Azur Fall   作:Isaac/アイザック

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一応戦闘なしの、中休み回

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1-4

「指揮官様、あなたはお休みにならないのですか?」

《……交代で休憩だ、ドロズとデービス…ラストリゾートのパイロット二名が今は休んでいる》

 

暗い夜の海を駆けながら、量産型イラストリアス級にいるあの指揮官様へと問いかける。返答は簡単な、そんな受け答えだったが。

 

襲撃を退けた後、日中からずっと警戒を解いていない彼。もう日が沈み、かなりの時間が経ったというのに、未だにあの巨大な兵器…タイタンから離れず、不思議な形の武器を手に海を睨んでいた。

 

「ですが、もうずっと見張っておられます…少しはお休みになられては…?」

《……問題ない。IMCとの戦時中は5日間ずっと起きて、かつ戦っていた事もある…それに比べれば軽い》

 

そう言って、また彼は黙り込んでしまいました。仕事熱心で、かつかなりの現場主義だというのは理解できましたが…いささか無理をし過ぎでは、と思ってしまいます。

 

というより、5日間戦闘続き…あの襲撃が無ければ冗談で済ませられただろうが、日中の活躍を見てしまってはそれがとても嘘とは思えません。一体どんな環境で戦っていたのでしょうか…

 

《……現状は異常なしか…そちらはもうすぐ交代だ、あと10分》

 

そんな私の思考などつゆ知らず、淡々とこちらの哨戒スケジュールを伝えてくる指揮官。その声からは疲労の色を感じられず、隠しているのか疲れていないのか…通信越しには判別が出来ませんでした。

 

「はい…かしこまりました…」

 

ですがもうこれ以上詮索するのも無礼でしょう、通信を切ってまた周囲へと意識を戻します。すると遠洋からこちらに近づいてくる艦が…あの指揮官様の艦隊、そのリーダーを任されているらしい方でした。

 

「はぁい。お元気かしら、ロイヤルのメイドさん?」

 

鉄血の重巡洋艦、プリンツ・オイゲン様でした。どこか飄々としていて、本心を隠すのがお上手そうな方。少し苦手な手合いの方です…

 

「ふふっ、そんなに警戒しなくてもいいわよ。今は協力し合わなきゃ、でしょ?」

 

「えぇ、まぁ…そうですが…」

 

相変わらず、この方は掴みどころがないと言いますか…とにかく何を考えているのか分かりづらい方です。

 

そんな私の様子を面白がるように、クスクスと笑いながら私と並ぶようにして海を行きます。

 

「私の指揮官、気にかけてくれて助かるわぁ…どれだけ言っても聞かないのなんの…」

 

呆れたように、しかし嬉しさを隠しきれないような声で呟く彼女。確かに指揮官様はとても真面目なお人なのでしょうけれど、どうにも頑なな部分があるようです。

 

「だ、か、ら。ロイヤルのメイドさんにお願いがあるんだけれど…」

 

そしてプリンツ・オイゲン様の言葉に、私は嫌な予感を覚えてしまいました。こういう時、大体ろくでもない事を頼まれるのは目に見えています…とはいえ、ここうしている以上、上手く言い逃れられないのもまた事実。渋々、話だけはと思い、続きを促しました。

 

「あの分からず屋を、休ませたいの。あの人、本当はもうラストリゾートのお調子者達が起きてるのに…まだ見張ってるのよ」

 

なんと…ラストリゾートのお二方が休んでいるというのは嘘だったらしい。指揮官様は、無理を押して、私に嘘までついてああしていたというのです。

 

「という訳で、私だけじゃなくて他所のあなたからも言ってもらえれば、多分効くと思うのよ」

 

そう言って私から離れ、通信を開いたプリンツ・オイゲン様。

 

「お疲れ様指揮官。今から戻るわ、出迎えて頂戴…えぇ、疲れたの。ハグの一つでもなければやってられないわ……冗談よ。じゃ、また後で」

 

今の相談などおくびにも出さず、何でもないように冗句を交えて彼にそう告げて切った彼女は、悪戯っぽく笑い、私の方に向きます。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

まるで散歩にでも誘うかのような軽い口調で、私へと告げた彼女。そのまま踵を返し、さっさと彼のいる空母へと戻ってしまいます。慌てて追いかけながら、私は思わず尋ねていました。

 

「その、どのくらいの勢いで言えば…?」

 

「思いっきりで良いわ…あぁ、淡々と説教する方が効くかもしれないわね」

 

悪戯っぽく笑う彼女は本当に楽しそうで…そんな彼女が彼を慕っていて、本当に心配しているのが伝わってきました。であれば不肖このベルファスト、一肌脱ぎましょう。

 

 

 

「……どういう状況だ、これは…?」

 

空母に戻った私たちは、リージョンと呼ばれたタイタンから彼を降ろし、甲板に正座させています。ヘルメットは素顔を部外者に晒さないため取れないそうですが、銃は傍に置かせて話を聞く姿勢にさせました。

 

「さぁ?ベルファストに謝らなきゃならない事があるんじゃないのかしら?」

 

そんな指揮官様を見下ろしつつ、愉快げに笑っているプリンツ・オイゲン様。その様子は、指揮官様を叱りつけているというよりは、どこか面白がるような雰囲気がありました。とは言え、その目は全く笑っておらず、冷たい視線がまっすぐ彼に注がれていますが…

 

「……心当たりがないな」

 

そんな視線を受けてるのを知ってか知らずか、しらばっくれるように言う指揮官様。そんな彼に、取り敢えずは一撃、逃さないための牽制で一言。

 

「ラストリゾートのお二方…起きていられるそうですね?」

 

瞬間、肩が僅かに震えた。どうやら図星のようです、プリンツ・オイゲン様が続く。

 

「私にもニューカッスルにも…まして潜水艦二人にも言ってたわよね?休める時には休め、任務に支障が出るって」

 

そう言って、指揮官様の前に彼女がしゃがみ込みます。そしてじっと彼を見て、鋭い口調で言いました。

 

「それで?アンタはそれに該当しないなんて…ふざけた事は言わないわよね?」

 

指揮官様が息を吐き、ゆっくりと顔を上げます。

 

「……そう言うつもりは無い。だが俺には今休む暇は…」

「僭越ですが、私からも幾つか」

 

しかし言い訳をしようとしたので、即座に遮り、言いたい事を言う。この方はどうやら相当重症なようです、最悪叩いてでも休ませなければ。

 

「KAN-SENを率いる立場のあなた様が、まさか徹夜が許されると本気でお思いですか?」

 

強い口調で、淡々と。事前にプリンツ・オイゲン様に言われたように、今はとにかく彼を反省させなければなりません。

 

「他者の上に立つ者が、それを率先して在り方を示す…結構でございますが限度があります」

 

指揮官様は反論しようとするも、すぐに言葉を飲み込む気配。何を言っても非が自分にある、というのは理解できているようです。

 

まぁ…プリンツ・オイゲン様からの事前情報もありますから、当然と言えば当然なのですが。さて、ここからは少し強気に行きましょう。

 

「幾らあなたが兵士として、前線を駆けていたとしても…今の立場は何なのか、分からないはずがありませんよね?」

 

彼は何も答えず、ただ黙ったまま俯いている。そして私は更に続けた。

 

「指揮官という立場である以上、あなたはKAN-SEN達の規範とならねばいけません」

 

彼の頭は小さく揺れる。その通りだと、そう思ってはいるのでしょう。しかしここで止めては意味がありません。指揮官様が納得し、キチンと反省するまで続けるつもりです。

 

「……返す言葉も無い…」

 

指揮官様がぽつりと言った。それはまるで絞り出すような声で、葛藤の末に出したような弱々しい声。

 

「……もう少し、考えて行動する。今日はもう休む、すまなかった」

 

どうやらしっかりと分かってくれたようで。指揮官様はそう言うと、立ち上がりました。プリンツ・オイゲン様が、指を立てて彼の胸に当てて言います。

 

「ニューカッスルを呼んであるから、誤魔化して帰らないとかは無しよ」

「…………あぁ。お前もしっかり休め」

 

プリンツ・オイゲン様はそれには何も返さず、指揮官様の歩いて行く後ろ姿を見送ります。そんな様子を見ながら、彼に聞こえない程度の声で話しかけます。

 

「…このような感じで、よろしかったですか?」

「えぇ、最高よ。大満足だわ、これで指揮官も少しは懲りたでしょうし♪」

 

指揮官様が居なくなった後、プリンツ・オイゲン様は嬉しげに笑いました。どうやら上手くいったようです。

 

「プリンツ・オイゲン様のお気に召したのなら、何よりでございます」

 

丁寧にそう返せば、ムスッとした顔に変わった彼女が、私の方へと詰め寄ってきました。

 

「オイゲン、でいいわよ。一緒に戦った仲なのに、随分と他人行儀じゃない?」

 

不満げにそう言った彼女は、じろりと私を見つめる。確かに、彼女の言うとおりかもしれませんね。鉄血だとか、ロイヤルだとか…きっと、彼女やその上司である指揮官様とってはどうでもいい隔たりなのでしょう。

 

そう思うと、どこかとても嬉しくて。温かな心持ちになるのが分かりました、なんて小さな視野だったのでしょう。私も何処かで、きっと彼女を苦手だと思っていたのにはそういう区分けを、無意識にしてしまっていたのでしょう。

 

「…はい、オイゲン様。こちらの方が、呼びやすいですね」

 

そう言うと、彼女はにっこり笑ってくれました。それがどこか、照れくさくて…でも、悪い気など全くしなくて。

 

「ん、それでいいわ…なんだかお腹が空いちゃったわ、何か食べに行きましょう?」

 

そう言うと、彼女は私の手を引いて歩き出します。その様子はとても楽しそうで、私も自然と頬が緩んでしまいます。とても楽しい夜に、なりそうですね…

 

 

 

○○○○○○○○

 

 

「……はぁ…」

 

箱詰めの弾倉、そしてR-201をマービンと共に、装甲空母…イラストリアス級というらしいそれの甲板を行く。昨日の深夜、リージョンと共に見張りをしていたがあえなく止められ休息をとった…

 

襲撃のおかげで、完全に戦闘するスイッチが入っていた俺は寝付くまでにかなりの時間を要した。むしろ疲労が溜まったとも感じる、彼女らの心遣いや説教はありがたいものだと分かっているがどうにも慣れない。

 

結局あの後ニューカッスルにも説教され、戦うよりも断然疲れたような気がする…まぁ、完全に俺が悪いから何も言う気はない、どんなコンディションだろうと仕事をこなすだけだ。

 

「……そこでいい、置いておいてくれ」

《分かりました!^ ^》

 

指示を出すと、マービンは元気よく返事をして弾薬の詰まった箱を下ろす。後は俺が弾込めすれば、それで終わり。的は向こうが用意するらしいから、さっさとやってしまおう。

 

「……弾込めだ。拡張弾倉は無いはずだから、一つにつき24発。空のものに詰めてくれ」

《指令を受諾しました、マスター!^ ^》

 

マービンは笑顔で答えると、弾薬の入った箱を開けて命令された作業を開始する。俺もその横に屈み、空の弾倉に一発一発丁寧に入れていく。

 

R-201は標準性能のアサルトライフル、パイロットだろうと歩兵だろうと等しく一定の戦果を発揮するいい銃だ。ロイヤルでは採用していないが、俺はこれ以上に歩兵にも使えるような銃をあまり知らない。

 

フロンティアの戦いで使われる武器だ、使えばこっちの兵器への印象、評価も変わるはず。俺が悪く思われるのは構わないが、そのせいで顔見知りや俺の艦隊のKAN-SENが悪く言われるのは癪だ。

 

「……久しいな、こんな作業は」

 

地味な作業だ、パイロットになるためのフルコンバットライセンスの認証試験にこんな項目があったとログにはあるが、俺のようなパイロットは滅多にこんな作業はしない。

 

故に、こう言っては何だが…少し楽しいような気もする。懐かしい、と思えるほど記憶に残ってはいないが、かつての部隊の連中と下らない事を話しながら作業していた気がして。

 

弾を入れて、箱にそれを並べ、また新しい弾倉に弾を込める。それだけの単純な作業を、黙々と進める。ただ心地いい、何も考えずに進めるこの時間が…少し楽しかった。

 

 

 

 

 

「……銃はこちらで用意した。並んで順番に、手に取ってみてくれ」

 

そして指定した時間、現れた士官達とそれを連れたエリザベス。士官達は適当に並べさせ、先頭と次の奴に201を渡した。全員、興味深そうに細部を眺めている。

 

「これが…フロンティアの…」

「随分と細い…」

 

感嘆の声を上げるロイヤル士官達を横目に、自分の201にマガジンを入れて装填。ヘムロックは置いてきた、わざわざ違う武器を使って疎外感を出すこともないだろう。

 

無駄を極限まで削った、シャープな銃身に興味津々な士官達の前に立ち声を上げる。

 

「……では、今から射撃訓練を始めようと思う。質問があれば挙手してくれ、まずはそれの構造と操作法から軽く説明しよう」

 

そう言って説明を始める。弾の装填、セーフティの掛け方。基礎的な構えや心得も含めて簡潔に伝える。一応軍人としての訓練は受けているはず、彼らもしっかりと説明を聞き、頷いて理解を示してくれる。

 

元より確認のつもりで説明している、基礎知識が無いとは露とも思っていない。ここはそう時間をかける必要もないだろう。

 

「……では、実射に移ろう。一巡目は無理に当てようとしなくてもいい、感覚を掴むついでに素の技量を見せてほしい」

 

そう言ってそのまま射撃に撃つろうとした時だった、一人の士官が手を挙げた。

 

「……何か?」

 

挙手したのは例の…やたらと食い付いてくる…中佐、だか少佐だか。彼は一歩前に出ると、幾らか抑えられているとはいえ、それは上の方からの目線で言う。

 

「貴君の射撃を見せて欲しい。疑う訳ではないがな?」

 

分かりやすいほどにこちらを見下し、また実力を疑っているようでいっそ清々しいまであった。彼に何か恨みを買うような事を、俺は果たしてしただろうか?

 

「出来ないかな?」

「………いや、それもそうだな。なら一度やろう、その方が分かりやすい」

 

彼の問いを遮るように答えつつ、先頭の士官の持つ全くカスタムをしていない状態のR-201を持つ。

 

俺のには弾倉を拡張するMODとクイックドローMOD、そして照準器であるHCOGに、どれだけ使ったかをおおよその数字にして表示するプロスクリーンなどのアタッチメントが付いている。

 

これでやっても正直何も変わらないが、まぁ余計なことを言われて二度も三度も撃つのは面倒だし時間の無駄だ。マービンに俺のものを預けて構える。

 

「……ふぅ」

 

訓練だ、こうして息を整える暇まであるんだ。穏やかだが風があるとはいえ、この条件ならぬるいものだ。

 

「……ッ!」

 

整えた息を留めて、引き金を引く。この際だ、フルオートで全部当てれば静かになるだろう。跳ねる銃身を体に染みついた力の込め方で完全に抑え、ほとんどブラす事なく的に撃ち込む。

 

「おぉ…!」

「嘘、だろ…?」

「っ…!?」

 

そして硝煙が上がる201を降ろし、的を確認する。全弾命中、早速一つ穴だらけにしてしまったが必要経費だ。空にした弾倉を抜き、先頭の士官に返す。

 

「……まぁ、30m前後ならこんなものだ。真似をする必要は無い、俺も戦場でフルオートで当てるために撃ったことはあまり無い」

 

そう言って脇に俺の銃を持ち器用に拍手するマービンから201を受け取り、さっさと実射に移らせる。長く俺だけ撃った所で、意味は無い。さっさと撃たせ、各々の癖や姿勢をしっかりと目に焼き付ける。

 

ライフルマンの教官として、ミリシアで一瞬だけ教えていた経験もある。ある程度は出来るだろう。

 

指揮官としての経験で言えば俺よりも彼らの方が多いはずだ。そういう所も少しは話を聞きたい、そう思いながら二巡目に入った彼らに、一言ずつアドバイスをしながら回っていく。

 

「パ、パラドクス殿…私は…?」

「……身体が出来ている分構えは問題ない、撃つ時に一度目を瞑る癖があるな。意識すると変わるはずだ」

 

ロイヤル士官達の射撃は少しずつ上達していく。しかしやはりというべきか、中佐だけはどこか不満げにこちらを見ている。

 

それを感じ取りながらも、視線を無視して淡々と射撃を続けさせていく。アドバイス出来ることは少しながらある、なるべく簡潔に伝えながら続けていく。

 

「……深呼吸でもするといい、焦る必要はない」

「は、はいっ…!」

 

若い士官は、やはりと言うべきか少し未熟さが目立つ。緊張しているのか、声は震えており、銃を持つ手は微かに震えている。

 

だが、それでも彼は銃を構えて射撃をする。狙う先は20m先にある標的。それを見据え、彼はゆっくりと息を吸って止め、銃を構える。

 

引き金を引く、少しブレたが当たりはした。指を小刻みに動かし、慎重にバースト射撃をする。命中率は四割程度。まぁこんなものだろう。

 

「す、すみません…あまり当たらなくて…」

「……別に問題ない、やはり焦ってしまうな。後半になるにつれて精度が落ちるようだ」

 

そう言って謝ってくる彼に気にしないように言う。そして集中を切らさないように、深呼吸を習慣にするよう言ってみる。集中する場面で習慣とした動作をする事で、即座に意識を切り替えさせるためだ。

 

「なるほど…ありがとうございます!」

 

彼は俺の言葉を聞くと、すぐに言われた通りに行動し始める。こうしてすぐに行動に起こしてくれる辺り、ある程度の蟠りは解けたようだ。まだ完全に、とは言えないが…

 

そんな風に考えながら周りを見る。他の者もそれなりに腕を上げている、中にはもう実射に移っている者の中で意見交換をしあう者達もいる。

 

「……おおよそ身についたようだ、ここからは自由にしてくれて構わない。まだ撃ちたいならそれでも良し、終わりでいいなら各自解散で構わない」

 

そう告げると、彼らは散開して撃ち始める。まだ足りないらしい、熱心なことは良いことだ。その光景を一瞥し、女王の座るティーテーブルまで歩いて行く。そこにはベルファストと、他にもメイドの姿が…彼女達もKAN-SENなのだろうか?

 

「おかえりなさいませ、貴方様。そちらはお預かり致します」

「……あぁ、安全装置は掛けたが気をつけて持て」

 

そこに控えていたニューカッスルにR-201を渡し、女王に無言で示されるままに対面に座る。

 

「ご苦労ね庶民、中々楽しませてもらったわ!」

「……楽しかったのか、アレが…?まぁ何よりだ」

 

大した事などしていないのに、楽しかったと言ってきた女王。まぁ俺が駆けずり回ってる姿に対する感想かもしれない、いい性格をしている。

 

「どうだったかしら、我が自慢のロイヤルの士官達は!?」

 

その問い掛けに、俺は素直に感想を口にする。

 

「……筋は悪くないが…いまいち射撃への意識が低い、改善させなければいつか痛い目をみる」

「そう…まぁ参考にしておくわ!」

 

一瞬目を伏せたものの、すぐにそれを受け入れて紅茶を飲んでいく女王。どこぞの中佐とは大違いだ、何故こんなに出来た上司の下であんな奴が出来るのか…

 

そんな風に思いながら、話はこれからの航行の予定についての話に移った。

 

「……ラストリゾート側の人員交代の為に、島に寄るんだったな?」

「えぇ、量産艦への補給も兼ねているから絶対よ。セイレーンがまた襲ってくる可能性も考慮してるわ」

 

連中の狙いは単にロイヤルの艦隊を潰すことなのか、それともラストリゾートの運ぶハーベスターなのか…詳しいことは分からないが、また襲撃を受ける可能性がある、というのは確かだ。

 

そしてその対策として、ラストリゾートは可能な限りの所属パイロットを彼らの船に乗せ、対タイタン武装で固める方針に切り替えたらしい。

 

「……パイロットが増えるなら、多少は戦術に幅が出来るな…」

「えぇ…でも、タイタン…だったかしら?アレはもうあなたの分しか載せられないわ」

 

そう言って甲板上で遠洋を見張るリージョンを指し、そう言うエリザベス。幾ら強力な兵器だとはいえ、こんな平坦な空母の甲板にすし詰めにしては真の効力は発揮できない…それに、おいそれと他所の勢力の兵器を積みたくないのも理解できる。

 

「……構わない、あれ一機で大抵はどうにかなる」

「そう…随分と自信があるようね?」

 

俺に視線を戻したエリザベスは、試すような笑みを浮かべてそう言った。彼女の表情からは、期待しているのかそうでないのか読み取れない。

 

「……そこらのパイロットよりは、出来る自信くらいはある」

 

指揮官としての経験は、まだかなり浅いものだ。だがパイロットとして、一兵士としての経験はかなりのものだ…それこそ、実地で『死ぬまで』鍛え上げた戦闘技術はそこらの連中に引けを取らないという自負はある。

 

越えてきた死線が違う。『再生』は俺の記憶を代償に、戦う力を俺に与えた。世代も他のパイロットに比べれば遥かに高いだろう…

 

「そう、なら期待しているわ!精々私にその力を見せてみなさい!」

 

そう言って彼女は席を立ち、背を向け歩き去って行く。そして入れ替わるようにやってきたベルファストが、俺に話しかけてくる。

 

「ごきげんよう、よくお休みになられましたか?」

 

昨日深夜、彼女とオイゲンに正座させられ休めと怒られた。恐らくそれで俺がちゃんと休んだかどうかを確認しにきたのだろう、彼女の顔を見てしっかり頷く。

 

「……お陰様で。ニューカッスルにも叱られた」

 

そう返すと、微笑んで礼を言う彼女。しかし、すぐに真剣な顔になり言葉を続ける。

 

「いいですか?これからはああいったことが無いようにしてください、ニューカッスルさんも、あなたの艦隊の皆様も…あなたに何かあれば、きっと悲しみます」

 

そう言われ、少し考え込む。確かに彼女達の悲しげな顔を想像すると胸が痛む、が…俺はあくまで、パイロット。戦うためにこうなっている、だから必要なら幾らでも俺が動かなくてはならない。

 

「……あぁ、なるべく努力する」

 

だから結局、こういうどうとでも取れる事しか言えない。追求されたらまた叱られるだろうが、それでもだ。

 

その言葉を聞いたベルファストは、満足げに微笑み頷いた。

 

「はい、そうしてくださいませ」

 

その様子に安堵しつつ、立ち上がる。こちらの内心はバレていない、顔が見えていないのも大きいだろう。立ち上がった俺に、ニューカッスルが寄り201を渡してくる。

 

「では、貴方様。私はそろそろ哨戒の交代です、行って参りますね」

「……あぁ、何かあったらすぐに」

 

カーテシーをしたニューカッスルに、何かあれば連絡を入れろとヘルメット側面を指で叩いて示す。彼女は頷き、そのまま踵を返して出撃へと向かっていった。

 

俺も、少しは彼ら士官と交流しよう。特にこれといって決まって聞きたい話があるわけではないが、何か有益な情報が聞ければ儲けだ。そう思い、彼らの元へと行こうとすると…

 

「あの…よろしい、ですか?」

 

ベルファストが俺を呼び止めた。何かと思い、振り向けば彼女が胸の前で手を握り、何か言いたげな視線を俺にぶつけていた。

 

「……どうかしたか?」

 

そう問いかければ、おずおずといった様子で切り出した。

 

「その、少し…あなたと行動させて頂いても、よろしいでしょうか?」

 

そう言った彼女の表情はどこか不安げだ。俺はといえば、思いもしなかった彼女からの申し出に、少し面食らってしまった。

 

彼女はKAN-SEN、銃を持って戦う必要は無い。むしろ護衛や秘書、そして何よりメイドとしての役割がある。そんな彼女に射撃の訓練の付き添いなどさせてしまうのは気が引ける。

 

「いけません、か…?」

 

だが、それを言ったところで引き下がるような性格でも無いだろう。そんな風に思いながら、俺は俺を不安げに見続ける彼女の提案を受け入れる。

 

 

「……分かった、構わない。だが、銃に触る事は無いように」

 

そう言うと、ベルファストはぱっと明るい笑顔になる。だが、それも一瞬の事ですぐに顔を真面目な表情に戻し、頭を下げてきた。

 

「承知致しました、ありがとうございます」

 

礼を言ったベルファストを連れ、ロイヤル士官達の元へと戻る。銃を撃っていた彼らは、俺の姿を見るなり自分の所へ呼ぼうと声をかけてくる。かなり打ち解けれたようで、何よりだ。

 

そんな彼らに順番に対応しながら、話を聞いていく。何か、役立つことがあればいいが……

 




・射撃について
フルオートで銃を撃つことは現実的に考えれば、精度の観点からみてもありません。が、ゲームでは軽く練習さえすればパイロット達は平然と高い命中精度で、全弾撃ちます。なので彼も実力を示すためああして射撃しました
・R-201
タイタンフォール2の初期装備であるアサルトライフル。高い命中精度と安心のレート。かなり扱いやすい武器、ゲームで登場する歩兵(雑魚敵)達もよく持っています
・MOD
要するに銃にあれこれ付ける拡張機能。弾を増やしたり、リロードを早くしたり…果てはキルする度に、アビリティのクールダウンを短縮するものもあります。前者は描きやすいので出しますが、後者はどうするか迷っています。
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