Fate/loneliness 4 Fate Grand order -the survival plan-   作:からすまそういち

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第8話

 

 

 第四節 聖人(バーサーカー)

 

 

 大聖堂がある区域に入り、大聖堂の前で車が止まった。

 私達は降り、大聖堂の扉を開け中に入る。

「――ついにここまで来ましたか」

 修道服の老婆が祭壇の前に立っていた。

「マザー。時は来ました。もう逃げることはできません」

「どうやらそのようですね。今日が審判の日、ということですか」

 私達は身廊を進んでいく。

 老婆は両手に短機関銃を構えた。

 あまりにも不釣り合いな光景。優し気な微笑みを浮かべる彼女はそれでも私達に銃を向けていた。

「――この世界は美しい」

 彼女は語る。

「外の世界はもうありません。あるのはここに私達のみ。ここでは全てが自由で誰も飢えに苦しまない。素晴らしい世界ではありませんか? ねえ、侵略者さん」

「――確かに。その通りかもしれません。でもこの世界は息詰まっている。何処にも辿り着けない。だから三十年もかけて貴方達しかいないのではないですか?」

「はは、それでいいではありませんか。発展など、なくていい。重要なのは健やかでいることです。飢えを知らぬことです。多くの人が死に絶えた。故に、飢える人間がいなくなった。それは私の理想です。誰も苦しまぬ、良い世界ではありませんか?」

「リツカ。彼女に何を言おうが無駄です。彼女の真名(な)はアグネス・ゴンジャ・ボヤジウ。通称マザー・テレサ。本来は慈しみある穏やかな修道女ですが、今の彼女は違う。狂信者(バーサーカー)。その性質に歪められてしまっている」

「全ての人間を殺して――全ての人間を飢えから解放します。それが今の私に与えられた神託なのです」

「こいつ、ナイチンゲール女史みてえなこと言ってんな。バーサーカーってみんなこんなものなのか?」

「とにかく、私達の考えはすれ違っているということです光秀。戦うしかない」

「ちっ、しゃあねえな。ばあさんをボコる趣味はないんだけどな」

「そう言ってられるのも今の内かも」

 シャルルはそう言って椅子の後ろに隠れた。

 私達にもそうしろとジェスチャーで促す。

 私は倣って椅子の陰に隠れたが、みっちーは前に突っ走った。

「こういうのは正面突破でいいっしょ!」

「あんのバカ! 少しは手の内を見ようと思わないのか! アーチャー! 支援を!」

「御意」

 与一はシャルルの横で陰から少し身を乗り出して弓を構えた。

「ババアがそんな物騒なモン持ってんじゃねえよ!」

「生前は握ることもありませんでしたが、今は違います。私は戦わねばなりませんから。我が理想の為に」

 マザーはみっちーに向かって発砲した。ズダダダと弾が連発される。

 みっちーは刀で全て弾きながら前に進む。すごい。銃弾の雨が激しくて陰から身を乗り出すのも躊躇うほどなのに、彼は前に突き進んでいった。

「おらァ!」

 ついに目の前まで接近した彼はマザーに向かって刀を振り下ろす。彼女はそれを銃身で受け止めた。

 そして、みっちーを蹴り飛ばす。

「っ⁉ こいつ――」

 その際に修道服の中の隙間から現れたのはショットガンだった。彼女はマシンガンからそれに持ち替え、みっちーに発砲する。

 みっちーは身をよじりながら後ろに下がり、これを避けた。

「オイ! なんだこいつ!」

 それでも散弾は避けきれず、節々から血を流しながらも彼は吠える。

「マザーは聖人認定を受けた人間だ。聖人とは、人間の上位に存在する生物。彼女の場合はその精神性から受けた認定だが、今の彼女はその認定を全て戦闘能力に変換している。つまり、彼女は人間であって人間ではない。戦闘能力でいうなら神霊に近い存在まで昇格しているということだ」

「なんで先にそれを言わねーんだ!」

「言う前にお前が突っ走るからだろーが!」

「悪ィ、マスター! 宝具を使うぜ!」

「分かった!」

「――『本能寺の変』!」

 大聖堂が炎に包まれた。

「――ババア、死ぬ覚悟はできたか」

「――殺す覚悟なら、とうに」

 こうして、化け物同士の戦いが始まった。

 みっちーは結界のおかげで身体能力が大幅にブーストされ、さらに得物は火に包まれて凶暴性を増す。

 しかし、それでも。

 彼女と同格だった。

 攻撃は受けられ、返され、撃たれる。

 勿論、彼女だって消耗している。

 修道服が焼け焦げ、銃は何本も取り替えて戦っていたが全て銃身が折れ曲がったので捨てた。今はコンバットナイフ二本を手に持って応戦している。

 ――負ける。

 私はそう思った。

 与一は二人の組手が激しすぎて迂闊に介入できずにいる。私だってそうだ。戦いを目で追うのがやっと。ガンドの焦点が合わない。

 みっちーの身体には生傷が大量に出来ていた。致命傷は受けていないが、彼女と比べてダメージが大きい。

 どうすればいい?

 そう自分に問いかけた時には既に、体が動いていた。

「マザー・テレサ!」

 立ち上がりながら叫び、走る。

「な、なにしてんだ――」

 焼け落ちる天井、煤の匂い。肌を焼く熱さ。

 その全てを振り払って。

「こっちを見ろ――」

 私と彼女の視線が合う。

 そして彼女は私に向かってナイフを投擲し、私は彼女にガンドを撃ち込んだ。そうして体が止まった隙にみっちーの刀が彼女の首を捉える。

「――成程。そこまでは想定していませんでした。『合格』です」

 彼女は諦めたように目を閉じ、彼女の首は宙に浮いて炎の中に落下した。

 私に投げられたナイフは与一が撃ち落としてくれた。

「危ないことをすんじゃねえ!」

 結界を解除したみっちーは私の元に駆け寄る。

「本当、いきなり無茶をしないでください。驚きましたよ」

「与一さん、助かりました」

「私はできることをしたまでです」

「とにかく、出ましょう。燃え落ちてしまいます」

 シャルルに促され、私達は大聖堂を出た。

 焼け落ちる大聖堂、それを外から眺めていた。

「……でも、これで良かったんでしょうか。まだ、彼女とはそんなに話していなかったのに」

「彼女はバーサーカーです。少し話し合った程度では分かり合えなかったでしょう。戦闘は仕方のないことでした」

「落ち込んでる暇はねえぜ。まだ区域は一つ残ってんだ。あとはそこを攻略すればいいんだろ?」

 みっちーの傷はもう回復していた。もう元気そうに笑っている。

「はい。次はクドラクの城。常暁城。開けぬ夜の城です」

 シャルルはそう言って、島の北東を指差した。

 昏き宵に包まれる、城の方へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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