Azur Fall   作:Isaac/アイザック

28 / 29
生きています…!仕事にスプラトゥーン3、ポケモン。そしてもちろんTITAN FALL 2…!

楽しいが多すぎてどうにも…腹切って詫びます。マーダー大将が。


ご意見、ご感想はお気軽に


2-9

《にゃあぁぁあ!?ちょっと、煤けてるなら先に洗浄スペースに行ってほしいにゃぁあ!!》

「あははは、ごめんごめん!まだここの設備に慣れてないんだ!」

「姉さん何度目だよ…」

 

出撃から戻り、先の戦闘で『ドロップ』した重桜の戦艦姉妹の姉、伊勢が明石に怒られている。彼女から清掃の指示を受けたであろうマービン二機が、モップとバケツを持ってやって来る。

 

明石はここ最近精密な機器の作業をしているようで、埃や煤に対してかなり敏感になっている。大胆で勇猛な性格の伊勢は、戦闘の度手にしたナギナタで敵を倒しては煤まみれになっている。

 

主力艦は基本的には前衛艦の後方から砲撃やら航空攻撃が主だが…どういうわけか、あの二人は時たま接近してくる駆逐艦(量産型だろうが人型セイレーンだろうが)を装備したナギナタで始末をしている。

 

俺はパイロットがやる近距離確殺のための処刑に近いものなのかと認識しているが、慎重な姿勢のネルソンは微妙な表情をしていた。逆に他の重桜勢はそれに燃えて攻勢を強めていたし、オイゲンや…意外なことにベルファストは、なるほどその手があったか、と言わんばかりに実践しようとして綾波にコツを聞きにいったりしていた。

 

その後、ちらほらとオイゲンに蹴られたり踏み潰される駆逐型のセイレーン『スカベンジャー』や、ベルファストに拳で吹き飛ばされる軽巡型の『チェイサー』が散見されるようになった。頼もしい限りだが、やはりネルソンは不満そうな顔をしていた。

 

「……賑やかだな」

 

正式な所属になった訳ではないにしろ、重桜の面々は俺の艦隊に少なからず良い影響を与えている。心地よい対抗意識が重桜艦隊と俺の艦隊双方に芽生え、士気は上昇傾向。

 

近接での戦闘についての知見を広めるためか、交流も積極的になっている。よそ者だなんだという雰囲気には決してなっていない、というだけでかなり上手くやれていると見える。

 

「それはいいけど…騒がしいのは苦手だよ、私……」

 

だがそんな彼女らの輪には入らず、俺に着いてきて疲れた表情を浮かべる子もいなくは無い。ヨナが最たる例だ、彼女は騒がしいところを嫌う傾向にある…次いではカッシンやココナである。

 

「……別に、お前を無理にあの中に入れる気は無い。俺の方にいれば、少しはマシだろう」

 

そんな賑やかな雰囲気が苦手だと言う女の子を、そこに一人置いていくほど俺は察しの悪いバカじゃない。人には向き不向きと趣味趣向がある、それを強制されるのは些か苦痛だ。

 

トーンを整備用のハンガーに持っていき、その後は引っ付いてきたヨナはそのままに、武器の整備と補給をする。

 

クレーバーは銃身を拭いて磨いて、スコープの調整を。チャージライフルはエネルギーの再装填を、特に使っていないサブ武器のRE-45は最低限の整備だけ。

 

カチカチャ、と俺が銃器を触る音と、離れた場所からのKAN-SEN達の喧騒が遠巻きに聞こえる。そんな心地いい沈黙の中で、しばらく作業しているとヨナが口を開いた。

 

「それで、次はもっと奥に行くの?」

「……あぁ。見つけた戦闘の形跡は、セイレーンの出現地域の中枢に向かっている」

 

重桜の艦隊を保護してから、一週間。出撃を繰り返してセイレーンの殲滅、そして三笠の捜索を行なってきた。

 

重桜で『五航戦』と言えば彼女達のことを指すと言うほどの実力者であるという、翔鶴と瑞鶴の参加は重桜艦隊の士気だけでなく三笠捜索の効率も大幅に引き上げた。

 

この母港周辺海域からのセイレーンの殲滅は順調、少しずつ着実に危険領域を減らし続けた。その結果停止していた物流交易の海路が再び機能を取り戻し、臨時の報酬を近隣の街から受け取ることができた。

 

その報酬で装備の強化と建造を行い、戦力を拡充することができた…もっとも、建造の結果は暁と最上の艤装だったが…まぁうちの所属じゃ無いにしても、俺達が持っていても腐らせるだけだと彼女らの限界突破にすでに使った。

 

それで快進撃が続いていたが…当然奴らの中枢へと近づくことになる。それにつれ、明確な脅威に先んじて気づくことができ、今は撤収してきて作戦の立て直しというわけだ。

 

「でも、瑞鶴さんの偵察機で上位個体が見つかったんでしょ?」

「……あぁ…『テスター』、だな。重桜艦隊が鏡面海域で襲われたと言っていた」

 

三笠の捜索だけでなく、航空支援や海域の偵察も出来るほどに快復した五航戦姉妹が、敵意を剥き出しにしたセイレーン…『テスター』と呼ばれる、上位個体。

 

量産型のセイレーン艦隊との戦闘後、偵察機を飛ばした翔鶴が発見。直後に偵察機が落とされ、別で動いていた瑞鶴の偵察機も間髪入れずに落とされた。

 

その際、明らかに俺の艦隊へ向けての進路を奴が取っていたこと。そして戦闘後で万全ではない事を考慮して、即座に退避したというわけだ。電気スモークをばら撒きながらの撤収だったため、上手く逃げおおせた。

 

連中の未知のレーダーなどの索敵機器類にも、電気スモークの撹乱能力が効くというのが知れただけでも収穫だ。後はどう奴らを倒すかだが…

 

「……『テスター』との戦闘は避けられない…今手元にある装備を強化するリソースは、使い所だろう」

 

正直なところ…立ち上げからしばらく経ったとはいえども、駆け出しのうちの艦隊が上位個体とぶつかるのは避けたいところだがそうも言っていられないのも事実。

 

「作戦はあるの?」

「……これから立てる。全戦力を惜しみなく、かつ的確にぶつけなければ勝てない」

 

今まで処理してきた人型のセイレーンとは訳が違う。ある程度のエラーもタイタンの火力と俺の射撃でカバーができる部分があった…

 

だが『テスター』及び他の上位個体は、その小さなエラーさえも許さないような敵であると考えて当たらなければならない。

 

「……俺はともかく、また明石や夕張の仕事が増えてしまうな…」

 

装備の強化に加えて、やる事が山積みだ。艤装の整備や調整をしてくれている明石と夕張には、苦労をかけてしまうことになる…

 

他にも作戦立案のための会議やら、作業に当たってくれる饅頭達への手当て…やることは尽きない。武装やパイロットキット、トーンのタイタンキットも考えてセットする必要がある。

 

俺が俺自身でやるべきこと、艦隊全員で行うこと、個別にやること…タスクの整理とその伝達、そしてその進捗の確認に出撃の報告書の作成…

 

本来ここまで様々な事柄を詰めるべきではないのだが、上位個体のセイレーンにマークされている以上は、それらを全て短期間でこなさなくてはならない。

 

いつ襲撃を受けるかわからない、というこの現状ではそれほど悠長に構えていられない。奴らを追い返すまでは徹夜が続く事になるだろう。

 

「大変そう…手伝える事があったら、言って」

「……あぁ、もしそうなったら頼るかもしれない」

 

ヨナはそんな風に言ってくれるが、正直なところ彼女自身の艤装の整備は俺は出来ないし、俺も俺の使う銃器の手入れをKAN-SENの娘たちに覚えさせる気はない…よって、恐らくはヨナに頼ることは無いだろう。

 

だが、彼女の気遣いを真正面から叩き落とすような事はしたくなかった。だから、そんな曖昧な返事をするだけにした。

 

「ん、あんまり無理するとまた怒られるから程々にね…」

「………そうだな、気をつけよう」

 

が、そんな一言でその思考さえもカットされる…オイゲン、カッスル、ベルファスト…別に無理はしていなくとも、この3人目線で過労と見なされれば即座に作業を中断させられてしまうだろう…

 

となると、ポーズだけでも手伝いを頼むというのも一つの手段かもしれない…そう思案していると、少し離れた場所から愛宕が呼ぶ声がして思考をカットされる。

 

「ちょっと良いかしら、指揮官〜?」

 

「……今行く…すまんな、呼ばれた。そこに飲み物がある、どれでも好きなようにしろ」

「ん…分かった」

 

ヨナに整備ブースの端にある小さな冷蔵庫を指差してそう伝え、椅子にしていたアーチャー等の携行火器のコンテナから立ち上がる。

 

なるべく彼女らにも、万全の姿勢で出撃させたい。恐らくは、艤装の強化に使ってもいいと言ったパーツについての確認だろう。

 

タオルを被ったままに冷蔵庫を漁るヨナを尻目に、愛宕の方へと向かう。テスターを倒し、三笠を見つけるための共同戦線もじきに終わる。

 

彼女らを無事で重桜に帰すためにも、こちらとしては手間や資材は惜しむつもりはない。遠慮がちな彼女らに、押し付ける勢いで渡さなければ…

 

そんなことを考えながら、俺は愛宕の方へと歩み寄った。

 

 

 

○○○○○○○○

 

「……どうかしたか」

 

「えぇ、強化パーツについての確認をお願いしたくて」

 

こちらに呼んだ彼に、私達の使おうとしている強化パーツの一覧表を挟んだバインダーを渡す。

 

隠したままのその顔で、×字のヘルメット越しに文字を追うように僅かに首を動かして…そしてフッと、顔を上げて言った。

 

「……足りないんじゃないのか?」

 

ヘルメット越しでくぐもっているが、確かに怪訝そうな声音で私に問いかけてきた。この指揮官なら、きっとそう言うと思った問いかけ。

 

でも、これ以上は迷惑はかけられない。衣食住の提供に弾薬や装備の修復の負担、よそ者の私たちには十分以上の待遇をしてもらっている。

 

破格、では済まない待遇だ。アテのない放浪者という立場ではあるが、その前に重桜の艦隊の一員。

 

「私達の練度は高いわ、そのくらいで大丈夫だから貴方の艦隊に資材を回してあげて欲しいわ」

 

だから、そう言って断ろうとしたのに。彼はため息一つ吐いて、首を横に振った。

 

「……だとしたら、尚更だ。高い練度に強化された装備…かけ合わさればかなりの戦力だ、それにそこまで備蓄に余裕がないわけじゃない」

 

「で、でも…」

 

私の言葉にかぶせるように、指揮官は続けた。

 

「……お前達を保護した俺には、お前達を無事に重桜に送り届ける義務がある。こちらを気遣うなら、自分達の身を一番に考えてくれ」

 

そう言って私にバインダーを返した彼は、そのまま重桜のためのパーツを運ぶオレンジのロボット…マービン達に指令を入力しに行ってしまう。

 

私たちがなるべく最低限、と入力してお願いしたのも…ここの管理人である指揮官の方が、指令の権限は高い。あっという間にマービン達は、追加のパーツを取りに行ってしまった。

 

「本当に、何から何まで申し訳ないわね指揮官…」

 

「……気にするな。後でどうとでもなる」

 

そう言った指揮官は、私たち重桜艦隊の艤装の整備をしてくれている彼の指揮下の夕張ちゃんの元へと歩いて行って声をかけた。

 

「……何か、手伝えることはあるか?」

「ん、ご主人…」

 

私たちの艤装…今は高雄ちゃんの主砲に対して、パーツによる強化を施す夕張ちゃんの頭を撫でながら訊いた指揮官。

 

夕張ちゃんは一度手を止めて、少しその頭を撫でる手の感触を味わうように目を細めて…

 

「あ、後にして欲しいぞご主人…!手伝うなら、パーツを新しく持ってきてくれると助かるかな…」

 

しばらくそうしていた夕張ちゃんは、ハッ、としたように頭を振って。可愛らしく頬を膨らませて、抗議する割には嬉しそうに尻尾を揺らしたまま彼に言う。

 

「……分かった、少し待っていろ」

 

そう言われた彼は、ポンポンと夕張ちゃんの頭を軽く叩き労った後で、マービンを連れて行こうとする。

 

そんな彼の後に、私も続く。どうせ艤装は整備と強化を夕張ちゃんにお願いしていて手元に無い、彼からパーツを融通してもらうのだ。運ぶ作業くらいは手伝いたい。

 

「…ね、お姉さんにも手伝わせて?指揮官」

 

そうして指揮官の背中に声をかけると、指揮官は少し驚いたような様子でこちらを振り向く。

 

「……出撃後なんだ、休まなくていいのか?」

 

顔は見えないけれど、ジッと見つめてくる彼と目が合ったような気がした。どこまでも私たちを…というよりは、KAN-SENを思いやるその気持ちはここで過ごさせてもらっている間に十二分に理解した。

 

「えぇ、ただ待ってるだけなのも忍びないわ…手伝わせて、指揮官?」

 

だからせめて、ここに居させてもらっている間くらいは。彼の、彼の艦隊の力になってあげたい。

 

間近に迫る上級セイレーン、テスターとの戦いが終われば私たちは重桜へと帰ることになるだろうから…今してあげられるだけ、してあげたい。

 

「……分かった。そこまで言うなら、頼む。ついてきてくれ」

 

少しぶっきらぼうに聞こえるけど、でも私の事を立てて、尊重してくれる言葉。それが素直に嬉しいと、そんな風に思いながら、私は彼に付いて行く。

 

少しでも、指揮官と心から呼べる彼の事も知れたらと。内心で少しドキドキとしながら、彼の背中を追いかけた。




・近接攻撃
重桜勢の刀や薙刀、それによる物理的な攻撃手段。あんな大層な武器は持ってるだけだと絶対無駄だし、アニメだと瑞鶴はちゃんと斬りかかってたし、当小説の世界ではちゃんと出来る設定。ベルファストの専用装備を初めて見た時は、アレで殴りかかってる図が作者の頭に浮かびました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。