Fate/loneliness 4 Fate Grand order -the survival plan- 作:からすまそういち
第■節 ■■■
「ほら、もうお昼だよ」
「ううーん、……」
声をかけられて目を覚ます。
「シャルルさん?」
「はは、まだ寝ぼけてるのかな。ご飯は作ってあるから」
彼は笑ってベッドから降りた。
私も降りようとする。だが、体が重くて上手く起き上がれない。
「大丈夫? 大変だよね、ごめん」
彼はそう言って私の肩に手を伸ばした。
彼の手を借りてやっとのことで起き上がる。その時、気付いた。
お腹が、膨らんでいる。
腹部がもっこりと膨らんでいるのだ。
まるでバスケットボールでも詰めたかのように。
まるで――
何かが、そこにいるかのように。
「――っ」
「顔色悪いよ? まだ横になる?」
「いや――大丈夫。大丈夫だから」
「おかあさん、大丈夫?」
心配そうな顔で覗き込むように子供が私を見ている。
「レオ、ご飯だから、いっといで。お母さんはボクが見るから」
「わかったー」
レオと言われた彼はにっこりと笑ってとてとてと部屋から出ていった。
「無理しないでいいから。無理なら休もう」
「シャルルさん、これは――」
言いかけて、やめた。
立ち上がって、歩き、部屋を出る。
初めて見る部屋。
初めて見る家。
でも、その内装も間取りも、私は確かに知っている。
何年も過ごしてきた――私達の家だ。
階段を降り一階に行って、リビングに出る。
食卓には多くの人が座っていた。
クルースニクは長男のミツヒデと談笑しながらサラダを食べている。
エウクレイデスは次男のヨイチと長女のアグネスに挟まれてスープを飲んでいる。
ユークリッドはフランスパンを剣を握るように両手に持ちながら小躍りして三男のヒデヨシと次女のキレカを笑わせている。
カカは四男のレオの口にスープを運んであげている。
乳母車に座る三女のクリスはキャッキャと笑っている。
「「「「「「「「「「おはよう」」」」」」」」」」
彼らは私を見ると笑顔でそう言った。
ああ、そうだ。
私達は――負けたんだった。
ロキに、負けたのだ。
負けて、彼に管理される世界で生きることにしたんだった。
なんで忘れていたんだろう。
こんな大事なことを。
お腹を撫でる。
これから新たな生命も産まれるというのに。
「リツカ、本当に大丈夫?」
シャルルが私の肩を持った。その手つきだけで心配そうにしているのが分かる。
「うん、大丈夫」
私は置かれた手に私の手も添えた。
大丈夫。
これからは新しい世界で生きていくから――
「リツカ! それは現実じゃない! ロキの幻術だ!」
遠くで声がした。
誰の声だろう。
思い出せない。
懐かしい、聞き覚えがあるはずなのに。
「リツカ! ボクだ! シャルルだよ! シャルル・レ・モーガン!」
シャルル?
シャルルならここにいるわ。
「目を覚ますんだ! ボク達はまだ負けてない! ロキは悪あがきに幻術でボク達を諦めさせようとしている! 認めちゃダメだ! こんな世界、信じちゃダメなんだ!」
どうして?
皆笑ってる。
幸せそうじゃない。
「その中には、その中には――ロキがいない! ロキは管理者として演算領域にいなければならない。だから、彼がボク達と笑い合うことはできない。ロキは孤独なんだ。例えボク達が幸せでも、それがロキの望みなんだとしても、こんな寂しい結末は信じちゃダメなんだ!」
ロキが――いない?
こんな幸せな家庭を望んだのに?
何処にもいないの?
「いいかい。ロキの望みは人類の繁殖だ。君が来たから彼は繁殖が可能になったと言った。でも本当は違う。最初からそれは可能だったんだ。ロキは性別を変えられるし、相手もそうだ。ボクやカカどちらかを女にしてしまえばよかったんだ。でもそうはしなかった。ボク達の尊厳を守ったんだよ。優先したんだ。ボク達がボク達であることを。そんな優しい神様が、独りでいてはダメなんだ。こんな未来は間違っている。幸せの皺寄せをロキに押し付けるだけの世界なんて――間違ってる」
ああ、それは、確かに。
そんな悲しい結末を、私は望んでいない。
「目を覚ませ! 戦いはまだ終わっちゃいない!」
そうだ、まだ。
戦いは終わってない。
独りよがりな神様を、
そのまま独りにしておくわけにはいかない。