この身に宿るリリィとしての才覚が宿る事を知るよりも前から、
信仰とは殉ずるもの。
戦場にて命を散らす覚悟は
しかし、命を賭して戦うことだけが我等の授かった使命に非ずる事は存じておりますわ。
この世界、貴方が御創りになられたこの世界に現れたあの邪知暴虐な
信仰とは心の縁、パンと水だけでは人は生きていけませんのよ。
あの悪魔共の闊歩するこの世界では、昨日まで食卓を囲んでいた家族が、挨拶を交わした友人が、将来を誓いあった恋人達が、共に明日を迎えることができるとは限りません。
人はけして強い生き物ではないのです。
だからこそ、縋るべき神が必要なのです。
その本にはかつての聖人たちが貴方から受け賜った教えが記され、それが迷える人々へと届くように、と我等使徒は日々奔走しております。
教会はその地に住まう人々、宿を持たぬ旅人、戦に疲れた戦士達に憩いと安らぎを与えるのです。
我等聖百合十字の騎士と司祭は、各地の礼拝堂や聖地とされる地を守護し、巡礼者達の護衛や、安置される聖遺物の保全や前線からの移送を司っておりますの。
信仰とは正しく在らねばなりません。
ですが、善良な民と信徒を悪魔共から守るためには手段など選んではいられませんわ。
そう、如何なる手を用いようとも奴等を一匹でも多く駆逐し、民が流す血を一滴でも減らせるのであれば、あらゆる手段が許され肯定されるのです。
マギの力とは、神が人に
CHARMを手に悪魔共と戦う我々は、聖書に記されし天使達にも
なればこそ、我等は神罰の代行者なり。
彼の者等に粛清の刃と裁きの弾丸を降さん。
「あなた達はレギオンのメンバーを勧誘したいの?それとも宗教の勧誘がしたいの?」
「勿論、レギオンの勧誘ですわ!しかし、神の教えを伝え広めることも私達の使命です!軽んじられては困りますわ!」
「あたしは只の付き添いだぞ」
「時と場所を選びなさい!少なくともこんな朝方から、それもこれから新入生達が集まってくる場所に陣取られては迷惑ったらありゃしないわ!」
「ふふふ、私、知っておりますのよ!伝道師に説法をしようとする不遜な行いを、この国では"釈迦に説法"と言いますのね。異教の金言ながら良い響きですわ!」
「馬の耳に念仏ってのは知らないみたいだな」
桜の花びらが宙に踊る4月の上旬、日差しこそ柔らかく暖かいが、標高の高い百合ヶ丘の敷地内での朝方は未だに上着を羽織らなければ身震いする程度には冷え込む。
仕立ての良い石畳は春の闇に冷やされ、素肌で触れればその冷たさに思わず手を引く程だ。
校舎の前、新入生の配属クラス分けが張り出された掲示板の真横で、説法だか宗教の勧誘のようなレギオンメンバーの勧誘を行っていたシスター・アンナマリアは、すっ飛んできた風紀委員に取り押さえられると冷たい石畳の上に正座させられ説教されていた。
入学式初日は散々だった。
朝方の決闘騒ぎに乗じて暴れられたのは、溜まりに溜まったフラストレーションを解放する場としてはこれ以上にない舞台であったが、我がアーセナル殿が迷子になり、その上脱走した実験体のヒュージに襲われるとは思ってもいなかった。
勿論、ヘボメガネの尻を蹴り飛ばして詫びを入れさせておいた。
その後は直接口に出したことは無いが、敬愛してやまぬ上級生殿に久々に顔を合わせられたため、なんだかんだとゆったりと床に着けてご機嫌な朝を迎えたられつもりであったのだが、我がルームメイトのシスター・マリアンナ殿はこの調子である。
夜が更けて、太陽が登り始めたころに叩き起こされてレギオンの勧誘に付き合わされたのは百歩譲って許せる。
だからって、あのような宗教勧誘まがいの街宣を始めるとは思わなんだ。
花摘みに行くふりをして風紀委員にチクってきたのは正解だった。
早朝にも関わらず、10人ほどの人員を連れて補導に駆けつけてくれるのは、流石百合ヶ丘の治安機構と言ったところだろうか。
ちょうど今も、シスターが数人の風紀委員に肩を囲まれて連行されようとする姿が見える。
「くっ、仕方ありませんわ。騎士様!ずらかりますわよ!」
シスターの呼びかけで増援を警戒する風紀委員達だが、当の騎士様は主を守る気は欠片も無いようだ。
昨日の白井先輩の言っていた通り、一度お灸を据えられるべきだと思う。
「一回ぐらい痛い目見てこいよ。後で生徒指導室まで迎えに行ってやるから」
「今、迎えに来てくださいまし〜〜!!」
弦巻にされて担ぎ上げられて行くシスターの恨みがましく助けを求める声が、キンキンと耳に響いた。
百合ヶ丘女学院に入学してからまだ一日も経っていない素人であったのに、いきなりの実戦に自分から巻き込まれ、憧れのリリィと同級の秀才に負けず劣らずの活躍をした経験は、一柳梨璃に無自覚な自信を与えていた。
しかし、基本的に自己評価が低く控えめで清楚な彼女は、その自信の源となっている事件での活躍がどれだけ周囲へ知れ渡っていたのか、それがどれ程自身の今後に影響を及ぼすのかは気にかけてもいなかった。
私立百合ヶ丘女学院、というよりもガーデンで過ごすリリィ達は女性しかいない特異な環境で育った者がそのほとんどだ。昨今の生え抜きのリリィが主流となった時代においては、異性との関係を経験することなく今に至るもの少なくない。
つまるところごっこ遊びという訳で無いにしろ、恋愛という物をする際に年が近く価値観が似る相手となると、必然的に同性の生徒となるのは必然である。
ともすれば、そんな環境に初心な小娘が放り込まれれば、手の速い者の毒牙が迫るのは必然とも言えるのだ。
「あら、ごきげんよう一柳梨璃さん」
人気の少ない化粧室で手を洗っていると、背後から聞き覚えのある声が聞こえる。顔を上げると鏡に見覚えのある顔が映っていた。
桃色がかった銀髪に猫の耳を模した機械を載せたリリィ、確か昨日学院に辿り着いた時に校門前で獣のように戦っていた(梨璃から見るに)狂暴な二人の片割れだ。
「おはようございます。じゃなくて……ご、ごきげんよう。え、え〜と……」
振り返ると、梨璃と違い自信に溢れた、しかし何処か妖艶な色が宿る目が目の前にあった。
いきなり顔を近づけられて思わず怯むと、その勢いのままに洗面台へと腰を押し付けられ、華奢な腰に腕が回される。
「遠藤亜羅椰よ。亜羅椰でいいわ」
「ご、ごきげんよう。亜羅椰さん」
「えぇ、ごきげんよう。……でも、そんなありきたりの挨拶じゃなくて、もっと本質的な挨拶はいかがかしら?」
洗面台によりかかる梨璃へ、亜羅椰が腰を擦り付けるように押し付ける。
背後の洗面台と腰が密着し、捕えるように柔らかく、そして強かに押さえつけられた梨璃はわずかに身を捩ることしか出来ない。
怯んだ梨璃の顎が親指と人差指でクイっと上へ向けさせられると、熱を孕んだ囁きと吐息がかかるほど近くに亜羅椰の顔がある。
「本質的な挨拶……ですか?」
「あら、そんな可愛い顔してるのにイケナイことに興味があるのねぇ。どうかしら、一緒に遊ばない?忘れられない思い出はいかがかしら?」
梨璃は「本質的な挨拶」とやらが何を意味するのか見当もついていないようだが、亜羅椰の表情から察するに邪な事柄であることは容易に想像できた。
生来の気弱さからか強く拒否出来ない梨璃の素振りに、気を良くした亜羅椰の毒牙が迫る。
「盛るなら個室でやってくれねぇか」
怪し気な空気は、隣から聞こえてきた唸るような低い声に掻き消された。小柄な梨璃よりも目線の二つほど小さいが、背丈に見合わない凶暴な眼光が、品良く切り揃えられた前髪から覗いている。
この場の救世主の姿は梨璃が思っているよりも随分と小柄だった。
先日亜羅椰の決闘相手を務めた真榊衣緒里その人だ。
「出たわね。
「便所でいい雰囲気だぁ?ロマンチックな話だなぁ、まるで一昔前の三文ビデオじゃねぇか」
「お下品ねぇ。私のリリィへの愛をそんな下賤ものと一緒にされては困りますわ」
「勉強になるねぇ、
昨日の決闘騒ぎを焼き増し、再び亜羅椰と衣緒里が睨み合う。
亜羅椰がニヤリと口角を上げると、梨璃の腰へ回していた手を強く引いた。腕の中で梨璃がくるりと周り、亜羅椰に後ろから抱かれるような姿勢となった。腰に回していた手は彼女の胸元に伸び、ジャケットの裾から胸元に差し入れた手が双丘を一撫でした。
「ひゃっ!?」
梨璃が思わず悲鳴を上げる。
「あらいい反応。おチビさん、あなたの顔も結構好みなの。どう?三人でするのもなかなか刺激的よ?」
「あたしの顔だぁ?……てめぇ、其処らでやめておけよ」
皮肉交じりな口調が一転、衣緒里の声に唐突な怒気が混じり始めた。
興奮のせいか、呆れで細まっていた瞼が見開かれ血のように赤い瞳の奥から、獣のように裂けた瞳孔が覗いた。
「あらら、地雷でも踏んじゃった?褒めてるつもりだったんだけど……」
「なら黙ってそいつを離してやりな。今ならまだ許してやる。あたしは自分の顔の話をされるのが大嫌いなんだ」
「あらそう、それは非礼だったわねぇ。でも私は梨璃に挨拶がしたいだけよ、本質的なのをね。でも、なぜあなたの許しを得なければならないのかしら」
前門の虎、後門の狼
前方には昨日に夢結達と共に戦ったヒュージよりも恐ろしい眼光を光らせる衣緒里がおり、真後ろには妖艶な手付きで自身の体を撫で回す亜羅椰がいる。
学園で初めて出来た友人達とクラス表を見に行く約束に遅れそう、などと梨璃は現実逃避を始めた。
「ちょっとあなたたち!"私の"梨璃さんから離れなさい!」
梨璃の危機に駆け付けたのは、先日の事件で梨璃と共に"リリィ新聞"の一面を飾った新入生、楓・J・ヌーベルであった。
口調でこそ優雅を装っているが、細められた眼光にはけして静かでない怒りを孕んでいる。
「あら楓さん、またあなたなの?あなたが狙ってるのは、夢結様じゃなかったのかしら。昨日は夢結様で今日は右も左も分からない素人さんにお熱だなんて……とんだ尻軽さんねぇ」
「情・熱・的!と言って下さる!?運命の出会いがありましたの!この私が抗えないほど!劇的な!」
昨日は上級生の白井夢結に
「へぇ、ならもしも梨璃さんが本当の運命のお相手だというのなら……」
梨璃へと互いの呼吸音が分かる程に顔を近づけ、その瞳と見つめ合う。背後から聞こえる甲高い楓の奇声を無視して、頬を人撫ですると梨璃がくすぐったそうに身を捩る。
その反応に満足したのか、猫のような足取りで楓の眼前へとするりと足を運ぶと、妖艶な眼差しと吐息が楓の肌を生暖かく撫でた。
「しっかりと縛り付けて置かないと……食っちまいますわよォ?」
「ご心配なく!私と梨璃さんはそんなに柔な関係じゃ……あれ?梨璃さん!?」
梨璃の姿はいつの間にか消えており、代わりに残っていたのは、洗面台に寄り掛かって怠そうに新聞のような紙面を広げている衣緒里だけであった。
「一柳なら、お前等が仲良ししてる間に出て行ったぞ。校舎側に走って行ったみたいだ。追いかけるならそっちにしときな」
「……お気遣いありがとうございます。すぐに向かわせていただきますわ」
千秋に一言の礼を述べて頭を下げると、楓は足早に化粧室を後にした。
残されたのは血気盛んな二匹の獣、雌豹とハイエナは再び睨み合った。
「さぁて……私達はどうする?今日は理事長代理の粋な計らいのおかげで、終日の間授業や出撃は見合わせよ。俗に言う非番ね。どう私と付き合わない?退屈はさせないわ」
「何が「付き合わない?」だよ!百合ヶ丘ってお嬢様学校じゃなかったのか!?うちのシスターのバカはともかく、風紀も品位もクソも無いやつらばっかりじゃねえか!」
「あら、何を勘違いしているのかしら。破廉恥ねぇ。私はただ、今日という予定も何もない時間を、リリィとしての束の間の休息の時間を一緒に過ごせる相手が欲しかっただけ……そっちの方がお好みなら是非とも大歓迎よ」
「"そっち"は勘弁してくれよ。でも丁度いいや。あたしだってお前に用が無いわけじゃないんだ。」
「へぇ、私に?」
「あぁそうだ。会わせてくれよ。二代目アールヴヘイムに」
「ごきげんよう。霞千秋様」
「ご、ごきげんよう!……えーと、その、どちら様?始めまして、だよね?」
先日の戦闘で酷使された新入生のCHARMを、夜なべで整備し終えた千秋は、眠気で重くなる瞼を擦りながら、クラス分けの掲示を見に行った帰りだった。
その道中、彼女を呼び止めたのは、学院の制服の上に修道女のようなベールを被った長身のリリィであった。
初対面の筈の人間に名前を知られている、というのは千秋の故郷のような田舎では当たり前の光景であったが、それが馴染みのない見知らぬ土地で、それも胡散臭い装いの相手に名前を知られているのは一般的でなくとも恐怖を覚えるものだ。ましてや自身より身の丈の高くから見下されるとより一層である。
「えぇ、始めましてですわね。しかし、リリィ新聞の一面にあなたのお名前がしっかりと書かれておりましたわ。あなたも有名人のお仲間になられたみたいですのよ?」
差し出されたリリィ新聞なるものへ軽く目を通すと、表紙には戦場を共にした一柳梨璃、楓・J・ヌーベル、白井夢結の3人の写真が一面に掲載されている。
ここですわ。と指で刺された紙面の端の方には、何処で撮られたのか、千秋の顔写真が掲載されていた。目線がカメラには向いていないのでおそらくは隠し撮りだろう。
「この記事に偽りが無いのであれば、あなたは戦場の真っ只中でCHARMを分解して組み上げるような凄腕のアーセナルのようですが?」
「……まぁ確かにその記事に書いてあるのは私のことだろうけど。戦場って言っても岩陰に隠れながらコソコソやってただけだよ。でも、別にそんな……ただ、やるべきことをやっただけだよ。凄腕だなんて、別にそんなつもりはないんだけど」
賞賛に馴れてないのか、視線を彷徨わせて頬をポリポリと搔いている。薄く紅味が差した頬と釣り上がった口角からシスターの賞賛で照れていることは丸わかりだ。
「謙遜されることはありませんわ。非戦闘員にも関わらず戦場でのCHARMの整備、それも緻密なコアの換装をやってのけるなんて……そのような勇敢で優秀なアーセナルのお話は私、あまり耳にしたことがございませんわ。……もしかして今回のような緊急時の整備も初めてでは無かったり致しますの?」
「あ、あははは、どうだろうね。……で、謎のシスターさんは私に何か用?」
「あら、自己紹介が済んでおりませんでしたわ。私、アンナマリア・レジーナ・フェラーリと申しますの。あなたのお話は騎士様より常々伺っておりますわ」
「アンナ?マリア?……フェラーリさんね。よろしく。ところで騎士様……?私の知り合いには、騎士様なんて呼ばれるような人いないんだけど……」
「シスター、と呼んでいただいて構いませんわ。騎士様も私をそう呼んでおります。しかし……むむむ?おかしいですわねぇ、騎士様はCHARMや戦術論の話になると、あなたのお名前を出さないことはありませんのに……」
その時、アンナマリアの背後から千秋を呼ぶ声が聞こえた。
「ごきげんよう千秋さん!」
「おは、じゃなかった。ごきげんよう梨璃ちゃん!……と楓さん……」
「ごきげんよう千秋さん。……なんですかその目は」
その手に持った新聞に描かれているリリィの梨璃と楓が、見知った顔の千秋を見かけたので走り寄ってきたようだ。……どこか千秋の楓への態度に一歩引くものがあるようだ。
「あら〜〜♡ごきげんよう一柳梨璃さん!私、あなたとも是非お話したかったのですわ。このあとお時間ありますこと?質のいいお豆が御座いましてよ!」
「ぴぃっ!ど、どうも……」
梨璃の声に引かれて振り返ったアンナマリアが、我先にと猫撫声で絡み始めた。先日自身の真横でいきなり発砲した非常識極まりないリリィが、千秋と一緒にいることに思わず面食らった。
先日の一件のせいか、アンナマリアへと苦手意識を持っているようだ。取って付けたような猫撫声で話しかけられても、恐怖と不信感しか彼女には抱けなかった。
「……梨璃ちゃんが凄く怯えてるみたいだけど、何かあったの?」
「むむむ?心当たりがありませんわねぇ……」
頭を捻って思案顔をしているアンナマリアには質が悪いことに自身の悪行への自覚が無いようだ。
呆れ顔の楓が口を開く。
「そちらの方、昨日の朝の決闘騒ぎの際に、梨璃さんの隣でいきなりCHARMの弾丸を撃ちましたのよ」
「えぇ!?シスターさん、CHARMまで持ち出しての喧嘩なんてしたの!?」
「いいえ!喧嘩、などと幼稚なものではございません!レギオンの勧誘活動ですわ。それに楓さん、あなたも夢結様へとCHARMを向けていたでしょう?お互い様ですわ」
「喧嘩の相手って夢結ちゃんだったの!?ていうか楓ちゃんまで!?あの人ってとっても強いんじゃなかったっけ!?」
「結局、夢結様とはCHARMを交わすことは出来ませんでしたわ。えぇ、しかし、だからこそですわ。百合ヶ丘にて最強とも呼されるリリィならば、是非ともその力を共に振るって頂きたいと考えるのは当然ではなくて?楓さん、あなたがシュッツエンゲルの誓いを申し込もうとしたのもそれが理由なのでしょう?」
「過ぎたことですわ。わざわざ蒸し返すだなんて品が無くてよ。それに……」
梨璃の背後に回った楓が、彼女の背後から両手を回して抱きしめた。突然の級友の行動に恥ずしさを覚えたのか、梨璃の顔が朱に染まる。
「私には夢結様以上の新しく素敵な出会いがありましたもの」
「か、楓さん……」
「あら、いつの間にかお熱い仲ですこと。ところで楓さん、あなたもいかがですか?昨日の決闘の場で少し申し上げましたように私、あなたのこともレギオンにお誘いしたいのですが……」
「結構ですわ。あなたとお付き合いしていると梨璃さんにも悪影響が出そうですので」
楓がアンナマリアを拒絶するようにぴしゃりと言い放った。台詞の節には棘を感じる。
「まぁ、それは残念ですわ。それではごきげんよう。また授業でお会いしましょうね。その時は是非ともそちらに隠れていらっしゃる二川二水さんも」
先日とは違い、あっさりとベールを翻した。この女、どうやらCHARMを握って血が滾ってさえいなければ、聞き分けが悪い訳では無いようだ。
ベールのなびく後ろ姿を見送ると、楓の影から明るい茶髪を三つ編みに結った小柄な少女が姿を現した。
「噂に違わぬ傍若無人っぷりですね。流石は
「知ってるの二水ちゃん?」
「えぇ、欧州の宗教色が特に強いガーデン、【教立聖百合十字】出身の生え抜きのリリィです。欧州では屈指の狙撃スコアの保持者で、
「よ、よろしくね。詳しいんだね、二水ちゃん。リリィオタクってやつ?」
「はい!僭越ながらリリィオタクの末席を汚している手前であります!」
果たしてそれは誇るように言うべき事なのだろうか。という疑問は千秋の唾と共に飲み込まれた。
「二水さん?その、お待ちになって」
「はい。なんですか楓さん?」
楓が会話の中に違和感を覚えたようだ。
「その、今、千秋さんを千秋様って呼びませんでした?」
「え?千秋様は二年次への編入生なんですよ。百合ヶ丘って上級生を様付けで呼ぶ校風なんだから当たり前じゃないですか」
「え、千秋さんって二年生の方だったんですか!?え、そんな昨日から……その、失礼いたしました!」
「いいよいいよ梨璃ちゃん。まったく気にしてないからさ。それにしてもそうかぁ……千秋様かぁ。なんか柄じゃないし、慣れるのに時間かかりそうだなぁ……」
この二人、共に一般校からの入学・編入してきた身分の筈だが、百合ヶ丘の生徒としての意識には既に大きな差を感じる。
ぎぎぎ、とでも音が鳴りそうにぎこちなく楓が千秋へと振り向いた。
「上級生だなんて、そんなこと一度もおっしゃっていなかったじゃ、あ、ありませんか」
「え、でも、私一年生だなんて一言も言ってないし、なんなら入学式にもいなかったよね」
昨日のヒュージ脱走の一件により、予定より大幅に遅れて行われていた入学式を思い出す。
確かに楓が記憶している限り、普通科はもとより、工廠科の生徒の列にも、あのだらしない黒髪の短髪の生徒の姿はなかった気がする。
「……昨日も少しお話されてはいましたが、あの真島百由様に見初められて百合ヶ丘に来たというのは本当ですの?」
「もちろん本当だよ!」
「となると、お父様がおっしゃっていたアーセナルというのは、もしかしなくてもあなたじゃありませんの?」
「えぇ?それは……私にはちょっとわからないかな……」
「なんじゃお主ら。面白そうなことを話しておるのう」
独特な古風な口調に二水が振り返ると、薄水色の溢れるような毛量の頭髪を頭の両脇のリボンで結んだ小柄な少女が立っていた。
フードのついた制服からするに工廠科の生徒だろう。
「ミリアム・ヒルデガルド・
「二水ちゃんのお友達?」
「いえ、ですが工廠科の生徒でありながらリリィでもある、言わば戦うアーセナルな方です!」
「なんじゃ、わしの事をもう知っておるのか。有名人はつらいのう。……ところで」
ミリアムが楓と千秋の間に下げた髪を大きく揺らしながら体を滑り込ませた。
「ごきげんよう、千秋様。自己紹介はもう不要じゃな。いきなりですまんが、お願いがあるのじゃ」
「私にお願い、というと?」
「是非とも見せてもらたいのじゃよ。昨日、夢結様が振るったというCHARMをな」
イベント準備回
・衣緒里
シスターを見捨てて亜羅椰経由でアールヴヘイムへの接触を目論む。
・シスター
クラス分けの張り出し1時間前から勧誘を始めていた模様。
ガチ説教の末解放された。
ちょっとは自重を覚えよう。
【教立聖百合十字】という宗教色の強いガーデンの出身
かっこいい二つ名とかもあるよ!
・亜羅椰
このおチビちゃんの顔、意外とタイプかも///
とか思ってる。
多分、亜羅椰さんは可愛くて強い子とか大好きだと思うんだ。
梨璃にちょっかい出してるもそれが理由だと思うの。
・千秋
別に新一年生だとか言った覚えは一度も無い。
なお、上級生らしい落ち着きとか威厳は皆無
・梨璃
冷静に考えて出会って5秒で即本質的な挨拶ってヤバくないとか、失礼なことは多分考えていない。
そんなことよりも、シスターに目を付けられていることの方が怖かったりする。
・楓さん
もしや、↑×2の人こそがお父様が注目されているアーセナル・・・?
・二川二水
リリィオタク
海外からの留学生だろうと彼女の情報収集の網からは逃げられなかった。