Fate/loneliness 4 Fate Grand order -the survival plan- 作:からすまそういち
断章六 ロキ
俺の中にあったのは燃えるような怒りと失望だけだった――
神とは身勝手だ。驕り高ぶり、自分が何よりも尊い存在だと勘違いしてやがる。
俺は神が嫌いだった。自分があいつらと同じカテゴリに分類されていると考えるだけで虫唾が走る。
苛々する。
世界を燃やしてしまおうかと考えてしまうほどに。
――ある日のことだ。
神々が集う夜会に招待された。
普段はそんなくだらないゴミ共の集会になんて行かない俺だが、今回ばかりは何かを感じて行くことにした。
タダ酒が吞めるんだ。悪くない。気分を害すれば出ていけばいい話だしな。
グラス片手にホールを歩いていると、テラスに行く美女に目がいった。
あれは――スカディ。神々の花嫁。麗しき令嬢。
おなじ巨人のよしみだ。ちょっかいかけてやろう。
俺はそう思って彼女の跡を追ってテラスに向かった。
「やあお嬢さん。お暇かな。この俺がお相手しても?」
腰を折り仰々しく礼をする。
「ああ、ロキか。私に何の用だ」
「冷たいねえ。流石は冬の女王と言ったところかな? はは、なんてこたァねー。美人を見つけたから夜のお誘いに来ただけだ。どうだ? 俺と今夜。一晩でも」
「下賤だな。失せろ」
「ひぃー、寒い寒い。お堅いねえ。俺はいずれここの王になる男だぜ? 今のうちに関係結んどいていいんじゃないか?」
「王? お前が? 笑わせるな」
スカディはやっと表情を崩した。
「お前は王にはなれぬよ」
「えぇ? わかんねーじゃねーか。案外こういうのが良い王になったりするもんだぜ? お堅い奴よりもさ。ハハッ」
おどけてみせた。
俺は王になどなるつもりはない。
クソみたいな奴らの上に立ったところで自分までクソになるだけだ。王など目指さない。
だが、
「何故俺が王になれねーって?」
断言してみせたスカディに少しムッとした。
なるつもりは勿論微塵もないが、そうはっきりと断言されると少しムカつく。
俺に王の素質がねーだと?
んなわけねーだろ。
俺はトリックスターだ。何にだってなれる。
ヒーロー、ヴィラン、モブ、何にだって。
王にだってなれるさ。
俺様が望めば。
だがスカディの姿勢は崩れない。
「お前は王にはなれぬよ。王には責任が伴う。お前は責任を負うことはない。何処にでもいて、何処にもいないからだ。そんなものに王は務まらぬ」
「分かったようなクチ聞いちゃって。そういうスカディちゃんはどうなのさ。自分なら王になれるとでも? 俺よりも良い王に」
「はは、馬鹿な。私が王だと? それも在り得ぬ。私が王になるなど――在り得ぬ話だ」
スカディは儚げに笑う。
「私達に王は向いてない。愛が足りぬのだ。世界に対する愛が」
「世界に対する愛?」
「ああ、そうだ。全ての生命に対する慈しみ、それが我々にはない。それがない限り、我々に王など務まらぬよ」
スカディは王というものに幻想を抱いている様だった。
確かに、その考え方だと彼女に王は務まらないだろう。
命を切り捨てることをしないなど、それは王から最も遠い感情だ。
「はン、まあいいさ。じゃあなスカディ。後で駄々こねても応じねー……こともない。寂しくなったらおいで」
「二度とごめんだ。はは、ではな」
スカディと別れ、俺は夜会を出た。
それから暫くしてのことだ。
また別の宴に俺は乗り込んだ。招待はされてなかったがオーディンとの息子の契りを盾に無理矢理乗り込んでやった。
俺はそこで神々の秘密を暴露してやった。
神がどれだけ愚かで醜いかをこれまでもかと話してやった。
集まったゴミ共の顔がたまらなく面白かったさ。
結局その会は遅れて来たトールに顔をブン殴られて追い出されたが。
その時に言ってやった。
「世界は炎に包まれる」と。
そして、そのとおりになった!
太陽は呑まれ大地は灼熱に包まれた。
ラグナロクが来たのだ!
はははは!
俺の言った通り、思い通りに世界は滅んだ。
クソクソクソ共の世界は終わったのだ。
いい気分だ。
勿論俺も死んでしまったが、最高の死だった。
俺は最高の機嫌で神の座で眠った。
もう二度と起きることはない。
起きてほしくない、座に。
だが、間宮が俺を叩き起こした。
「君に話がある」
なンだよ。
こちとら気分よく死んでんだ。
寝かせな。
「世界が大変なことになっている」
知るかよ。
神は死んだ。
あとはニンゲンがやるだけだろ。
ニンゲンの仕事だ。俺は関係ねー。
「神よりももっと厄介な存在が暴れている、と言っても?」
あ?
神よりも上位の存在?
そんもんいるわけが――
……待て。
俺は死んだ。
終わった存在なのだ。
なら、なんで俺がここにいる?
「君にまだ役割があるからだ」
役割、だと?
「私が君に役割を与えよう。
そう例えば――王」
王……。
それから、間宮は現状をつらつらと話した。
その話を聞くと確かに、そんな状況だと誰か特別な奴が出しゃばらないとどうにもならないだろう。
「でも、どうして俺なんだ?」
「私と一番波長が合うのが君だったからだ。これなら、身体の受け渡しをスムーズに行える」
「成程ね。……わかった。やろう」
俺は間宮の甘言に乗った。
損な役回りを押し付けられているのは分かっている。
だが、興味があったのだ。
『お前は王にはなれぬよ』
スカディが言ったあの言葉。
本当かどうか確かめてやろうじゃねーか。
そう思って、俺は間宮の身体を受け取って無人島に降り立った。
そして、今に至る。
――王にはなれぬ、か。
はは、どうやら、そうだったようだ。
あいつらの為に誠心誠意身を粉にして働いてきたというのに、裏切られた。
この裏切りの神が、裏切られたのだ。
笑えねー。
「ありがとう、道を譲ってくれて」
なんだ、シャルル。勝手に俺の世界に入ってくんな。
「最期に、訊きたいことがって」
なんだよ。
「本当は、途中でやめられたはずなんだ。世界の維持なんて考えず、好き放題できたんだ。いつでも投げ出せた。でもお前はそうしなかった。なんでそこまでしてくれたんだ?」
はン、今更そんな質問かよ。
それで最後の質問にしてくれよ。
じゃあ教えてやろう。
それはな――
お前達を、愛しているからだ。
ハッ、嘘だよ。
本当のことなんて、言うわけねーだろーが。