Fate/loneliness 2.5 -a survival plan-   作:からすまそういち

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第6話

 

 

 続・一日目

 

 

 セイバー

 

 解散した後、クルースニクはホテルを出てとある場所に来ていた。

 それは、森を抜けた先の草原。

 一週目でクドラクと決着をつけた場所である。

そこで暫く待つと、彼の目の前に一匹の狼が現れた。

「■■、■■■■■■――」

 獣は吠える。

「クドラク。お前も異常には気付いている筈だ」

「■■■■■■■‼」

 獣はクルースニクに向かって走りだした。

「やれやれ、どうやらまだ足りないらしいな。いいだろう。いくらでも付き合ってやる」

 クルースニクは十字架の剣を構える。

 そして、彼は獣と――衝突した。

 

 

 キャスター

 

「『カカ』『なんか』『大変なことに』『なっちゃったね』」

 カカ・コーニャとエウクレイデス、ユークリッドは並んで砂浜に座り、浜辺に打ち付けられる波をただただ見ていた。

「ああ……本当ならもうデビューしている筈だったのにな」

「すまんのう。わしが聖杯戦争に出ようと言わなければこんなことにはならなかったんじゃ」

「エウクレイデス。お前は間違ってないさ。お前たちが聖杯戦争に出ようと言ってくれなかったら外の世界で藻屑と消えていたのだから。生きていられるだけマシだ」

「『うん、』『聖杯戦争に』『出たおかげで』『ここまで』『やってこれたんだしね』」

「そうか、そう言ってくれると助かるのう」

「……謝りたいのは俺の方だ」

 カカは言った。

「『え?』」

「お前たちと夢を見たかった。本当はユーチューバーなんてどうでもよかったんだ。お前たちといるのが楽しくて、お前たちといつまでもバカ騒ぎがしたくて。それができたらどんな場所でもよかったんだ。でも、結局は何もないところに来てしまった」

「『そんなことは』『ないよ』。『カカのおかげで』『儂らは』『夢を』『見れた』。『俺達も』『お前と』『居たら』『満足さ』」

「そうじゃ。そうじゃ。カカがいたから儂らは頑張れた。カカがユーチューバーという目標を掲げてくれたから、儂らは走ることができたんじゃ」

「エウクレイデス、ユークリッド……」

「『視聴者は』『大分減っちゃった』。『けど』『ここに』『人がいない』『わけじゃないしね』」

「ああ、儂らが作るエンタメは死なん。スパチャで研究費を稼ぐことは諦めるしかないが、その代わり、儂らには無限の時間がある。無限に遊んで暮らそうぞ」

「――ああ、畜生。お前たちを全世界に送り出してやれないのが惜しい」

 カカはそこで破顔した。

 我慢ができなかった。

 昔から自分の隣には面白いボケ老人がいた。

 そいつと居るのが楽しくて、そいつをもっと多くの人に知ってほしくて。

 掲げたのがユーチューバーという夢だった。

「『いいんだよ』」

 彼らもまた、笑う。

「儂らには」

「『もう既に』」

「誰にも代えがたい――ファンがいたんじゃから」

 

 

 バーサーカー

 

 他の陣営がいなくなったホテルのロビーで、ケンネルとアグネスはソファに座って茶を飲んでいた。

「マザー」

 ケンネルは手に持っていたティーカップをテーブルに置いた。

「はい、なんでしょう」

 アグネスもまた、カップを置く。

「俺は……悪いマスターに違いない」

「なんですか、突然」

「お前は、聖人だ」

「お止めください。私はそのようなものではないと。私はただのアグネスです」

「いーや、お前は聖人だ。それは俺が知っている。だからお前を召喚した」

「……」

「俺はお前を受け入れることができない。お前は多くの良いことをしたのだろう。自分の身を投げ捨てて」

「それが私の天啓ですから」

「いや、それはお前のエゴだよ。……エゴなんだ。お前は自分の身を投げうって奉仕に遵守した。それは普通の人にはできない――異常だ。狂っている。だから、俺はお前をバーサーカーと定義した」

「……確かに、私の行動はただのエゴなのかもしれません。ですが、それでもいいのです。それが貧しき人のためになるならば」

「お前は異常だよ。異常なお前が嫌いだった。人間として異常なお前が褒め称えられるのが我慢ならなかった。お前は正しい行いをしたのかもしれない。でもそれは、たまたま異常な行動が、性質が、正の方向に触れただけに過ぎない。現代の世に噛み合っただけに過ぎない。お前が異常者であることに変わりはないんだ」

「そこまで言われると、そうかもしれませんね。私は異常だったのでしょう。でも、それでよかったのです。そうでしょう?」

「ああ、そうだ。俺はお前が嫌いだ。それは変わりない。お前のような聖人がこの世にいたかと思うと吐き気がする。それは間違いない」

「でも、マスターは私を認めてくれた。ここまで共に来てくれた」

「お前が嫌いなんだ。でも、それと同時に誇りに思う。お前のような異常者がいてくれたおかげで、人間ってやつも捨てたモンじゃないと思える。お前がいてくれたから、俺は人間を信じられる」

「ふふっ、マスターはあれですね。ツンデレというやつですね」

「変な言い方はやめろ。――最後に、言おうと思ってたんだ」

「最後?」

「ああ、実はさっきロキに確認した。このループに必要なのはサーヴァントだけだ。マスターはループに必要ないらしい。だから、俺はループから抜ける」

「なんと、それは……本当ですか?」

「ああ、俺はもう、いい。十分戦った。これ以上足掻くつもりはねー」

「マスター、本当に、よろしいので?」

「もういい。もう十分お前の生き様を見た。もう十分だ。これ以上お前を狂わせる必要もない。お前は、お前だよ。マザー・テレサ。他の誰でもない。バーサーカーという枠組みに囚われない、ただ一人の聖人だ」

 ケンネルの体が淡く輝き始める。

「マスター。私は今まで貴方に従ってきました。貴方が往くというからついてきたのです。貴方が途中で降りるのは無責任ではありませんか?」

「ははっ、お前が嫌い過ぎてお前を困らせるために今まで付き合わせてやったんだ。これもまた嫌がらせだ。聖人の隣に居ると自分がすり減る。これ以上は御免だね」

 ケンネルは笑った。

「マザー。お前を縛るものはもう何もない。後は自由に生きればいいさ。自由に生きて自由に死ね。それがお前、マザー・テレサってやつだよ――」

「マスター、貴方は面白い人でした。もしまた機会があれば、私のマスターになっていただけますか?」

 アグネスもまた、微笑む。

「はん、ノーと答えると知ってて言うかよ。お前も現世でいらぬ知恵をつけたね。――そうだな。世界がまた通常に戻れば、あり得るかもかな」

「それだけ聞ければ、十分です。貴方に安らかな眠りのあらんことを。ケンネル・フェルナンデス」

 アグネスはそっと彼に祈りを捧げる。

「ああ、じゃあな――」

 ケンネルは光の粒になって、消えた。

「もし別れが来るのなら、私が先に逝くものだと思っていました」

 彼女は呟く。

「どうして、私はこう、先に逝く人を見送ってしまうのでしょうか」

 今まで沢山の人と出会ってきた。

 そして、別れも。

 アグネスは両の手を、ぎゅっと握りしめた。

 

 

 アサシン

 

 渡島は浜辺の隅で貝殻を拾って集めていた。

 何故これをしているのか自分でも分からない。

 でもきっと、大切なことだったはずだ。

 もうその理由は忘れてしまったけれど。

 貝殻を見る度に、マスターの顔を思い出す。

 自ら手にかけた、マスターの顔を。

「う、ううううう――」

 目からは大粒の涙が零れた。

 集めた貝殻を握り潰す。

 手を広げると、バラバラになった貝殻の破片が砂浜に落ちていった。

「渡島さん」

 シャルルがそんな渡島に問いかける。

 シャルルとアーチャーは渡島を探して海岸に出ていた。

「な、に」

「貴女は、アサシン、なんですね」

「そう、です……人殺し(アサシン)なんです。ですから、わたしに近づくと――死にますよ」

「マスターを殺した、というのは本当ですか」

「……ええ、わたしはマスターを殺しました」

「どうして、ですか?」

「わたしがアサシンだから、ですよ。わたしは人を殺さなければならない。わたしは人を殺すために、生まれた。だから、人を殺すのです」

「それが――望まなくても?」

「ええ! ええ! そうです! わたしは! 殺すのです! あの手この手で人を! 貶めて! 殺してしまうのですよ!」

 渡島は叫んだ。

「もう誰も殺したくない! わたしは殺したくはなかったのに! わたしの性質がそうしてしまうのです! わたしがアサシンだから! そう――定義されたから!」

「渡島さん、きっとそれは幻想だ。貴女は貴女のなりたい自分になっていい筈です。貴女が人殺しであっても関係ない。過去は変えられなくても、未来は変えられる。自分の在り方を、変えられるのです」

「貴女に何がわかるんですか! ああ、ああ――赤いちゃんちゃんこ着せましょか――」

「マスター!」

 渡島がシャルルに襲い掛かり、アーチャーがそれを止めようとした。しかし、

「アーチャー!」

 シャルルは声だけでアーチャーの動きを止める。

 そして、渡島の指がシャルルの首元に食い込んだ。

「ああ、ああ――」

 シャルルの首から血が噴き出した。

 それはシャルルの体を覆うように溢れ、衣服を血に染める。

「どう、して」

 渡島は抵抗せず倒れたシャルルに向けて問いかけた。

「ロキが言っていました。死んだらその場で蘇る、と。だから私は死にません。人を殺したければ私を殺すといい。気の済むまで付き合いましょう。貴女がアサシンを辞められるまで」

「うう、うう――」

 渡島は涙を流し、シャルルの右腕を掴んだ。

 シャルルは抵抗しない。

 渡島は腕を引き千切った。

「うわあああ‼」

 シャルルは叫び声を挙げる。しかし、それだけだった。体は渡島に預けたままだった。

「これでも、これでも。これでも――」

 左腕、両脚、はらわた。

 渡島はシャルルの身体のあちこちを傷つけた。

 その度に苦悶の表情をシャルルが浮かべるが、抵抗だけはしなかった。

「どうして――」

「貴女が必要だからです。渡島さん。――渡島切華」

 復活したシャルルは笑みを浮かべてそう言った。

 シャルルに馬乗りになっている彼女は項垂れたまま、動かない。

「分から、ない。わたしは、ただの人殺し、なんですよ。そんなわたしに、何ができると、いうの」

「それは私にも分かりません。ですから、一緒に探しましょう」

 シャルルは手を差し出した。

「――あはは」

 渡島はそれを見て笑い、差し出された手を握って――引き抜いた。

 

 

アーチャー

 

カカの問いに答えられなかった私は、ロビーから出て外の空気を吸おうと思った。

外に出ると、でんとホテルの前に銅像が一体建っているのが見えた。

ロキが剣を天に翳して笑っている。

中に入るまではなかったやつだ。

 奴が外に出た時に造ったのだろうか。

「マスター、これからどうしましょう」

 アーチャーが問いかける。

「そうだな。確かに絶望的な状況だけれど、これで終わるとは思いたくないんだ。きっといつか助けが来る。誰が来るのか、何が来るのかは分からない。でも、きっといつかそれは来るんだ。それを信じて私達はこの島で仲間を増やそう」

「仲間、ですか?」

「ああ。今、この島に居る人たちはバラバラだ。彼らを纏め上げて準備する。いつか来る決戦の為に」

 一週目の自分は不甲斐なかった。

 希望的観測だけで現実を見ようとはしなかった。

 だから、今度は。

 何が起こってもいいように準備しよう。

 カカの死体を初めて見た時を思い出す。

 あんな思いは二度としたくない。

 私は強く決心した。

「この島に居るサーヴァントを全員、味方につける」

 その宣言は地獄の始まりだった。

 でも私はそれを躊躇わない。

 ここからが、私の聖杯戦争の始まりだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Fate/loneliness 2.5 -a survival plan-――了》

 

 

 

 

 

 

 




 あとがき


 終わりました。そして続きます。
 本来はここの話は第四部でするつもりだったのですが、急遽間に挟み込むことにしました。第四部で語り切れるか不安だったので。
 さて、今回は二部で出た謎のサーヴァント達の判明回でした。
 予想は合っていたでしょうか?
 難しいかな、とは思いましたが全くノーヒントというわけでもなかったので当てられた方もそこそこいるんじゃないかと思います。
 今回の話のおかげで第四部に導入しやすくなったんじゃないかな、と思います。
 さあ! 話は煮詰まってきました!
 私は書き手ですが、四部が楽しみです!
 果たして私は書くことができるのか!
 待て未来!
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