Fate/loneliness 2.5 -a survival plan- 作:からすまそういち
三日目
ケンネルとカトル・コレサドルの死体を発見したのは、昼過ぎになってからだった。
朝。カトルからの連絡はなく、島中をアーチャーと共に探したところ、ホテルから数キロ離れた森の中でケンネルの死体を発見した。
そこからさらに数キロ離れた海岸でカトルの死体も発見した。
皆に見せるべきか少し悩んだけれど、彼らの反応も見ておきたいと考えたので、私達はそれらの死体をホテル前まで運んできた。
「『カトル』『死んでるやん』」
死体に指差して呟くユーたん。
「ええと、その前に、貴女は誰ですか? 私はアグネスと申します」
アグネスは戸惑いながらもユーたんに問いかけた。まだ対面していなかったらしい。
「『ふっふっふ』『儂の名は』『超電波アイドル乙女歌姫ユークリッドたん』『だッ‼』」
決めポーズを取って名乗るユーたん。気に入ったのか、それ。
「まあ、ユークリッドさんですか。宜しくお願いします」
気に留めず握手を求めるアグネス。メンタルがすごい……。
ユーたんは握手に応じながら首をぐるんぐるん横に回転させる。
「あれ、そういえばユーたん。貴女、そんな服でしたっけ?」
そこで私はユーたんの異変に気が付いた。
昨日とは服が違う。昨日は簡素な服だったのだけれど今日はなんか、服の端々にレース状のフリフリが付いていて可愛くなっていた。
「『おお!』『分かったか!』『服を新調したのだ!』」
ぐりんと顔をこっちに向けて嬉しそうに彼女(?)は言った。
あっ、これは言わなくてよかったかも。
瞬間的にそう思った。
「『実は他にも』『色々いじってるんだぞ!』『この顔とか!』『見て見て!』『顎のライン』『シャープでしょ⁉』『眼にも』『ハイライト入れて』『モデリング』『チョー頑張った‼』」
自身の体のあちこちを指差しながら主張してくるユーたん。う、うざい……。
「あ、あの……そろそろ亡くなった方の話をした方がいいのでは、ないでしょうか……」
渡島が申し訳なさそうに手を上げた。
「シャルルさん。お二人はどこで亡くなられていたんですか?」
「ケンネルさんは森の中で。カトルさんはさらに向こうの海岸で亡くなっていました」
「『さて、』『推理の時間じゃ』」
人差し指を立て、ユーたんは言う。
「『まず、二人の』『死に方が違う』『ケンネルはカカと同じ』『カトルはあっさり』『犯人は別人の可能性』『高いよね』」
「場所も違うし、それは確かなんだと思います」
「『現場の様子は?』」
「ケンネルさんはかなり抵抗したと思います。辺りが荒れに荒れていました。それに比べてカトルさんは意表でも突かれたんですかね。抵抗した痕はありませんでした」
「『ふむ、』『じゃあシャルル』『お前が犯人ではないと』『言い切れるかの?』」
「えっ?」
「『わざわざ死体を』『持ってきた』『何故?』『証拠隠滅の可能性』『ある』」
「……」
失念していた。
そうだ、彼らにとっては私が犯人である可能性も十分にあるんだった。
情報共有のためと急いで死体を持ってきた。わざわざ全員を現場に連れて行くのは時間がかかるからだ。しかし、それは私が犯人であるという疑惑を持たせやすい――
「『カトルは』『不意を突かれて』『死んでる』『ならば、』『彼と同盟を結んだ』『お前が一番』『怪しい』」
ユーたんは私を指差した。
「確かに。でもそれは貴女も一緒ですよね? ――ユークリッド。貴女もまた、カトルから不意を突けたのでは?」
私はそう返す。
私が犯人である可能性は客観的に見れば高い。だがそれは、ユーたんにおいても同じ筈だ。
私が答えると、ユーたんは両手をばんばんと叩いて笑った。
「『はっはっは‼』『その通り!』『中々賢いなお前!』『分かった分かった!』『お前を信じる!』『カトルは言ってた』『犯人は外部に』『いる!』」
「あら、そうなんですか?」
アグネスは訊き返した。
「『うん!』『犯人は二人』『そのうちの一人は』『外にいる』」
「では、こうしましょう。今日は皆さん絶対に夜時間に外に出ないでください。私が夜時間に外に出て犯人が誰か確認します」
もうこうするしかない。
協力するはずだったカトルももう死んでしまった。
これ以上被害を出さないためには、私自身が外に出る必要がある。
最初からそうするべきだったんだ。
「『お前、死ぬぞ』」
ユーたんはそう言った。
「でも、こうするしかありません。現在の筆頭容疑者は私でしょう。だから、あえて私が外に残ります」
「『やめとけやめとけ』『それ死亡フラグ』」
「いえ、私なら大丈夫です。やってみせます」
本当に大丈夫かは敵と対峙してみなければ分からない。
でも、私は実際の聖杯戦争を戦ってきている。
そう簡単に死ぬわけにはいかない。
これ以上、被害を出すことの方が問題だ。
皆を言いくるめ、三日目は私が外に出ることになった。夜時間になるまでの間際、自室に戻る皆を見届けて、私とアーチャーはホテルの屋上に上る。
屋上に着いた頃には夜時間になっていた。
屋上で夜風を浴びながら、私とアーチャーは島に動きがないか待つ。
「! マスター」
アーチャーが何かを見つけたようだ。彼は何処かを指差している。
「どうした!」
「渡島切華さんが外に!」
「っ! あれほど外に出るなと言ったのに! 降りるぞ!」
「はい!」
屋上から飛び降り、ショートカットする。
アーチャーに抱き抱えられながら着地した。そしてすぐさま渡島の方へ向かう。
「渡島さん! もう夜時間ですよ! どうして外に――」
声をかけたところで、
ぐるん、と。
渡島の顔がこちらに向いた。
「わたし――きれい?」
(マズい。こいつは――渡島切華じゃない!)
「アーチャー、討て!」
「はい!」
アーチャーはすぐさま矢で渡島の体を射った。矢は確実に渡島の腹を捉える。しかし、
渡島の体が射られたところから上下二つに分裂した。
「なっ」
てけてけてけてけてけてけてけ――
渡島は上半身だけになって、腕の力だけでこちらに這い回ってきた。
「――アーチャー。アレを、射れるか?」
私はアーチャーに問いかける。
アーチャーは頷いた。
「ええ、勿論。それがお望みであるならば」
アーチャーが答え、弓を一本射った。
――それは最強の一矢。
必ず急所に命中する必中の一撃。
それが渡島の額を貫いた。
「よし!」
「赤いちゃんちゃんこ、着せましょかぁあ?」
確実に額を撃ち抜いた。しかし、それでも、
渡島は体を動かすのをやめない――
「なっ! なに――!」
渡島が私の右腕を捕まえる。
「これ、要らないって言ったよね――」
「こ、こいつ――」
「じゃあ、ちょうだい」
渡島は私の腕を――引き抜いた。