Fate/loneliness 2.5 -a survival plan- 作:からすまそういち
この小説は那須きのこ原作「Fate/stay night」シリーズ及びその派生作品「Fate/Grand order」
の二次創作です。
この作品を読む前に、前作「Fate/loneliness -little summoners-」「Fate/loneliness 2 -survival plans-」を読むことをお勧めします。
注意:執筆者はFateシリーズにわかです。原作の設定世界観及び雰囲気を壊す可能性があり、尚且つこの作品は作者にとって都合のいい概念、所謂メアリー・スーが登場しました。なんでも許せる方のみの閲覧を推奨します。(尚この物語は2019年に構想された話です)
原案 からすまそういち
執筆 からすまそういち
編集 御今士郎
プロローグ 一週目
ぐるん、と。
渡島の顔がこちらに向いた。
「わたし――きれい?」
「アーチャー、討て!」
「はい!」
アーチャーはすぐさま矢で渡島の体を射った。矢は確実に渡島の腹を捉える。しかし、
渡島の体が射られたところから上下二つに分裂した。
渡島は上半身だけになって、腕の力だけでこちらに這い回ってくる。
「――アーチャー。アレを、射れるか?」
「ええ、勿論。それがお望みであるならば」
アーチャーが答え、弓を一本射った。
それが渡島の額を貫いた。
「よし!」
「赤いちゃんちゃんこ、着せましょかぁあ?」
確実に額を撃ち抜いた。しかし、それでも、
渡島は体を動かすのをやめない――
「なっ! なに――!」
渡島が私の右腕を捕まえる。
「これ、要らないって言ったよね――」
「こ、こいつ――」
「じゃあ、ちょうだい」
渡島は私の腕を――引き抜いた。
一日目
私、シャルル・レ・モーガンはしがない高校教師である。
間宮詩の残した聖杯戦争の記録により記憶を取り戻した私は、今度開催される聖杯戦争世界大会決勝に参加することになった。
世界大会決勝の開催地は名も知れぬ無人島だった。
季節は夏。私とアーチャーは台風によって便が一日ずれたために出発が遅れ、飛行機の後は近くの港から船に乗って無人島に着いた。
参加者の中で一番遅かった。そこで私は六人の男女と出会う。
一人。
眼鏡をかけたやせぎすで背の高い男だった。
二人。
やせぎすの彼の後ろで空を仰ぎながらぶつぶつと独り言を呟く奇怪な老。
三人。
前髪で目の辺りが隠れた黒い長髪の女性で、か細い声や纏う雰囲気からはとても陰気な印象を受けた。
四人。
仏頂面で人づきあいが悪そうな雰囲気を放っている男。
五人。
修道女の衣服を身に纏い、優しそうな微笑みを浮かべる老婆。
六人。
立っているだけで絵になるような、凛とした雰囲気の青年。
彼らは昨日から島に到着しており、わざわざ港まで来て私を待ってくれていたようだ。
私は一言謝ると彼らにホテルまで案内してもらった。ルールの説明があるらしい。
ホテルのロビーに入った私達は、どこからか響くアナウンスを聞くことになった。
「皆様初めまして。
この度、聖杯戦争決勝戦の監督役を務めさせて頂きます間宮詩と申します。
無事、参加者が揃いましたので、今回の決勝戦のルールを御説明致します。
質問や再度の説明は受け付けておりませんので、よくご了承の上、しっかりとお聞きください」
そう言って彼はルールを説明し始めた。機械的な説明に私は驚く。自分が知っている間宮詩とは違っていたからだ。
参加者は各々真剣な面持ちで説明を聞いていた。彼らは私と違ってそれぞれ予選を勝ち抜いてきている。勝敗に対しての気の入れようが違った。
間宮詩は続ける。
「言い忘れていましたが、各戦闘での勝利条件は、対戦相手の生命活動を停止させることです。さらに、失格された方はその場で処分されますので、くれぐれもそのようなことがないようにお願いいたします」
空気が凍りついた。
「……は? 今、なんと言った?」
「せ、生命活動を停止させる……そう言いませんでした?」
「勝ちたければ殺せということか」
「物騒な話ですね、冗談……ではありませんか?」
「冗談にしては度が過ぎている。おそらく、本当だろう」
「……」
私は、ただただ黙っていた。
聖杯戦争が何たるかを知っている。
故に、これが正常であることを知っている。
「皆さん、落ち着いてください。
聖杯戦争が何かは知っているでしょう。本来スポーツである筈の聖杯戦争が、こんな異常な殺し合いになるとは考えられません。おそらく、聖杯戦争の管理委員会が行ったものではありません。これは、個人またはある思想でまとまった団体が起こしたテロ行為だと考えるのが自然です」
「何の意図があるのかは分からないが……俺もそうだと思う。決勝戦でいきなりこんなことになる筈がない。この開催地も去年までとは違ったものだ。この島に呼ばれた時点で俺達は巻き込まれていたのだろう」
「しかし、テロというには理由が分からない。俺達に殺し合わせて何になる?」
「そうですね……。私達にはお互いを殺す動機なんてありません」
全員が戦闘に消極的であることを確認して私は胸を撫で下ろした。よかった。やはりここに集まっているのは皆話が分かりそうだ。
「ばかばかしい。俺はこんなのには付き合ってはいられないな」
やせぎすの男が、自身の令呪端末を振り被って思い切り床に叩きつけた。
叩きつけられた端末は鈍い音と共にバウンドしこちらに滑ってくる。
その画面は酷く割れ、令呪が表示されているか判然とせず、やがて塵のように消えた。
その後、老紳士を指差して話し始める。
「俺の名前はカカ・コーニャ。そこの老人が俺のサーヴァント。キャスター、エウクレイデスだ。俺は命を賭ける気はない。お前らもそうではないだろう。なら、お前らもさっさとこんなもの捨ててしまえ」
「でも、それがないと部屋にも入れないんですよ……? それに、部屋の中にいないと狙われるかもしれないじゃないですか」
「俺はこのロビーで過ごす。参加資格を無くしたマスターなど殺す価値もない。こいつも戦闘には一切役に立たないキャスターだ。ここまで来たのも偶然でしかない。誰も狙う利がない。逆に、今ここで端末を放棄しない奴らの方がおかしいと俺は思うがな。何故なら、こんなものを持ち続けるということは、するつもりが少しでもあるということだろう? ――殺し合いを」
「……」
「ふん、怯えるが故に手放せなくなるが、それは逆に開催者の思惑の中というものだ。そうやってフラフラとしていると呑まれるぞ」
「悪いが、俺は令呪端末を手放さない。殺し合いなんてするつもりは毛頭ないが、だからといって初手で防御手段を失うわけにはいかない」
「コーニャ、君は思い切りが良すぎる。君の言っていることは正しいが、誰しもが他人を疑わずには生きられない」
「まあ、お前たちはそうやって怯えているがいい。俺にはもう関係ない話だ。だが、これは訊かせてもらう。お前達、そもそも令呪端末を所持しているのか?」
「――え?」
「どういうことですか?」
「令呪端末の譲渡にはマスターの承認が必要だ。しかし、みすみす端末を渡すマスターはいない。つまり、令呪端末を持った者こそがマスターということだ。お前達の令呪端末を見せてみろ。もしかすると、既に俺達を謀ろうとしてサーヴァントを紛れ込ませている輩がいるかもしれないしな。端末を見せるだけならできるだろう?」
「……そういうことなら、まあ」
長髪が端末を差し出すように見せた。それに合わせ、エウクレイデスとアーチャー以外の全員が端末を取り出した。
「誰も騙そうなんてしてませんよ」
私は言った。
「どうだかな。サーヴァントを見せないように部屋に待機させて自分だけここにいる時点で怪しいが」
「じゃあ私とカカさん以外の方は自室にサーヴァントを待機させているということですか?」
私の問いに皆が頷いた。
「単純に、俺達はトーナメントだと思っていたからな……。できるだけサーヴァントの情報は伏せておく。余計に開示できない状況になったしな」
「なるほど……。言われてみればそうですね」
困った。この聖杯戦争で倒すべきはメアリー・スーだ。彼らではない。
だから彼らとも連携を取りたいが、この状況、それどころではなさそうだ。
「じゃあ、せめて。名前を教えては頂けませんか? お互いを呼びにくいでしょう。私の名前はシャルル・レ・モーガン。こいつは私のアーチャー。真名は出せませんが、アーチャーです」
アーチャーも紹介しながら私は名前を述べた。アーチャーも「ただのアーチャーとお呼びください」と頷いている。
「渡島切華、と言います……」
手を上げて長髪の女性が言った。
「ケンネル」
仏頂面の男。
「アグネスとお呼びください」
老婆。
「カトル・コレサドルだ」
青年。
「皆さん、ありがとうございます。これからどうなるかは分かりませんが、一緒に頑張っていきましょう」
私はそう締めくくるが、反応を見せる者は少なかった。
空気が重い。
そりゃそうだ。私達は殺し合えと言われているのだから。
皆、相手が敵に見えているに違いない。
「えーっと、一旦外の空気を吸いませんか? ここで睨み合ってもどうにもならないでしょう」
空気に耐えられなくなり、私がそう提案した。
皆もここで押し黙っているよりかはいいと考えたのか渋々同意して、外に出る。
ホテルの外はすぐにビーチに繋がっている。気分転換にはいいかもしれない。
(さて、これからどうしたものか。とりあえず、バラバラな現状を打開しなければならない。皆にこれは殺し合いじゃなくて協力するものなんだと、どう言えば伝わるだろうか……)
この聖杯戦争で、自分だけが真実を知っている。だから、行動を起こさねばならないことは分かっていた。でも、それが何かがはっきりと見えてこない。
「あの、すみません……」
呼ばれた方に目を向ける。
渡島さんだ。私に何の用だろう。
「なんですか?」
私が問いかけると、渡島は私の右手をとってその上に貝殻を乗せた。
「これ……いりますか?」
上目遣いで問いかける彼女に、私は戸惑いながらも「けっこうです」と答えた。すると、彼女は残念そうに頷き、アーチャーにも同じようにして問いかけた。
「いえ、私も遠慮しておきます」
アーチャーも断ると、彼女はさらに残念そうに項垂れて、貝殻を手に持ってふらふらと去っていく。
「マスター。貰ってあげた方がよかったのでしょうか……」
アーチャーが心配そうにしている。私も少し罪悪感があった。
しかし、ビーチで思い思いに羽を伸ばす彼らを見て、私は安堵した。
良かった。彼らだって本当は相手を疑いたくない筈だ。
今日は一旦休憩して、明日からまた少しづつコミュニケーションを取っていけば仲良くなるかもしれない。
私はそう考えていた。
それがどれだけ大変なことか、知らぬままに。