この話は元々薫ちゃんが誕生日に書いた話なのですがどうあがいてもネタがエイプリルフールだったのでエイプリルフールに投稿します。
それでは、よろしくどうぞ。
「シンジ、起きてくれっ!」
「なんだよ……朝っぱらから……」
俺の名前は須田シンジ。どこにでもいる普通の新人スタッフ高校生。
そんな俺を起こしにきたのは瀬田薫……瀬田薫?
「なんでお前俺んちいんの?」
「なんでって……私は君の幼馴染だぞ?」
「存在しない記憶では?」
俺と瀬田薫が幼馴染? 瀬田薫と幼馴染なのは千聖ちゃんだろ。
俺はただのしがない新人スタッフだし、瀬田薫とそんなに接点もない。むしろ男である俺の分まで女の子にちやほやされるので嫌っているまである。
「お前の幼馴染は千聖ちゃんだろ? 何言ってんの?」
「千聖? それは誰だい? 私の幼馴染は君だけだよ」
「千聖ちゃんのこと覚えてないの!?」
「まず、千聖という名前の子猫ちゃんを見かけたこともないね……」
「うそだ……」
俺、どんなパラレルワールドに迷い込んだんだろ。千聖ちゃんの他にもハロハピやファンの子、麻弥ちゃんの名前を挙げてみたが目の前の薫は全部知らないというのだ。
そんなの訳がわからねえよ! と俺は家を飛び出し、街に出るとその理由を理解する。
なぜなら、この街にいる女の子たちは……全員、瀬田薫だったからだ。
男は今のところ俺だけ? のようで、俺以外の男子は見当たらない。男子っぽい瀬田薫はいないし。いやまずなんだよ男子っぽい瀬田薫って。男みたいなもんじゃん。
「やあ、シンジくん! 今日も儚いね」
「げっ瀬田薫」
「げっ、とはなんだい? せっかく君の恋人が君を迎えに来たのに。さあ、私と共に学校に向かおうじゃないか!」
「……また君かい? 薫。彼は、幼馴染の私と登校するんだ。君が恋人だろうとそれは譲れないよ」
しかも外出たら恋人を自称する瀬田薫が俺を迎えに来てるし。
その上幼馴染の薫は恋人の薫を敵視してるし……なにこれ。頭おかしくなりそう。
まあ、どっちも瀬田薫だしどっちと登校してもいいよ……俺こだわりないし。
「まあまあ、二人とも。いがみあわずに三人で登校しよう? な?」
「シンジがそう言うなら……」
「三人で登校、しないといけないね……」
「それに、そんな喧嘩されても困るよ。だって俺、どっちでもいいもん。どっちも瀬田薫だし」
あ、やべ、つい本音が出ちゃった。俺の言葉に、固まる二人の薫。
二人の薫は、一度顔を見合わせると俺の方を向いてこう聞いてくる。
「……シンジ……君はそんなことを思っていたのか……?」
「……シンジくん……そんな、ひどいよ……」
「ああ、これはその、言葉の綾で、どっちも変え難いぐらい好きって意味なんだよ……わかる?」
「「それならそうと言ってくれ〜!」」
あ、ちょろいわ! こいつらちょろいわ!
俺が咄嗟に考えた言い訳に騙される二人の瀬田薫。喧嘩を止めて一安心する俺に、さらなる刺客がやってくる。
「あっ、シンジお兄ちゃんっ!」
「シンジお兄さん! 元気にしてましたか?」
「……またか」
「「?」」
あー多分この幼女と中学生も瀬田薫なんだろうなあ! この流れからするに!
でも、この二人は今の瀬田薫よりかは好きかもしれ……ゲフンゲフン! このままだとロリコン呼ばわりされるところだった。
「あの……学校が終わったら私といっぱい遊んでくれるよね? だって、シンジお兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん」
「違うよ、シンジお兄さんは私のお兄さんだよ!」
「「むぅ〜〜〜!!!」」
それでしれってちっちゃな瀬田薫二人も喧嘩するんですね。俺をめぐって。
頼むから瀬田薫は俺のために争わないでくれ。めんどくさいから。
「……また後で二人一緒に遊んであげるから」
「「……本当?」」
「うん、本当。だからとりあえず学校に行かせてくれるか?」
「「うん!」」
あっ、笑った顔すっごくかわい……いやなんで俺は瀬田薫にかわいいなんて感情を抱きかけてるんだ。
この気持ちを紛らわすため、足早に学校に向かう。
っていうか学校も瀬田薫まみれじゃん。俺以外全員瀬田薫じゃん。
「やあ、麗しき生徒の子猫ちゃんたち! 今日も君たちの儚い顔を見られてとても嬉しいよ」
「先生」
「ここでは持ち物検査をしているよ。学校に儚くないものを持ち込んでしまうと学校の儚さが損なわれてしまうからね……」
「風紀委員」
もうなんでもありだなこの世界。そろそろ同じ顔の見すぎで頭クラクラしてきた。
そんな俺に話しかけてくる影がひとり、いや瀬田薫がひとりと言ったほうがいいか。
「須田くん」
「……どうしたの? 瀬田薫」
「この前君にシェイクスピアの詩集を見せてあげたのは……そ、その、べ、別に君のためではないんだからねっ!」
「ツンデレもいるのかよ」
なんで全員瀬田薫でラブコメの主要属性押さえようとしてるんだよ。この世界線おかしいにも程があるだろ。
ああ、後ろから足音がする。ああもうどうせ瀬田薫だろうな。
「せんぱ〜い♪今日も先輩はこの世の終わりのような顔をしているね! 先輩のその儚くない顔、私は好きだよ♡」
「は、はわわ……だめだよぉ、薫ちゃん。先輩が悲しんじゃうよぉ」
「……あなたは雑煮、好き?」
「あらシンジさま、ごきげんよう♪わたくし、シンジさまと会えてとても儚い気持ちですわ」
はいはい瀬田薫瀬田薫。こいつら全員瀬田薫と瀬田薫と瀬田薫と瀬田薫だもんな。
それでさ、また来るんだろ?瀬田薫が。俺知ってるもん。
「こんにちは〜っ、シンジくん! 新曲の恋はカクレクマノミ、聴いてくれたかな? 実はね、この曲はシンジくんのことを思って歌って踊ったんだ♪」
「……バイオレットムーンが、私を呼んでいるのさ……」
「よしよし、シンジくん。困ったことがあればママになんでも言っておくれ」
「……シンジくん、どうして私以外の子猫ちゃんを見るんだい? 君には、私だけ見て欲しいのに……」
ああ、なんかもう頭おかしくなりそう。頭瀬田薫になりそう。
っていうかもう捌ききれない数の瀬田薫が俺の元に来てるよ!ああ、もうこれをどうしたら……
「キラキラドキドキ♪」
「悪くないね」
「ブシドー!」
「私にはギターしかないの……!」
「笑顔になりましょ!」
「……お前、かわいいな」
「ミクロンミクロン!」
「唯一抜きん出て並ぶものなし、だな」
「ちょっと待て今なんか別の何か混ざってなかったか?」
今さっきなんか違う世界線の瀬田薫が混じってた気がするけど俺は知らない。シラを切らないといけない気がする。
っていうかもう、なんなんだよ。俺、多分このままだと、瀬田薫がゲシュタルト崩壊しそう。いやもうしてるか。
右を見ても瀬田薫。左を見ても瀬田薫。どこを見ても瀬田薫なこの世界。
どうあがいても瀬田薫な世界線に絶望した俺は、そっと目を閉じた……
〜
「……はっ!?」
「……大丈夫かい? 随分とうなされていたようだけど……」
「瀬田薫っ?!」
「ああ、瀬田薫だよ……?」
ああ、なんだ、さっきのは夢だったのか。とんでもない悪夢だったよ……
でも、夢でよかった。本当に、夢でよかった。あれが現実だったら、俺生きる希望無くしてたよ。
っていうかあれ? なんで俺、瀬田薫に起こされてるんだろう? どうして俺は瀬田薫に聞いてみる。
「なんでお前俺んちいんの?」
「なんでって、幼馴染だからだけれど……」
「……は?」
〜つまり……そういうことさ〜