Fate/loneliness 4 Fate Grand order -the survival plan- 作:からすまそういち
断章七 メアリー・スー
生まれた瞬間に、孤独を知った。
私のことじゃない。
私を生んだ人。
「彼」の孤独を知った。
それは私を喚んだ彼のことではない。
この世界を演算した彼のことだ。
生まれた瞬間から世界がハリボテの作り物だと分かっていた。
自分が数式の中にしか存在できないデータでしかないと、はっきり認識していた。
悲観はない。
自分がただの
そんなことよりも。
彼のことが気がかりだった。
彼は特に罪を犯したわけではない。
咎められる生き方をしてきたわけでもない。
それでも世界に否定される彼を見て、私は不憫に思った。
可哀想に、思ったのだ。
それは同情なんかじゃない。
私は彼だから、彼の苦しみを直に知っている。それだけなのだ。
その苦しみを押し殺して、彼は運命を受け入れる。
それが、許せなかった。
そんな彼が私に助けを求めたのだから、助けてあげたいと思った。
「ありがとう」
彼は言う。
「私の為だったんだね。全部、私のためだったのに」
いえ。
いいえ。
貴方のためではないのよ。
「私がそうしたかったから。私がそうしたいと思ったから。それだけなのよ」
「それでもさ。君は私を受け入れてくれた。だから、今度は私の番だ」
彼は私をそっと抱き締めた。
ああ、ああ。
優しい貴方。
世界を滅ぼすこともできたのに。
それを選ばずに独りで消えていくことを選んだ貴方。
もう、独りにはさせないわ。
「ありがとう、私は孤独じゃなかった。君がいた。君という――光が」
二人で核に落ちる。
怖くはなかった。
これからは誰も独りじゃない。
私も彼も孤独じゃない。
二人だから。
どこまでも落ちていける。
どこまでも、どこまでも。
エピローグ おしまい
私達はカルデアに戻ってきた。
「お疲れ様、今回も優秀だったね!」
ダヴィンチちゃんが労ってくれた。
「殆どシャルルちゃんがやったようなもんだけどな」
みっちーは首を傾げる。
「そだね……」
「それでもさ。彼らは君がいたからこそ集結できた。君は大事な鍵だったんだよ」
「そういってもらえると助かるぜ」
「さて、お客さんが来てるよ」
ダヴィンチちゃんは自身の後方へと手を伸ばす。
「お客さん……?」
視線をずらして彼女の後ろをみると、そこにはドレスとタキシードを着た男女二人がいた。
というか、メアリーと間宮だった。
「やあ、こんにちは」
「はろはろー」
軽く手を振りながら彼らが話しかけてくる。
二人とも憑き物が落ちたかのような晴れやかな笑顔だった。
「なんで居るんですか。死んだのでは?」
「死んだら来ちゃダメってことかい?」
「いや、そういうことじゃありませんけど……」
「私達は特異点で心中した。つまり、二人とも死んだ過去の人間というわけだ。つまり英霊として登録できればサーヴァントとして召喚できるのだよ」
「あーなるほどそういう手口ですか」
「手口いうな。とにかく、これからは暫くカルデアにお世話になるつもりだから私達の部屋をよろしくね!」
「サンタ仮面っていうのもわたしやりたい!」
「チェイテピラミッド姫路城? だっけ? そこにも行ってみたいよ! ああ、今年のハロウィンが待ち遠しいなあ! なあ、メアリー!」
「うん! 行きたい行きたい!」
「ああそうだよメアリーに聞いたんだけどここに、え、エミヤさんがいるっていうのは本当なのかな⁉ かな⁉」
「えへ、詩。実は私握手してもらっちゃった♥」
「なんだってぇ⁉ ずるいよぉ! いいなー! 私も握手してみた……いやいや恐れ多いよ! でも羨ましい!」
「もう手洗わないもーん」
「くそっ……勇気がっ、私にも勇気があれば……ッ!」
「じ、自由すぎるこの人達……」
「あ、ちなみに私のセイントグラフは後でプレゼントボックスに入れておくよ。配布鯖ってやつだね。メアリーの方はピックアップ期間中だから戦闘で使いたかったらきちんと期間内にセイントグラフを引いておいてくれたまえ! ロキピックアップもお忘れなく!」
「……? 誰に話してるんですか?」
「いや『こちら』の話だ。君に言ったわけじゃないよ。ともかく、これからもよろしく、ということさ!」
「はあ……」
またわけわからん仲間が増えてしまった……。
ま、いいんだけどね。味方は多いに越したことないし。
さて、じゃあ今日の日記の書き出しはこうかな。
ドクター。
私は今も元気です。
今日は新しい仲間が二人増えました。
またカルデアは騒がしくなりそうです。
でも大丈夫だよ。
私、これからも頑張るから。
だから、安心してね。
―――
自らの
それは孤独な男が孤独から解放される話。
彼の求める物語だった。
彼は揺り籠に身を預けながらその経過を眺めていた。
彼は演算装置を抱き締める。
愛しいものを抱くように。
優しく抱き抱えるのだった。
こうしている間も彼は核に落ち続けている。
一人、孤独に。
しかし、彼はもう独りではなかった。
彼は目を閉じ、静かに眠りについた。
嗚呼、良かったと。
穏やかな表情を浮かべながら。
――ゆっくりと揺り籠は揺れる。
揺り籠は揺れる。
揺り籠は揺れる――
あとがき
はい、からすまです。
いやー、終わりましたね。
如何でしたしょうか。
この物語が少しでも貴方の心の中に残る作品であれば幸いです。
ここからは少し裏話。
この作品の構想は二千十七年から始まっていました。今回の完結に至るまで二年の歳月が経ち、十九年には私の中で完結していました。
それからこうして投稿までさらに二年かかるという、五年近くは完成までかかってしまった作品です。
今回の作品にその五年分の積み重ねが集まっています。
だからといって誰かにとっては微々たる集積かもしれません。
無視してしまえる路傍の石なのかもしれません。
ですから、これを読んでいる貴方の心に少しでもこのお話のかけらが残ってくれれば私はそれを嬉しく思うです。
とてもとても。
嬉しいのです。
なんにも感じなかったよ、という場合は単に私の力不足です。申し訳ありません。
読んでくれたというただそれだけの行為に賛辞を。
有象無象の中からこれを手に取ってくれて、ありがとう。
あと賛辞を贈るべきはここまで付き合ってくれた私の相方でしょう。
彼がいたから私は完結させることができた。
彼という読者がいたからこそできた芸当でした。
はは、本人には顔合わせてそんなこと言えませんけどね。
では私の後書きはここまでにして、相方の御今に締めを預けましょう。
御今さん、どうぞ!
正直、完結できるとは思っていませんでした。
ここだけの話、進捗がないままに過ぎた期間はとても長く、流れてもおかしくはない作品でしたので、いまこの後書きを書いている事自体、不思議な感覚です。
とは言え、読んでいただいた貴方にはさしたる程の時間でもない事でしょう。
貴方がここまで来た時間を長いと感じなかったのなら、我々はそれを祠らしく思います。
さて、後書きが長くなってしまいましたね。
では皆様、ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
これにて終劇です。
ばいばい!