Fate/loneliness 4 Fate Grand order -the survival plan-   作:からすまそういち

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第2話

 

 第一節 拒絶乖離島 -ミッドガルド- 

 

 

 私とみっちーは島の端部、港に到着した。

 通信はなく、一時的な英霊召喚もできない。前回の特異点と同じだ。

 でも、今回はみっちーがいる。

 私達は港から見える巨大なビルを目指して歩くことにした。

 そしてビルの前に着くと、その脇。花壇の中で仰向けになって寝ている人物を発見する。

「どうする? 声かけるか?」

 みっちーはその人物に指を差した。その人物は……男性のようだった。花壇の中で倒れているところ以外見た目に不審な点はない。

「現地の人だしね。もし襲ってきたら後は流れで」

「オッケー。――おい、にいちゃん。大丈夫か?」

 みっちーが駆け寄って声をかける。

「むむ……、あと五分」

「定番の断り文句言ってんじゃねえ!」

「はっ! ………zzz」

「起きたんじゃねえのかよ!」

 男の身体をみっちーは大きく揺さ振る。

 すると、やっとその男は目を覚ましたようだった。

「――お前は誰だ?」

 先程まで寝ていたとは思えない程はっきりとした問いだった。視線もしっかりとこちらを捉えている。

「やっと起きたか。俺達は外の世界から来た。起き抜けで悪いがここの状況を教えてほしい」

「『外の世界から来た』? ――成程。では君達が『例の』」

「カルデアのことを知っているんですか?」

「いや、知らない。カルデア、というのか。君達は何しにここに来た?」

「説明しましょう」

 私はその男にカルデアについて説明した。そして、特異点を修復しにきたことも。

「把握した。よし、君達は私達が待つ人物だったようだ。まさか本当に来るとはな」

「待っていた? 私達を?」

「そうだ」

彼は胸ポケットから電子端末を取り出す。

「私は二年寝ていたのか。えーっと、ここで暫く――二十八年と四カ月だから、大体三十年くらいか。それだけ待っていたことになる」

「三十年? そんなにですか」

「この場所は特殊でね。時間の流れが一部ループしている。だから外から来た君達にとっては一週間強の期間に過ぎないが、中にいる私達は無限に時を過ごしているのだ。ちなみに私達の記憶はループしないから時間の経過を認識できる。気にすることはない。ここで何年経とうがそちらの時間経過には関係のないことだ」

「しっかし三十年間か。その間何してたんだ? ここには聖杯を持ってる原因がいるはずだ。なのに二年も寝てたっていうのか?」

「……ああ、私達だけではどうしようもなくてね。結局、ロキに(くだ)ったというわけさ」

「ロキ――」

「知らぬ名ではないだろう。北欧神話最大のトリックスター。神話を終わらせたもの。『閉じる者』。その巨人の名を」

「おいおい、相手が神様だって? そんなの聞いてないぜ。確か特異点の反応は弱かったんだよな? ワンチャン放っておいてもいいくらいの」

「ダヴィンチちゃんはそう言っていたけど……」

「反応が弱い? 成程。やはりそういうことか。奴には荷が重すぎるというわけだ。

 ――さて、ここで話すには少々説明しづらい。付いてきてくれるか?」

「……わかりました」

 彼に促され私達はビルの中に入り、エレベーターに乗った。

「屋上から見ればここがどんな風になっているか分かるだろう」

 エレベーターを乗り継ぎ、最後は階段を上って私達は屋上に着いた。

 彼は外に指を差す。

「ここからならよく見えるだろう。これが今の島の風景だ」

 私は手すりに摑まって外を見渡す。

 外は異様な光景だった。

 島の左斜め方向の敷地には巨大な観覧車やジェットコースターが見えた。遊園地、だろうか。他にも数多くの遊具が置いてある。

 島の中央奥には巨大な教会堂が見えた。

 右斜め奥には荘厳な西洋城が見える。そのどちらも実際に存在すれば世界遺産に認定されそうな規模と風格を兼ね備えている。私はあまり詳しくないので分からないが、似た建築物が実際にあってもおかしくない。

「左に見える観覧車がある地区が『ユークリッド・ワンダーランド』、中央手前が中央広場、中央奥の教会が『サン・ピエトロ大聖堂』、右奥の城が『常暁城』だ。ほら、城の辺りがほの暗いだろう? あの辺りは常に夜なんだ」

「へえ、変わってますね」

「直接ロキに降った者達はこうやって自分の『領地』を手に入れた。そこで自分の好きなように生活しているというわけさ」

「そういうあんたの領地はここなのか?」

「いや、違う。中央広場とこのホテルがある地区は『共有地区』だ。私の領地はないよ。私はあくまでもロキの統治に関して中立派、だからな」

「つまり、いるんですね。反対派が」

「ああ、シャルル・レ・モーガンという名だ。あいつとそのサーヴァントだけが反対派だ」

「じゃあ、そのシャルルっていうヤツを仲間に引き込めれば楽になんじゃん。な?」

「だね」

「さて、それはそうなのだが、君達は一つ大事なことを忘れている」

「――?」

「それは私が『中立派』だということだ。この意味が、分かるな」

「マジかよ。でも正直言って喧嘩売るなら止めといた方がいいぜ。俺様はサーヴァントだからな。怪我じゃ済まないぜ」

「ふふ、そう言えば言っていなかったな。私もサーヴァントなんだ。名はクルースニク、クラスはセイバー! さあ、君達が本当にここを救えるか、試させてもらおうか!」

「ちっ、しゃあねえな。やってやんぜ! 行くぞマスター」

「おうとも!」

 クルースニクとみっちーとの戦いが始まった。

 クルースニクは胸から十字架のアクセサリーを取り出したと思えば、それは全長一メートル程に巨大化した。十字架の頭を握り剣に見立てたように構える。

「それがテメエの得物か? 剣のつもりかよ」

「これが私の剣だ。切れ味を試してみるか?」

「はン、その必要はねェよ!」

 みっちーは弓を構え、放つ。

 クルースニクはその矢を叩き落としてみせた。

「アーチャーか。なら間合いを詰めれば!」

 クルースニクは走りこちらに向かう。

「甘いねえ考えが!」

 みっちーも立ち向かって刀を振り下ろした。

 それから、クルースニクとみっちーの立ち合いが繰り返されるが、拮抗して決着が付きそうにない。

 クルースニクは剣以外の宝具を解放するつもりがないようで、拮抗しながらも余裕を見せている。

 それでも立ち合いは激しいもので、ガンドを撃ち込もうにも隙が中々見えない。

 後方からみっちーが受けた傷を回復させるくらいしか手立てがない。

 まずいな。令呪が三画しかないので迂闊に使用して宝具を解放させるわけにはいかない。

 みっちーには宝具を使用せずにクルースニクを黙らせてほしいが、難しいか?

「俺に任せろ!」

 私の考えを察したのかみっちーが叫んだ。

「部分的宝具解放――」

 一気に後ろに下がって間合いを取り、弓を構え直した。

「ただの矢でどうにかなるとでも⁉」

「それが、ただじゃないんだよな」

 みっちーは不敵に笑ってみせる。

「――『燃えよ矢よ心と共に(アンリミテッド・ファイヤー・ワークス)』」

 みっちーは火矢を放った。

「こんなもの!」

 クルースニクは火矢を叩き落とそうと再び剣を振り下ろす。

 しかし、剣は矢に触れるなり溶けて折れ曲がった。

「なに――ッ⁉」

 矢を退けることには成功したものの剣は半分以上が欠けた。クルースニクはそれに驚きを隠せない。

「みっちー⁉ 今のは⁉」

「へへ、先輩の技を真似してみたんだ。教えてもらってたんだよ。固有結界を弾に閉じ込め撃ち込む方法を」

「エミヤオルタさんか!」

「そういうことよ! 極小の宝具展開、これなら魔力を節約できるぜ! どうだいクルースニクさんよぉ! これでもまだやるってかい⁉」

「――成程。君達の実力は分かった。半端者ではないようだ。君達を信じよう」

「よし!」

「元々、中立派で在り続けたのも君達をここで待つためだった。これで合点がいった。確かに私達が待っていたのは君達だった。少し、そこで待っていてくれ」

「?」

「合図があるんだ」

 クルースニクはそう言って、ある場所に行った。屋上に備え付けられた鐘つき堂だった。

 なんでこんなところにそんなものが、そう思った時。

 ガーン、ガーン。

 クルースニクは鐘を鳴らした。

 その鐘の音は、とてもよく響いた。島の隅々まで届くのではないかと思うほどに。

「これでよし。これで宣戦布告は終わった」

「宣戦布告?」

「領地を持つ者達に知らせたんだよ『今から行くぞ』とな」

「そんなことしない方がいいんじゃねえの?」

「儀式的なものだ。気にするな。それよりも、シャルルを仲間に引き込むのだろう? ならば、私に付いて来い。彼に会わせてやろう」

 彼は付いて来いと手を振った。

 何が何だか分からないまま、私達は彼についていくことになった。

 

 

 

 ――鐘の音が島中に鳴り響いた。

 大聖堂で祈りを捧げる聖女は顔を上げる。

「ああ、ついに」

 城の玉座に座る男は溜息を吐く。

「この時が来たか」

 観覧車の一室、中から外を眺める人形は笑う。

「じゃあお出迎え、しなくちゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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