一人暮らしの家にあり得ないくらいの量の食事が並べられ、そしてがやがやと話し声が鳴り響いている。
「それで結局、エクスカリバーとコカビエルの足取りは正確には掴めてないのか?」
「あれでも神話にも出てくる堕天使だ。尻尾を見せたかと思えば消えている」
他の陣営と違い大戦で生存している
「それで教会も
所属が所属なだけに裏の組織の動きには敏感に反応しているんでしょうが、納得がいったのか何処か安心した様子ですね。まぁ、教会の警戒対象は烏で、烏のごちゃごちゃは内輪揉めですからね。
「まぁ、まだ離反してない以上は働かねぇといけねぇ訳か…それでどうするつもりなんだ?」
美猴さんの疑問は話の流れを考えると当たり前なものですね。ヴァーリさんの実力を考えれば色々ととれる手もありそうなもんですが…
「俺が出てけば奴は間違いなく隠れる。とりあえずは教会と悪魔側で対応させ、動かない所を叩く」
実力があるからこそですか…まぁ首謀者がヴァーリさんの事を知ってるからこそですけどね。
それにしても動けなくなったではなく、
「にゃるほどね。でもこの街で暴れられたら白音に危険じゃない?ねぇ、そこん所どうするのよ?」
「俺が襲ってる訳じゃないんだからそこまで面倒は見れん。今代の赤龍帝はけっこうやると聞くし、なんならそこに妹の同級生が居るんだから頼めば良いだろ」
勝手に話を振ってくるのもそうですけど、ただでさえ怪しまれてる所になんで貴方達は飯を食べに来たんですか。それにしても先輩の評価は悪くないんですね。
ってそんな事よりも聖書勢力の内情を人の家で話さないでくれませんかね。それにしてもエクスカリバーにコカビエルですか……
「まぁ、事が起これば巻き込まれる気もしますから気にはしておきます」
「さっすが茨ちん。頼りになるにゃあ」
こういう時だけ都合よく持ち上げるんですから調子の良い事で…まぁ言い方が軽いだけで内心ちゃんと感謝してるのは付き合いも長いので分かりますがね。
「ですが、これから確実に監視も強くなりますのでしばらくはここを集会所にしないでください!!」
生返事ばかりだったが一応全員から言質をとった。もちろん、今日はこの場に居ないオーフィス様を除いてだが……あの方が何かしても誰も気付けないからもう別に好きにしてくれていい。
「それと…
ボクの目標を考えるとコカビエルの行動が成功したとしてもそう悪くは無いです。親玉の考えている聖書の和平はボクとしては痛手ですしね。
ですが今すぐにヴァーリさんが
現状でヴァーリさんに提示できる様なものはありませんし、聖書の和平はほぼ確定と考えて動いた方が良いでしょう。そうなるとオカ研のみんなと敵対関係になるのも確実…いや、それはテロリストの時点でそうでしたね。
ですが、動き方次第で戦争を起こさせる事が出来る可能性も無くも無いですかね。コカビエルやその一味の仕業に見せ掛けてリアス部長かソーナ会長を殺せたら……
「…注目されたのがここにきて効きますね」
例の件で悪魔から注目されている現状で接触するのもさせるのもリスクが大き過ぎます。それが無ければ打てる手も幾つかあったんでしょうが、まぁ仕方がない事です。
先輩に手を貸した事自体は何も後悔していませんしね。戦争の再開は諦めましょう。後は和平を有耶無耶にするか、悪魔陣営に上手く働きかければ今後の動きも多少は楽に出来るかもしれません。まぁ、とりあえずは…
「ノコノコと、いえ…バサバサと飛んで来た
もうあれから結構な時間が経っているが、兵藤先輩によるライザーぶん殴り事件、もといリアス部長の婚約騒動以来、兵藤先輩とリアス部長の距離が近い。
お互いに好きあっているのは事情を知らない者でも一目で分かるだろう。その近くで対抗心を見せてるアルジェント先輩も含めるとかなりの男性から恨みも買っている。
だがそれなのに進展らしい進展が無いのはリアス部長が悪魔だからか、それとも兵藤先輩の問題か。アルジェント先輩の場合は先輩が単純に奥手過ぎるからだろうけど。
「茨じゃねぇか、おはよう!!」
「急に走って行かなくても茨くんは逃げないでしょう。まったく、イッセーったら」
「イッセーさん待ってください」
そう言って軽くボクの背中を叩いて挨拶する兵藤先輩。龍の腕になってるとは言え、直接触れたら流石に痛いだろうになんて事ない様に笑ってみせる。そういう所は敵わないといつも思う。
「おはようございます。兵藤先輩、リアス部長、それにアルジェント先輩」
「おはようございます。茨さん、今日も素晴らしい光ですね」
初めて会った時から尊敬の様な感情を見せていますが、身体から溢れ出ている光のオーラをこうして毎日褒められるのはなんとも言えない気分ですね。
「ふふ、おはよう茨。登校途中に会えて良かったわ。今日はオカルト研究部に来れるかしら?」
「えぇ、特に予定はなかったので向かいますね。それではまた放課後に」
そう言って分かれると既に校舎が見えてきていたので一年の教室へと向かった。扉をくぐるとボクよりも先に登校していた小猫ちゃんがこっちを見た。
「おはよう小猫ちゃん」
「茨くん、おはようございます」
お互いに必要以上に喋るタイプでは無いのだが、特に朝は会って直ぐに挨拶だけして終わる事が多い。
授業の準備とかを終わらせて余裕があれば会話を楽しむ事もあるが、基本的には昼休みとかに話す事の方が多い。
「そう言えば今日はオカルト研究部に集まる様に言われてますが茨くんは知ってますか?」
「あぁ、それなら朝に兵藤先輩、リアス部長、それにアルジェント先輩の三人に会って聞いたよ」
会わない時もあるが基本的に兵藤先輩とは以前からよく会っていたし、今となっては三人揃って出会うから色々と聞くことは多くなってますね。
「それなら良かったです。既に知ってるなら余計なお節介でしたね。すみません」
「いやボクを心配しての事でしょ?ありがとう小猫ちゃん」
こうして事務的な連絡や確認とかも欠かせずしてくれるのは実際にかなり助かっている。そして、こうして話さないといけない話題があるとそこから会話が続くのがいつものパターンだ。
「…そう言えば、後から知ったんですけど茨くんも神器を持ってるんですよね」
あぁ、兵藤先輩から聞いたんですね。別に口止めとかも特にしてないですし、あの場で神器を出した時点で知られる事は承知の上ですからね。
他に悪魔が多いのは勿論、中でもあの超越者である魔王に色々と訊かれない様にあの場では誤解させる言い回しはしていましたがね。その点ではアルジェント先輩が珍しい回復神器所有者な事に感謝ですね。
「えぇ、一緒にするには中身の格が段違いだけど兵藤先輩の神器の様に神器内に力を持った存在が封じられている封印型の神器だよ」
「鞭って事は攻撃も出来るんでしょうし、アルジェント先輩みたいに回復もこなせるんですから正直ズルすぎます」
兵藤先輩を回復させたのは完璧な裏技なんですが、まぁ訊かれてない事は黙っておきましょう。本来の神器の性能では悪魔を回復させるどころか滅ぼしてしまうんですけどね。
「はは、ズルいかぁ。まぁ便利なのは否定しないけど…あまり使いたくないんだよね」
ちょっと声のトーンを落として言えばそれっぽく聞こえるかな?実際には神器への思い入れやトラウマなんてものはないけど、手札は見せたくないですからね。
「凄い強力な神器なのにですか?」
「神器だからこそかな?」
そんな風に言えば烏の習性から深読みして配慮してくれますね。小猫ちゃんは勿論ですが皆さん優しいですからね。まぁ、実際に変に嗅ぎ付けられたくない気持ちはありますけどね。
「すみません。事情は人それぞれですよね」
とても申し訳なさそうな声色で頭を下げる小猫ちゃん、表情に少し影があるのは、人ではないが小猫ちゃんにも小猫ちゃんなりの事情があるんでしょう。
その後は話の流れをボクから別の方向へ持っていくことで裏の関係で話す機会が増える前の様に何でもないくだらない話が続いていくが…
「そのサラマンダー・富田さんについて詳しく訊いても良い?」
小猫ちゃんの話に出てくるカッパのラッパーが気になって仕方がなかった。気になりすぎて調べたのは完全に個人的な趣味ですね。
そんな風に休み時間に会話を楽しんでいると簡単に時間も過ぎていくもので気付けばもう放課後です。荷物をパパっと纏めると部室を目指した。
「あれ、木場先輩と姫島先輩の姿が見えませんが今日はお休みですか?」
「祐斗は休みね…朱乃はソーナに呼ばれてたけど遅れて来る筈よ」
木場先輩が休みだと告げるその表情が少し薄暗い。何やら思い当たる事でもあるのかボク以外の部員の表情にも変化が見て取れる。
悪魔じゃないから悪夢の仕事には呼ばれないし、そこで何かあったのだろうか。調べ回ったり出来なくなった事もあり、そんな予想しか出来ないがあまり触れない方が無難かと思いましたが…
「部長、昨日から木場の様子がおかしいですよ。気軽に訊くべきじゃないと思うんすけどあいつの過去に何があったんすか?」
昨日とやらを知らないのに加えて特定する様な単語も無いですが、やはり何かしら抱え込んでるんですね。兵藤先輩の必死な訴えもあり、リアス部長が口を開いた。
「そうね…話しておきましょうか。茨くんも部員である以上関わってしまう事もあるでしょうから嫌じゃなければ聞いていって」
そこから語られたのは木場先輩の現在の状況、そして過去にあった聖剣との因縁、教会によって行われた非道なる計画の一端でした。
聖剣計画、その存在は
「聖剣計画…なら木場は聖剣を?」
兵藤先輩は生き残りである木場は聖剣を使えるのかと訊ねていますが、どうせ教会が関わっている計画…確かな成果なんてこれっぽっちも期待できませんよ。そしてその予想は当たりのようです。
「いいえ、その計画では祐斗だけでなく他にも何人もの被験者が居たそうだけど、誰一人として聖剣に適合する事は無かったそうよ…そして、彼らが聖剣に適合できないと結論づけた計画の主導者たちは祐斗たちを"不良品"と決めつけて処分する事を決定したの」
「そんな!教会がそんな事を!?私が教会に居た頃はそんな話聞いた事も…」
驚愕を浮かべるアルジェント先輩。今でも神と教会の教えを大切にしている彼女としてみればとても信じたくはない事でしょう。
「当然でしょうね。聖剣、それもエクスカリバーを扱える者を増やす計画ともなればまず間違いなく教会でもトップシークレット。教会が主導で行ったのか一部の狂信者が暴走した結果なのかまでは悪魔の情報網では拾えなかったけど、聖女として活動していたアーシアが知らないのは無理からぬ事よ」
「……」
「…私が祐斗を見つけた時は既に瀕死の状態だったわ。でも、そんな状態でも彼は強烈な復讐心を持っていたのよ。教会の、人々の為になると信じて辛い実験を共に耐えてきた仲間たちが毒ガスに倒れていく中、どうにか祐斗だけでも助けようと背中を押してくれた彼らの無念を晴らす為にね」
だから、聖剣の事になると頭の中が復讐一色に染まってしまうと言う訳ですか…聞いてる限りはそうなっても当たり前だと思いますがね。
「あらあら、皆さんお揃いですね」
重たい空気が広がり、静まり返っていた部室の空気を変えたのは遅れてやってきた姫島先輩でした。
「朱乃、要件は済んだのかしら?」
「その件でお客様をお連れしました」
外で待っていたのか姫島先輩の言葉と共に生徒会長と副会長が部室へと入ってきた。
「ソーナ、わざわざこっちまで来るなんて何かあったの?」
「実は教会から此方に会談の申し入れが来ています」
「教会から…?!」
リアス部長の驚愕と言った反応は当然だろう。悪魔、堕天使、天使のいわゆる聖書の争いは表立ってないだけで今も続いている。
話がしたいなんて言われても騙し討ちか、それとも話の裏に何か政略があるんじゃないかと勘繰らなければならない。
「勿論教会と言っても、正確にはその使いからですが、明日の放課後にこの地へ来た件について管理者に話したいとの事でした」
とは言え一つの勢力が正式に表の管理者であるソーナ会長を通して、裏の管理者への会談を申し込んできた以上はそれなりの対応をしないと逆に面子を潰しかねないと言う面倒な状況だろう。
「明日の放課後で良いのね。こっちでも準備はしておくわ」
「では確かに伝えましたよ」
「えぇ、ありがとうソーナ」
リアス部長が礼の言葉を伝えると生徒会の二人はそのまま帰っていった。
「なんで教会の人間がここに来るんすか?」
最近の情勢を知ってるボクは何となく予想はつくんですが、兵藤先輩からしてみれば成り立てと言うのもあって何がなんだが分からないでしょうね。
「流石に今は分からないわね。とにかく、今日は契約も入ってないから明日に備えてはやく帰りましょう」
英気を養うと言うのは案外馬鹿にならないものですからね。不安に対して気軽な感じで指示を出せているのもそこまで悪くない。
でも上に何も連絡する素振りがないあたりが管理者として甘いと判断されている一因ですかね。ボクとしては実力者がこの街に集まらないのはありがたい限りです。
「茨くんも念の為に顔を出してもらってもいいかしら?無論、向こうに敵意が無いのを確認してから呼び出させて貰うわ」
「相手を避けて不幸なすれ違いが起きても嫌ですからね。了解しました」
政治的な話になりうるから来ないように言われるか、近くで把握できる様にするかの何方もあり得る話でしたが、そうですか教会の人と会うことになりましたか……またストレスが増えそうです。
「彼はカトリック教会にこそ相応しい、彼ならば間違いなく聖人となるだろう!!」
「え、何を言ってるの? 茨くんはプロテスタントの教えを伝える牧師になるに決まってるでしょ!!」
いや、本当にストレスがマッハで溜まっていく、なんなら現実を認めたく無さすぎてストレスの溜まる音が聴こえてきそうなくらいです。
ポタポタとかそんな軟な音ではなく、ザーと滝が落ちるかの様な勢いでボクの小さな心のバケツへとストレスが入れられていく…
「茨くんの目が死んでます…」
「彼のおかげで此方への当たりも柔らかくなったのは有り難いですが…」
「落ち着いて話をするどころでは無さそうですね」
「あれ、放っておいて良いんですか部長?」
良い訳無いので助けてくれませんか、 たまには先輩らしい事でもしても良いと思うのですが。
「ならばコカビエルを捕らえるのにより貢献した方が彼を迎え入れると言うのはどうだ?」
「なるほど、それならば早速動くとしましょうか」
勝手に人のことを景品にしないでくれませんか、何一つ了承していません。これだから狂った教会の人間は嫌いなんですよ。
「これが聖剣使いの姿なのか、正直がっかりするね。私欲に満ちた物言いで人の事を考えずに喚くなんてね」
助けに来てくれた様な登場の仕方に見えるでしょうが、木場先輩の視界には聖剣しか目に映っていない様です。
さっきまでのやり取りを何処かにおいて目の前で戦闘が始まりました。何でかは分かりませんが兵藤先輩も加わっています。
「好きにやって、勝手に死んでくれませんか?」
心の声が完全に飛び出ましたがこれは仕方がないでしょう。決着は正直どうでも良いですが、兵藤先輩が木場先輩が負けた後に二人を圧倒したのは気分が良かったですね。
名ばかりとは言えエクスカリバー相手にあれだけ立ち回れるとなれば兵藤先輩の価値はかなり高く見られるでしょう。コカビエル相手にも一番期待は出来ますが…
「そう簡単なら神話になりませんか」
いつも通り関係者ではありますが責任のないボクは皆さんの動きを追いはしても、行動を共にすることはありませんでした。
コカビエルとの遭遇から校舎での戦いを見つからないようにしながら見ていましたが、これも以前と変わらない分かりやすい結果でした。
死屍累々とまではいきませんが、学校に張られた結界の中で、コカビエルに立ち向かったオカルト研究部の皆さんは立ってるのがやっとです。
兵藤先輩も善戦していますがダメージを比べればその差は歴然です。そもそも、耐久面は上がっていますが、悪魔以外への攻撃面は何も変わっていないのですから仕方ないでしょう。
「あの量の光の槍を受けてまだ立つか、確かに赤龍帝に相応しい耐久と闘志だが力が足りていない。惜しい、惜しいぞ兵藤一誠…龍足り得る力も備わっていれば素晴らしい闘争ができるというのに…」
「うるせー!!俺を倒せてないのに勝った気になってんじゃねぇ!!」
「威勢も良いようだが、そうだ…龍は宝を失うと怒り狂うのは有名だ。お前の後ろにいる仲間を一人ずつ刺し殺せば、力に目覚めるか?」
兵藤先輩を怒らせるには十分な言葉ですね。ある程度の強化は見込めるでしょうが、それでも感情の爆発力だけではどうにもならないでしょう。
それにしても、狙っているのがリアス部長だけだったらボクはこのまま見守っていても良かったと言うのに…
「まずは赤龍帝程では無いが光への耐性のある小娘からだ」
自身の光の力への想いでもあるのでしょうか? 中途半端に耐えていた小猫ちゃんに目を付けてしまった。
順番にも恵まれないようですね。先がリアス部長だったなら間に合わなかった事を悔やみながら後で飛び出せるのに…クソ烏はクソ烏ですか。
「面倒な事をしないでくれませんか?」
放たれた光の槍と小猫ちゃんの間に立つと自身の光を盾の様に広げる事で消し去った。なんですか先輩…そんな呆けた安心し切った顔は…笑わせないでください。
「ごめん、みんな遅れた」
「光の力でその様な事が出来るとは流石だな」
二人が居るならわざわざ飛び出さなくても平気でしたかね。干渉できる事がバレない様に結界に触れてなかったから合流に気付けませんでした。
いえ、光の力は既に警戒されてますし、これ以上何かあると思われなかっただけマシでしょう。それに状況的にはピンチに駆け付けただけですから問題ありません。
小猫ちゃんを見殺しにするのは気が引けますし、黒歌さんの頼みを無視したとなれば後々くどくど言われそうですからね。
さて、殺せない事は分かっていますが、憂さを晴らさせて頂くとしましょう。まぁでも、ヴァーリさんが間に合わなければ…そういう事もあるでしょう?
コカビエルが駒王町を破壊すると宣言してから俺たちは必死に戦った。今まで戦った堕天使とは違う。裏の世界の勉強でも出てきた正真正銘のヤバい奴だ。
魔王様が来ない事を馬鹿にしつつも俺達の挑戦を受けてやると上から目線で答えてきた。ハンデのつもりなのか仲間に手を出させないとも言って、とことん舐めやがって。
だが、実力差は歴然だ。はい、そうですかと警戒を怠る訳にはいかないが一人で来てくれるなら有り難いとそのまま挑んだ。
中途半端な攻撃は通らないと分かっていたから、基本的に少しでも光に耐性のある俺と小猫ちゃんが前に立って、その補助をリアス部長と朱乃さんでしていた。
それもあくまで時間稼ぎで、その間に俺の神器がブーストを溜めていく、それを俺等の中で一番威力の高い滅びの魔力を持つリアス部長に渡した。
そして、前線に居る戦車である小猫ちゃんと部長がキャスリングで入れ替わって魔力をぶつける。作戦としてこれ以上ないと俺は思えた。
「その年でこの練度は悪くないが…ぬるい!!」
逃げ場は無かったし、滅びの魔力の特性からして効かないなんて事もない。光の力で相殺し、受け入れない分はその身で耐えた。耐えてみせたんだ…これが堕天使幹部コカビエル…
「効いてない訳じゃないんだ!!部長もう一度やりましょう!!」
「えぇ、みんな体勢を整えて!!」
「それを敵が許すと思うのか?」
コカビエルの落胆したような冷たい声と共に今までと比べ物にならない殺気が充満する。
「崩壊までのタイムリミットもある中で効くまで何度でもなぞ愚かでしかない」
振り上げた手の先、上空に無数の光の槍が形成される。防ぎきれない。避けきれない。少しでも、少しでも被害を減らす為に俺の耐性を倍加して前に立つ。
それでも多くの槍がみんなに襲い掛かってまともに立っていたのは俺一人になってしまった。いや、まともにっていうのも強がりだ。それでも…
「あの量の光の槍を受けてまだ立つか、確かに赤龍帝に相応しい耐久と闘志だが力が足りていない。惜しい、惜しいぞ兵藤一誠…龍足り得る力も備わっていれば素晴らしい闘争ができるというのに…」
「うるせー!!俺を倒せてないのに勝った気になってんじゃねぇ!!」
吠えたは良いが戦争だの闘争だの自分本意な考えだけでこれ程の事をしてみせた相手だ。何をしてくるか分かったもんじゃない。
「威勢も良いようだが、そうだ…龍は宝を失うと怒り狂うのは有名だ。お前の後ろにいる仲間を一人ずつ刺し殺せば、力に目覚めるか?」
は……何言ってるんだコイツ…後ろにいる仲間を? リアス部長を、アーシアを、朱乃さんを、小猫ちゃんを、殺す? ただ俺を怒らせる為だけに? 怒った俺と戦う為だけに?
「まずは赤龍帝程では無いが光への耐性のある小娘からだ」
ふざけるな…ふざけんなよ!!そんな事を許してたまるか!!動け!!動かねぇといけねぇんだ!!おい、ドライグ禁手だ!!俺の身体を持っていっても構わねぇから!!
『無理だ…ダメージが大き過ぎる…今の状態で禁手化すれば間違いなくお前は死ぬ。それも倒し切る前に、禁手化自体が無意味だ』
そんな事を言うなよ。あれだろ? 宿敵とかの戦いの前に俺を失いたくないから大げさに言ってるんだろ? そうだと言ってくれよ!!
『すまない…』
怒りで強くなるってんなら今強くなってくれよ!! 失ってからじゃ遅えんだよ!! 小猫ちゃんは大事な仲間で、後輩で、
どうにか間に合わないかとボロボロの身体に鞭を打って駆けるがまだ余裕のあるコカビエルの動きにはついていけない。小猫ちゃんに向けて、槍が真っ直ぐ飛んでいく。
「面倒な事をしないでくれませんか?」
「え……」
小猫ちゃんの前にアイツが、茨の奴が現れた。コカビエルの光の槍よりも強い光を放つとそのまま攻撃を消し去った。そんな使い方も出来たのか…
「ごめん、みんな遅れた」
「光の力でその様な事が出来るとは流石だな」
茨が現れたのと一拍遅れて木場とゼノヴィアもやってきた。本当に遅いんだよ全く、イケメンのくせに、ピンチに現れやがって。
「もう大丈夫なのかよ?」
「あぁ、みんなに本当に迷惑を掛けたけど、もう迷わない!!」
そこからは怒涛の展開と言って良かった。ゼノヴィアがデュランダルと言うめちゃくちゃ強い聖剣で戦った。
バルパーの奴が実験の事を語り、木場が仲間の想いを受け取って禁手化をしてみせた。
何かに気付いたバルパーを殺したコカビエルが世界の真実を告げた。魔王と共に聖書の神も死んだという衝撃的な真実を。
そして、そのコカビエルが茨の手で地に落ちた。あの俺達が手も足も出なかったコカビエルが、ボロボロになって膝をついている。
精神的なダメージを負っているアーシアの事も心配だ。聖剣使いであるゼノヴィアでさえふらつく様な爆弾を喰らったんだ。それでも、今は目の前の状況から目を離せなかった。
「茨…」
「茨くん…」
不安からつい口から溢れたアイツの名前が小猫ちゃんの吐き出した音と重なる。アイツは一体何を抱えてるんだよ…
コカビエルが地に落ちた直後に白い龍が、ドライグの、俺の宿敵である白い龍が現れ、コカビエルを回収していった。
初めて宿敵との出会いを果たしたと言うのに、、今の俺より確実に強いというのも感じたのに、それすらも霞んでしまうのは間違ってるのか?
約束を果たしたついでに倒れ伏している面々をアーシアさんに代わって回復していく。正確に言うと初めにアーシアさんを治して一緒に回復に回る形です。
その間にも戦況は変わっているようで、デュランダル使いと木場先輩の禁手化でコカビエル以外の敵は倒された。バルパーを倒したのはコカビエルですがね。
流石に禁手化しても、兵藤先輩の赤龍帝の籠手の倍加があっても敵う相手ではないでしょう。神器を余り晒したくないですから、使うのは光だけになりますが、問題ないでしょう。
挑発するように相手の光の槍に合わせてボクも光の槍を放ちました。煩わしく思ったのか槍の数が増えますが問題ありません。此方も数を増やしてそのまま応戦します。
そこで興味を持ったのか、光の槍の動き方が変わりますが此方も迎撃は簡単です。そのままコカビエルより数を増やして放ちます。
なんなく防ぐので、更に増やします。防がれましたのでまた増やします。空中に留まるのは辞めた様ですがまだ当たらないので数を増やします。
敵と認識したのか、邪魔者と認識したのかは分かりませんが、攻撃に殺気が乗るようになり、此方へ直接的な攻撃も仕掛けてきました。
光の力を強くして応戦…なんて真似はせずに更に数を増やします。まだ近付こうとしてきますので、数を増やします。逃げ場を無くすように数を増やします。
掠りましたがまだまだ元気なので数を増やします。手足や羽根等の末端に直撃する様になりましたが、まだ数を増やします。
防御に回り、此方の攻撃を防ぐ事に集中し始めましたのでもっと数を増やします。何か喚いている様なので耳を傾けながら数を増やします。
「これはなんだ!?これ程の光を放って何故尽きない!?何故私の邪魔をする!?堕天使を遥かに超える光を何故人間が宿している!?何故だ!?こんな所で俺の望みはぁぁぁ!!」
まだ喋る余裕がある様なので光の槍を増やそうとした所で一気に展開していた光の槍が数を減らしました。綺麗に半分に減り、また減って、追撃のなくなったコカビエルが地に落ち、天から白の龍が舞い降りました。
「悪いがコイツは貰っていく、こんなんでも死なれると面倒になるんでな」
あぁ、そう言えばそうでしたね。楽しい時間と言うのは早く、とても早く過ぎてしまうみたいです。残念ですが、今回の事件はこれで終わりですね。
結果としてはオカルト研究部の皆さんの良い実戦になりましたし、誰一人欠けることもありませんでした。ボクも約束は守りましたし、大団円と言って良いでしょう。
「終わりも近いですね」
戦いの影響で少し壊れた校舎を眺め、ボクをじっと見てくる皆さんを見つめ返して、傷まない身体でそっとその場を離れた。
「何が質で劣るだ。謙遜もあそこまで来ると腹ただしいすら通り過ぎて笑えてくるぜ」
『オーフィスの評価は極めて正確だった様だな』
「派閥のトップを張ってるんだ。黒歌の懐きようからして実力は間違いないと踏んでたが…アルビオン、俺はアイツに勝てると思うか?」
『純粋な力量で大きく劣る部分はない。ただ仕方の無い事だが相性が何処までも悪い…そもそも半減の為に触れるのもダメージを覚悟しなけてはならないのに加えて吸収が全く意味を成さないどころか身を蝕む毒となる事を考えると禁手となっても今のお前では厳しいかもしれん』
「
『龍となる事で光も多少は耐えれるだろうが、相手の光の総量が未だに未知数な事を考えると危険な賭けだろうが…負ける事は無い』
「ふっ、本当に楽しめそうだ」