。先程までウザいほどテンションが高かった友奈でさえ冷や汗をかいている。
「……」
俺はその中でも一人だけ青ざめた顔をしている少女を見る。今にも倒れそうなぐらい体を震わせている彼女を見て心の中でため息を吐きながら近づいていく。
「行くぞみんな!」
「待って乃木さん。伊予島さんは戦えないみたいよ」
スマホを取り出し勇者に変身する
「杏……」
伊予島杏だった。球子が心配した表情を杏に向ける。
「ご、ごめんなさい……変身しなきゃって頭ではわかっているんです。でも、怖くて……」
「別に無理はしなくていい。戦うことや死ぬのが怖いなんて人として当たり前だ」
「井嵩さん……」
今にも涙が溢れそうになっているな……。
「先に行く……しっかりと話し合えよ若葉」
「……」
返事はなしか……まぁいい。
俺はその場から急加速して一気にバーテックスの群れに突っ込む。焔香と雷花を交互に振り回し炎と雷を奴らに食らわせる。
「だめだよ優斗くん! 一緒に戦おう!」
「高嶋さん……それよりも乃木さんが」
後ろの方でなにか聞こえるが取り敢えず無理で。というか何やってんの若葉……。俺も人のこと言えねぇわ。
視界の端で若葉がなんか暴走して斬り倒しているのが見える。だが、あれは若葉の問題だからな……俺が気にすることではないか。
取り敢えず若葉が戦うことの意味をちゃんと理解するまでは共に戦うっていうのは無理そうだな。
『あら? なんだか私達同族と似たような匂いがしますわ』
「……っ!?」
すぐ間近で甘ったるい少女の声が聞こえた俺は、振り向くと同時に後ろに向かって焔香を振るう。だが、その刃は……いや、完全に腕を振り切る前に手首を掴まれることで停止した。
そこにいたのは他と同じバーテックス。だが、それは人と同じ姿をしていた。
『私は乙女座の星――ヴァルゴ・バーテックスよ。よろしくね?』
「お前らとよろしくするつもりなんざ……ねぇよ!」
『あらあら、随分と野蛮な人間なのね。ふふふ』
フリーの左手を振るい雷花に雷を纏わせる。だけどヴァルゴは首を逸しただけでその斬撃を避ける。
(こいつ……強い!)
星座と同じ名前を持つだけあってその戦闘力は他の雑魚と桁違いだ。今まで戦ってきた奴らの比じゃない。
「くっ……」
樹海に体ごと押し倒される。それにより見た目通りの大きな膨らみが押し付けられる。
なんだろう……こいつ自体が人と同じ姿なのと美少女ということもあって戦闘中だというのに『そういうこと』のように思えてしまった自分に嫌悪感が湧いてきた。
『あら? あなたには効果がないみたいね』
「……効果だと?」
俺の上に覆い塞がるヴァルゴは妖艶な笑みを浮かべ、俺の身体を触ってくる。
『そう……私の身体からは常に相手を魅了し操るフェロモンが溢れているの。なのにあなたには効いてない。本当に人間?』
「……人間に、決まってんだろ!」
なんとか足を動かしてヴァルゴの腹を蹴り上げる。その浮いた一瞬の間で横に転がる。
『いった〜〜い。女の子を蹴っちゃダメって小さい頃にママに教わらなかったかしら?』
「あいにくとそういうのは教わる必要性ないんでね……それにお前見た目だけで中身は女の子じゃねぇだろ!」
地面を蹴って走る速度を上げる。
「燃やしつくせ……焔香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ヴァルゴの手前に焔香を突き刺しその間から黒い炎を吹き出させる。その黒炎がヴァルゴの身体を中身から焼き尽くしていく。
『なぁ……!? 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ!!』
……そんなに熱いのか?
――あぁ~アレだよ。バーテックスにとって神器の力はダメージが大きいんだ。
そういうものなのか。
『もう許さない!! 人間のくせに!!』
え!? ちょ、身体燃えながらこっち来んな!
「行くよー一目連! 勇者パーーーーンチ!」
突然友奈の声が聞こえてきたと思ったら、俺の後ろから風を纏った友奈が渾身のパンチを繰り出した。ってか、なんだ勇者パンチって?
『無駄よ。私達の身体はそれはそれはとても硬いの。あなたみたいな小娘の拳では傷一つつかないわ!』
燃えてる状態で言われても説得力ないんだが……あと見た目だけならお前も小娘に入るんじゃ……。
「だったらヒビが入るまで殴り続けるまでだよ! 千回!連続!勇者!パーーーーンチ!!」
すげぇ本当に連続パンチしてる。なんか途中から腕が複数あるように見えてきたぞ。本当に千回連続パンチするんじゃね?
『人間の分際でぇ……天の神から器を頂いた私に勝てると思ってんのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
突如ヴァルゴの身体が大きく膨れ上がり全く別の姿となる。なんか縦に長くなって白を主体とした化け物になる。というか……
「ちょっとデカくなりすぎじゃねぇか?」
所々身体にヒビが入っているのを見るに、人間態(面倒だから仮名としてそう名付ける)で受けた傷はそのままなのだろう。
「でも、これで攻撃しやすくなったね!」
「なに脳天気なこと言ってんだよ!」
ただ身体が大きくなって怪物の見た目になっただけとは思えない。おそらくステータスの方とかもかなり上がっているはずだ。
「行くぞバーテックス!!」
その姿はまさに侍を思わせる若葉は、一歩一歩足を樹海から離すたびに速度を上げ俺の真横を通り過ぎていく。お前ら俺の真横通るのハマってんのか!?
『人間如きにぃ……』
友奈の千回連続パンチと若葉による連続斬撃でその身体はボロボロとなったヴァルゴは、やはりまだ諦めてないのか口と思われる場所から火球を生み出す……それお前の技じゃねぇだろ!
『死ねぇぇぇ醜き人間どもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
流石に不味いと思って動こうと思った瞬間、ヒュンと音がしたかと思うと数本の矢がヴァルゴに突き刺さった。
後ろを見れば少し顔を青くした杏がボウガンをヴァルゴに向けていた。
「だから……お前ら本当は俺を殺す気だろ?」
「はわわわ……ご、ごめんなさい!」
「いや、もうなんか疲れたから別にいいけど……」
なんか呆気ない終わり方をしたなヴァルゴ……。最後にボウガンの矢で倒されるって……。まぁ、いいか。
「私達、勝ったの?」
「そう、みたいだな」
「やったぞーー! タマ達の初勝利だぜ!」
嬉しそうだなお前ら。まぁ、その気持ちはわかるが。
「杏ぅ! タマ達は勝ったぞーー!」
「うん! そうだねタマっち先輩!」
球子と杏が抱き合いながらクルクル回ってる。それを見た友奈が千景に抱きついてその場に倒れる。うわ、痛そう……。後頭部がゴンって音がしたぞ。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわ」
まぁ、そうだよな。後頭部から落ちたもんな……
「幸せすぎて死にそうだわ」
「うん、お前が色々と平常運転なのがわかって逆に安心したよ」
全く……ちょっと気が緩みすぎないか?
まぁ、初戦闘ってこともあって色々緊張してたんだと思うし大目に見るか。
友奈も杏も球子も幸せそうな顔しやがって……。もう失うこともなさそうだな、俺は……。
『わりぃな、これも命令なもんでね。その心臓を貰い受ける! 穿て! ゲイ・ボルクゥゥゥ!』
突然背筋がゾクリとした。それと同時に血に染まったような赤い槍が飛んできた。その方向には……。
「……!? 逃げろ、球子、杏!!」
「「!?」」
急いで駆け出したが槍の速度には間に合わず、杏と球子の心臓に朱槍が突き刺さった。二人の口から血が飛び出る。
「あ、あぁ……杏……球子……あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次回……「憎しみの力と蠍座の戦い」