キリがいいので5000文字前後…!
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食堂、のような場所。テーブルと、幾つかの椅子の並ぶその空間。そこに二人が向かい合ってくつろいでいる。
『いやぁ、貴重な体験したもんだぜ。あんな綺麗だとは思わなかった、いいもんだな、KAN-SENってのは』
浅黒い褐色肌の男…俺のかつての部隊、その副隊長にして相棒であった者。コードはスワンプマン、俺のコードと合わせて哲学的な意味らしいが…
『……お前とローニン乗せたウィドウの遭難から二週間と半分…まさか女と楽しくやっていたとは思わなかったが』
俺の視線の先で、ログの俺自身が不機嫌そうにマグカップをテーブルに置く。自由奔放、傍若無人…そんな相棒には手を焼かされていたが、この時の表情を見るにかなり頭にきていたようだ。
だがケラケラと楽しそうに笑いながら、ウイングマンを手元で回して遊びつつ俺に答える。
『悪かったっての、オレだって好きで遭難して、いつもの癖でたらし込んで抱いたとかじゃねぇよ。ログを見てもいい、本当さ』
…あぁ、そうだ。アイツは女癖が悪かった。生きている実感が欲しいと言い、風俗街に出かけて任務をすっぽかしかけることも度々あった。
遠く霞んだ記憶を思い起こそうとしながら、ログを見続ける。
『……どうだか…そう言って何度夜中に抜け出して風俗に行った…』
『そりゃ悪かったっての…もうしねぇよ本当に。なんなら会員証捨てたんだぜオレ?』
戯けたような口調ではあるが、銃を回す手を止めてログの俺に向かいそう言うスワンプマン。
『……ジョークか?』
『本気だよ。「三笠サン」に諭されてな、まぁ耳の痛ぇ説教だったが…』
出てきた、「三笠」…重桜艦隊を救ったKAN-SENの名。朧げな記憶は正しかったようで、過去相棒は彼女と接触していた。
『……信じられないな…お前をこうまで言わせるとは…』
『そもそものレベルが、他の女とは段違いだった。風俗なんざカスだな、カス。そんでオレの愚かさをしこたま詰られたぜ…』
思い出すように笑うスワンプマンは、少し寂しげでもあった。
それから暫くの間、スワンプマンが俺に語るのはそのKAN-SENの話ばかりだった。
自分が如何にバカなことをしていたのか、そしてそれを諌めてくれた三笠というKAN-SENが如何に素晴らしいか。延々と、飽きもせず今までに無い様子で楽しそうに語る相棒。
『……随分と、入れ込んでいるな。惚れでもしたか…?』
そんな様子に当てられてか、ログの俺も表情を緩めてそんな風に訊く。茶化して訊いたその問いに、しかし相棒はビクリと肩を揺らすと、困ったように笑った。
『あぁ〜…分かる、か?ハハ…まぁそんなところ、なんだろうな…』
『……そうか』
どこか恥ずかしそうな様子で頭を掻く相棒の様子に、ログの俺はただ一言そう答えた。いつもはああだこうだと、俺には興味もない男女の交わりについて語る男が…随分としおらしくなったものだ、とでも思ったのだろう。
そこからも続く惚気のような特徴の解説を、余す事なく記憶する。捜索に必要な情報だ、ある程度をログで保管できれば重傷な彼女ら重桜艦隊に聞かなくてもいいことが増え、負担を減らせる。
大まかに記録を終えたところで、ログの再生を終了しようとすると、相棒が立ち上がり、ログの俺に言う。
『お、そうだ。そういや二人で自撮りしたんだよ、見せてやろうか!?』
その言葉に、ログの俺は呆れたような顔をすると、圧に負けたように頷く。
『……どうせ、拒否しても見せるんだろう?』
『分かってんじゃねぇか、ちょっと待ってな…確か……』
そう言いながら、携帯端末を操作し始める。そして、俺の視界に映る画像フォルダを開く。
その中にあった一枚の写真、それを覗き込みログの再生を止める。満面の笑みを浮かべる相棒、そしてそれと肩を組んでぎこちなく笑う、黒髪の美女…
「……これが、三笠…なるほど」
ログの一場面を切り取り、ヘルメットへと伝送。そのままログの再生を打ち切る。意識が一瞬暗転し、また浮上する。
気づけば、そこはもうシュミレーションポッドの中。思いの外、目指すログを探すのに時間がかかった。そう一つ息を吐き、外に出る。
「おかえりなさいませ、貴方様」
「……あぁ、待たせた」
すると、カッスルがヘルメットを持って待っていた。そんな彼女からそれを受け取り、被って歩き出しながら謝罪する。
「……すぐに顔を出せなくてすまないな…少し、調べ物をしていた」
一応、非常事態の対処とその延長としての調べものだったが…まぁ俺を探していたというのはベルファストから聞いていた、その上で彼女との接触を後回しにし、これほど時間をかけてしまったのだ。一言謝罪は入れるべきだろう。
「いえ、この後すぐに出撃があるわけでは無かったので、お伝えしたい事も後でよいかと思いましたから…気にしていませんよ、貴方様」
しかし、カッスルは微笑みながらそう言ってくれた。随分と甘くして貰っているが、いつまでもその甘さに頼りきりになるのはよくはない…
「……ならいいが…本当に急務ならキチンと呼ぶように」
「もちろんです、私もその辺りの分別はつけられますから」
忠告にもそう返したカッスル、そんな彼女に通信でも伝えた通り重桜の艦隊を保護した事。しばらくは、セイレーンを警戒して受ける委託を減らし、周辺海域の哨戒を行う事…
そして、重桜の艦隊を救い、そのままはぐれてしまった三笠、というKAN-SENの捜索を行う旨を伝える。
「…なるほど…分かりました。では私からも一つお伝えしますね?」
俺の言葉を聞いたカッスルは、少し思案するような素振りを見せると、そう言った。そして彼女は一度深呼吸をして、口を開いた。
「委託の途中、帰りがけでした。小規模でしたが、セイレーンの潜水艦を発見しました…」
「……潜水艦…か…」
ウチで言えばヨナ、そしてココナの二人がそうだ。海中から一方的に、敵艦隊への雷撃を行う強力な艦種。味方にいれば心強いが…それがそのまま敵にいるとなれば、明確な脅威となる。
至急、対策が必要だろう。明石も対潜装備について、何か報告があると言っていたのは覚えている。後でまた話を聞きにいかなければ…
「……分かった、助かる。しばらくはそれに警戒しなければな…」
なんにせよ、今後の哨戒や出撃に響く重要な情報だった。後回しにすべきでは無かったな…
「……となると、俺に直接メッセージか何かで通知を入れられるようなシステムを組むべきだな…」
俺の都合で直接会えなくても、報告だけは通るような機構を構築すべきだろう。今回はたまたま、この後委託や出撃に出かける予定は無かったが…
もしそれを伝えられず、その内に艦隊が出張っていたと考えると…取り返しのつかない損傷を、彼女たちKAN-SENに出してしまったかもそう知れない。
そういった事案を、確実に出さないためにも考えなければならないだろう。やることは多いが、その手間を惜しんで彼女らを沈めては本末転倒だ。
「それは名案ですが…後で、明石様と打ち合わせましょう」
装備の一新…今使っているKAN-SEN達の装備についても、余裕が出てきたためティアを上げようかと思っていたところではある。
コアシステムのKAN-SENの軍需品メーカー…クロキッドやヴィスカー、クラップに蔵王重工。それらの企業から、明石が上手いこと『装備箱』と呼ばれる艤装の入った箱を取り寄せている最中だ。
それに追加して、艤装の強化に使うパーツやら何やらで性能を底上げして運用するつもりではあった。そこに急で申し訳ないがと、明石に訊いてみないことには始まらない。
暁と野分の艤装修理で忙しいだろうが、何か差し入れでも持って行くついでに聞いておかなければ。そんなことを考えながら、カッスルと今日の食事についての話をしながら歩く。
ある程度の蓄えがあるが、場合によっては追加の買い出しも視野に入れておくべきだろう。とにかく、ゆっくりと休ませるためには寝床と食事。メイド隊に任せれば、そこは大丈夫だろう。
カッスルに夕飯の仕込みを頼み、途中で別れた俺は工廠へ向かう。明石へ、幾つか確認したい事がある。
「うにゃ?対潜装備について?」
「……あぁ。セイレーンの潜水艦が居たらしくてな、お前の意見を聞きたい」
マービンが行き交い、部品を運ぶ工廠の奥の作業場。そこで艤装の修理をしている明石に、そう投げかけた。溶接作業をしていた明石は、機材を置きこっちにパイプ椅子を引きずってきてくれる。
それを受け取り、自分の椅子も用意した明石の対面で座って言葉を待つ。よっこいしょ、と椅子に腰掛けた明石はそのまま俺に概要を話し始める。
「基本的に、対潜装備は二種類。爆雷とソナーがあるにゃ」
そこから始まる、明石の対潜水艦戦での基本。まず、ソナーで潜水艦の位置を特定。これは、艤装から発せられるソナーなので、KAN-SEN達も自分の感覚と目視で確認ができる筈とのこと。
「見つけたら、今度はそこ目がけて爆雷をポイっと、これが基本にゃ」
自分の思っていたよりも、遥かにシンプルかつ明解な答えに面食らってしまう。
「うにゃ…どうしたのにゃ?」
「……いや、続けてくれ」
そんな俺を見てか、明石が首を傾げるが続きを促す。難しく考えすぎていたようだ、やはりKAN-SENの武器性能やそれを扱う能力について、俺はまだ大分疎いらしい。
そんな俺の内心を知ってか知らずか…明石は奥からやってきたマービンから、そこそこの大きさのものを受け取った。
「これが、従来型爆雷投射機だにゃ…ティアは低いにゃけど、これならすぐに幾つか用意できるにゃ」
筒に色々とパーツが繋がったような見た目のもの…どうやら、それで爆雷を投射するらしい。予備もあるようで、攻撃面に関しては問題無さそうだ。
「……助かる…装備可能な艦種は?」
「駆逐艦か軽巡だにゃ。軽巡に装備させるとなると…多分対空レーダーかバルジを外さなきゃだにゃ」
対潜装備は設備、という扱いらしい。主砲や魚雷、対空砲といった基本的な装備の他に、KAN-SEN達は設備、という装備を2つまで装備可能なのだ。
普段は対空性能を上げたり、魚雷に対する対策でバルジなどを装備させているが…対潜装備が設備枠、となるといずれかを外す必要が出てくる。
なんとも悩ましい問題だと、思考していると明石がさらに続ける。
「ソナーは申し訳ないけど、現状手元にないのにゃ…」
無理を言って相談していたため、予想していたことではあるが…やはり、不足はあるらしい。
「……やはりソナー無しでは、対潜は…待て、そうしたら委託組は、なぜ潜水艦の出現を…?」
幾ら攻撃手段があっても、それを命中させるに足る目が無ければ意味がない。そう思ったが、ここで一つの疑問が浮かび上がる。
ソナーが今は無い、だとしたら何故、カッスル達委託組は潜水艦の出現を察知して、俺に報告できた…?その疑問に、明石は丁寧に答えてくれた。
「元々の駆逐艦、軽巡洋艦の艤装に標準装備のソナーはあるにゃけど…性能は所詮標準だにゃ、優位が取れる程の範囲と精度じゃ無いにゃ…」
どうやら、一応はソナー機能を標準で持っているらしい…となると、ソナーという設備は対空レーダーと同じく性能の底上げや補助、といった具合のようだ。
「……なるほど…無くても検知自体は出来るが…」
「結構リスキーだにゃ、かなりの範囲の狭さだからにゃ。それだけ近づかないと効果が望めないのにゃ…」
潜水艦との距離によっては、ほぼ無意味に等しい程度のソナー…それは厳しい話だ、損傷を受けるリスクが高過ぎる。
どうにかして、代案ないし対応を考えなければ…一か八かの賭けは、例え一度上手くいっても次はそうはいかないだろう。幸運は二度も続かないものだ…
「……どうするか…ソナー、ソナーの代わりか…」
柄にもなく、当てのない思考の海へと沈み、唸るようにして考える。どうにかして不足を補ってやりたいが、生憎俺はパイロット。タイタンに乗って戦うか、陸で動いて戦うしかほぼ出来ない。
アビリティだって、海の上では到底使えない…はず……アビリティ…潜水艦の検知…使うのは、ソナー……
「……明石、お前の仕事を増やしてしまうかも知れないが…ソナーの問題、どうにか出来るかもしれん」
パチリと、ピースがはまるように一つ案を思い付いた。だがしかし、俺にはそれが可能かどうか分からない。それに、それを実行に移せる技術はない。
「ほ、本当かにゃ!?聞かせて欲しいのにゃ!」
それでも、明石の協力があれば、どうにか出来るかもしれない。驚く明石に口を開き、案を出す。後は彼女が承認してくれれば、行けるはず………
・装備枠
アズールレーンのゲーム内では、艦種やさらにその中でも、装備可能な艤装の種類が違います。例えば、ニューカッスルなら『主砲』『魚雷』『対空砲』と言った基礎の三つに、固定二枠の『設備』を装備できます。対潜装備はこの『設備』の扱いです
・KAN-SEN軍需品メーカー
重桜の蔵王重工、ロイヤルのヴィスカー、鉄血のクラップにユニオンのクロキッド。陣営別のKAN-SENの艤装の入った箱『装備箱』の販売元。アズールレーンゲーム内でも装備箱の名前だけで、実際にストーリーには絡んで来ない。
・装備箱
武器ガチャ。ティアが1〜5まであり、高いティアならそれだけいい装備が出る可能性も高い。ティア3が紫でティア4が金色なのだが、あまりのティア4での金装備の出なさに、明石や不知火というショップの店員KAN-SENが、ティア3を金に塗っているのでは…?と言われる事も…