俺の担当バ、マンハッタンカフェも進路を決める時期だ。

カフェが後悔しないように真摯に向き合わないと。

だって俺は、トレーナーだから。

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第1話

「お疲れ様、カフェ。昨日の疲れは残っていないかい?」

 

「はい...大丈夫です。...トレーナーさん」

 

「それは良かった。昨日の引退レースは最高だったよ。3年間の締めくくりには相応しい」

 

 

「はい...トレーナーさんのお陰でURAも優勝出来ました」

 

「可愛いなぁ!カフェは!」

 

「あ...ふふっトレーナーさん♪」

 

頭を撫でられながら赤面しているウマ娘の名は【マンハッタンカフェ】。日本ダービーを皮切りに中距離以上の重賞を総なめにし、URAの初代チャンピオンに輝いた、俺の自慢の担当バ。

 

そして、

 

俺を奇っ怪な生活に誘った張本人だ。

 

 

いや、自ら彼女を中心とした【奇っ怪な日常】に飛び込んだのだ。誘ったは違うか。

 

例を挙げるとキリがない。電気が勝手に消えるのは日常茶飯事。突然身体を押されたり、気が付けば謎の電車に乗っていたり。トレーナー室にたづなさんを模した化け物が出た時は流石に死を覚悟したモノだ。

 

奇っ怪でそれでいて刺激的だった。俺とカフェと彼女の【お友だち】。実体の無い存在を数えるのは妙な感覚だけど、3人で結果を残してきた。

 

特にお友だちの存在は大きかった。

 

 

カフェは幼少期から彼女に追いつくため、ハードな走り込みをしてスタミナを付けていた。基礎を造ったのはお友だちと言っても過言ではない。俺は走り方を教えただけ。

 

そんなカフェも

 

「引退かぁ...」

 

しみじみとカフェの耳を触りながら呟く。

 

 

「んっ...///...はいっ」

 

おっと...流石にいつまでも耳を触るのは無遠慮だったかも。

 

「卒業後の進路は決まった?もうそろそろ考えておかないと」

 

「...はい。それが...まだ...」

 

 

頬を僅かに染めながらカフェは続ける。

 

「果てに私は...あの子の隣を走り、追い越す事が出来ました...」

 

「目標を見失っちゃった?」

 

契約当初にお友だちを追い越そうと言ったのが懐かしい。

 

 

「いえ...新しい目標が出来ました」

 

 

「ウマ娘界の...繁栄です」

 

 

「繁栄?」

 

「...覚えて、いますか?夏合宿で...私と競争したあの子を...」

 

 

覚えている。砂浜にカフェの他にもう1つ、足跡が見えていた。

 

「...あの子がトレーナーさんに興味を持ったのは...貴方が見に目えない何かを...受け入れる事ができるからです」

 

「未練を残したまま...命を落としたのでしょう。...私は、そんな子を少しでも...減らしたいと思ったんです」

 

「うん!...そっか!」

 

あのお友だち以外にイマイチ興味を示さなかったカフェが...っ!

 

「かのシンボリルドルフ会長は【全てのウマ娘が幸せに暮らせる世を創る】と言う目標があると聞いたんだ。カフェも相談してみたらいいと思うよ。きっと助言をくれるはずさ」

 

「そう...なんですね。わかりました...相談してみようと思います」

 

カフェのしっぽが緩やかに揺れている。シンボリルドルフに丸投げするのは忍びないけど、きっとカフェなら

 

 

「より良い世界にできるはずだ」

 


 

 

「早速シンボリルドルフに空いている日がないか聞きに行こう。菓子折りとか用意した方が良いかな?」

 

「はい。やはり...手ぶらと言うのは...」

 

仮にもいち生徒に進路相談をするとなれば、何も無しは筋が通らない。

 

今から買いに行かないかとカフェに話しかけようとした瞬間...

 

 

ザー...ザー...パチン

 

カーテンがひとりでに閉まり、電気が消えた。いや、もう流石に驚かない。

 

「カフェ、丁度良いから、これから買い物に行かないかい?お友だちのお陰で戸締りをするだけで部屋を出れるからさ」

 

 

あははと笑いかける。

 

「トレーナーさん...実はもう一つ相談したい事があるんです...」

 

 

「私は、強い競走バです。多くの実績も残してきました」

 

 

...?何が言いたいんだ?カフェは。

 

 

「...完全にそうとは言いきれませんが、優秀なウマ娘の子どもは、実績を残しやすい傾向にあります...メジロ家などがいい例です」

 

「トレーナーさん...コンテンツが拡大する為には、何が必要だと思いますか...?」

 

 

「カフェ...?急に何を」

 

 

何時にもなく金色の瞳が、闇の中で爛々と輝いている。

 

 

「いいから...答えて下さい...」

 

 

「...っ!」

 

早く答えなければいけない気がする...!

流れからして、ウマ娘界の発展に必要な物だよな。それは...

 

「スターの登場、だと思う。シンボリルドルフやオグリキャップ。そして、」

 

「カフェの様なスターが」

 

 

「はい...正解です♪」

 

微かに口角が上がった様に見える。どうやら間違ったわけでは無いみたいだ。

 

「私は...燻っている誰かに指導し、少しでもその子が納得出来る走りをさせてあげたいと思っています」

 

 

それなら...

 

「トレーナーはどうかな?競走バがトレーナーになるのは珍しい事じゃないし、何よりカフェには実績がある」

 

 

「俺が教えてあげる事もできるし、【繁栄】には良いアプローチだと思うんだ」

 

 

「トレーナーになるのは...良いアイデアだと思います。いえ、トレーナーさんと一緒に働けるのなら...天職かも知れません...」

 

「でも...こうは思いませんか?」

 

「私の子どもは強いと...」

 

 

...恋愛も大事にしたいという解釈で行こう。カフェの為にも、自分の為にも。

 

「確かにトレーナーと言う仕事は出会いが無いかもしれない。女性トレーナーの方はよく分からないから桐生院さんにでも聞いてみ」

 

 

瞬間、勢いよくソファに叩きつけられた。

 

「痛っ!」

 

見上げるとそこには、獲物を狩る肉食獣の様なカフェが舌なめずりをして俺を見ていた。

 

「ここには誰もいません...♡私たち以外...お友だちも、誰も...♡」

 

 

「トレーナーさん...♡作りましょう♡」

 

「私たちの子どもを♡」

 


 

...抵抗など出来るはずがなかった。

 

 

あの後はなすがままに貪られ、証拠として写真も撮られてしまった。

 

...ひとつ解せない事がある。

 

 

「燻っているウマ娘を助けたい。みたいなのは嘘だったの?少なくとも俺の目には本気に見えていたよ」

 

「あれも...紛れもない本心です...」

 

「でも、私は...貴方が欲しかった。それは何よりも【私】の願いです...」

 

「ははっ...参ったなぁ。君が女優の世界線もあったのかもしれないね」

 

「ふふっ...そうかも知れません」

 

「これからもよろしくお願いします...♡」

 

「トレーナーさん...♡」

 

彼女は最後にキスを堕とした。




マンハッタンカフェのキャラストーリーを主に見て書きました。

ちょくちょく出てくる【繁栄】という言葉は、トレーナーのマンハッタンカフェに対して「マンハッタンは高い所を意味しているのではなく繁栄を意味しているのかもしれない」(うろ覚え)から取りました。

女優ネタも突っ込めて満足です。

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