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襲撃から二日。ラストリゾートが拠点の一つとしている島へと寄り、彼らの人員交代、増員。そして艦隊の補給を行なっている。
射撃訓練は良い効果を俺やラストリゾートにもたらした…明らかにロイヤル側の態度が軟化したのだ、こちらの問いにも嫌な顔せず答えてくれるようになった。
コアシステムの情勢や、各陣営の事。艦隊の指揮について、『ドロップ』や『建造』、果ては指揮官への『適性』の話も聞き出せた。大いに上手くいったと言って良いだろう、試みてみるものだな。
そう思いながら、手にした襲撃の時の戦利品…水色に淡く輝く正六面体、メンタルキューブをまじまじと見つめる。この無機物から、KAN-SENという人と遜色ない心を持つ少女が生まれる…
指揮官とは、このメンタルキューブ。及びそこから生まれたKAN-SENとの、親和性の高さこそが適性の高さに直結するらしい。KAN-SEN達の心を良い方向へと揺さぶり、絆を深める事が何より重要らしい…
不思議なこともあるものだ、と思ったが話してくれた士官の顔は真剣そのものだった。故に嘘とも思わないし、それが真実なら俺は今まで通り彼女達を導いてやればいい…上手くいくかは、別としてだが。
「おぉ、パラドクス!」
そんな風に考えながら、搬入される物資の確認を引き続き行っているとドロズが手を上げてやってくる。後ろにはチャージライフルやアーチャー、そしてサイドワインダーSMRなどの高火力な武器で武装したパイロットが付き従っている。
「……ドロズ、人員の補填は?」
「出来たぜ、選りすぐりの対タイタンパイロット達だ。セイレーン相手でも引けはとらんさ」
そう言って声を上げて笑うドロズ、エリート部隊である6-4出身のこいつが言うのなら、間違いないのだろう。
「……そうか、俺からもよろしく頼む」
俺がそう言えば、彼らは武器を軽く掲げてラストリゾートの艦船まで戻っていった。士気も高い、やる気も充分なようだ。そのままタブレット端末に目を落とし、物資の確認作業に戻るが、ドロズはそのまま俺に着いてきた。
「ありがとうな、パイロット」
「……?何がだ?」
いきなり礼を言われ、何のことかとそちらを見てしまう。ドロズは肩を竦めながら、楽しそうに語った。
「ロイヤルの士官の事だよ。俺達にも当たりが良くなった、お前が色々してくれたって聞いてな」
どうやら士官達の事らしい。確かにあいつらは俺達に良くしてくれる。だが、別に大したことはしていないんだが…俺は首を傾げながら、その言葉に返した。
「……大したことなんてしてない」
「それでもだよ。やっぱり奴らも人だった、話しゃ分かる連中だった。俺らの間の壁を、お前が取り除いてくれた」
ただ自分の打算も込みで、簡単な事を教えただけに過ぎない。誰にでも出来た事だ、俺じゃなくても良かった。だが、そう言われて悪い気はしない…少しくらいは、感謝を受け入れても良いかも知れない。
「……仕事の為だ、気にするな」
それだけ言って、作業に戻る。色々とする間も、ドロズは横で喋り続け、俺はそれに相槌を打っていた。コイツやデービスのどうでもいい話は、気が紛れて嫌いじゃない。
時折真面目に返答しながら、全ての物資の検品を終える。主に食料品と俺の使う武器の弾薬が少し、それからリージョンに使うためのタイタンバッテリー三本が俺たちの艦隊の物資だ。
「バッテリー足りんのか?」
「……まぁ、襲撃の時の損傷もそれほど無かった。緊急バッテリーも持っている、どうにかなるだろう」
ブースト…パイロットが所持する特殊なアイテムで、消費することで戦闘に有利な物を手に入れることができる。俺の言う緊急バッテリーもその一つ、タイタンバッテリーを入手できるブーストだ。
今現在、リージョンは大した損傷は受けていない。おおよその数値にして割り出せば、受けているダメージは1割にも満たないだろう。
それにリージョンの役割はタンク…ダメージを前線で抑えて、逆に敵陣を壊滅させる火力拠点となること。故に重量級タイタンなのだ、耐久値が違う。それも加味すれば、残りの航行期間もこれで足りるだろうという判断だ。あまり余剰な出費は控えるべきだ、バッテリーもタダじゃない。
「ならいいが…後で泣きつくなよ?」
「……当たり前だ、どうにでもする」
揶揄うようなドロズの言葉を、一笑しつつ答える。泣きつくなんて事にはならないだろう、コイツも分かってて言っているんだ。
「なぁ、ニューカッスル!私ではダメだというのか!?」
「あのっ…困ります…」
そんな風に掛け合いを楽しんでいた時だった、コンテナの裏の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。何かと思い、顔を出して覗いてみれば…
「あぁ、マジかよ。またアイツか…」
「……また、とは?」
例の中佐が、ニューカッスルに詰め寄っていた。はたから見れば、男が一回り背の小さな異性にかなり近付いているという、いい印象は覚えない光景だ。また、と言ったドロズの言葉も気になり訊いてみれば、さぞ呆れたという様子でドロズは答える。
「アイツだけは、俺達も見下したまんまなんだ。それに、あのメイドさんに詰め寄ってるのもアレが最初じゃない」
どうやらこの仕事の初期にも似たようなことがあったらしい。その時は、デービスとロイヤルのKAN-SENが間に入って事なきを得たそうだが…どう見ても尋常な様子ではない、中佐の勢いがかなり、こう…気持ちが悪い。ドロズの語りも嫌悪感を隠せていなかった。
「……デービスには後で礼を言わないとな、行ってくる」
「俺も行くぜパイロット、ああいう目をする手合いは、何をしでかすか分からないからな」
そう言ってドロズと共に中佐の方へと向かう。中佐はこちらに気づくと、忌々しげに睨みつけてきたが、そんな態度を気にせずドロズが口を開く。
「よぉ、パラドクスの所のメイドさんに何か用か?」
「フン、貴様には関係ない事だ!」
そう言いながら、ニューカッスルへ再び視線を向ける。ドロズも俺もその眼差しに不快感を覚え、俺は彼女の腕を引き自分の体の後ろに隠した。
「……明らかに、彼女は迷惑がっている。俺のメイドに何の用だ?」
「貴様ッ…!俺のメイドだと!?彼女は私の艦隊のKAN-SENだ!」
そう怒鳴ると、中佐は俺を睨みつけてくるが…コイツの艦隊のKAN-SENなのか、ニューカッスルは…?そんな馬鹿な話があるかと思い、一応本人にも軽く振り向き確認する。
「……そうなのか?」
「昔の話でございます…今は貴方様のメイドですから…」
俺が訊ねれば、ニューカッスルは微笑んで返す。確かに俺とニューカッスルは上司と部下の関係であり、彼女も正式にロイヤルからは暇を貰っていると聞いている。エリザベスとの会話の内容からして、それに間違いはないだろう。
「……だ、そうだが?」
中佐に向き直り、そう告げてやるが、奴は俺になど目もくれずにニューカッスルに向かって叫んでいた。
「どうしてだニューカッスル!君は私の艦隊のメイドだっただろう!?」
俺の後ろで、ニューカッスルが息を飲む音が聞こえる。その声音からは怯えの感情が見え隠れしていた。俺も奴の言動に苛立ちを覚えた…恐らく彼女の言っていた、折り合いの合わない指揮官、とはコイツの事。
確かにこのしつこさと性格やら、嫌気がさすのも分かる…彼女に何か特別な思い入れがあるようだが、それはもう執着と呼ぶにふさわしいような、不快な感情がこもっていた。
「お前の艦隊にいたのは事実か知らないが、しつこいぞ」
「黙れっ!貴様には関係のないことだ!彼女が仕えるべきなのは、王家にこの身を捧げ続けた私以外にあり得ない!」
ドロズの言葉にも、全く耳を貸さず喚き散らしている。会話がまるで成立しないな、どうするべきか…このままここで言い合っても、恐らくまともな結末にはならない。
だからと言っていきなり暴力に訴えるのも、それはロイヤルとの確執を生むことになる。そう思いながら打開策を探していると、中佐はわなわなと震えながらとんでもない結論に至ったようだ。
「…そうか、貴様…!彼女の何か弱みに浸け入り従わせているな!?」
「彼女を脅して、無理やり付き合わせているんだろう!?」
「……はぁ」
呆れて声も出ない、ドロズも首を傾げている。自分の気に入らないことを、とことんまで受け入れないつもりらしい…頭が痛いな…
等と思っていると、奴の手が腰に吊るしたホルスターに伸びているのが見えた。まさかとは思うが、撃つつもりか?
「この…外道が…!」
奴が拳銃を手に取った瞬間、俺もドロズも動き出す。俺は戦術アビリティの興奮剤を使い、瞬間的に筋力と反応速度を高める。加速した意識の中で、銃を持ち構える前の右手を手刀ではたき落とす。
ドロズはL-スターを構えて奴に突きつけた。この間1秒もかかっていない、熟練パイロット二人なら、このくらいの奴を制圧するのは容易い。
「動くな、越えちゃならない線を越えたな?」
「……頭の後ろで両手を組め」
ドロズがホールドアップした時には、俺も既に体勢を射撃できるようにしてRE-45を突きつけている。あまりの手際の良さにか、中佐の額には脂汗が流れ始めており、顔色は真っ青だ。
「わ、私を殺す気か…!?」
「……返答次第だ、まさか殺す気はなかった、なんてふざけた事は言わせない」
セイレーンの襲撃でもないのに、銃を手に取り俺に向けようとした時点で、制圧するに十分な理由になる。寧ろ即座に発砲しなかったドロズと、ジャンプキットのパワーアシスト込みで顔面を殴らなかった俺の比較的理性的な対応に感謝すらするべきだ。
「くっ…!」
震えながらも大人しくなった中佐、視線はそのままコイツを見据え、俺はニューカッスルに問いかける。
「……どうするべきだ、ニューカッスル」
「正当防衛で撃ってもいいんだ、だがコイツはあの女王サマの部下。それで殺しちゃ少し面倒だ」
引き金に既に指をかけたドロズも、彼女に問う。正直、コイツはもう撃たれていてもおかしくない事をした、故に彼女の返答次第で、俺とドロズは本気で撃つつもりではある。
ニューカッスルは、大きく深呼吸をすると、俺たちに言った。
「…陛下に、委ねましょう」
「……エリザベスに会わせてくれ」
場所を移してイラストリアス級空母、そこの前に立つウォースパイトに俺は言う。中佐はドロズと、ドロズに呼び出されたデービスがL-スターを突きつけて連行してきている。
俺の言葉に目頭を押さえながら、ウォースパイトは困ったように言葉をひねり出す。
「…状況が、分からないわ…どういう事か説明して頂戴、指揮官」
彼女としても、今の状況を飲み込めていないらしい。それも当然だろうな…突然自分達が雇った男が、部下に銃を突きつけてやって来て女王に会わせろと言ってきたんだ。詳しく聞かねばやってられないだろう。
そんなウォースパイトに、俺が事情を説明する。
「……この中佐と、少しトラブルがあった。コイツを向けられそうになってな」
そう言って、奴の手から落とした、ロイヤルで採用しているらしい拳銃を彼女に渡す。それを見たウォースパイトは目を大きく見開き、顔を蒼白にして震えていた。
中佐が、自分の命の危機を感じて、咄嵯に武器に手を伸ばしたのならまだ理解できる。それを咎めるつもりはない。自分も、危機に瀕したらそうしていただろう。だが、状況はそうではない。明らかに俺、及びドロズに非はないはずの状況下で奴に銃を向けられた。それが意味するところは一つしかない。
「……本当は撃ったって構わなかったんだが、ウチのメイドがな…」
「私が、陛下に判断を委ねたく…」
ニューカッスルの方を振り向けば、彼女はウォースパイトに一礼する。中佐はと言えば、不服で仕方がないといった様子で銃を突きつけられている。確かに、こんな馬鹿げた話に女王の判断を仰ぐなど、本来あってはならない。
だが、それでもこの男は、俺とドロズに銃を向けた…それは紛れもなく事実であり、その事実は決して覆らない。
「…っ、少し待っていて頂戴。すぐ取り次ぐわ」
ウォースパイトは、一度その場を離れると、ロイヤルの海兵に何かを告げて入れ替わるように奥へと消えていった。彼らロイヤル海兵二人はこちらへ来ると、俺たちに敬礼をしてドロズとデービスに告げる。
「ご苦労お掛けします、ここからは我々が」
言葉の通り、二人のロイヤル海兵隊員が中佐の腕を押さえ、ドロズとデービスと入れ替わる。ガチャガチャと何やら中佐に手錠を掛けているようだ、拘束するものも無かったからありがたい。
「…っ、おい、これを外せ…!」
「申し訳ありません中佐、ウォースパイト様からの命令です」
抵抗しているのか、暴れようとする中佐をもう一人の兵士が押さえつける。よほど気に入らないらしい、俺を睨みながらもがくが敢えなく拘束された。
「……デービス。ドロズは証人だから来てもらうが、お前はどうする?」
ドロズが人手が足りんと呼んだデービスだが、奴は別にこの件に対して特に関与していない。色々と仕事があるはずのところを、無理を押して来てもらった。
だから、別にここからは付き合う必要はない。ラストリゾート側にも、用意することがあるはずだ。そう思い、デービスに問いかけたが、奴は肩を竦めて笑いながら言った。
「向こうはもう大方片付いてるから平気だ、ついてくぜパイロット!」
サムズアップしたデービスは、ドロズの肩を叩きそう言い切った。頼もしい限りだ、ありがたい。
そのままウォースパイトを待っていれば、そう間を開けずに彼女が戻ってきた。
「待たせたわね、全員ついて来て頂戴」
俺たちを先導するように歩き出した彼女に、ドロズとデービスも続く。案内されたのは、空母内の一室。そこには、椅子に腰掛けたエリザベスの姿があった。彼女は、俺達を見るなり、口を開く。
「待たせたわ、詳しく聞かせてもらうわ」
女王も忙しかったのだろう、少し疲れたような表情を浮かべていたが、すぐに真剣な顔つきになる。俺は、先程の事を話すために口を開いた。中佐が、俺達に銃を向けてきた事。そして、制圧し銃を奪い取った事。
中佐の一方的な敵視と、それによる業務への支障。さらにニューカッスルへの迷惑行為についても、包み隠さず全て話した。
「………と、いった経緯だな。証人はこっちのドロズと、ニューカッスルがそうだ」
「中佐は俺達に銃を向け、発砲しようとした。この制圧は正当防衛だ」
俺に続いて、ドロズがそう言えば、エリザベスは目頭を押さえた。やはり、エリザベスにとっても想定外の事態だったのだろう。
彼女はしばらく目頭を押さえたまま黙っていたが、やがてゆっくりと目を開け、俺に目を向ける。
「…ロイヤルの、艦隊を代表する者として。そして人の上に立つ者として、謝罪するわ。本当にすまないわね」
そして口調を変え、俺に向けて頭を下げた。俺も予想だにしていなかった状況に、少し驚き戸惑ってしまうが、すぐ我に返る。
「……頭を上げてくれ女王、アンタが頭を下げる必要はない」
「いえ、私の監督不行き届きよ。この謝罪を取り消すつもりは無いわ」
そう言って、頭を上げる気配のないエリザベス。困ったな、俺としてはそんなつもりはなかったんだが…
俺もそうだが、彼女にも譲れないところはある…ここは俺が折れるべきだろう。そう判断して、彼女に言う。
「……分かった、謝罪を受け入れる。次は無いようにしてくれ、撃ち殺しかねない」
「…ありがとう、再発防止に努めるわ」
ほっとした様子の彼女は、小さく息を吐いて微笑む。しかしその表情はすぐに引き締められ、中佐に厳しい視線が向けられる。
「貴方…どういうつもりかしら?」
「へ、陛下…!お待ちください!」
中佐は慌てた様子で立ち上がろうとする。だが、それを制したのは、他ならぬ女王であった。すぐに中佐を押さえる海兵に手を振り、彼を跪かせた。
「この男は、私が試し認めた者。その私の決定が、まさか気に入らないというのかしら?」
威圧、圧倒的なカリスマから放たれるそれは、俺も思わず息を飲んでしまう程の気迫だった。見た目は幼い少女だが、これが一つの勢力を束ねる王家の圧…
彼女への印象を、改めなければならないと感じてしまう。それほどまでに、凄まじい雰囲気だ。
「いえ、いえ…!決してそのような事ではありません!」
女王の言葉に、中佐は慌てて首を横に振る。中佐の顔色は真っ青になり、身体は震えているようだった。そんな様子になりながらも、奴は必死に言葉を並べる。
「私は、私はただ…!ロイヤル王家の威光の為、余所者の助力無くともこの任務を…!」
そんな弁明を捲し立てる中佐だが、その様子に声を上げたのは女王…ではなくもう一人、ウォースパイトだった。
「いい加減にしなさい!」
「…っ!?ウォ、ウォースパイト様…!?」
突然、大きな声で叫んだウォースパイトに、俺も驚く。完全にエリザベスしか喋らないものだと思っていたため、こんな風に叫ぶとは思わなかったからだ。
額に青筋を浮かべた彼女は、感情的に見えながらも理性的に、そのままの勢いで中佐を叱責する。
「貴方の忠誠は結構なことだわ…けれど私情を持ち込み、要らぬ不和を生み、挙句の果てに発砲未遂…!」
彼女は、中佐に対して怒りをぶつける。その迫力に、中佐は怯み縮こまってしまった。彼女の怒気に当てられたのか、中佐を背後で押さえる兵士達もざわついているようだ。
言っていること自体は至極正しいことだが、ここまで恐いとは思わなかった。後ろでデービスが小声で「やべぇ…」と呟くのが聞こえる。
「もう決まっていることに対し、割り切れないのは士官は愚か訓練兵以下!仮にも今作戦で一番高い階級の貴方が、こんな体たらくでどうするの!?」
まるで雷のように、彼女は中佐に怒鳴りつける。中佐は怯えるようにビクつきながら、なんとか言い訳しようと口を開く。
しかしそれを遮って、今度はエリザベスが口を開いた。
「指揮官…貴方、二艦隊以上の指揮の経験は?」
何と中佐ではなく俺に、だったが。突然の問いかけに一瞬間が空いてしまうが、すぐに答える。
「……無い。歩兵隊に指示を出すのとは訳が違う、そちらの経験はあるがあまり当てにはならないだろう」
IMCを裏切り、ミリシアの一員として戦っていた時の事だが。一応戦局を見る目はあるとは思っている、実際歩兵隊の指揮を執りながら作戦を遂行したこともある。
だが艦隊行動に関しては素人も良いところ、まだまだ学ばねばならない事の方が多い。しかしそんな俺に、このタイミングで何故そんなことを訊いたのか…その答えはすぐに、女王からもたらされた。
「ならこれも経験と思いなさい。中佐の艦隊の指揮権を、私の命で貴方に一時移譲するわ」
一瞬、何を言われたか分からなかった。中佐の艦隊を、俺に? 困惑する俺に、エリザベスは中佐に鋭い視線を向けたまま、俺に言う。
「セイレーンの奇襲の時、貴方のその状況を俯瞰し的確に動く能力は見せてもらったわ。だから一時的に、よ…中佐にはとても任せられないわ」
そう言って、エリザベスは俺に真っ直ぐ視線を向ける。確かに、俺はあの時咄嵯の判断であれこれと指示はした。
だがそれは指揮というより、やって欲しいこと、してもらえればいいというこちらの要求の枠を出ないものだった筈。その後は完全にKAN-SENサイドに判断を委ねていた。
「……だが…」
「お願い。貴方なら、間違った指揮はしない筈。女王の命令ではなく、頼みよ」
真摯で、真っ直ぐな瞳。相当に、俺を信頼してくれているのが分かる…そう言われては、俺には断れなかった。
僅かに間を開け、俺は決意を固めて向き直る。
「……承知した。上手く出来るかは分からない、だが出来る限りの最善は尽させてもらう」
俺の返答を聞いた彼女は、少しだけ目を丸くした後、微笑む。そしていつもの不遜な笑みに戻ると、声高らかに言った。
「えぇ、期待しているわ!早速顔合わせをして頂戴、ウォースパイト!」
「案内するわ、指揮官。こちらへ」
ウォースパイトの言葉に従い、俺は彼女とドロズ、デービス。ニューカッスルと共に部屋を出た。
廊下を歩く途中でラストリゾートの二人は行ってしまったが、彼女が振り返って話しかけてきた。
「ごめんなさい、貴方達に迷惑をかけてしまったわ」
「……気にするな、お前が悪い訳では無い」
申し訳なさそうな表情を浮かべる彼女に、自分はそう返す。中佐が俺を敵視していた理由も分かったし、それに奴は恐らくもうこちらへ何かをするというのは出来ないだろう。
別に、ウォースパイト自身が俺に何かをした訳でもない。そう思い返したが、まだ何か言おうとする彼女に、ニューカッスルが口を挟む。
「ウォースパイト様、私もご主人様も…もう大丈夫ですから。あまり気負わないでくださいませ」
彼女は優しく諭すように、ウォースパイトに声をかけた。ウォースパイトは小さく息を吐き、笑顔を浮かべると、二人に頭を下げる。
「気遣ってくれて、ありがとう。感謝するわ」
部下の失態で、やはり多少なりとも落ち込んでいたのだろう。ニューカッスルの言葉に、彼女の表情は幾らか和らいだように見える。
確かに監督不行き届きと言えばそうかもしれない、だがあの男のあんな気質は分からなかったのだろう…思想はともかく、ロイヤル王家への忠義は本物だった。
「……アレはアレで、お前達ロイヤルに忠誠は誓っているはず。その思いの強さが、暴走したんだ…奴以外の誰も責められないだろうさ」
「そう言ってくれると…少し気が楽ね」
フォローする様にそう付け加えて、そのまま先を促す。俺達はこんな所で済んだ事に対して、いつまでも問答している訳にはいかない。
「……今、それを追求していても仕方が無いことだ。切り替えて、顔合わせと指揮に必要な情報の交換を済ませよう」
スケジュール通りならば、出港まで後1時間もない。指揮権を移譲されたのにも関わらず、何の説明も無く作戦行動には当たらせたくない。
「えぇ、そうね。行きましょうか」
この航行も残すところ後半分を切っている、このまま、何事もなく終わればそれに越したことはない。また歩き出したウォースパイトについて行き、一時的に指揮を引き継ぐ面々の元へと向かう。
・バッテリー
人が抱えて持つサイズの、緑に輝く円筒形のバッテリー。タイタン機上のソケットや、タイタン機内のソケットに差し込むことで動力を追加供給する。ゲーム的には微量の回復、コアアビリティのチャージ、HPとは別にタイタンにシールドを付与する効果があります。
・L-スター
ドロズ・デービスの愛銃である軽機関銃。銃と呼ぶには戸惑うようなデザインだが、エネルギー弾を連射するれっきとした武器。これで敵を倒すと体が蒸発したかのような演出で、血溜まりと持っていた武器だけが残るという恐ろしい結果をもたらします。