もう気づけば六月、一年ももう半分ですね!今年の夏こそ瀬田薫の水着が来ることを願っています。水着祈願の小説も今執筆中なので七月には投稿できるかと……思いたいです……
それでは、よろしくどうぞ。
「ああ、愛する君はたくさんのジュリエットを笑顔にする皆のロミオ……でも、本当の君はロミオの仮面をつけたジュリエットのはずだ。だからせめて僕だけは君の、君だけのロミオでありた」
「すまない」
〜
「びぇぇぇぇぇん!!!!! ぢざどざんま”た”フ”ラれ”たよ”ぉ”!」
「あー、そうね。またいつものアレね。残念だったわね。かわいそうね」
「せめて傷ついた俺の心を癒すかのように心を込めてよぢざどざん!」
突然だが俺は好きな女の子にフラれた。それはもうあっさりとフラれた。いかにも反応に困ってますと言わんばかりの神妙そうな顔でフラれた。
今はそんな儚い失恋に心を痛め、心優しき友人に優しさを乞うているのだが、肝心の心優しき友人である少女、白鷺千聖さんのお言葉が辛辣すぎて逆にパックリ割れたハートに塩を塗り込まれているようだ。
「で? また薫にフラれたのね?」
「左様でございます」
呆れを前面に押し出したような表情で千聖さんはそう言うと、大きくため息をつく。
それで、さっき彼女が薫と呼んだ人物、それが肝心の俺の想い人。
薫ちゃん──フルネームは瀬田薫ちゃん。俺の通う高校の近くの女子校に通っていて、そこの演劇部に所属している高校三年生。スタイルがよく身長はモデルさん並み! 中性的な顔と王子様みたいなキャラがとってもカワイイ! バンドもしていてギターもとっても上手! という非の打ち所がない女の子なのだ。
彼女とは一年ぐらい前くらいに初めて出会い、当時やさぐれていた俺は唯一の趣味である小説を書くことでさえもヤケクソ気味になっていて。
そんな俺を見つけた薫ちゃんは、何も言わずに名前も知らない俺が小説を書く姿をただただ優しく見守ってくれて。その優しさは、俺の人生に光を灯してくれた。
その時だろうか、本格的に彼女を意識し出したのは。ライブハウスで再会した時は思わず勢いで一回目の告白をしてしまった。もちろんフラれた。
ちなみに、そーんなかわいい薫ちゃんと千聖さんはなんだかんだで幼なじみであり、彼女と友人になったのもほとんど薫ちゃん関連の情報を聞き出すためだったり。まあ全然その情報貰ったとしても活かせてないけど……いつのまにか相談乗ってもらってるうちに大親友になってたけど……
「あなたって、たしか私が知る限りでは軽く十回以上はあの子にフラれてるはずだけどいい加減心が折れたりしないのかしら……」
「え? 寧ろフラれるたびに好きになるよ? 断る時の気まずそうな表情がカワイイ」
「さてはあなたバカなの?」
千聖さんは真顔でそう俺に聞く。俺は真剣な顔で本気だと答える。それに千聖さんはまた大きなため息をついた。
もうあなたの精神力だけは認めるわ、と諦めたように千聖さんは嘆く。
「でもさ! 俺何回も何回も千聖さんやいろんな人から貰った情報に沿っていろんな胸キュン♡セリフ考えてきたのになんでいっつもフラれるの?! 胸キュンセリフ吐けば俺が読んだ漫画ではうまくいってんのに! 漫画では!」
「……顔の違いじゃないかしら」
「えっさも俺がイケメンじゃないみたいに言うのやめて?」
薫ちゃんのファンである友人の上原ちゃんから貸してもらった少女漫画ではうまく行ってたもん。男が女の子の髪についてたフライドポテト取ったら恋が始まったもん。
もうこれは千聖さんに協力を仰いで薫ちゃんの頭にフライドポテトをつけてきてもらおうかな。でも絶対却下されるだろうな。
「あとは、告白の文がいちいち気色が悪いのよ。この前なんて薫がカクレクマノミが好きなことを知って考えたセリフは『俺は君のイソギンチャクになりたい』、その前は薫が雑煮が好きなことを知って考えた『君という出し汁の中に俺という餅が入ってできるそれは愛の雑煮』……シェイクスピアもドン引きするレベルのひどい告白文しか考えられないのはむしろあなたの才能よ誇っていいわ」
「え……でも俺が読んでた漫画ではこんな感じのセリフが結構出てたし……」
「分かったわインスパイア先を今すぐ変えなさい」
上原ちゃんの漫画はノットイケメンの俺には参考になりません、と。こうやって改めて現実を突きつけられると結構クるものがある。来世は薫ちゃんの彼氏の東京のイケメン男子にしてくださいなってお願いしよう。
でも今回のセリフは結構自信あったんだけど。なぜなら薫ちゃんが大好きなシェイクスピアが書き上げた一大ロマンス『ロミオとジュリエット』をモチーフに考えた告白だったから。愛する薫ちゃんとなら悲劇なんて百八十度覆してやるけどな!!!
「……よって今回のセリフもダメね。ロミオとジュリエットというモチーフの選択は悪くはないけれどあのセリフはただの薫もどきよ。どうしてあなたは『好きです』みたいなシンプルな告白ができないの?」
「なにそれ薫ちゃんロミオと共演したジュリエット役さんのマウントですか〜?」
「なんでそうなるのよ!」
薫ちゃんへのぽわぽわ溢れる想いを『す・き・で・す』なんて短すぎる四文字に収めるなんて無理。もともとこの想いは原稿用紙が何万枚あっても足りないのに。
むしろ送ってみるか? 千聖さんなら薫ちゃんの住所ぐらい教えてくれるだろうしこの行き場のない恋心を形にした文を彼女に送ってみようかな。いや気持ち悪がられる理由コレ?
「あー! 俺も千聖さん同様薫ちゃんと幼なじみだったらな……『もう、起きてってば! 起きてくれないとキスで起こしちゃうんだから♡』って起こしてくれるんだろ……そんな薫ちゃんに『キスなんかで起きるほど、俺は軽いオトコじゃないぜ……』とか言っちゃってさ! へへ……へへ……」
「あら、私はこんな幼馴染がいたらとっくに張り倒しているわよ?」
「率直……」
千聖さんのいい意味でも悪い意味でもストレートな言葉を真に受けなんともいえない喪失感に襲われる俺。
千聖さんと知り合う前、もうすでに何十連敗。千聖さんと知り合った後にもついに十連敗超えちゃってるし。
「でもさ、薫ちゃんはどうして俺じゃダメなんだろ。俺、薫ちゃんのことがこんなに好きなのに。もし付き合えたら、世界中の誰よりも好きでいるのに」
「……そうね。でも、こんなことを言うのも気が引けるけど、あなたがこれ以上傷つかないように、もういっそ身を引いた方がいいんじゃないかしら」
「……たしかに、それも一つの手だとは思う。そうやって相手の幸せを願えるイイ奴もいるけど、俺はそんなにかっこよくないよ。むしろ薫ちゃんとイイ感じの男全員あの子といい雰囲気になるたびに腹下せ! って思うし! だいたい、俺は薫ちゃん自体が欲しいわけで好きって言えた美談とか君のおかげで強くなれた……的なのが欲しいわけじゃないし! 次の恋を見つけるとか、俺には絶対無理。だって俺は薫ちゃんが、薫ちゃんだけが好きなんだ」
俺は薫ちゃんへの想いを、ぽつり、ぽつりと千聖さんに吐き出していく。その度に、薫ちゃんとの思い出が蘇ってくきて。
俺を見つけたらこっちを向いて笑ってくれる顔。俺が小説を書いている時、いつのまにか隣に座ってくれて見守ってくれている優しい顔。俺の告白を断る時の気まずそうな顔。俺は、その全てが愛おしいんだ。
「……俺はさ。女々しくても、ねちっこくても、カッコ悪くても、あの子を好きでいる間は俺はあの子だけを想って、あの子だけに恋してたいんだ。だから今日も諦めきれずこうやって千聖さんにアドバイスを貰ってリベンジしようとしてる。そうでしょ?」
「あなたが一途なのは分かったけど、実際薫にとっては会うたびに告白してくるのだからハタ迷惑だと思うわよ?」
「うっ」
「まあ、それがあなたのいいところでもあるけれど」
そう言って、優しく微笑む千聖さん。千聖さんのその優しい顔は、薫ちゃんにどこか似ていて。
そんな千聖さんにまた薫ちゃんを重ねて、今すぐにでも会いたくなる。あの子に会って伝えたいんだ、この想いを。
「……少なくとも、私はあなたの背中を押すようなこともしないけれど、あなたの告白を止めることもしないわ。あなたの納得がいく形で頑張ってみればいいんじゃない?」
「んもう、そんなこと言って俺と薫ちゃんのキューピッドをしてくれようと頑張ってくれるあたり千聖ちゃんは素直じゃないな〜☆」
「あら、私がその気ならいくらでもあなたの悪評を薫に伝えてあげられるのよ?」
「すみませんでした千聖様」
と言っても、決定的に違う面もあるけど。薫ちゃんが太陽だとしたら千聖さんは氷……あっ今悪寒がした。悟られたかもしれない。
俺はそんな冷たく……いや、少し素っ気ない部分もあるけど心優しい千聖さんに向かってこう宣言する。
「よし、俺は決めたよ! 俺はまた薫ちゃんに来週告白するし再来週も……いやもう毎週告白しよう! 何度も会うと好きになるって心理学もあるし! よーし、それじゃあ帰ってラブレターを……って千聖さん……?」
「もしもし花音? 私の知り合いが薫のストーカーになりかけ……」
「違うって!!!!!」
薫ちゃんに告白することを決意する俺の隣でしれっと流れ作業のように薫ちゃんのご友人に連絡する千聖さんを俺は全力で止めた。
〜
Love sought is good, but given unsought, is better.
〜
〜
それはとある日の夕暮れの帰り道。今日も今日とで騒がしかった彼と別れ、ひとり歩いていたら私は例の彼の想い人……薫と会った。
幼馴染と会えるなんて儚い、なんていつものように不可解なことを言ってくる彼女を適当にあしらい、私はずっと気になっていたことを彼女に聞いたのだ。
「……ねえ、あなたは彼が何度も告白してくることに対してどう思っているの」
そう、それはずっと気になっていたことで。今まで、何度も何度も繰り返されてきた彼のしつこい告白に薫は困って吐いても嫌な顔は全くしていなかったから。だがしかし、それなのに彼の告白を断りつづけているのがただ不可解だったからだ。
彼女が本当に彼をなんとも思っていないのならば、少しであれ疲れたような顔をするはず。でも、いつも薫はむしろ、どこか嬉しそうに彼の告白を聞いている。それならば彼女は彼と付き合ってもいいかもしれないのに、一向に彼女は彼の告白を受け入れようとはしない。
……歪だ。あまりにも歪すぎる。彼の告白を断るならばどうして嬉しそうに彼の告白を聞いているのか。彼の告白を嬉しそうに聞くならどうして彼の告白を断るのか。
あまり考えたくないけれど、薫が彼に抱く感情が何なのか想像はついていた。でも、それでいて密かに彼女が優しい答えを出してくれていることを願っていた。
──だがしかし、薫からは私が願ったものとは、それから予想していたものとは大幅に違う答えが返ってきたのだ。
『ああ、もしかしてあの彼かな? 彼が告白してくれるのは、とても嬉しいよ。一度も彼の想いを鬱陶しい、なんてことは思ったことはないし、むしろいつ彼に告白されるのか楽しみで、いつも心を躍らせてさえいる』
『それならどうして彼を振るのかって? そんな顔をしているね。それは……彼が私に告白をしてくれるたび、私が彼の告白を断るたび、私は愛されている、と実感するんだ』
『ああ、いつも彼の告白を断るのは決して彼に落ち度があるわけではないよ? 彼は私を、私のことだけを愛してくれる大切な人だ。
一途に、純粋に。そうだな……彼のことは恋愛的な意味で好きと言っても、過言ではないかな。いいや、むしろ好きでたまらない。彼が私に向かって話してくれる言葉が、感情が、全て愛おしい』
『……でも、もしも私が彼の恋人になってしまったりなんてしたら、今のように私のために悲しんでくれない、苦しんでくれない。これじゃあ、もう二度と彼の愛を深く感じられないじゃないか』
『それに……彼の告白を断った時の彼の傷ついた時の表情が、一番彼の愛を感じられて、とてもたまらないんだ』
そう一通り言い終わると、うっとりしたような笑顔で彼が渡したものであろう薔薇のアクセサリーを愛おしそうに撫でる薫。
私はそれを見て、つい「あなたは『彼』ではなくて『自分のことを愛してくれる彼』が好きなのではないか」と言いかけた。
──でも、それを言ってしまったら『彼』の想いは──
私は言いたい言葉を全てぐっ、と飲み込み「幼馴染の君にしかこんなことは言わないけれど」といつものキャラでおどけてみせる薫の瞳を見つめる。
その目に、光は宿っていない。口角はまるで彼女の心の歪さを表すかのように不自然につり上がっている。
……たしかに、彼女が何か抱えているのかもしれないと疑ったことは多々あった。この前だって、彼と話しているときに彼が薫に好きと言った途端、にこりと不気味な笑みを浮かべたところを何度も見かけたりもした。そのほかにも、彼が発した彼女に向けられた言葉に対して異様に反応したり、おかしいところはたくさんあったのに。
私はそんな彼女の歪みを目の当たりにしながらも、目を背けていたのだろう。だが、それと同時に、彼が、彼なら、この子がいつのまにか抱えていた闇を解けないか、なんて夢見てしまう。
でも、薫が彼に向けているのは歪んだ愛のようなナニカだ。彼女のソレは彼の純粋なそれとは、程遠いモノで。
私はただ何もできないまま、彼と彼女が笑い合える日に想いを馳せることしかできなかった──
〜
Love sought is good, but given unsought, is better.
〜
ちなみに途中で出てきた英文の訳はこのお話のサブタイトルと一緒です!薫ちゃんの本心を知らないまま読むときと薫ちゃんの本心を知ってから読むときで感じられる意味が変わるかと思います。
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