Prologue
戦争は終わった。かつて人類を襲った謎の敵性体、セイレーン。この広い海から現れ、猛然と人類に対し攻撃を仕掛けてきた。
その脅威は陸にも及び、人々は内陸へ、内陸へと追い込まれていった。その状況を打破するため、当時広い海のまだ見ぬ開拓地…通称フロンティアでの開拓支援を打ち切り、巨大軍産企業IMCが戦線に加わった。
そこで生まれた兵器、タイタン。それを操る上級兵士パイロット。それらの必死の抵抗で、セイレーンを陸から追い出すことに成功。人類は一時の安寧を勝ち取った…
だがそれも束の間、セイレーンという共通の敵を失ったIMCが、戦果を笠に見捨てたフロンティアの資源に対して権利を主張し始め、横暴を働き始めた。
フロンティアの土地は踏み荒らされ、掘り返され、そしてIMCに奪われた。そんな中、IMCに対抗する新たな民兵組織、ミリシアが立ち上がった。
彼らは自分たちの土地を守るために戦い、そして勝利を掴み、自由を勝ち取った。ようやく、長い長い人類同士の愚かな争いが、終わったのだ…
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タイタンと、戦艦…その残骸と死体の浮く海を見下ろしながら、膝を折る。銃を持つ手にも力が入らず、そのまま落としてしまう。
だかそんなもの、今はどうだっていい。戦争は終わった…だが、俺の戦友達は俺を残して逝ってしまった。
度重なる『再生』による自我の崩壊、戦闘を積み重ねたことによる心身の損傷…理由は大別してその二つ、前者で暴走した仲間は…隊長だった俺が殺した。残った仲間達も、後者で皆死んでしまった…生き残ったのは、俺だけだ。
残されたのは戦うしか能のないこの身体と頭、所有権のリセットされた仲間達のタイタンコア。そして彼らの遺品…
羽根飾り付きのデータナイフ、擦り切れたバンダナ、何度も修繕されたスカーフ。存在証明のドッグタグに、形見のヘルメット。最後の仲間に捧げて来た、戦友の銃。
これから先、俺は何を目的に生きればいい…?『再生』の弊害で、パイロットになった当初に守りたかったものなど思い出せない、戦い抜いたら共に生きたいと思った仲間もいない。ただ、目の前にある戦場のことだけを考えて生きていた日々。
そんな空っぽで虚ろな人生に、果たしてどんな意味があったのか…いや、無意味ではなかったはずだ。少なくともフロンティアの平穏を守り切ったことに間違いないのだから。
「……ッ!」
ようやく穏やかになるであろうフロンティアの海、それを呆然と眺めていたその時だった…何もなかった空間がひび割れ、その内から禍々しい艦船が海面へと現れる。
セイレーン、その量産型の駆逐艦。しかしその姿を見た瞬間、全身の血が沸き立つような感覚に襲われる。
ああ、そうか。これだ、これが残された俺に与えられた使命…あれこそが、人類の敵なのだ。あれを滅ぼすことだけが、今の俺の存在理由。戦いしか知らない、出来ない俺に与えられた役割…
「……フォローモード」
だか今この場で、奴らと事を構えるには少し厳しい。故にまずは拠点の確保、戦力の拡充が先決だ。
《了解ですパイロット。追従します》
呟くように指示すれば、後方の林から大きな影がこちらに来る。丸いボディに猫の眼のようなカメラアイ、細身の腕部に逆関節の脚部。
軽量級タイタン・ノーススター、機体番号はNS-0001。俺専用にチューンナップされた、特別な機体。
「プロトコル:2、任務更新。これよりARES師団第86ラボへ向かいこれを制圧、セイレーンとの戦闘の拠点とする」
相方とも言えるその機体のAIに、指示を入力。これからの戦いの為には、拠点を構える必要がある。それも、俺のような化け物に最適なものが…
《了解。プロトコル2:任務更新、目標基地まで凡そ125km。パイロット、搭乗を推奨します》
そのまま屈んだタイタン…ノースのコックピットが口を開けるようにして開く。脇に抱えたヘルメットを見つめ、それを被る。すぐさまHUDが表示され、目的地がマークされる。
「……また頼む」
《ノーススターシステムをパイロットに移行》
一瞬の暗がり、すぐにディスプレイに外の景色が投射される。まずは拠点の確保だ、古巣といえども容赦はしない。俺の仲間達の生を弄んだ、その報いを。まずはお前達に受けさせてやる。