「あさひちゃん、配信お疲れさまー! ゲームはよくわからないけど、強かったねえ! あっ、こういうのつよつよって言うんだよねえ。リスナーさんにこの前教えてもらったんだぁ」
配信を終えて1階に降りると、エプロン姿のチカが私を待っていた。いつもの事だけどさっきの配信もリアタイで視聴していたらしい。
「配信見てたんだったらコメントしなよ。そっちの方がリスナーは喜ぶよ」
「うーん……あんまりコメントしすぎると野良ともさん達に嫌な思いさせちゃわないかな? 自分のコメントは反応してもらえないのにーって」
「そんなの気にしなくてもいいよ。チカがコメントしてもしなくても元々、コメントの9割以上はスルーしてるし。むしろメンバー同士の絡みの方が見たいリスナーがほとんどだから」
「ふーん、よくわかんないけどわかった! これからはちゃんとコメントするね!」
「そうしなー」
あんまりわかってなさそうな感じの返事をするチカ。経験則上、こんな返事でもちゃんと理解してるのは知っているけど。
「にしても珍しいね。いつもなら配信終わったらもうご飯できてるのに今日はまだ準備中って。大学忙しいの?」
キッチンを見ると皮を剥いた玉ねぎをみじん切りしている最中だった。本当に料理を始めてからすぐといった様子だ。
「大学の方はそんなに忙しくないんだけど、サムネ作りについつい夢中になっちゃって……ゴメンね、遅れちゃって」
「別にいいよ。私の生活リズムなんて元々ゴミみたいなもんだし、ちょっとご飯を食べる時間が遅れたって誤差みたいなもんでしょ。てか、チカも配信も始めて滅茶苦茶忙しいんだからわざわざご飯作りに来なくたっていいんじゃない?」
「ヤダ! あさひちゃんにご飯を作るのがわたしの楽しみなの!」
チカが食い気味に私の提案を退ける。ぷぅと頬を膨らませていた。
チカがそうしたいというなら私に止める理由はない。
「そう。大丈夫だと思うけど無理しちゃダメだよ? あと、サムネ作りなんて私に任せなさい。チカは大学もあるんだし、サムネを作る時間なんてもったいないよ。もっと配信しなさい」
「えー……でも、サムネ作るの面白いよ? 最近はサムネ作るのも上手くなってきたし!」
「そう……」
何故か自信満々に答えるチカ。なんであの顔をアップにした立ち絵と無駄にデカくて変なグラデーションの文字のクソサムネでこんなに自信満々なんだろう……?
見てる分には面白いから指摘するつもりはないけどね。あと、サムネはたまに作ってあげようと思う。単純にチカにもっと配信させて早く人気になってもらいたいし、サムネの出来が日によって明らかに違うとそれはそれで面白そうだと思ったからだ。
そうだ、配信といえば……
「チカ、ライバー用のスマホ持ってきてる?」
「一応持ってるよー?」
「よし。せっかくまだ作ってないんだし、今から配信しよう。たまゆらコラボやるぞ」
「えっ、でもパソコンないよ?」
「キャスならスマホだけで配信できるから大丈夫。……いや、別にようtubeでもできない事はないけど、キャスは立ち絵出さなくても許される風潮があるからこっちでやるよ。サムネに使えそうなファンアート探すわ。チカは配信告知しといて」
「んー……? よくわかんないけど緩い感じの配信なんだねえ。あ、配信する時もいって言うんだ。面白いしそのまま使おっと」
◇
「……始まった? 聞こえてるかなー。あっ、コメント動いてる。けだまのみんなー、こんたまー。夏風たまです! もいっ!」
こんたまー!
もいっ!
「ほえー、キャスって本当にスマホだけで配信できるんだねえ。すごいねえ」
反応がおばあちゃんなんよ
いつもの機械音痴
「むぅ、またそうやってバカにする。ふーんだ、どうせわたしは機械よわよわのおばあちゃん系女子ですよーだ」
配信難しいからね仕方ないね
スマホの画面に流れるコメントを見ているたまの横から口を挟む。
「たま早くー、おなかすいたー」
「あっ、ゴメンねゆらちゃん。というわけで今日はゆらちゃんの晩御飯を作りまーす!」
「作ってもらいまーす。あ、こんみゃ。野良ともはさっきぶり。秋宮ゆららでーす。もーい」
もいー
「今日はハンバーグ作ってくれるんだって。たまの手料理だぞ、どうだお前ら羨ましかろ〜」
一人で楽しむな
いいなー
キレそう
私の煽りに乗っかって、コメントの流れが早くなる。
「うわわ、コメントが……多分野良ともさんだよね、これ。いっつも配信見てる時にも思ってるけど、こんな怒らせちゃって大丈夫なの?」
「本気で受けとらなくていいって。ネタみたいなもんだから」
おこってないよ
様式美みたいなものだから気にしないで
たまちゃんは気にしないでいいよ!
俺たちの事は壁だと思ってくれ…
「そうなの? やっぱりネットの事、勉強しないとなあ」
「しなくていいから……たまはそのままでいてほしいなって、私は思うのです。それより早くご飯作ってよー」
「わわ、そうだった! それじゃあ、ゆらちゃんはもうちょっと待っててねえ!」
たまがそう言い残してスマホを置いて、キッチンに向かう。
「それじゃあ、料理できるまでは私とお話しよっか」
たまちゃんにネットの汚い部分は見せてはいけない(使命感)
気軽にオフコラボしてるけど、やっぱり同棲してるの?
「あー、オフコラボね。そもそも今日はコラボ配信する気はなかったんだよね。でも、裏で私だけ楽しむのもアレかなって思ったし、こういうのオタクは好きなんだぞってたまに
好きだぞ
3期生のわからせてくる奴
よく俺たちのこと理解ってるじゃん…
「ほらねえ。たまー、コラボもっとしろってさー」
肉をペチペチと丸めていたたまに声をかける。
「そうなのー? それじゃあ私毎日ご飯作りに行くねえ!」
「やったぜ」
俺たちをダシにつかうな
同棲じゃなくて、通い妻……ってコト!?
ワ……
「まあ、これからも気が向いたらこういう緩い感じのたまゆらコラボをキャスでやるから、みんなたまのアカウントの通知入れといてね」
早く金投げさせろ
通知ボタン2回押したわ
「あー、一応キャスの方はもう収益化できるけど……でも、やっぱりようtubeの方が通ってからにしたいから、もうちょっと待っててね」
むしろ無料で見ていいのかって思うわ
ようtubeで収益を得るには色々と条件がある。収益化の条件は一応、満たしているし、もう申し込みもしているけど、いつ認められるかはわからない。
私は別に活動で金銭が発生しなくても大丈夫だけど、収益化するまでは金銭的に大変な人も沢山いるらしい。リスナーが金を投げたくなる心理は、Vtuberとして活動してきた先達の苦労話を聞いてきたからというのもあるのかもしれない。
……まあ、同期に1人、金銭的に瀕死状態の人がいるし、あながちそういった考えも的外れではないのだが。
そう考えているとキッチンの方からジュージューと肉を焼く音が聞こえてくる。
腹減ってきた
「お、もうちょっとでできそうだね」
「できるよー!」
「だって。みんなも晩御飯用意しといてねえ」
コンビニで弁当買ってきた
もうご飯食べちゃった
その後はリスナーのコメントを拾いながら、たまとご飯を食べた。
大丈夫だとは思っていたけど反応は上々。新規の獲得という意味ではキャス配信はあまり効果的ではないが、コアなファンを作れるし、何より私のリスナーがたまの方に興味を持ってもらうにはこういった地道な活動が大事だ。
たまゆらコラボは基本的にたまのチャンネルでやるようにすれば、たまのチャンネル登録者も増えやすいだろう。最初考えていた炎上商法と比べるとささやかなやり方だし、効果がどの程度あるかわからないけれど、どうせ手探りでやっていくしかない。頑張っていこう。
◇
764:名無しのV ID:gQ3GCAsoB
たまゆらありがてえ…
767:名無しのV ID:AYbvSRW2b
百合を見ながら食べる飯はうまい
770:名無しのV ID:VAH2mZa+Y
食べさせあいっこ良かったよね…イイ…
774:名無しのV ID:olNin3VTE
ゆら「は? 食べさせあいっこ? お前ら強欲すぎじゃない?」
たま「えー、私やりたーい!」
ゆら「ええ…(困惑)まあ、たまがやりたいならやってもいいけどさあ…」
ノリノリなたまちゃんと、嫌々だけどちゃんとやってくれるゆらちゃん
コメントが有能すぎる
775:名無しのV ID:6rQKI4onp
あーんボイス助かった
778:名無しのV ID:e3kRU4Beq
たまゆらの時は2人とも普段の配信とは雰囲気違うよね
たまちゃんはあきみゃ相手だと少し軽口出るし
あきみゃは擦れた感じのキャラ崩れてたまちゃんに甘えきってるし
なんというか、てぇてぇ
780:名無しのV ID:qIA/+s0wK
くそっ…じれってーな、俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!
784:名無しのV ID:CjAJ/B4rg
>>780
…すぞ
788:名無しのV ID:C02r/RGEF
>>780
百合にやらしさはいらない(鋼の意思)
792:名無しのV ID:gUsrQZdjM
元々リア友っぽいよね
この前、たまちゃんがさく姐とコラボしてたけど距離感やっぱり違うし
796:名無しのV ID:4qxOZDZRO
>>792
まあ、そうなんじゃない
たまちゃんが配信とか機材に弱いっぽいから配信者上がりってわけでもなさそうだけど
800:名無しのV ID:tcBDXkzOI
>>792
元々仲いい人連れてきた方が運営方針的にも百合営業的にもやりやすいんだろうな
知らんけど
803:名無しのV ID:Pj2SZm0PV
個人的には早くことゆら見たい
冬城だけまだコラボやってないし(ペヤングは別)
805:名無しのV ID:xpJrAsftR
>>803
コミュ障だからコラボ誘えないって言ってたなw
まあ、まだデビューして一ヵ月も経ってないし気長に待とうや
806:名無しのV ID:CDdv7XAEW
正月はまた箱全体で大きな企画やるだろうし、それまでになんとかなってるといいな