ハイスクールⅮ×D 血塗られた蒼い薔薇   作:ひよっこ召喚士

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三華


 

 クソ烏の件から少し経ち、アルジェント先輩が学校に馴染んできた頃、オカルト研究部の方から強力な悪魔の気配と強い悪魔の気配が感じられた。

 

「また面倒事かな?」

 

 表立っての内輪揉めは聞かないので内戦とかは無いだろうし、リアス部長自身が何か揉め事を持ってくるような性格……かどうかはおいとくとして揉め事を自ら起こす様な悪魔ではないのは確か。

 

 となれば考えられるのは実家関係、グレモリーともなれば色々としがらみも多いことでしょう。悪魔同士のあれやこれなら巻き込まれる心配もないですね。

 

「と思っていたんですがねぇ……」

 

「ごめんなさい茨くん」

 

 悪魔というか裏の事が一般に知られないように記憶を処理するのはあまり認めたくはないがよくある事だ。

 

 オカルト研究部のメンバーがいないのを当たり前にするのにほぼほぼ幽霊部員とはいえボクが普通に通ってると齟齬が出かねないそうだ。

 

 そのため、そもそも学校に通ってない不登校の僧侶は除いてオカルト研究部全員での合宿が決定してしまった。

 

「ほら、茨くんはレーティングゲームに出ないんだし、特訓の必要もないから実質ただでキャンプに来たと思ってさ」

 

「楽しめば良い」

 

木場先輩と子猫ちゃんがそんな事を言って慰めてくれた。確かに巻き込まれただけだし、こちらに非はないので楽しめば得でもある。とは言っても……

 

「兵藤先輩を見てると流石に一人で楽しむ気には……」

 

「うおおおおお!!!」

 

 子猫ちゃん程ではないが大荷物を抱えて必死に山道を登っている兵藤先輩……きっとこの後も色々と扱かれるんだろう。

 

 その横でのんべんだらりと過ごすのはどうにも悪い気がする。とは言っても手伝えることがあるかと言われればそこまでだ。

 

 道中も何かと騒がしかったが、合宿の拠点となる別荘にたどり着き、荷物をおいて着替えを済ませ、ようやく特訓へと取り掛かるようだ。

 

「とりあえずどれぐらい動けるか把握するためにも組手からやりましょう」

 

「分かりました部長!!」

 

 元気だけは良さげだが……上手とは言えないけど戦い方を知っている木場先輩や子猫ちゃんに兵藤先輩が勝てる訳はなく、ある意味スムーズに終わった。

 

 元一般人と考えれば戦い方を知らないのは仕方ない。だが最低限学ばないと話にすらならないだろう。基礎を固める時間がなくても付け焼き刃でも良いから覚えないと耐えることも難しそうだ。

 

 続いて魔力についての手ほどきもしていたが兵藤先輩はなんと言っていいのか……後から聞いたら悪魔の仕事の際に契約者のとこに向かう転移も出来ないらしい。

 

 それでも神器が神器だからとそのまま特訓は続けている様で、レーティングゲームや裏の世界の勉強もしつつ時間は過ぎていった。

 

 ボクとしては神器に特化させて訓練した方が今回に限ってはまだ良いと思ったけど。身体作りも含めてのんびりとした特訓を終えて先輩達はレーティングゲームへと臨んでいった。そして予想通りの結果で終わったらしい。

 

「…兵藤先輩を見に行くか」

 

 


 

 

 俺が負けたから、俺が弱かったから、部長は、リアス部長はあの焼鳥野郎と……俺に力があれば、もっともっと力があったなら……

 

「ちくしょう……」

 

 目が覚めた瞬間に自身の負けを嫌でも思い出させられ、更には既に部長は婚約パーティなんて物に出席させられてると聞かされて血が滲む程に手を握る事しか出来ずにいた。

 

「諦めるんですか?」

 

 そんな俺の所に聞き覚えのある声が届き、顔を上げるとそこに立っていたのはこちらを真っ直ぐに見つめる茨だった。こんな時でなければその顔に興奮でもして馬鹿騒ぎするんだけどな。

 

「茨か……」

 

「そんな所で蹲ってるなんて兵藤先輩には似合いませんよ。それに所有者が負けたままなんて、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)、ドライグ様も許さないですよね?」

 

『ふん、起きてるのに気付いたか小娘』

 

 俺の手にある神器、そして身体の奥底から響き渡る様な声が俺と茨に届いた。茨の言葉が本当ならこいつがこの神器の……

 

「あいにくとボクは男ですのであしからず、さて兵藤先輩は本当にそのままで終わって良いんですか? 諦めても良いんですか?」

 

 茨が間違われた性別を訂正している。龍の目から見ても茨は女っぽいのか…そんな事を考えてると茨が煽る様な口調で俺に語り掛ける。

 

「良い…わけ……良い訳があるかぁ!! でも、これ以上出来る事なんて……」

 

 このままで終わって良い訳ない。そんなんじゃ俺なんかじゃなく、あの部長が報われない。俺を救ってくれたあの悪魔(ひと)が……

 

「昂ぶったり落ち込んだり、情緒不安定ですか? 全く、手があろうと無かろうと突っ込んで行くのが先輩の良さでしょうに…もう一度だけ言いますがウジウジしてる姿は似合ってませんよ」

 

「茨…わりぃ、心配して来てくれたのに俺、今から行ってくる!!」

 

 最初の心配しての声掛けとは違う笑って導いてくれる暖かい否定の言葉。俺が悪魔でなければ漏れ出る光も相まって天使に見えそうだぜ。

 

「やる気になったのは良いですが…行き方分かるんですか? それにそんなボロボロのままで勝てるんですか?」

 

「うっ?!」

 

 何も考えてなかった。とりあえず動かなきゃって思ってたけど流石に考えのなさに自分でもどうかと思う程だ。どうするか考えてると茨が何かを取り出した。

 

「道はボクが用意しますし、身体も治してあげますよ。だから兵藤先輩はドライグ様とぱぱっと作戦を考えてください」

 

 道を用意するって事はその会場に何らかの形で行く方法が茨には用意出来るんだろう。なんでとかはどうでも良い、ここまで言ってくれた後輩を俺は信じる。だけど……

 

「なんか暗くて黒いけどそれ鞭だよな? それで何をする気なんだ茨?」

 

 茨の手にあるのは全体的に黒い雰囲気の鞭であり、空気を叩いて鋭い音を鳴らしながら俺の事を見ている。

 

「時間が無いので荒い治療ですが効果は保証します」

 

「ちょっ?!ちょっと待っ…ギャア?!」

 

 思い切り叩き付けられると共に身体全体に力が溢れて痛みとか怪我とか以前の根本的な部分から回復していくのがなんとなく分かる。だけど痛いのは痛い……

 

 そうして回復して、茨が道の準備をしている間にドライグとも話をして作戦を考え、悪いと思いつつもう一つだけ茨に協力を頼んだ。

 

「やってやる…今行きます部長!!」

 

 


 

 

「皆様! この度は私、ライザー・フェニックスと、その妻となるリアス・グレモリーの婚約の席にお集まり頂き、誠にありがとうございます!」

 

 ライザーは会場中に響く声で挨拶をし、それに合わせてパーティーに参加している貴族達が盛大な拍手を送る。

 

 そんな光景を私は見ている事しか出来ない。無力な私を見るソーナとその隣にいらっしゃるお兄様と同じ魔王のセラフォルー様、そしてこちらを悲しそうな表情で見つめる眷属の三人。

 

 倒れたままの一誠と彼の治療をしているアーシアはこの場に来てない。この先どうなるか分からない以上は最後に顔を見たかったけど、それも叶わない。

 

 あの私達に毒となる光を宿した茨くんともわかれたままね。関係ない合宿に巻き込んだ上にこの結果なんて本当に悪い事をしてしまった。

 

「では! 改めてご紹介しましょう! 彼女こそ、我が最愛の妻となる女性リア―――」

 

 ライザーの言葉が止まり、参加者達の拍手も治まる。何事かと沈めていた顔を上げれば、会場の中心に、紫色の魔法陣が出現した。まさか、参加者の誰かが遅刻して来たのだろうか?

 

「その結婚認めてたまるかぁ!!」

 

 現れたのは眷属の一人でまだ目を覚ましていなかった一誠だった。名だたる貴族が集まるこの会場でそんな事をしてしまえば主催であるライザーの顔は潰れてしまう。

 

「お前、何故招待状を持ってる?!何をしている! さっさとつまみ出せ!」

 

 倒れていた為に呼ばれていない一誠が何故か正式な招待状を使って乗り込んできた。正式な招待状で来たために衛兵もどうするべきか悩んでるとライザーが指示を出した。

 

 一誠を取り囲んで襲おうとする衛兵達。だが彼の直ぐ横にまた魔法陣が現れ、次の瞬間にはその包囲網は簡単に崩壊した。

 

「悪魔さん、先に行ってしまうとは悲しいじゃないですか。それとここはパーティの場と言うにはかなり無粋な所ですね。悪魔のパーティと言うのはこの様な無法なものなんですか?」

 

 いつもより明らかに強い光を放ちながらその姿を表した茨くん。その光を間近で浴びてしまった衛兵達は何も出来ずに致命傷一歩手前に追い込まれている。

 

「なっ、なんなんだあの光は?!」

 

「天使か堕天使の襲撃か?!」

 

「いや、あれは契約した者の所に飛ぶ魔法陣だ!!」

 

「あの下級悪魔、あの光の存在と契約をしているのか?!」

 

 会場中の貴族達が慌てて距離を取りながらも口々に茨くんと言う存在と茨くんと契約をしてるらしい一誠に言及する。

 

「っ!!…待ってください!!なんであの先輩は茨くんの直ぐ隣にいて平気なんですか?!」

 

「確かに…一誠くんは小猫ちゃんと違って耐性なんて無いはずなのに?!」

 

「……耐性を得る術式や身を守る結界の様な物は感じられません。彼は間違いなく生身です」

 

 茨くんと最も近い位置に居た小猫を皮切りにまだまだ成りたてであり、耐性なんかもある訳がない一誠が茨くんの隣に居る不思議さに私も気付いた。

 

 現に対応しようとしているライザーですら後退り、近付こうにも近付けない状態になっている。彼処に飛び込めるとしたらお兄様を含めた魔王様達クラスくらいの筈……

 

「お前、それはそこの人間に与えられた招待状だろう!!何故呼んでないお前がやってきた!!」

 

「ボクが彼に依頼したんですよ。人間の身としては悪魔のパーティなんて恐ろしいですから悪魔である彼が付き添ってくれると大変助かりました」

 

 きちんとした契約の基で行われた物だと言わんばかりに契約書をライザーの方へと投げ渡した。その内容を確認したライザーはわなわな震えている。

 

「確かに悪魔と人間、個人間の契約をどうこう言えん。同伴者の居る者も他にたくさん居る。だが先程のそいつの発言と衛兵への危害を加えた事は追求させてもらうぞ」

 

「悪魔のパーティの知識はありませんから彼の行動が正しいか間違ってるか判断出来ないボクに責任は取れませんよ。そして、この周りの人達はボクに不用意に近付いたからこうなったんですよ」

 

「そいつの発言はそいつの責任、そしてこの現状も他意は無いと言うつもりか……」

 

 一触即発の空気が広がる。流石のライザーもこの場で茨くんと戦えばどうなるかは分かっている筈だが、その緊張感は会場中に伝播する。それを止める様に割って入る影…お兄様が三人の間に出てきた。

 

「まぁまぁ、折角の楽しい場なんだ睨み合うのはそれぐらいにしといたらどうだい?」

 

「サーゼクス様…たしか、この人間に招待状を渡したのは貴方です。この騒動自体貴方のお考えですか?」

 

 ライザーの発言を聞いて私も含めて知らなかった者達は驚きの表情をお兄様に向けた。お兄様は何を考えてるのか……

 

「光を宿す人間となると気にするべき相手だからね。面白そうだと言うのもあって招待したんだけど、折角なら彼とも戦ってみたらどうだい?」

 

「この人間と戦えと? リアスの眷属でも無い相手とわざわざ戦う必要があるとは思えませんが?」

 

「彼は特別かな。彼はたとえ成りたくても悪魔には成れないからね。これはアジュカに特別に用意してもらった変異の駒(ミューテーション・ピース)だ。もちろん力量は私に依存している」

 

 お兄様が力が大きい相手でも眷属にする事が可能な変異の駒を茨くんの胸元に近付けたが、それが彼の身体に入り込もうとした瞬間に溶けて崩れて消えた。

 

「彼は一度リーアに眷属に誘われてるが()()()()()()()と断っている。これが君と戦う前の事だから、彼にも戦う権利があってもおかしくは無いだろう?」

 

 彼はそんな意味で成れないと言った訳では無いと私は考えてる。それなのにまるで茨くんが悪魔に成りたくても成れなかったかの様に語るお兄様、それにライザーは苦しくも反論する。

 

「たとえ権利があれど彼は現に人間です。悪魔である俺と戦うのは酷でしょう?」

 

「なら、俺はその権利を悪魔である彼に譲りましょう。それならば問題ないですよね?」

 

 茨くんがライザーと戦う権利を一誠に譲った。一誠は悪魔であるので戦う土俵に無いと断るのは難しい。

 

「それならばライザーくんも心配しなくても済むね。権利の移行を魔王の名において認めよう」

 

「なっ?!サーゼクス様?!」

 

「リーアの夫となる者の力を集まったみんなに見せると思ったらどうだい?」

 

「……それがご命令なのでしたら」

 

 これ以上渋れば自身の力量を疑われてしまう。逃げ場の無くなったライザーはお兄様の提案に渋々頷いた。おそらく、茨くんと戦うよりはマシだと思ったのだろう。

 

「部長…待っててください」

 

「一誠…」

 

 私に一言だけ告げると一誠はライザーと共に戦いの場へと送られた。そして先程まで騒ぎの中心に居た茨くんは力を抑えてお兄様と共に私達の近くにやってきた。

 

 


 

 

「部長にみんな、少しぶりですね」

 

 いつも通りの調子で声を掛けると困惑した様な表情でこちらを見てくる。小猫ちゃんに限って言えば少し睨んでいる様にも見える。

 

「少しぶりですねじゃないわよ…それにお兄様、この騒動はいったい……」

 

「まぁまぁ、そんなに急かさないでリーアたん。ただ、もう一度くらいチャンスがあっても良かったんじゃないかって茨くんと話してただけだよ」

 

 部長は困惑しつつも返事を返すと矛先が黒幕である彼女のお兄様である魔王サーゼクス・ルシファーに向けられた。所でサーゼクス様、そこでボクの名前を出さないでくれませんかね。

 

「そもそもお二人は何処でお会いになられたんですか?」

 

「あれ、知らされて無かったのかい? 彼はレーティングゲームをボクと一緒に観戦してたんだよ」

 

「いきなりメイドのグレイフィアさんに誘われてね。観戦しながらサーゼクス様とは色々とお話()させて貰ったよ」

 

「はは、それなりに楽しく話せたと思ったんだけどね。気軽に呼び捨てで良いと言っても頑なに呼んでくれないんだよ」

 

「お兄様の立場を考えれば当たり前の事ですよ……」

 

 同情の視線が部長を始め、姫島先輩、木場先輩、更にはソーナ会長からも送られるが、そんな中で小猫ちゃんの視線は未だに厳しい。

 

「レーティングゲーム見てたんですか?」

 

「え、うん。見てたけど…?」

 

洋服破壊(ドレスブレイク)…」

 

 小猫ちゃんの小さな呟きを聞いてあの時のとんでもない光景が脳裏に蘇り、そしてそれが伝わったのか小猫ちゃんからの視線の鋭さが増した。

 

「あ、ええっと…」

 

「あれも見てたんですよね?」 

 

「いや、そりゃ流石に目には入ったけどそれは不可抗力じゃない?!」

 

 言い掛かりとは決して言えないがとんでもない逆恨みに近い怒りをぶつけられる。流石にあの件については兵藤先輩に文句を言って欲しい。

 

「そんな事よりもなぜ一誠くんは茨くんの光の力で無事なんだい?」

 

「そう言えば、それは私も気になっていたんだよ。あれはいったいどういう絡繰なんだい?」

 

 木場先輩が自然な流れでこちらに質問をしてくれたおかげで小猫ちゃんからの追及から逃れられた。そしてそれに便乗する様にサーゼクス様も疑問を投げかけた。

 

「えっ、お兄様も知らなかったんですか?」

 

「私がやったのは茨くんにそれとなく今回の話の発端を伝えて、招待状を渡しただけだよ。そもそも、私は招待状を彼に譲るだけだと思ってたからね。彼が一緒に乗り込んできたり、契約を盾にするのは予想外だったよ」

 

 その割にはボクとライザーの会話に上手く話を合わせていたが、流石に魔王という権力者の立場では色々やる事もあるんだろう。

 

 リアス先輩からの誘いを受けて断わった事なんかは何処から情報を仕入れたのやら。やはり学校付近、と言うよりリアス先輩の近くに目はあるか……

 

「兵藤先輩のあれは耐えてるだけですよ」

 

 何の絡繰だってあの時の状況にありはしない。兵藤先輩は他の悪魔同様に光を浴び続けていた。それが純然たる事実だ。

 

「耐えるって言っても悪魔に成り立ての彼では流石に赤龍帝の力があっても……」

 

 耐えれる訳が無いって言うんでしょうし、実際に全然耐えれていなかった。だけどあの先輩、焚き付けといてなんだが、覚悟が決まったら頭がおかしいレベルで突っ走る。

 

「短時間で耐性を付けたんですよ。幸いにも治療出来る神器はありますからね。治療されながら光を浴び続けたんですよ」

 

 そう言うと準備段階で何やら向かい合って話している二人が映っている画面の方へ、正確に言うとライザーを煽っている兵藤先輩へとあり得ない者を見るような目が向けられる。

 

「兵藤先輩、今なら下級の天使堕天使の攻撃は全く効きませんよ。中級でも少し痛いくらいでしょうし、上級も数発なら直撃しても戦闘を続けられる筈です」

 

 何なら聖水を振りかけたり、アーシアに借りて聖書を読み上げたり、十字を切ってみたりしたが、痛みを感じてても行動に支障が無かったくらいだ。

 

 確かめ方を伝えるとまるで鬼や悪魔でも見たかの様な表情をしてボクを見てくるが、悪魔はみなさんの方でしょう。

 

「赤龍帝の倍化がその耐性に対して使えるなら彼は天使堕天使に対して切り札となり得る唯一無二の悪魔と言う事になるね」

 

 神滅具の力は計り知れないが普通の神器よりも融通は利きやすいと考えられている。その力が強いが故に影響を与えられる範囲も大きいからだ。

 

 兵藤先輩が耐性を倍化させれば光の力を無効化して暴れる悪魔が誕生する。天使堕天使からすれば恐ろしいでは済まない。

 

 ボクからすればそれだけではないのも分かってるし、サーゼクス様もたぶん気付いてる。そして、この後の展開で冥界中にその危険度は広められる事になる。

 

「さて、始まる様だよ」

 

 サーゼクス様の声が聞こえると話に集中していた面々も全員が兵藤先輩へと視線を向ける。少なからず力を貸した身としても結果は見届けるつもりだ。

 

「ま、頑張ってくださいよ…先輩……」

 

 


 

 

 茨の力を借りて乗り込むことが出来たパーティ会場。魔王であり部長の兄であるサーゼクス様の声もあってこの機会を得られた。

 

「なんでまたお前なんかと戦わなくちゃいけないんだか…サーゼクス様の命令でなければあり得ない事だ。噛み締めて果てると良い」

 

「はっ、何も無しに来たと思ってるのか? その余裕ぶった顔をぶっ飛ばしてやるよ!!」

 

 こちらを完全に見下しているその余裕ぶった顔が、自分の都合が最優先だと決め付けているこいつの考えを叩き折ってやる。そして絶対に部長を助けるんだ。

 

「出し惜しみなんてせずに最初から全力で行くぜ!!赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)!!」

 

 左腕一本を捧げても俺の『禁手』は10秒が限界だとドライグは言った。だが、茨に頼んで行った光の耐性を得るための苦行のおかげで身体自体の耐久も爆上がった俺なら1分は保つ、と言うか()()()()()()

 

「これを喰らえ!!」

 

「速い?! ぐあぁあああ?!なんだこれは?!」

 

「お前に掛けたのはアーシアと茨の協力で作った特別な聖水だよ!!それとこいつも借り物だが効くだろ?」

 

 俺は聖水を持っているのとは別の手で懐から聖書を取り出して開くとそれを読み上げた。頭がズキズキと痛むがこれぐらいなら問題はねぇ。

 

「な、何故だ?!ぐぅああ?! そちらの手からは龍の気を感じるが、他は悪魔のままだろ?! ううぅう……なんで聖書を懐に入れてられる?! ぐはっ?! 何故それを読み上げながら戦えるんだ!!」

 

 へへへ、聖水と聖書を携えて戦う悪魔なんて俺くらいだろうな。左の腕で持てばダメージは無いし、懐に入れようと読み上げようと我慢すれば別に動ける。茨の光に比べたら耐えるくらいわけはねぇ。

 

「めちゃくちゃ強い聖水で再生は追い付いてねぇ。聖書のダメージで頭ん中もぼろぼろだろ? 後は俺の力を全て込めて殴るだけだ!!」

 

Explosion(エクスプロージョン)

 

 禁手化してから物凄いスピードでずっと倍化されていた力の全てを開放する。無理矢理禁手化の時間を引き伸ばしてるのも相まって正直俺だってぼろぼろだけど関係ねぇ…とにかくぶっ飛ばす!!

 

「待て、これは悪魔にとって大切な結婚なんだぞ!!それをお前なんかが、止めて良い訳が…!!」

 

「関係ねぇんだよ!!悪魔とか家とかのごちゃごちゃした事は俺には分かんねぇ!!ただ俺は部長を悲しませてるお前をぶっ飛ばす!!」

 

 拳をただただライザーの顔を目掛けて振り抜いて、力を、想いを、悔しさを、込められる全てを注いだ一撃を確かに叩き込んだ。

 

 


 

 

 どうなるかと不安もあったが彼等に期待したのは正解だったみたいだ。茨くんとの友誼と彼の持つ根性とでも言えば良いかそれによって得た力も見させて貰った。

 

「音声の切断が間にあって良かった。グレイフィア、ありがとう」

 

「いえ、仕事をしたまでです」

 

 聖水と聖書を利用する悪魔、ましてや聖書を懐に入れて読み上げる事で敵を倒す悪魔だなんて前代未聞だろう。

 

「禁手化した彼の力も合わせれば魔王クラスでも無事では済まないかもしれないな」

 

「やはり危険ではありませんか?」

 

 リーアたんの眷属にあれだけ強い子が居るのは兄としてとても安心出来る。だが魔王と言う立場でそんな事を大きな声で言えないので小さく呟くだけに留めているとグレイフィアも小声で不安を訴えた。

 

 グレイフィアが危惧しているのは兵藤一誠くんではなく、彼が力を得る切っ掛けとなった百華茨くんの事だろう。確かに彼の力は間違いなく悪魔にとっては危険だ。

 

 しかし、レーティングゲームの観戦を終えてから個人的に会話した時の事を思い出せばそこまで心配はいらないと私は思う。

 

 そんな事を考えている間に赤龍帝の力、いや兵藤一誠くんの全ての力を込めた一撃がライザーくんに叩き込まれた。あれでは流石の彼も折れてしまっただろう。

 

「そこまで!!この勝負、兵藤一誠の勝ちとする!!」

 

 私の宣言を聞いて会場に居た面々もようやく自体を飲み込めたのか口々に騒ぎ始める。赤龍帝であり、光に強い悪魔、彼がこれだけ注目されていればフェニックス家が何か言われる心配もいらないか。

 

 


 

 

 まぁ、あれだけ手を貸したのだから当然と言えば当然の結果だが兵藤先輩はライザーを倒してリアス部長を取り戻した。

 

 こじつけだが正当な権利をもってレーティングゲームの結末に抗議して得た結果だから一応対面的にも問題はないのかな。

 

 問題があるとしたらボクの方であり、ただでさえ目をつけられてるだろうに今回の事で悪目立ちしたのは間違いない。

 

 兵藤先輩の方も普通の悪魔ではあり得ない力を振るってみせたし、下級の転生悪魔が上を脅かす可能性の方を危惧する方が先だろうけど、やはり動きづらい所は出てくるか。

 

「なんでここまでしたんだっけ?」

 

 なんとなく兵藤先輩の事を気に掛けている。それは先輩が堕天使の被害者だからなのは関係してるとは思う。だけど、既に悪魔としての道を歩み始めている先輩に対してここまで面倒をみる必要性はない。

 

 知り合いだから、先輩だから、部活仲間だから、赤い龍だから、優しいから、堕天使天使(鳥類)じゃないから、上げれば小さな理由はたくさんある。だけど、どれもあまりピンとこない。だけどふとした瞬間に湧いた感情が答えだった。

 

「あぁ、ボク楽しいのか……」

 

 兵藤先輩と居るのがではない。いや、それも間違いではないが、ここでの生活。学校に通って勉強して家に帰って眠る。そんな普通の生活が楽しいのだ。

 

 そんな普通の生活の内の学校生活、その一部に兵藤先輩はいつの間にか組み込まれていたんだろう。ただ、自分の普通が失われるのが嫌だったと気付いた。

 

「どうせ、もう直ぐ無くなるのにバカなの」

 

 思ってた以上に大切な物に気付いた所で胸の内の想い以上に重い物もない。単純過ぎる自分にクスクスと笑いながらボクは布団に包まり眠りについた。

 

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