病み期、入ります。   作:セブンアップ

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 まずは食戟のソーマより、薙切アリスです。
 因みに作者は料理の知識はありません。DELISH KITCHEN見て料理作るぐらいしか。


薙切アリスの病み

 俺は〇〇。高校1年生だ。

 通っている学校は、完全な実力主義の遠月茶寮料理學園。その高等部に所属している。

 

 何かあれば退学と言い出すこの学校では、死に物狂いでしがみつく人間も少なくない。無論、俺だって余裕をかまして居られるほどの実力を持った人間じゃない。

 

 ただ、明らかにスペックの高い人間も存在する。神の舌と呼ばれる絶対味覚を持つ薙切(なきり)えりなを始め、秘書の新戸(あらと)緋沙子(ひさこ)、スパイスの権化の葉山(はやま)アキラ、薙切えりなの従姉妹の薙切アリス、そのお付きの黒木場(くろきば)リョウ、イタリアからやって来たタクミ・アルディーニと弟のイサミ・アルディーニ。

 

 そして、今年編入して来た幸平(ゆきひら)創真(そうま)。めちゃくちゃ嫌われている編入生だが、腕は確かなのだ。まぁ嫌う理由も分からなくないけども。

 

 そんなハイスペック料理人に紛れて中の下ぐらいの品しか出せない俺は、何故か懐かれている。

 

「〇〇くん、何作ってるのかしら?」

 

 毛も肌も真っ白、しかし瞳の色は赤。まるでアルビノで産まれたのかと思われてもおかしくない容姿。そしておっぱいが大きい。

 

「復習だよ復習。昨日の授業で出した料理は良い出来じゃなかったし」

 

「なら、私が試食してもよろしくてよ」

 

「遠慮します。試食は俺がする」

 

 薙切えりなもそうなのだが、薙切アリスも清々しいほどの上から目線。まぁ優れた料理人だし、こいつらが言ってる事は間違ってないから良いんだけどさ。

 

「むぅ!なんでよ!」

 

「お前に試食させたら、"代わりに〜"とかなんとか言いそうだし。というか、そもそもお前に食わせるような料理じゃないから。ほら帰った帰った」

 

 アリスとは軽い言い合いをするような関係だ。何故、こいつが俺の隣に居るのかを簡単に説明してやろう。

 

 授業で一緒になった。ペアになった。アリスの腕前を知った。思わず「凄ぇ」と誉めてしまった。調子に乗ったアリスは「当たり前よ。私は遠月の頂点に立つ者なんだから」と言う。思わず「うざ」と言ってしまう。目を付けられる。以降、絡まれる。

 

 アバウトな流れだが、大体分かってくれただろうか。

 

「そういえば、黒木場はどうしたよ。あのバーサーカー」

 

「リョウくんは今日、魚河岸に行ってるわ。ルーティーンみたいなものよ」

 

「なるほど。で、お前は?」

 

「暇だから〇〇くんに構って貰おうかなって」

 

「他所当たれ」

 

 こいつって寂しがりなんだよな。俺も黒木場も居なかったら、とりあえず俺に鬱陶しいほど電話してくる。最近の通話履歴は全部こいつ。イタ電かよ。

 

「〇〇くん暇〜」

 

 こうなるとアリスは面倒だ。構ってちゃんは面倒とは言うが、放置すれば尚の事面倒になる。

 

 仕方ない。

 

「アリス、これ作り終わったらちょっと試食してくれよ」

 

「え?」

 

「代わりに今日はお前に付き合うから」

 

 とか言わないと面倒なんだよな。

 

「言ったわね!言質取ったんだから!今更嫌って言っても遅いんですから!」

 

「俺が言った事だぞ。嫌もクソもあるか」

 

 俺がこいつに付き合うと言った途端、機嫌が良くなる。アリスって本当チョロい。チョロ過ぎて不安になるわ。

 

 料理を作り終え、アリスに試食してもらう。

 案の定、欠点が多数見つかる。しかし、これでメンタルがイカれるとここじゃやっていけない。アリスのアドバイスをメモして、次に繋げるように心掛けた。

 

「試食したんですから、今日は私に付き合いなさい!」

 

「…はいはい。どこにでも行きますよ」

 

 我儘で面倒なお嬢様。しかし嫌いじゃない。だから俺も彼女と一緒に居る事を拒まないのだ。

 

「今日は…」

 

 にしても、休日までアリスと一緒とはな。なんだかんだ長い付き合いになるんだなぁ。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お嬢、今日はご機嫌っすね」

 

「うふふ。実は今日、〇〇くんと一緒に遊んだのよ!」

 

「それは良かったすね」

 

 ベッドに転がり、私は〇〇くんとのツーショットを眺めた。無愛想だけど、しっかりとカメラを意識してポーズをする辺り、素直で可愛い。

 

 彼との出会いは中等部の頃。

 同じ授業になって、ペアを組む事になった。特に指定されていたわけでは無いけれど、リョウくんやえりなと言った、顔見知りの人物は誰一人居なかった。

 

 そこに、彼が。

 

「そこのあんた。相手居ないなら組んでくれよ。俺も探してるんだけどさ」

 

 私を知らないのか、なんて失礼な言い方なのだろうかと思った。これでも私の名は、遠月に知れ渡っている筈なのに。

 

 しかし、丁度私も組む相手が居なかったところ。仕方ないけど、この男しか居ない。

 

「えぇ良いわよ。この私とペアを組む事が出来るのだから、光栄に思う事ね」

 

 彼の名前は知らないが、私を見て物怖じしないところを見ると、それなりの経験はあるようね。どれほどの実力なのか見せてもらおうかしら。

 

 そう思ったのだけれど。

 

「えっ普通…」

 

 技術も知識も普通。突出した何かがあれのかと思いきや、普通に普通だった。遠月を退学になるレベルでは無いけれど、かと言って私やリョウくんを上回るような物は持っていない。

 

 ただ気になる事があるとするなら。

 

「何この機械。お前科学者かなんかなの?」

 

 私が用意する最先端機器に対して、一つ一つ尋ねてくるのだ。本当にこの男はなんなんだろうか。

 

 とはいえ。

 

「お前こんな難しそうな機械使うのな。凄ぇな」

 

 無知だからなのか、私を褒めてくるのだ。

 褒められる事に対して、私は悪くないと思った。リョウくんは私を尊敬しないし、えりなは偉そうにするし。最近私の扱いが酷いと思うのよ。

 

「当たり前よ。私は遠月の頂点に立つ者なんだから」

 

「えっうざ」

 

 …この男、私にウザいって言った。私はその言葉に対して思わず、怒った。

 

「取り消して!私をウザいって言ったの取り消して!」

 

「料理の腕は凄いけどちょっとその物言いはうぜえわ」

 

「また言ったまた言った!私の事またウザいって言った!」

 

 本っ当失礼な男。こんな男に興味を持った私がバカだった。

 さっさと作って合格を貰ってペアを解消しよう。そのためには、仕方ないけれどこの男と協力しなければならない。

 

 当然、合格判定が出る。私が協力しているのだから、当然なのだけれどね。

 私は片付けに取り組んでいると、さっきのペアの男が話しかけてきた。

 

「あんたの腕はやっぱ凄えわ。人間性は要審議だが、あんたと組めて良かった。ありがとな」

 

 …貶すのか褒めるのかどっちなんだろうか。

 

「ふ、ふん!そんな事言っても、私は許しませんからね!」

 

「ツンデレかよ」

 

 彼との始まりは、なんとも奇妙な始まり方だった。

 

 それ以降、彼と話す事が徐々に増えていく。彼がリョウくんとペアを組んだり、また私と同じペアになったり。

 

 ぶっきらぼうで私に失礼な言い方は変わらないが、私の料理を、私の腕を、彼は褒めてくれる。「ウザい」と何度言われたか分からないが、今ではそれが彼の愛情ではないかとも思えてくる。

 

 そう関わっているうちに、いつしか彼の隣に居る事が当たり前になっていた。私の部屋やリョウくんの部屋に誘った事もあるし、今日みたいに遊びに出かける事も多々ある。

 

 料理の腕も知識も普通程度。加えて失礼な物言いにぶっきらぼうな態度。

 けれど、私の腕をずっと褒めてくれる。ぶっきらぼうだからこそ、彼の言葉には嘘偽りが無い。

 

 嘘偽り無い言葉で、彼は私を褒めてくれる。

 

「…ふふふ…」

 

 彼に対するこの気持ちを知らないまま、私は目を閉じて眠りについた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 休み時間。

 私はリョウくんを引き連れて、彼を探しに向かった。

 

「〇〇くんはどこに居るのかしら」

 

「さぁ……ていうかお嬢、連絡先交換してんすよね。それで聞き出せば1発なんじゃ…。って、あ…。居ました」

 

「本当!?どこに居るの?」

 

「あそこ」

 

 リョウくんが指差したのは、とある教室。廊下の窓から彼の姿が見えた。

 

 見えたのだが。

 

「!」

 

 彼が、〇〇くんが私以外の女と仲良くしている。しかもそれが、よりによって秘書子ちゃんだ。

 

「新戸の薬膳料理、めっちゃ美味かったわ。薬を使った料理ってイマイチ美味いのかよく分からんかったけど、使い手の腕が良いとやっぱ良い料理になるんだな」

 

「そ、そんなに褒めるな!」

 

 〇〇くんが秘書子ちゃんを褒めてる。

 なんで?私は?君が褒めるのは私だけで良いんじゃないの?なんで秘書子ちゃんにも褒めてるの?

 

「薬膳料理か…もし良かったら、今度ちょっと教えてくれよ」

 

「ま、まぁ時間が空いていればな」

 

 待ってよ。私、彼から「教えて」なんて言われた事ない。「試食してくれ」とは言われた事があっても、「教えて」なんて言われた事ないわよ。

 

 薬膳料理なら私だって教えれるわよ?だから今すぐ撤回しなさいよ。

 

「お嬢…?」

 

 なんで。なんで彼は秘書子ちゃんを褒めるの?なんで彼は秘書子ちゃんに教えを乞うの?

 秘書子ちゃんじゃなくても良いじゃない。私にだって教える事が出来るわよ。

 

「じゃあ早速で悪いけど、放課後頼めるか?」

 

 待ってよ。放課後は私と一緒に居るのよ。

 

「えりな様のスケジュール管理もある。長くは付き合えないが、それでも良いなら」

 

 待ってよ。

 

「了解。あ、もし無理そうだった時のために連絡先交換しないか?」

 

 待って…。

 

「あぁ、分かった」

 

 ……。

 

「お嬢?どうしたんすか?」

 

 何、これ。

 彼が秘書子ちゃんと一緒に居るという事実だけで、胸の奥が痛くなる。同時に、秘書子ちゃんに対する憎しみが膨れ上がる。

 

「リョウくん。放課後、ちょっと用事が出来ちゃった。今日は先に帰ってて良いわよ」

 

「はぁ…」

 

「それと、今日は私の部屋には絶対入らないでね」

 

「…お嬢、マジでどうしたんすか?」

 

「なんでもないわよ。ただ、すこーし彼に教えなければならない事を思い出したから」

 

 そう。彼に教えなければならない事がある。

 

 私はそのための準備を、1人で取り組み始めた。普段ならば面倒くさがってリョウくんをこき使うのだが、不思議とその準備にやる気に満ち溢れていたので、今回は必要としない。

 

「ふ、ふふ……」

 

 ここまで放課後を楽しみにした事は今まで無かったわ。

 

 そして、放課後。

 

「〇〇くん、ご機嫌よう」

 

「また来たのか……って、何そのスープ」

 

 事前に準備して作っておいた、コンソメスープを持って調理部屋に入った。

 

「〇〇くんにちょっと試食して欲しいのよ」

 

「…この香り、コンソメスープか?」

 

 他の料理でも良かったけれど、これが1番早く作り出す事が出来る品だ。

 

「…お前なんか企んでんのか?アリスにしてはあまりに普通過ぎる」

 

「まぁ!失礼だこと!見た目は確かに平凡だけれど、このコンソメスープにはある秘密が隠しているのよ!」

 

「ふうん……っていうか、薙切じゃなくて良かったのか?従姉妹なんだし」

 

「えりなは"下々の作る料理なんて味見する必要などありません"って言うに決まってるわ!」

 

「的確だな」

 

 えりなの名前を出さないで。貴方の口から、私以外の女を発しないで。私はそう思った。

 

「…分かったよ」

 

 彼は渋々了承し、スプーンを持ってコンソメスープを掬う。掬ったスープを啜り、味を確認する。

 

「…別に普通の……」

 

 すると突然、彼の足がおぼつき始めた。頭を押さえて、立っている事すら儘ならないようだ。

 

「アリス……お前、何を……」

 

 その先の言葉を聞く事が出来ず、彼は眠ってしまった。

 

「…貞塚さん、奇妙な薬を持ってて良かった」

 

 このコンソメスープは一見、ただのコンソメスープだ。

 しかし、中には即効性の睡眠薬が混入されている。嗅覚に鋭い葉山くんなら看破されていたかも知れないだろうが、残念ながら彼は普通の人間。薬が入っている事すら気付けない。

 

「さて、と」

 

 私は薙切家のSPを利用して、私の部屋に運ぶよう命じた。私のベッドにゆっくり運び、用が済んだSPを部屋から追い出した。

 

 私のベッドで、無防備な姿で深い眠りに落ちている。そんな姿が堪らない。

 

 こんな姿を見る事が出来るのは私だけだ。秘書子ちゃんやリョウくんも見る事の出来ない、私だけの彼の寝顔。

 

「…可愛い」

 

 彼の寝顔を見続けていると、鼓動が速くなっていくのが分かる。身体中が徐々に熱くなっていくのが分かる。

 

「熱い…」

 

 私は我慢出来ず、セーターとその中に着ていたシャツを脱ぎ捨てた。加えて、スクールソックスとスカートも。

 私に残っているのは、デリケートゾーンを隠す白い下着だけだ。そのようなあられも無い姿で、寝ている彼を上から覆う。

 

 しかし更に鼓動が速くなり、息が荒くなってしまう。外気に触れて身体が冷たくなる筈なのに、逆に更に熱く感じている。

 

 収まらない。興奮が収まらない。

 私は思わず、彼の唇に自身の唇を優しく当てた。

 

「っ!」

 

 ただそれだけなのに、もっと興奮してしまう。

 彼の唇をもっと触れたい。彼の口内を犯したい。そんな欲に駆られてしまう。

 それだけではない。彼の綺麗な肌を見ると、無性に噛みつきたくなる。吸って、噛んで、味わい尽くしたい。

 

 そうと決まれば。

 

「あむっ…」

 

 彼の首筋にまず、優しく唇を当てる。そこから少し口を開けて吸い付く。吸引される彼の肌を、私はただ舌で味わっていた。

 

 特別な味はしない。けれど、何故か甘い。料理の概念では説明出来ない美味だ。

 

 欲しい。もっと、もっと欲しい。彼の唇や肌だけじゃ満足出来ない。となるなら、私がやる事は一つ。

 

 既成事実とやらを作れば良い。

 

 いくら私が彼にキッスしても、いくら彼の肌に私の痕を残しても、きっと秘書子ちゃんは彼に擦り寄る。秘書子ちゃんだけではなく、私が知らない所で私以外の女を誑かしているのかも知れない。だから不十分だ。

 

 彼女達に見せつけるには、既成事実を作れば良い。彼のDNAを私の身体で受け取れば良い。

 

 彼との子なら、私は喜んで孕んであげる。

 お母様が私を大切にしてくれたように、私もまた、君との子を大切にする自信がある。

 だから私以外の女に意識を向けないで。君には私だけ居れば、それで良いのよ。

 

「…ん…んぅ…」

 

「あらいけない」

 

 徐々に睡眠薬の効果が消え始めている。まだ目覚めそうには無いけれど、何もしないままでは私の計画が台無しだ。

 

 では、目を覚ます前に。

 

「いただきまーす」

 

 君のDNA、頂くわね。

 

 

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