Fate/loneliness 2.5 -a survival plan-   作:からすまそういち

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第4話

 

 

 一日目

 

 

 私、シャルル・レ・モーガンはしがない高校教師である。

 間宮詩の残した聖杯戦争の記録により記憶を取り戻した私は、今度開催される聖杯戦争世界大会決勝に参加することになった。

 季節は夏。私とアーチャーは台風によって便が一日ずれたために出発が遅れ、飛行機の後は近くの港から船に乗って無人島に着いた。

 参加者の中で一番遅かった。そこで私は六人の男女と出会う。

 一人。

 眼鏡をかけたやせぎすで背の高い男だった。

 カカ・コーニャ。

 二人。

 やせぎすの彼の後ろで空を仰ぎながらぶつぶつと独り言を呟く奇怪な老人。

 エウクレイデス。

 三人。

 前髪で目の辺りが隠れた黒い長髪の女性で、か細い声や纏う雰囲気からはとても陰気な印象を受けた。

 渡島切華。

 四人。

 仏頂面で人づきあいが悪そうな雰囲気を放っている男。

 ケンネル。

 五人。

 修道女の衣服を身に纏い、優しそうな微笑みを浮かべる老婆。

 アグネス。

 六人。

 立っているだけで絵になるような、凛とした雰囲気の青年。

 カトル・コレサドル。

 彼らは昨日から島に到着しており、わざわざ港まで来て私を待ってくれていたようだ。

 私は一言謝ると彼らにホテルまで案内してもらった。ルールの説明があるらしい。

 ホテルのロビーに入った私達は、どこからか響くアナウンスを聞くことになった。

 アナウンスの声は間宮詩だった。

 そして、彼はルールを説明し始めた。機械的な説明に私は驚く。自分が知っている間宮詩とは違っていたからだ。

 参加者は各々真剣な面持ちで説明を聞いていた。彼らは私と違ってそれぞれ予選を勝ち抜いてきている。勝敗に対しての気の入れようが違った。

 しかし、次に間宮が言った一言によって場の空気が凍る。

 私はそれを黙って見ていた。

 聖杯戦争が何たるかを知っている。

 故に、これが正常であることを知っている。

 その後の皆の反応を見て、全員が戦闘に消極的であることを確認し私は胸を撫で下ろした。よかった。やはりここに集まっているのは皆話が分かりそうだ。

「ばかばかしい。俺はこんなのには付き合ってはいられないな」

 カカが自身の令呪端末を握った手を振り被った。

「カカさん、令呪端末を壊すのだけはやめましょう」

 私はカカに向かい、令呪端末を待つ手を握った。

「……なんだ?」

「令呪端末は大切なものです。壊すのはやめてください」

「どうして俺がこれを投げると分かった?」

「……いえ、なんとなくそんな気がしただけです」

「そうか。だがこれをどうするかは俺の自由だ。手を放せ」

「壊さないと約束してくれるなら」

「……ふん。分かった」

 カカは令呪端末をズボンのポケットにしまう。それに合わせて私も手を離した。

 その後、彼はエウクレイデスを指差して話し始める。

「俺の名前はカカ・コーニャ。そこの老人が俺のサーヴァント。キャスター、エウクレイデスだ。俺は命を賭ける気はない。お前らもそうではないだろう。だからこんなものは捨てるべきだ」

「でも、それがないと部屋にも入れないんですよ……? それに、部屋の中にいないと狙われるかもしれないじゃないですか」

「ロビーで過ごせばいいだけだ。参加資格を無くしたマスターなど殺す価値もない。逆に、今ここで端末を放棄しない奴らの方がおかしいと俺は思うがな。何故なら、こんなものを持ち続けるということは、するつもりが少しでもあるということだろう? ――殺し合いを」

「……」

「ふん、怯えるが故に手放せなくなるが、それは逆に開催者の思惑の中というものだ。そうやってフラフラとしていると呑まれるぞ。そうだ、これだけは訊かせてもらう。お前達、そもそも令呪端末を所持しているのか?」

「――え?」

「どういうことですか?」

「令呪端末の譲渡にはマスターの承認が必要だ。しかし、みすみす端末を渡すマスターはいない。つまり、令呪端末を持った者こそがマスターということだ。お前達の令呪端末を見せてみろ。もしかすると、既に俺達を謀ろうとしてサーヴァントを紛れ込ませている輩がいるかもしれないしな。端末を見せるだけならできるだろう?」

「……そういうことなら、まあ」

 渡島が端末を差し出すように見せた。それに合わせ、エウクレイデスとアーチャー以外の全員が端末を取り出した。

「誰も騙そうなんてしてませんよ」

 私は言った。

「どうだかな。サーヴァントを見せないように部屋に待機させて自分だけここにいる時点で怪しいが」

「じゃあ私とカカさん以外の方は自室にサーヴァントを待機させているということですか?」

 私の問いに皆が頷いた。

 困った。この聖杯戦争で倒すべきはメアリー・スーだ。彼らではない。

 だから彼らとも連携を取りたいが、この状況、それどころではなさそうだ。

「じゃあ、せめて。名前を教えては頂けませんか? お互いを呼びにくいでし……あれ?」

 私は言葉を詰まらせた。

 私はここにいるメンバーとは初対面だ。顔も名前も知らない。

 けれど、私は彼らの名前を知っている――

「どうしたシャルル。顔色が悪いぞ」

 カトルが私に向かって心配そうにそう言ってくれた。

「カトルさん。貴方、カトル・コレサドルさんですね?」

「そうだ、なんで俺の名前を知って――待て。貴方の名前は本当にシャルル・レ・モーガンなのか――?」

 カトルが驚いたように目を見開く。

 カトルもまた、私のことを知っていた。

 本当に、面識はなかった。

 この島に来るまでは全く関わりのない人達だったのだ。

 だというのに――

「カカ・コーニャ。エウクレイデス。渡島切華。カトル・コレサドル。ケンネル。アグネス」

 私は全員の名前を既に知っている。

 その場にいる全員が、お互いの名前を既に把握していた。

「ループしている――」

 カトルが突然、そう言った。

「俺達は、この世界をループしている。そうだ。俺は確かにクドラクを殺した。六日目にあいつを殺したはずなんだ――」

 

 

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