Azur Fall   作:Isaac/アイザック

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バンガード級に出来るなら、きっと他のタイタンにも出来るはず

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1-6

補給を済ませいよいよ出港した艦隊、指揮権を渡されたロイヤル側のメンバーとの顔合わせを済ませ、早速警戒航行してもらう。

 

リージョンのコックピットに乗り、機内のHUDにウチの艦隊の通信のウィンドウと、ロイヤルの艦隊のウィンドウを表示したままにして空母甲板上から指揮を続ける。

 

「……前衛艦達はそこでいい、接近する船影にはまず警告、応答がなければ威嚇砲撃を許可する」

《かしこまりました、指揮官様》

 

ロイヤル艦隊の面々を3人一組で組み分けした。脚の速く攻撃までに時間のかからない駆逐艦、巡洋艦を前衛とし、艦隊からやや離して哨戒させる。逆に巡洋戦艦や軽空母と言った少し攻撃までに準備のかかる艦は主力艦としてこの量産艦の近くへ配置した。

 

そうすれば離れた場所の前衛艦が戦闘中に、攻撃準備を比較的安全に行える。自爆ボートでも来たら、その時こそ俺とリージョンでどうにか出来る。

 

「……艦載機の方も、何かあれば逐一報告してくれ」

《うん、任せてお兄ちゃん…!ユニコーン、がんばる!》

 

主力艦隊の方へと呼びかければ、幼い声で返事をされる。通信の相手は、ユニコーンという名のKAN-SEN。軽空母である彼女には、偵察機を飛ばしてもらい広範囲を索敵してもらっている。

 

初対面でいきなり「お兄ちゃんって、呼んでもいい…?」と言われたのには驚いたが、断れば泣き出しそうな顔でおずおずと聞かれれば首を縦に振るしかなかった。

 

ユニコーンは俺よりも圧倒的に背が低く、童顔で紫色の髪に純白のワンピースのような服を着ている少女だった。何故夕張といいあの子といい、KAN-SEN達は俺のことを妙な呼称で呼ぶのだろうか…

 

「……あぁ、頑張ってくれ。期待しているぞ」

 

そんな事を今考えても仕方がない故、一度頭を振って無駄な思考を落とし、返事を返し集中する。セイレーンにはもちろん警戒しなくてはならないが、懸念事項はもう一つある。

 

ドロズが言うには、ここらには海賊が出るらしい。俺が警戒しているのはそっちだ、KAN-SEN達はセイレーンとの戦いの為に生み出された存在だ。そんな彼女らに、人を撃たせたくはない。

 

俺の勝手な願望かもしれない、戦場に立った以上、そんな綺麗事は通じないというのも分かっている。だが彼女らの手は、汚したくない。

 

だから…もし人間の海賊がやって来たその時は…全て俺がやれるよう、備えなければならない。

 

《貴方様、私たちはどういたしましょう?》

 

そんなことを思いながら海を睨んでいると、ニューカッスルから続けて通信。俺の艦隊はロイヤル護衛艦隊の各量産艦に分散して配置し、今は艦上に待機させている。

 

交代要員、かつ有事の際の予備戦力としてだ。何もなければ組んだシフト通りにローテーションしながらの哨戒、有事の際はいち早く状況に適した出撃を行って出撃。先に対処にあたる前衛達のサポートをさせる。

 

「……すぐに出れるようにしつつ、待機だ。今はお前達はシフト外、適度に気を緩めて休んでいてくれ」

 

ラストリゾート拠点からの出航前は、俺たちの艦隊が警戒を行っていた。故に今は交代での休憩、ロイヤル士官達にも頼んで、各量産型護衛艦で食料と燃料、弾薬の補給もしてもらっている。

 

俺の考えうる配置としては、最適解だと思うが…果たしてそれが正解かは分からない。俺は訓練兵ではない、誰も助けちゃくれないんだ。

 

《かしこまりました、貴方様。何かあればお呼びください》

 

そう言うなり、彼女は通信を切った。リージョンよHUDに表示されるウィンドウが一つ消え、コックピットは少し静かになる。

 

今のところは敵影なし、特に追加で指示することもないだろう。

 

「……ふぅ」

 

息を吐き、少し背中を預ける。もちろんHUDを見つめたまま、警戒を続ける。

 

《お疲れ様です、パイロット!》

 

そうして警戒していると、足元の若いロイヤル士官が話しかけてくる。射撃訓練であまり成績の振るわなかった彼だ、まだまだ新兵で、士官上がりたて。階級もまだ軍曹らしい。

 

そんな彼には悪いが、他の量産艦にも彼と同じロイヤル士官を散らばして配置し、R-201を貸し出した。海賊が接近してきた場合は、艦上から制圧射撃を任せるつもりである。

 

「……あぁ、今日はよろしく頼む」

《はいっ!お役に立てるかは分かりませんが…精一杯、やらせていただきます!》

 

元気の良い返事を聞き、それが後々曇らないことを祈りながら、海に目を光らせる。もう既に警戒すべき海域を通過し始めている…諸島も近い、海賊が出るとしたらおそらく…

 

《…おい、あれ見ろ!》

 

不意にデービスから通信が入る。それと同時にリージョンも淡々と状況を報告する。

 

《警告:艦隊に接近する不明な集団を確認》

 

十中八九、件の海賊だろう。大きい船舶一つ、ボートのような足の速いものが7か…

 

《指揮官様、指示を!》

「……警告はこちらで行う。各員主砲及び副砲装填、すぐに撃てるように待機」

 

すぐさまベルファストからの通信、さらに指示を下し、輸送艦隊の面々へと緊張が走る。

 

「……軍曹、貴官もだ。すぐに撃てるよう装填、待機」

《り、了解…!》

 

そうして輸送艦隊の面々が臨戦態勢に入る中、俺はオープン回線で警告を行う。聞き入れられなければ、すぐに撃てるようプレデターキャノンはスピンアップを開始。

 

「……こちらは軍事同盟アズールレーンの指揮官、パラドクス。貴船は我々の艦隊行動を侵害している、すぐさま海域から離脱せよ」

 

《はっ、なんだぁテメェは!?俺達の邪魔をするんじゃねぇ!!》

 

応答したのは男の声、そして荒々しい口調だった。海賊らしいと言えばそれまでだが…

 

《野郎ども!やっちまえ!物資を奪い、女を捕まえろ!》

 

どうやら敵意剥き出し、こちらの指示に従う気はさらさらないらしい。

 

「……戦闘開始、士官たちは銃撃によりボート上の敵を排除。KAN-SEN達は敵母艦へ、砲撃と雷撃で足を止めろ」

 

通信越しに次々と了承の言葉を聞くなり、俺はHUDを睨みながら先頭を突っ切ろうとしたボートに、遠距離モードのパワーショットを叩き込む。

 

回転する砲身が赤熱、破裂する様な音と共に放たれるパワーショットは寸分狂わずボートに命中。海賊は爆発の余波でまとめて沈んだ。

 

《タ…タイタンだと!?ひ、怯むな!射線を切れ!》

 

その様子を見た敵司令らしき男が、動揺し喚きながらも指示を下す。バカだが、状況を見る力はあるらしい。だが出鼻を挫く事には成功した、あとはどう処理していくか、だ。

 

「……オイゲン、渡した物は?」

 

その為にも、一応人間の戦闘員を相手にする対策として、こちらも一つ策を用意してある。待機中の俺の艦隊、その信頼すべき旗艦へと掛ければ、すぐに打って返すオイゲン。

 

《はいはーい♪言われた通り、ちゃあんと用意してあるわよ?》

「……よし、総員出撃。頼むぞ」

 

そうして遂に俺の部下であるKAN-SEN達が海を駆ける。彼女らに渡した物、それはあのボート程度であれば動きを封殺し、かつ敵性戦闘員を比較的軽症で制圧可能な軍需品。

 

炸裂すると高電圧を撒き散らし、一時的にタイタンの操作をもクラッシュさせるアークグレネード。それを事前に配っておいたのだ。これで敵の戦力を、手を汚させる事なく効果的に削ぐ事が出来るだろう。

 

「……上手く射線を切られた。ガードモード」

《ガードモード起動》

 

装備したスナイパーライフル、ロングボウDMRを手にリージョンから飛び降り、空母側面後方から接近する海賊のボートに照準を合わせる軍曹の側へ。

 

「はぁ…!はぁ…!」

 

息が上がっている。視線も定まらず、無駄な力が入っている様は苦しそうにすら見える。

 

「……深呼吸。俺が居る、そう簡単にお前は死なん。まず、落ち着け」

 

DMRを一度逆手で持ち、軍曹の肩を掴み静かに一喝。戦場で取り乱せばその先は、必ず死かそれに連なりかねない事故。

 

「は、はい。すぅ……ふぅ……」

 

ゆっくりと深く、何度も繰り返し深呼吸を行い、ようやく落ち着いたのか、表情から緊張が幾らか取れていく。

 

「ありがとうございます…」

「……よし。構えろ、基本通りだ。ある程度はカバーする。とにかく、お前がやるんだ」

 

頷いて構えた軍曹の横に並び、俺は装備しているアークグレネードを取り出す。これで動きを鈍らせれば、軍曹にも当てれるはず。位置もかなり目標の頭上、つまり有利な上を取っている。

 

これならば、補助すれば軍曹くらいでもいくらかやれる。

 

「……俺の合図を待て。動きを鈍らせる」

 

ピンを抜き、HUDで軌道を確認。これはパイロットキット、軍需品マスターによる補助効果。より正確に投擲し、確実に仕留めるための保険。

 

「……投げる、射撃用意…!」

「っ、はい!」

 

投げ放ったグレネードは弧を描き、狙い通りに海賊のボートへと着弾。このグレネードは目標に張り付き、起爆する。

 

「ぎゃああああっ!? 」

 

独特な炸裂音と強烈な高圧電流が弾け、青いスパークが海賊に纏わりつく。ボートも似たような状態に陥り、速度が目に見えて落ちる。

 

「……撃て!」

 

軍曹の射撃。幾つか外したが、痺れながらも武器を向けようとこちらを見ていた海賊にしっかりと命中する。

 

「やった…!」

「……リロードしろ、後詰めは俺が」

 

喜ぶ軍曹を諌めて装填を促し、背を向け逃げようとする海賊へとDMRを照準。放たれた狙撃弾は、狂う事なく運転者の頭を抜く。

 

《お見事ですパイロット。支援攻撃を実行》

 

操舵手が死んだ事で動きの止まったボートに、リージョンのガトリングが火を吹く。瞬く間に穴だらけになり、ついには爆発炎上して沈んでいく。ひとまず、目の前の脅威は去った。

 

「……よくやった。お前の働きのお陰で、KAN-SENに人を殺させなくて済んだ」

 

手短に労い、まだ膝立ち射撃姿勢の彼に手を差し出す。彼は慌てたように手を取って、急いで立ち上がった。

 

「い、いえ…!自分は、あなたの指示に従っただけで!」

 

謙遜する軍曹。少しは自信を持ってもらった方がいいのだが…距離の離れた位置を行く海賊のボートにレティクルを合わせながら、彼に言う。

 

「……だが、その指示に従うのを決め、銃を撃ったのはお前だ。自信を持て、お前は確かに、KAN-SENの誇りを守ったんだ」

 

引き金を引きながら、彼の功績が確かなものだと伝える。軍曹は若い、だからこそこの経験はきっと後に活きる。そう信じている。

 

「……はい!」

 

元気良く返事をする軍曹。いい表情だ、きっといい兵士になる。そう思いながらトリガー、再び海賊の背中に弾を撃ち込み、倒していく。

 

「……ロイヤル所属の士官達、状況を報告してくれ」

 

遠洋に見え隠れするボートにも狙撃を加えながら、各護衛艦に散らした士官達に報告を指示。彼らの戦果や被害に応じて俺も動きを変えなければならない。

 

《こちらロイヤル所属の中尉、パイロット殿の艦隊の支援のお陰で、こちらは順調に防衛しております!》

 

無線から聞こえる声。中佐に代わり、襲撃の後に俺に頭を下げてきた彼。ロイヤル所属の中尉からの通信。どうやら俺の艦隊が上手いこと支援しているようだ、被害がある様子もない。

 

《こちら大尉、同じく被害もなく順当に敵の排除を進めております!》

《こちらは少佐、こちらも問題ない!》

 

続けて入ってくる他の指揮官達の戦果の報告。やはりと言うべきか、支援が効いている。高速で動く目標への射撃は難しいが、ある程度動きを止めてやれば上をとっている此方に分がある。

 

「……前衛艦達、そちらは?」

 

ボートは任せても平気なようだ、問題は連中の母艦。大した武装では無さそうだが…

 

《足は止めましたが…》

《機関銃で、船の側面を固められています…これじゃ乗り込もうにも…》

 

ベルファスト、そして駆逐艦のジャベリンが報告してくる。なるほど、それなりに防御は硬いらしい。攻め落とすには工夫がいる、彼女達は足止めをしてくれた。後は、俺の仕事だ。

 

「……分かった、後は俺が。全員周りを警戒していてくれ」

 

それだけ言って、俺はリージョンの側へと行く。そして敵母艦を制圧すべく、リージョンへ指示。

 

「……投げろ、目標はあの敵艦だ」

《了解。乗ってください》

 

言われた通りに、俺はリージョンの手に乗る。するとすぐに、リージョンは片手で俺を持ち上げ、投擲姿勢に入る。

 

《船の速力、風速、距離を計算中》

「パ、パラドクス殿…?一体、何を?」

 

この戦術はミリシアにいた時、そこのパイロットとタイタンに教えてもらった戦術だ。少数精鋭が基本戦術のミリシアでは、単独での任務に際し行けない場所、ないし強襲をかける時はこうしてパイロットがタイタンに投げられ、突撃することがあるらしい。

 

随分とヒントにさせてもらった、敵の意表を突き、確実に作戦を遂行するための選択肢が増えた。度々こうして、使わせてもらっている戦術だ。

 

《計算完了、ご武運を》

 

狙いを定めるように前方に突き出されていたリージョンが拳を握り、その声と共に動き出す。片足を上げ、勢いをつけたリージョンは…そのまま俺をぶん投げるべくピッチング。身体が宙に放り出された。

 

《あ、貴方様…!?》

 

悲鳴を上げるようなニューカッスルの声を聞きながら、敵艦めがけて空を飛ばされて行く。初めて見るだろう彼女はひどく驚いたようだが、ミリシアじゃ案外身近な風景らしい。

 

全身に当たる風を感じながら、武器を持ち換える。フロンティアのリボルバー、ウイングマン。その威力と精度を上げるべくカスタムの施された、ウイングマンエリート。

 

かつての部隊にコイツの跳弾を当てまくる女がいたが、俺はそこまで上手くない。故に弾倉拡張とクイックドローのMODを付けている、それでも充分だ。

 

段々と近づく敵母艦、構えたウイングマンエリートの引き金を、落下に合わせて誤差を修正…一息に引く。

 

「っぐぁ!?」

「パ…パイロット…!?」

 

機関銃で洋上のKAN-SEN達に制圧射撃を行なっていた海賊の頭が跳ね、力無く倒れた。ウイングマンの力強い銃声に上を見上げた敵が気づき、俺の姿を見て目を剥く。

 

「……っ!」

 

「これ…は!?」

 

そんな敵へとグラップリングフックを射出、そのままそいつの体を引き寄せながら速度を殺さないまま足を突き出す。ジャンプキットのパワーアシスト、そしてピッチングの勢いの乗った殺人的な蹴りを顔面へ。

 

靴裏で骨の砕ける感触を感じながら、そのまま海賊を踏み台に甲板へ降り立つ。

 

「か、構えろ…!」

「あんな化け物がいるなんて聞いてねぇぞ、クソッ!」

 

そしてゆっくりと身体を起こし、敵を見据える。甲板に出てる連中の数はそう多くない、全弾当てれば2回のリロードで済む。

 

対人戦であれば、ただの海賊程度が俺に叶うわけがない。パイロットが、戦場の支配者たるその所以を…見せてやろう。

 

 

○○○○○○○○

 

「ほ、本当に飛んでいっちゃった…!」

 

リージョンに投げられて、海賊の本艦に乗り込んで行っちゃったご主人。それを見たロイヤルの軽空母、ユニコーンちゃんが目をキラキラさせながらそれを見ていた。

 

「おぉ…人ってあんなに飛ぶんだね」

「多分指揮官だけ…違かったら、ごめん…」

 

潜水艦二人組のU-47とU-557…今はもうヨナとココナか。二人も呑気にご主人を見上げて、そんな風に喋っている。絶対に普通じゃないよ、ご主人絶対後でニューカッスルさんに怒られそう。

 

「…まぁ、ご主人が行ったならあそこは平気かな。ユニコーンちゃん、偵察機で警戒だけしておいてほしいぞ」

「う、うん…!夕張さん、わかった!」

 

元気よく返事をして、艦載機の準備を始めるユニコーンちゃん。この子は結構真面目な子だから、周辺の監視は彼女に任せておいて大丈夫だと思う。

 

他のみんなも、海賊のボートにご主人から渡されたアークグレネードを当てるだけ当てて、後はロイヤルの士官の人達に撃ってもらった。ご主人曰く、私たちの敵は人間じゃない、って。

 

私達が戦うのはセイレーン。人同士の争いに、わざわざ手間を取らせることはしたくないって言っていた。あんななりでちょっと怖いけれど、ご主人はご主人なりに、優しい人だ。

 

「わぁ…壁を走ってる…!」

 

ユニコーンちゃんのセリフに敵母艦を見れば、パイロットの十八番であるウォールラン、と言う技術で壁を走りながら銃を撃ち放すご主人が。

 

「あらあら…本当に凄いんですね、パイロットって…」

「イラストリアスお姉ちゃん!」

 

あんまり無茶苦茶しないでほしいなぁ、なんて思いながら見ていると、後ろから声をかけられた。振り向けば、そこには優しげな雰囲気の白いドレスのような服を着たKAN-SEN…ロイヤルの空母、イラストリアスさんがいた。

 

「お兄ちゃん、すごいんだよ!空をビュンッて飛んでいって…!」

「ふふ、私も面白いものが見れました♪」

 

目を丸くするユニコーンちゃんに笑いかけながら、自分の胸元に手を置いたイラストリアスさん…どうやったらあんなに大きく…いやいや、KAN-SENだから別に成長はしないけど、ちょっと羨ましいぞ…

 

「さて、そろそろ私たちもお仕事に戻りましょう。指揮官さまに任せておけば、直に終わりそうですし…」

「ユニコーン、もう少しお兄ちゃんを見てたいけど…」

 

ご主人の暴れる敵の母艦を見つめながらユニコーンちゃんが呟く。ご主人をお兄ちゃんと呼び、まだそれほどであってからの時間が経っていないのにもかかわらず、彼女はご主人のことを気に入っているらしい。

 

そんな風に警戒に戻るのを渋るユニコーンちゃんを、イラストリアスさんは上手に言いくるめる。

 

「指揮官さま、頑張ったらきっとユニコーンちゃんを褒めてくれると思いますよ?」

 

その言葉にユニコーンちゃんの体がピクリ、と動いた。そして次の瞬間には、彼女の顔つきが変わる。

 

「イラストリアスお姉ちゃん、本当に?」

「えぇ、きっと…そうですよね、夕張さま?」

 

問いかける彼女のそれに返して、私にまで話を振ってくるイラストリアスさん。別にここで否定する必要はないし、ご主人のことならきっとちゃんと褒めてあげることだろう。

 

「うん、褒めてくれると思うぞ…ご主人の手は、あったかくて気持ちいいんだ…」

 

そうやって返してあげながら、ついご主人に撫でられた時のことを思い出してしまう。あれは委託から帰ってきた後だった、結果は大成功とかなり頑張ったと胸を張った時の話。

 

よくやった、といって頭に置かれたご主人の手は、大きくて、あったかくて…思わずクセになってしまうような心地で、度々ねだってしまうくらいにはいいものなんだ…

 

「そっかぁ…ユニコーン、頑張る!」

 

そう言って意気込むユニコーンちゃん。そんな彼女を微笑ましそうに見つめるイラストリアスさん。そして、その視線が私たちへと向いた。

 

「では、夕張さま?私も指揮官さまに褒めてもらえるように、頑張りますね?」

「むむっ、最初に褒めてもらうのは夕張達だぞ…!」

 

イラストリアスさんの茶目っ気たっぷりな言葉に、つい対抗心を燃やしてしまう…ご主人に頭を撫でられるのは、とても良い気持ちなのだ。別に撫でてもらっても構わないけれど、ロイヤルのKAN-SENにそう安安と譲る気は無い。

 

というか、ご主人の指揮官適性が高いせいで、ロイヤルのみんなもどんどんご主人に靡いてる…これはまずい、夕張達のご主人が取られてしまう…

 

「ヨナ、ココナも!夕張達も頑張らないと…!」

「はいはい、まったく…」

「分かった、行くなら早く行こう?」

 

私の言葉を聞いて海に潜った二人を連れて、海を行く。ちゃんと働けば、ご主人は褒めてくれる…頭を撫でてもらえるように、頑張ろう…!

 

○○○○○○○○

 

「貴方様、正座をしてください」

「……解せない、海賊は全員倒して、無傷でこの艦も鹵獲した」

 

制圧の済んだこの海賊の母艦を、ラストリゾートの船で牽引してもらい、この仕事が終わったらウチで接収してしまおうと。そんな風に考えながら作業をしてもらっていると、満面の笑みを浮かべたニューカッスルが開口一番そう言った。

 

「いいから、正座。してくださいませ」

「………」

 

笑顔のはずなのに、圧というか気迫というか…逆らってはいけない、と思わせられるようなプレッシャーを放つ彼女に渋々従い、甲板に正座する。

 

「…まず、どうやってあんなにジャンプを?」

「……リージョンに投げさせた」

 

正座の俺を見下ろすように仁王立ちしながら問いかけてくる彼女。ピッチングはミリシアでは一般的な戦術だし、特に何も言われるような事は無いはずだ。

 

「なるほど、それは素晴らしいアイデアです…それで?それを何も聞かされずに見させられた私の気持ちは、お考えにならなかったと?」

 

…なるほど、そこか。確かにピッチングという戦術については何も言っていなかったな、失敗した…黙りこくったままでは彼女の圧が、少しばかり重たくなったように感じてしまう。

 

「……すまない」

 

何か言わねば、と思い口を開いたが、出てきたのはその一言。それもかなり声が震えていた気がする…情けない。

 

しかし、そんな俺に対して彼女は小さくため息を吐くと、表情を柔らかく変えて、諭すような口調で語りかけてきた。

 

「貴方様、いいですか…?貴方様の命はもう、貴方様だけのものではありません」

 

屈んで俺の視線に合わせた彼女は、両手をヘルメットに添えて俺に彼女の顔を正面から見据えさせる。

 

「貴方様はパイロット…兵士としての能力が高くても…指揮官としての仕事として、私たちのことも考えなければいけませんよ?」

「……あぁ」

 

確かにそうだ。自分のことだけを考えていていいわけではない。部下であるKAN-SENのことを考えて動くのが、本来の指揮官というものだろう。それは分かっている。

 

だが、やはり俺は多少無茶をしてでも戦うしか、俺の価値を示せないと理解している。それしか知らない、憶えていないのだ。だから、ニューカッスルには悪いが…

 

そう思って口を開こうとした時、ふわりと甘い香りと共に柔らかな感触に包まれる。彼女の両腕が俺の背中に回されていることに気がついた時には、彼女に抱きしめられていた。

 

「あまり、心配をかけないでください。貴方様に何かあったら、私は…」

「……すまなかった、以後気をつける」

 

そう言うと、腕の力を強めて抱きついてくる。その抱擁に応えるべく、俺もまた彼女を優しく包み込むようにして抱きしめ返した。彼女に、そして艦隊のKAN-SEN達に、『再生』についていつか話さなくては。

 

そう思いながら、ニューカッスルを立ち上がらせる。今は、仕事に集中しなくては…




・ピッチング
遠方の目標への移動のため、タイタンに投げられるという荒技。タイタンフォール2では、キャンペーン主人公の相棒のバンガード級タイタンBT-7274が主人公クーパーに提案する。ジャンプキットが無ければ着地点で全身粉砕骨折、パイロットでも失敗したら最悪四肢切断が考えられるらしいです…

・ウイングマン・エリート
フロンティアの大口径リボルバー、そのカスタム品。高い命中精度と威力を誇る逸品、ただし扱いには慣れが必要。作者はゲームマルチモードでこれに跳弾MODをつけたパイロットに、角から頭を何度もぶち抜かれたことがあります。
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