嫌がらせで毒塗ったらなんか勝手に死んじゃった。ことちゃんごめんね
ついででやった、後悔はしていない
ねえええええ!!!
アキミ屋の一幕
「……というわけで今週のアキミ屋は『明星ラナ、ガチャ配信で沼り台パン』、『おこた、雪山で同期全員に裏切られる』『酒カス天使あうあう、配信3時間遅刻』の3本立てでお送りしました~。初めての試みだったけど、お前らどうだった?」
あきみゃがこういうのやるの意外…意外でもないか?
面白かったよー!
切り抜きチャンネルアキミ屋開くか
こういうの配信者側がやってくれるのすごくありがてえ
「うむ、評判は上々だね。よかったよかった。これからも毎週土曜の朝9時はアキミ屋をどうぞよろしくにゃ。あと、今日は夜もスプラ配信やるから見に来てねー。じゃあ、ばいにゃー」
そうして、配信エンディングを少し流した後で配信を切る。
少し前から考えていた、ライバー目線から@Linkのライバー達の紹介をする切り抜き型朝番組の新コーナーとしてアキミ屋を始めてみた。
毎週土曜の朝9時から今週あった事件を切り抜き動画(自作)と本人・関係者のコメントと共にまとめていくニュース番組のような形式だ。
切り抜き動画の手軽さを失う分、取り上げる出来事の一つ一つを濃密にやっていく方針にしたが、これに関しては要検討かもしれない。
これからの同時視聴者や動画再生数の伸び次第では、切り抜き動画をやめる事で編集の手間を減らして1回の配信も1時間目安から30分目安に。その分、毎朝やるといった路線変更も考えている。ただ、そうするとネタの消費量がなあ……
毎日切り抜くような面白いネタなんて出てこないだろうし、その内なんにも取り上げる事がなくなって『今日のにゃんこ』とか言って可愛く媚びるだけのコーナーやる羽目になりそうなんだよね。
うーん、悩み。
「後は、っと」
午後からの予定まで、冬城の配信を見ながら裏で進めているコラボの連絡を返していく。
冬城は最近、ゲームを極めると言って個人配信ではびぺやスプラなどの対人ゲーに精を出している。さく姐も(私も参加予定のものがあったりする)声劇関係のコラボの予定を立ててるみたいだ。
秋宮ゆらら 予定空いてる所に先輩との予定入れといたから
歌ってみたの音源は来週までによろしくね
あと、明日の配信も
夏風たま 了解しましたのだ!
なにより、チカは私がいなくても先輩方とのコラボに精力的に取り組んでいる。元々コミュ強だしそう言う面で不安に思った事はないのだけれど、あまりにもやりがいがない。
界隈を盛り上げていければ最終的に私の目標も達成できるんだけど……
「みんな頑張ってるなあ……」
なんだかなあ、とそう思わずにはいられなかった。
◇
「というわけなんですけど、どうすればいいんでしょうかね」
「いや、秋宮は頑張りすぎやって……」
カラオケルームの一室でそんな事を相談すると、ラナ先輩は真顔でそう言った。解せない。
「今日やってた朝配信だって突然連絡きたからなんやろって思ってたけど……切り抜き配信まで作ってあんな凝った事毎週やろうと思わんし、この後だって帰った後で配信やるんやろ? ってかほぼ毎日配信しといて何言うとんねん」
「個人事業主は無限に働いていいんですよ」
「んなわけないやろ。そんな命がけでやるもんやないって」
配信のほとんどは喋りながらゲームで遊んでるだけだし、そんな大げさなと思うけれど……
まあ、先輩方は3D配信の関係でダンスレッスンとか配信外での活動も多いらしいし、今の私と比較するのもおかしな話か。
「なんというか……私の頑張りがちゃんと成果に繋がってるのか不安になるんですよね。正解がない事をやるのはやっぱり苦手です」
「あー……まあ気持ちはわかるわ。ウチらもVtuber始めた頃は中々成果でーへんかったしなあ」
「先輩方からしたら恵まれた環境なのはわかっているんですけどねー。こんな風にヘラってる所をリスナーや同期の前で見せるのはキャラ的にも個人的にも嫌といいますか……」
「うん、わかるよ。ほんと真面目な子やなあ」
ラナ先輩は呆れながらも優しく笑う。
「1年しか先輩じゃないから偉そうな事は言えへんけどな。Vtuberなんてやりたい事をやりたいようにやってなんぼやろ。そんな不安がる理由は知らへんけど、秋宮はよーやっとるよ」
「ふふっ、なんか適当ですね」
「こんくらい適当に生きてええねん。そうじゃなきゃVtuberなんてやらへんよ」
「……そうですね」
ラナ先輩の言葉を聞いて、昔、チカからも似たような事を言われたなと思った。
やっぱり人は中々変われないものだなあ。
まあ、言われた直後からずっと引きこもってたし変わりようもないか。
「へへっ」
「そんな卑屈に笑わんくてもええやろ……」
「ああ、スイマセン。陰気な面が漏れちゃいました。愚痴聞いてもらってありがとうございます」
「お、おう。あんま役立った気はせーへんけど……これでも先輩やからな。どんどん頼ってや」
ラナ先輩がトンと胸を叩くジェスチャーを見せる。
素晴らしい先輩だあ……
ジッと見つめてると、恥ずかしくなったのかラナ先輩は咳払いをして話を変える。
「コホン。ほら、早く歌ってみたの曲なんにするか決めよ。今日はそのためにカラオケ来たんやから」
「そうですね。私的にはラナ先輩はカッコいい感じの曲歌ってる時が一番好きなんで、そっちに合わせたいです」
「ウチはありがたいけど……秋宮はそれでええんか? もっと綺麗目で落ち着いた感じの曲の方が得意なんちゃうん?」
「別に得意とかないです。どんな曲でもクオリティは変えずに歌えますし……あと、私って大人しい感じのキャラじゃないですか。カッコいい感じの曲歌ったらギャップ萌えが狙えると思うんですよね」
「……?」
「無言で首を傾げないでくださいよ」
前にやった記念歌枠でちょっとだけそういう曲調の歌も歌っちゃったから、あんまりギャップ萌えの点では効果ないかもしれないけどさ……失礼しちゃうな、もう。
「それに、ラナ先輩的にはバチバチにやり合う感じの方が好きでしょ?」
「……なるほどな。そのためにウチの土俵で張り合おうってか。ウチの事よーわかっとるやん」
ラナ先輩が私の言葉を受けてニイっと好戦的な笑みを浮かべる。
うん、これでいい。どうせ出す作品なら私に気を使ったものより、お互いの全力に全力を掛け合わせたものの方がリスナーも喜ぶだろう。
「売られた喧嘩は買わんとな。それじゃあカッコいい曲で試しに何曲かデュエットで歌おか」
気合が入ったラナ先輩の言葉に私は頷く事で答えた。