気が向いたら書いて、公式二次創作みたいな感じで何処かクローズドなとこで公開するかもです。
今年最後の更新です。コロナで予定狂ったのでご褒美回で今年は締めくくりという事でここは一つよろしくです。ではどうぞ。
「どもー」
バイノーラルきちゃ
こんみゃー
挨拶適当で草
初メン限きちゃー
いつもの配信よりも活気のない声で挨拶をすると、私のチャンネルのメンバーシップに登録してくれたリスナーから挨拶が返ってくる。
初メン限は予定していた通り、バイノーラルマイクを使ったASMR配信だ。そのため、耳元で囁いたわけではないが、挨拶も小声で行っている。大声出すとリスナーの方には爆音が流れるらしいからね。これはリスナー思いの最高の配信者。(自画自賛)
そう私が思っていると、スマホからアラームが鳴った。
「あ、ラーメンできたみたい。取ってくるねー」
「あー、もう何やってるのよ……」
こまくないなった
うーん、自由すぎる
さく姐もこれには苦言
おこたのメンバー解除しました
お湯を入れてから時間が経ったカップラーメンを手にマイクの前に戻ってくると、何故かコメント欄が荒れていた。
おかしい。どうしてこんなことに……
「ほら君たち、そんなにカリカリしないでよ。ラーメン持ってきたから一緒に食べよ」
久々の君たちたすかる
おこったかんな
これがメンバーに対する仕打ちか?
「まあまあ。ほら、ふーふーしてあげるね。ふー。ふー」
麺をちゃんと冷ませてえらい
あ~、麺をすする音~!
お耳ふーふーして♡
麺に息を吹きかけてから、耳を模したマイクの近くで麺をすする。
こんな感じでいいのだろうか?
コメントの様子を見ながら、ラーメンを食べていると「さく姐に監視されてるんだねw」とのコメントがあったので、それに対して返事をする。
「あー、そうそう。今、私の後ろでさく姐が見てるよ。はるゆららウィークだからね」
「わたしはいったい何を見せられてるんだ……」
死んだ目のさく姐が見える見える…
はるゆららウィークたすかる
もしかして2人でささやいてくれるの!?
「今日のさく姐は後ろで茶々入れるだけだよ。あ、お水飲むね。ごくごく」
あきみゃの喉が動いてる…
いいねー
たすかる
私の水を飲む際の喉が鳴る音にコメントが反応する。
実際に配信するにあたって、咀嚼音ASMRはそれなりにリサーチしたけど、あまり良さは理解できなかった。
少し前に戯れで、バイノーラルマイクの近くで飲み食いするだけの配信とかやってみようかと思っていた私が言える事ではないのかもしれないけれど、私が理解できないだけで意外と需要はあるのかもしれない。
そんな事を思いながら、カップラーメンを完食した。
「ふひー。食べた食べた。それじゃあ次はこれ。ポテチとコーラ」
くつろぐ気満々で草
こんな夜中にお菓子食べちゃ駄目でしょ!
ささやき……
こいついっつも食ってるな
「飲み食いするだけでいいなんて、楽な配信だなあ。あ、コーラ注ぐね」
メン限をなんだと思ってるんだw
あ、耳元炭酸はいい感じ
おぉ~
しゅわしゅわする
マイクの近くでコップにコーラを注ぐ。こうするとマイクが炭酸の音を拾って、まるで炭酸水の中に耳を入れたかのように聞こえるらしい。
リスナーの様子を見ながら、耳元でポテチをパリパリと音をさせながら食べる。
「パリパリご飯食べた後にパリパリお菓子食べるのってパリパリちょっと背徳感パリパリあるよねパリパリ」
咀嚼音たすかる
「喉乾いちゃった。コーラ飲むね。ごくごくところでゲップASMRってジャンルがあるんだけど……」
アイドルの自覚を持て
そんな事するのはごく一部だけよ
やめて
汚物になるな
「あ、はい。コーラ飲むのはやめとくね」
思ったよりコメントの反発が大きかったので、大人しく従う。
そっか、需要ないのか。美少女のゲップ……本当によくわからないなあ。
「はあ……生ハムメロンも持ってきたから食べるね」
しっかり味わう気満々で草
デブるぞ
デザートまで用意するなw
「女の子にデブるとか言っちゃいけないよー。むしゃむしゃ」
「あまりにも自由過ぎる」
さっきカップラーメンを取ってくるついでに、冷蔵庫から出してきた生ハムメロンを食べていると、後ろにいるさく姐から苦言を呈された。
「まあまあ、そう言わずにさく姐も食べなよ」
「ん、ちょーだい。わたしの咀嚼音は聞かせないけど」
「けちー。有料コンテンツなんだからリスナーさんにサービスしなよー」
「わたし関係ないでしょ。そう言うみゃこそ、ちゃんとサービスしてあげなさいよ」
ちえー
正論パンチw
コラボじゃないからね、しかたないね
さっきから食ってるだけだもんな、この猫…
「ふむ……一理ある。結構長い間くつろいだし、そろそろ君たちをもてなしてあげるか。さく姐、メロンの残り、食べちゃっていいよ」
最初から好き勝手するのは配信の前半のみと決めていたので、さく姐の言葉をキッカケにガチ営業モードに切り替える。
咀嚼音の良さはいまいちよくわからなかったが、囁きASMRの良さは私にだってわかる。身近に人がいる感覚がいいんだよな、あれは。
金を払ってまでこの配信を見てくれている酔狂な彼らには、私の全力の義務媚びを味わってもらおうではないか。
「君たち、いつもありがとね」
急に本気出すな
すっごく、甘い声…
やばいって
こちらこそありがとうやで
今までの小声でひそひそとした話し方から、耳元での囁きオンリーに変える。
イヤホンで配信の音量を確認していたさく姐がびくりと震えているのを横目にしながら、ロールプレイを続ける。
「私、素直じゃないからさ。表ではこんな事、絶対言えないけど……これからも私の事、いっぱい、いーっぱい。かわいがってね?」
かわいいよ、あきみゃ
うんうん
かわいい
あきみゃすき
「……えへへ、恥ずかし。お耳ふさいじゃお」
コメントの反応を見て、恥ずかしがっている演技をしながら耳型のマイクに手を添える。
そうしてゆのみ先輩がやっていたみたいに、耳の穴を塞いだり、手のひらでさすったり。
「ぺ・た・ぺ・た~指の感触、わかる?」
あきみゃにお耳であそばれてる…
タッピングじょうずい
あきみゃのおてて…
わかる…あきみゃがいる…
擬音で囁くのに合わせて、耳をトントンと優しくタップする。
コメント欄がいい感じでノリに乗ってきたので、私は再びマイクの両耳を塞いだ。
「お耳を塞ぎました。君たち、聞こえてる? 聞こえてないよね?」
キコエナーイ
何も聞いてないよ
あきみゃの手のひらの感触…
ぼくたちは何も聞いてないです
マイクを塞いでいても、声が聞こえるのは事前に確認済みだ。
それは聞こえてる人の言葉なんだよねえ、とコメント欄を茶化す事はせずに、私はマイクを塞いだまま自分の胸を押し付けて、少しだけ声量を上げて囁いた。
「すき。だーいすき。ぎゅ~っ」
あー、いけません、これ
あきみゃすし…
ぼくもすき
あー…(昇天)
「……むぅ。やっぱり聞こえてるー……野良とものバカ」
バカたすかる
すんませんwww
ぼくたちはなにもきいていませんでした。
すき…
コメントに反応して拗ねたような演技で囁いた後に、手を離して、胸の中心にマイクが来るように座る位置を変える。
「私の心臓の音、聞こえる? 君たちに騙されたせいで私の心臓はバクバクです」
あきみゃが生きてる…
心音いい…
聞こえてるよ
落ち着くリズムだね
「君たちが悪いんだから。ちゃんと責任もって、私の事見守っててね♡」
私はこの体勢のまま、耳元に顔を近づけて悪戯っぽくそう囁いた。
◇
「……ふいー、義務媚び終わりー」
お か え り
義務媚びw
さっきまでのあきみゃかえして…
も ど し て
30分弱の甘々シチュでのガチASMRを終えた所で、耳元から離れて声量も小声に戻す。
「うぷぷ。面白かったー。君たち、みーんな『あきみゃすき……』とか言っちゃってさー。ちょーっと甘やかされると好きになっちゃうのは良くないと思うよー」
こうやっていつも女をたぶらかしてるんだ…
このっ……!ネコガキめ!
さく姐が悪女って言ってた意味がわかったよ…
あれだけ甘やかされた後で、まったく興味なさそうな態度で煽られると、こう……(性癖が)狂いそう……!(静かなる怒り)
「あ、さく姐、どうだった? バッチリ?」
「いや、十分すぎるくらいバッチリだったけども……あんなに甘々で恥ずかしくないんですか?」
同僚の目の前でアレをやった事実w
さく姐敬語で草
あきみゃの羞恥心どこにあるの?w
途中から私を畏怖するような目で静かに見ていたさく姐に尋ねると、そんな返事が返ってきた。
別に普段のVtuber活動とやってる事自体は変わらないだろうに。変なの。
「恥ずかしいか恥ずかしくないかで言われると恥ずかしいけど……ほら、私って生きてるだけで恥ずかしいしノーカンって事で。Vtuberってそういうとこあるし大丈夫でしょ」
「Vtuberが生き恥はマズいって!?」
「そんな事言ってない、こわ……これが偏向報道か」
「なんも誤解じゃないと思うけど……なんか腑に落ちない」
メン限で助かったw
さく姐悪いなーw
恥ずかしい気持ちを隠して、飄々としてるって考えると、なんかクルものがあるね…!
悪質な切り抜きで草
さく姐は首を傾げつつも、さっきからまったく数の減っていなかった生ハムメロンを頬張るのだった。