Azur Fall   作:Isaac/アイザック

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クロンシュタットさんはギリギリ天井でお迎えしました。皆さまは今回のイベント、楽しめましたでしょうか?

ご感想、ご意見はお気軽に


1-7

「……定時だ、異常無ければ各員引き継ぎ、警備航行を交代してくれ」

 

海賊共を撃退した後は、特に異常は起きていない。比較的平穏な航行だ、警戒すべき海域も抜け、海賊などの外敵襲撃後の特別警戒も解除して通常のシフトに戻した。

 

今はロイヤルの面々がシフトを終わり、俺の艦隊が警戒に当たる。

 

「……士官達も、所定のシフトに従って引き継ぎ、交代だ」

 

もちろんロイヤルの士官達もそれに該当する、海兵の方へ警備を引き継がせ、持たせた201も一緒に渡させる。

 

俺は続けて指揮と警備に当たる、多少疲れてはいるが誤差の範囲内。一度戦闘をこなした程度で、へばっていてはパイロットは務まらない。

 

俺はまだここで仕事だ、暫くは軍曹も休ませるため俺とリージョンだけだ。ニューカッスルには、心配をかけるようなことをするな、と再三に渡り釘を刺されてしまったため下手なことは出来ない。

 

ハッチから降り、俺とリージョンで視点を分担して大人しく見張る。傾いてきた陽が、水平線の向こうへと沈もうとしている。

 

ヘルメット越しでも眩しいその光に目を細めながら、甲板を歩く。こうして和やかな時の中で、眺める海は素直に綺麗だと感じる。

 

キラキラと夕日が反射し煌めくこの美しい景色に、思わず見張りながらも目を奪われてしまう。平穏な時に眺める海、穏やかに響く漣の音。

 

そうして景色を眺めながら見張りをしていると、不意に後ろから手首を引かれた。

 

「おにいちゃん…」

「……ユニコーン…?どうかしたか?」

 

振り向けば、そこにはロイヤルの軽空母であるユニコーンが。彼女は手に持つぬいぐるみで口元を隠しながら、俺の手首を摘んでいた。

 

「ユ、ユニコーン…艦載機で、いっぱいがんばったの…!」

 

そう言って、俺のことを見上げてくるユニコーン。頑張った、とアピールするその様子は、見た目の年相応の女の子のような無邪気なものだった。

 

「……あぁ、助かった。よくやってくれた、ユニコーン」

「えへへ…」

 

頭を撫でてやると、嬉しそうな表情を見せる彼女。そんな彼女に屈んで視線を合わせ、労い、休むようにと伝える。

 

「……ゆっくり休んでくれ。今は俺の艦隊が受け持つ番だ」

 

そう言うと、こくりと小さくうなずき離れていく。そしてそのまま小走りに、量産空母の船室へ向かっていった。

 

彼女が去り際に見せた、小さな背中を見送りつつ再び海を見やる。先ほどまで見ていた光景と何ら変わりのない、穏やかな風景。

 

もう少しで、この仕事も終わり。そうすれば、またフロンティアの海でセイレーンと戦う為、力を蓄える日々が待つ。残留艦隊も邪魔をしてくる可能性もある、奴らへの対策も考慮しなくてはならない。

 

しかしまずはこの任務を終え、ロイヤルとラストリゾートからの報酬を受け取り、それを元に考えなければならない。今手元にないものを元に、計画を立てることは出来ない。

 

「お、おにいちゃん…!」

 

そんな事を思いながら甲板を歩き、海に目をやっていると先程戻っていったはずのユニコーンが、なにやらバスケットを持ってこちらにやってきた。

 

「……どうしたんだ?」

 

駆け寄ってくる彼女を待ち、目の前に来て息を整えるのを待ってそう聞く。するとユニコーンは、にっこりと笑いながら俺に話す。

 

「ニューカッスルさんに、頼まれたの!おにいちゃん、絶対に休まないだろうから食事を持って行ってほしいって!」

 

彼女の言葉を聞いて納得する。確かにニューカッスルなら言いそうだ。しかしわざわざこんなことをせずとも、俺は大丈夫なのだが…

 

「……ありがとう、いただこう」

 

だが彼女の好意と、ユニコーンのお遣いを無碍にするのはどうかと思い、差し出されたバスケットを受け取る。開けてみてみれば、中にはサンドイッチが幾つかとタンブラーが入っていた。

 

おそらくタンブラーの中身は紅茶だろう、俺の休みの為に自分の休憩時間を使ってまで作ってくれたのだろう。感謝しつつ、彼女も彼女で働き過ぎだと思いながらユニコーンに手招きをする。

 

「……どうせだ、一緒に食べるか?」

「え、いいの…!?」

 

サンドイッチの個数は4つ。流石に哨戒中に全部食ったら食い過ぎだ、食後の急激なパルクールで腹痛を起こして、それに気を取られて足を滑らせ死にました。なんてお笑いにもならない。

 

「……構わない、食い過ぎたら俺とて動けないからな」

 

そう言ってユニコーンを誘い、甲板のへりに腰を下ろす。隣に嬉しそうにして座るユニコーン、彼女にであれば、顔を知られても特に問題にはならなさそうだとヘルメットを取ってしまう。

 

「わぁ…おにいちゃん、そんな顔してるんだね」

「……そんなに面白くもないだろう」

 

ユニコーンは俺の顔を見て、楽しそうに笑っていた。何処にでもいる、つまらない男の顔なんて見てもそういいものでもないだろうに。そんなユニコーンの様子に苦笑しながら、サンドイッチを一つ取り、差し出す。

 

「……ほら」

「ありがとう、おにいちゃん…!」

 

ぱくりと一口、口に入れれば幸せそうな表情を浮かべる。俺もそれを見ながら一つ口に運ぶ、パンに挟まれた具材はどれも栄養のバランスが考えられていて、ニューカッスルの心遣いが感じられる。

 

「……美味いな」

「うんっ、とってもおいしい!」

 

思わず漏らしてしまった一言に、嬉しそうに笑うユニコーン。この笑顔を見る為に戦っている、とは大袈裟かもしれないが、それでもこの子達KAN-SENの為ならば、俺は命を懸けられると思う。

 

そう思いながら、二人でサンドイッチを食べ進め、食べ終わった所で紅茶を一口。そしてヘルメットを被り直す。ロイヤルの士官達や、精神の成熟したKAN-SEN達に顔を見られる、というのは少し都合が悪い。

 

俺がユニコーンと話して食事している間に、素顔がバレて共有でもされては単独行動や装備なしでの潜入任務に差し支える。普段パイロットが顔を隠しているというのは、そういった任務にも当たれるというメリットがある。

 

「……そろそろ、行くか」

「おにいちゃん、もう行っちゃうの?」

 

残念そうな声を出すユニコーン。彼女としては、俺ともう少し話したかったのだろうが仕方がない。一応は仕事中なのだから、役割は果たさなければならない。彼女には申し訳ないが、ここで別れることになる。

 

そう思って、彼女の頭を撫でてやろうとすると俺の方を見ていたユニコーンが視線を俺の背後にやった。

 

「あ、イラストリアスお姉ちゃん!」

 

その言葉に、振り返るとそこには、ロイヤルの空母であるイラストリアスがいた。彼女は微笑みながら、こちらへ歩いてやってくる。

 

「ご機嫌よう、指揮官さま。あと少しでお顔が見れたのに…残念です」

「……お疲れ様。悪いが顔は見せるわけにはいかない、すまないな」

 

そう言って、茶目っ気たっぷりにそう宣う彼女に肩を竦めてそう返す。

 

「むぅ…ユニコーンちゃんにはよくて、私はダメなんですか?」

 

その返事に、大層不満げに頬を膨らませてジトっとした目で俺をみるイラストリアス。そう言われても、理由があって見せられないんだ、残念ながらな。

 

「……ユニコーンとは違って、正確に顔の特徴を覚えて描写させられる可能性のある者には無理だ」

 

俺の言葉に、きょとんとした顔になる彼女。だがすぐに、くすりと笑い、納得したような表情になった。

 

「だったら、今日のところは諦めますね…でも、いつかは見せてもらいますから」

「……俺の艦隊の所属にでもならない限り、基本的には無いぞ」

 

俺は、イラストリアスに苦笑しながら彼女に言う。だがそれはどうやら失敗だったようで、瞬きの間に俺に詰め寄った彼女が俺の手を取り爛々と目を輝かせる。

 

「今の言葉…!本当ですね?忘れないでくださいますよね…!?」

「…………」

 

しまった、と内心思ってしまう。だがここまで言って詰め寄られている以上は撤回出来ない。俺は黙って、こくりと首を縦に振った。

 

「ふふっ…!言質は取りましたわ…では指揮官さま、どうかお忘れなきよう」

 

俺の手を離しウインクを一つ、どうやらこのお嬢様空母、思ってる以上にやり手らしい。

 

「……もしも、の話だからな。そう簡単に所属など変わらないだろう」

 

俺は、苦笑しながら彼女にそう返した。仮にも彼女はロイヤルネイビーの所属、言わば軍人と大差無い扱いなはず。そう簡単にはいかないだろう。

 

そもそも、ロイヤルから話に上がっている戦力の派遣という話も、あくまで派遣でしかない。いわゆる業務提携、向こうの所属のままウチの基地を使うという形になると思っている。

 

「あら、陛下は指揮官さまの働きに応じて、本当に所属を変えさせるおつもりですのよ?」

「……何…?」

 

そんな風に思っていた俺に、隣にいたイラストリアスが言った。それに思わず、眉をひそめてしまう。本当にそんなこと出来るのか…いや、ロイヤルネイビーのトップは女王だ。

 

恐らくは、これがイラストリアスの冗談ではない限り、本気で籍を変えさせるつもりなのだろうか…?

 

「指揮官さまの適性は類を見ないほどの高さ…みすみす逃して野放し、なんて勿体無い真似…陛下がなさると思いまして?」

 

イラストリアスが、そう言って妖しく笑う。なるほど、そうか…そうまでして、俺との関わりは持っておきたいと言う事か。

 

正直、俺はそこまで自分の指揮官としての能力が高いとは思っていない。実際、指揮経験は大してない。あのいけすかない中佐の方が、指揮官としては長いはずだ。

 

だがまぁ、アレがあんな事をやらかしたのだ…その後始末、と言う側面も多少はあるのだろう。そう思いながら、目の前にいる彼女を見る。

 

「うふふ、指揮官さま。楽しみにしていてくださいませ♪」

「……必ず君、という訳でもないだろうに…まぁ、覚えてはおく」

 

俺はそう言って、苦笑するしかなかった。確かに、イラストリアスの言う通りかもしれない。だがそう上手く事が運ぶとも限らない。

 

「じゃあ、ユニコーンも、おにいちゃんの艦隊に入れてもらえるかもしれない、の?」

「……そうかもしれないな」

 

目を輝かせて訊くユニコーンの言葉に、俺はそう答えた。まだ先の話ではあるだろうが、可能性としてはゼロではない。

 

そう言えば、ユニコーンは手に持ったぬいぐるみをギュッと抱きしめ、期待に染まった顔色で俺に目をやるユニコーン。フロンティアという、ロイヤルのあるコアシステムから見れば辺境の開拓地の俺の艦隊に興味を持ってくれている。というのは嬉しい話でもある。

 

「じゃあユニコーン、もっとがんばるね!おにいちゃん!」

 

俺の言葉を聞いたユニコーンは、グッと拳を握ってフンスと息を吐く。その様子に、微笑ましいものを感じながら彼女の頭を撫でる。

 

「……ああ、頑張ってくれ。頼りにしてる」

「うんっ」

 

ユニコーンは嬉しそうな顔で、されるがままにされている。そんな彼女の様子を見て、俺の顔を覗き込むようにしてイラストリアスは不満げに口を尖らせる。

 

「指揮官さま〜?またユニコーンちゃんだけですか?」

「……いや、お前は別に…」

 

俺はその言葉に困惑してしまう、まだ幼いユニコーンならともかく、成熟した女性の姿のイラストリアスにまで頭を撫でてやる道理はないはずだが…

 

「贔屓なんて、指揮官さまはひどい人ですね…」

「……はぁ、分かった分かった」

 

俺の表情を見て、さらに拗ねたように言うイラストリアス。仕方なしに、彼女の頭へ手を伸ばし、その艶やかな白の髪を優しく撫でる。

 

彼女はその事に満足気に頬を緩める。どうやら正解だったようだ。そのまましばらく撫でてやり、程なくして手を離す。満足そうに微笑むイラストリアス、そしてそれを羨ましそうに見つめるユニコーン。

 

「……さて、俺はそろそろ行く。しっかり休んでくれ」

「はい、お気をつけて〜♪」

「がんばってね、おにいちゃん!」

 

そう言って踵を返し、二人の声を背中で聞きながら警備に戻る。随分と物好きなKAN-SENに目をつけられてしまったな、と思いながら…それも悪くはないかと考えつつ海を睨む。目的地は近い…

 

 

○○○○○○○○

 

ドロズが通信越しに、現在の作業状況を通達してくる。

 

《パイロット、今ハーベスターを搬入中だ。最後の一息、頼んだぞ!》

「……あぁ、任せろ」

 

ラストリゾートが目的地とした島へと到着した艦隊、ハーベスターを搬入する輸送艦を確実に守れるように量産艦とKAN-SEN達を配置。

 

《周辺の状況をスキャン中。セイレーンが来るとしたらここだ、気をつけてくれ!》

 

事前のブリーフィングで、セイレーンが来るとしたらという話題になり、この艦隊の総力を持って防御姿勢を取っている。何せ、重荷を背負いそれを守りながら戦う、というシチュエーションは、敵からすれば相当に攻めやすい状態でもある。

 

生半可な防御では抜かれる、そうさせないため、俺もこの任務最後の戦闘になるであろう襲撃に備える。デービスの言った通り、来るならここだ。

 

ここに到着する前の夜、不明な航空機を前衛艦達が幾つか落としている。シルエットも妙なもの、少なくともここフロンティアのドロップシップの類では無かった。

 

アレがセイレーンの偵察だとすれば…その後俺たちを襲うタイミングは、もうここしかない。来るならば、と言ってはいるが俺は来ると思って指揮に当たっている。

 

《っ、指揮官!来るわ!》

 

そう思いながらリージョンと共に海を睨んでいると、最前線のオイゲンからのするどい通信。その直後、空がひび割れるようにして空間が裂け…禍々しいセイレーンの量産艦、先の襲撃で主力となっていた「pawn」と軽巡洋艦の「knight」と思しき艦が溢れてくる。

 

「……戦闘態勢、接敵に備えろ!」

《やっぱり来たな、倒すぞパイロット!》

 

俺の言葉に呼応するように、デービスが応答する。

 

《私達も負けてられないわ、ロイヤルの威光を見せつけなさい!》

 

エリザベスも主力艦に並び立ち、ロイヤル艦隊をそのカリスマで彼女達を鼓舞する。彼女達は迫りくる敵に、怯むこと無く勇敢に立ち向かう。それはまさに、誇り高きロイヤルネイビーに相応しい勇姿。

 

そんな彼女達の姿を、指揮官である俺は見守りながら自分の事に集中する。彼女たちがいれば、前線は大丈夫だろう。俺はそう思い、リージョンのコックピットから自身の艦隊に指示を下しながら、港へ接近する自爆ボートをプレデターキャノンで薙ぎ払う。

 

「……潜水艦隊はオイゲンの指示に従うように、ロング・アイランドの発艦指示は俺が」

《Jawohl、指揮官》

《えへへ〜、わかったよ指揮官さん》

 

主力艦隊のロング・アイランド、そして潜水艦隊のヨナとココナに指示を出していき、ブリーフィング通りの動きをさせる。ロイヤル側の士気も高い、油断は禁物だがこれならば乗り越えられそうだ。

 

「……リロードする、カバー頼む」

《はい、貴方様…!》

 

前衛艦はオイゲン、綾波、そして夕張に頼んでいる。残ったニューカッスルには、リロードの長いプレデターキャノンの隙を埋めてもらうべく、近くで待機してもらっている。魚雷と主砲で、一人であってもこの隙埋めくらいならばと請け負ってくれた。

 

そんな彼女に負担をかけないよう、後退は速やかに行い自爆ボートを落とす。ロイヤル士官、そして海兵達も小銃とR-201で迎撃。

 

《また「pawn」だ、奴らこっちに詰めてくるぞ!始末しろ!》

 

ラストリゾート側のアナウンスも参考にしながら、オイゲン達は臨機応変に立ち回る。

 

「……士官達、損害状況は?」

《こちらは少佐、ラストリゾートのパイロット達のお陰で軽微だ!継戦に支障はない!》

 

どうやら、対タイタン装備で固めたパイロットたちの支援もあり、有利に戦闘を進められているようだ。

 

《パラドクス、聞いてくれ!島にだったらタイタンフォールが出来る!もう少しで用意が終わる、後少し頑張ってくれ!》

「……了解だ、ドロズ…あと少しだ、皆耐えてくれ!」

 

ドロズ呼びかけに、俺は応える。もう彼らラストリゾートのパイロットは海の上ではなく、拠点となっている島に上陸している。そうなれば、そこに彼らのタイタンを落とす事は可能だ。ここに追加で四機来てくれれば、かなり楽になるだろう。

 

《貴方様、少しお願いします…!》

「……あぁ、任せろ」

 

そう言ってニューカッスルが、装備の再装填に入る。無駄にばら撒くような射撃から、精密に撃ち抜く射撃に切り替え持たせる。ここで俺も装填に入っては、瞬く間に自爆ボートに群がられて落とされる。

 

《指揮官、いたわ!人型!アレが旗艦みたい…!》

 

オイゲンから通信。どうやら奴らの中核らしき人型のセイレーンを見つけたらしい、それを潰せば後は掃討するだけだ。

 

「……了解、気をつけろ。ロング・アイランドは艦載機を発艦させろ、前衛艦隊を支援!」

《了解したの〜!》

 

俺の指示に従い、彼女が航空攻撃による火力支援を行う。海中のヨナとココナの雷撃も合わせれば、火力はかなりのものになるだろう。

 

「……っ、頼む!」

《はい、お任せを…!》

 

そうして前線の様子に気を配りながら、ニューカッスルと効率的に自爆ボートを処理していく。少しずつ、その勢いは削げていく。

 

息のあった俺と彼女の連携もさらに少しずつ良くなっていき、少し余裕が出てきたそのタイミング、そこでリージョンが報告をした。

 

《味方タイタンフォールを検知》

 

その声に空を見れば、リージョンをタイタンフォールした時と同じような青い煌めきが、上空から4つ降ってきた。タイタンフォール、ラストリゾートの増援。

 

トーン級が1、ノーススター級が1、イオン級が2。

 

《パイロット、タイタンが到着した!》

《よしお前ら、蹴散らしてやれ!》

 

その言葉を聞き、ラストリゾートのパイロット達も勢いづく。自爆ボートの相手をしていた内の二人が、それぞれイオンとトーンに乗り込みタイタンとして戦線に加わる。

 

トーンの着弾点から広範囲に炸裂する40mmキャノン、そしてイオンのスプリッターライフルのエネルギー弾が寄る自爆ボートを悉く殲滅する。

 

《す、凄まじいな…》

《タイタン…これ程楽になるなんて…》

 

ロイヤル士官達が、その勢いに驚き、感嘆している。当然だ、一般兵とは訳が違う。それこそ、戦局を変えうる決定的な主力兵器。

 

それがこの場には俺含め五機、自爆ボート程度に引けを取るとは思えない。

 

「……ロイヤル側、こちらにタイタンの増援が到着した。余裕ができたら、前線の支援を頼みたい」

《分かったわ!ベルファスト、あなた達は前線に!》

 

エリザベス率いるロイヤル艦隊に通信を入れれば、すぐにベルファスト達前衛艦隊に指示を出す女王。

 

《かしこまりました、では行ってまいります!》

「……あぁ、頼んだ」

 

そのまま前線まで駆けていくベルファスト率いる前衛艦達、そう時間はかからずセイレーンを倒せるだろう。

 

「……ガードモード、頼むぞ」

《敵自爆ボートを攻撃中》

 

ハッチを開き、外へ。こちらに寄せてくる自爆ボートの波は、かなり数を減らしていて、もうオートタイタンとしたリージョン単騎でもどうにかなるような様子。

 

「……ニューカッスル、一度こちらに上がれ。少しお前を休められそうだ」

《分かりました、貴方様》

 

俺は海の上を往けない、だから温存できる時は、彼女達KAN-SENの力は温存しておきたい。特にこういった射撃でどうにかなる敵が相手なら、リージョンと隙埋めのための俺の射撃があれば充分。必要以上に彼女を動かす要件ではない。

 

指示を聞いたニューカッスルは、滑るように海上を走り、そのままの勢いで跳躍。優雅に空母甲板に着地した。

 

「……よくやってくれた、少し待機で構わない」

「ありがとうございます、ですが無理はなさらないように」

 

そう言って彼女は俺に一礼し、俺の横で艤装を降ろした。さて、俺も残った仕事を片付けるとしよう。

 

ヘムロックを構え、リージョンがプレデターキャノンをリロードする間のみ射撃を行いボートを落とす。順調に脅威を排除するその最中、ニューカッスルが小さな声で俺に語りかける。その声は、僅かに震えて怯えをはらんでいた。

 

「…あ、貴方様……」

「……中佐…?スペクターまで、なんのつもりだ、監視はどうした…?」

 

振り返ればそこには、この戦線にいなかったはずの、例の中佐。彼がスペクターを6体程度引き連れ、武器を手にこちらにふらふらと歩み寄ってきていた。

 

「……リージョン、しばらく任せる」

《了解。プロトコル2》

 

海上は少しリージョンに任せて、俺は中佐の方へと銃を向ける。

 

「……お前は禁錮されていた筈、何故ここにいる?」

 

そう問いかけるが、返事はない。代わりにスペクターが銃を構え、中佐がフラフラとその前に出てくる。彼我の距離は10mも無い、何かされては困るが…

 

「お前のせいで…どの道私は指揮官の名を剥奪されるだろう、女王陛下は私の忠義に、応えてくれなかった…」

 

顔を上げ、手に持った銃…何処から盗ってきたのか、フロンティアの散弾銃…マスティフショットガンを腰だめに構える中佐。その目は、妄執と失意に濁っていて、とても正気とは思えない。

 

そんな中佐は、一人呪いでも篭っていそうな独白を続ける。

 

「私のニューカッスルは奪われ、ロイヤルでの立場もない…お前が、お前さえいなければ!」

「……逆恨みも甚だしい、警告だ。銃を降ろせ」

 

喚く中佐は口から唾液が飛び散り、その顔が醜く歪むのさえも気に留めず叫び続ける。かなり興奮している、コイツは相当に危険だ。なにをしでかすか分からない…

 

俺のその警告に、虚空を向いていた目がギョロリとこちらに。俺を睨み、そしてニューカッスルの体を舐め回すように眼球がうごく。

 

「あぁ、ニューカッスル…どうせもう私に後はないのなら…せめてッ…!」

 

そして引き金に指をかけた中佐、すぐさま止めよう俺も撃とうとしたが…マスティフの焼夷散弾は横に広がる。肩付けで構える事で、ストック部分のスイッチでチョークが作動し拡散を抑えるが…コイツは腰だめ、相打ちになればニューカッスルに当たる…!

 

「……カッスル!!」

「え…!?」

 

すぐにヘムロックを捨て、横の彼女を抱いて庇う。弾けるような銃声、そして背中に感じる熱と衝撃、灼けるような鈍い痛み…

 

「……ァグ…ッ!」

「あ…あぁ…貴方、様…」

 

「っハハハハハ!やった、やったぞ!!」

 

彼女を抱いたまま、倒れる。これは不味い、直撃は避けたが、かなりダメージを貰ってしまった…まさか、味方側の人間が、敵に回るとは……痛みを歯噛みで抑えながら、隙を窺う。

 

恐らく、ニューカッスルまで撃つつもりは無い、あくまで目的は俺だけ。油断したところを制圧する、その為には出来るだけ油断を誘いたい…そう考えじっと息を殺す…

 

スペクターが歩み寄ってくる、まずはこいつらを…と思ったその時。ニューカッスルが、俺の腕を抜けて立ち上がる。表情は窺い知れないが、その沈黙はとてつもない怒気を纏っていた。




・トーン級
40mmトラッカーキャノンとソナーパルスを装備した、中距離支援の得意な中量級タイタン。シールドであるパーティクルウォールを展開し、味方や自分を守りつつキャノンでトラッキング。ロックオンしたところを追尾するロケットで追撃するというコンセプトの扱いやすいタイタン。

・イオン級
全武装を共通のエネルギー源を使い操る、中量級タイタン。全ての装備が実弾ではなくエネルギー式。距離に応じて拡散と収縮を使い分けられるエネルギー武器スプリッターライフル、遠距離の敵もピンポイントで仕留めるレーザーショット。そして敵の実弾を絡めとるヴォーテックスシールドを持つ。実弾武器一本のみのリージョンの天敵。
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