第31S部隊   作:セントレイズム

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まだ忙しい状況が続きますがとりあえず完成したので投稿します。


day1 フリータイム

 アリーナから出て、食事を終えて一息。

自分は31S部隊のみんなと別れて、再度アリーナに足を運んでいる。

 

「湊本さん、訓練ですか?」

「さっきはできなかったから、少しだけ」

「そうですか。 では少し待ってください」

 

そう言って、少し離れてから機械をいじり始める七瀬さん。

 

「...」

「どうかしましたか?」

「いや、ちょっと。

その小さな端末でここの制御をしてるんだなって思って」

 

七瀬さんたちがアリーナを起動する際に操作しているのは、電子軍人手帳と同様のサイズの小さな機械。

あんな小さなものでよくここの制御をしているのかと思うとその技術は驚くべきほど高いだろう。

 

「では、訓練を開始します」

 

少し離れた場所にいる七瀬さんから声が聞こえた。

 

同時に視界は赤く染まり、周囲の地形が変わっていく。

気が付けば広場のような何もない広々とした地形の中には自分とキャンサーがいる。

 

「【約束はここに、私はここに】」

 

電子軍人手帳を掲げ、いつものようにセラフィムコードを呟く。

現れたセラフはいつも通りの頼りないものだが、それでもこれが唯一の自分の武器なのだ。

 

(...さて)

 

 投映されたキャンサーを見て思考する。

 

敵はノッカー。

午後の訓練では比良坂さんが時間稼ぎを行った。その巨大な腕が特徴的なキャンサーだ。

 

 相性としてはそこまで悪くはないはずだ。

スピード重視の自分と破壊力重視のノッカー。

当たらなければどうということはないという何処かの仮面よろしく戦えば、勝てない敵ではない。

 

「行きますっ!」

 

 地面を蹴る。

身体への強い加速が襲うのを我慢しつつ、目標に近づく。

これが唯一の自分の武器、スピードだけなら誰にも負けないと胸を張って言える自分の個性。

 

「___だからっ!」

 

だから、この戦い方を止める気はない。

 

スピードを生かしてすれ違いざまに一撃入れる。

 

だが、手ごたえがない。

まるで石を包丁で切ろうとしているかのように弾かれる痺れるような感覚が手に残っている。

 

 セラフを地面に刺し、スピードを殺して着地する。

攻撃した外殻を見てみるが、ノッカーの外殻は少し切れ目が入った程度でダメージらしいダメージにはなっていない。

 

目の前のキャンサーをどうやって倒すかを思考する。

外殻への攻撃は高い確率で意味を成してくれない。それはつまり単独での戦闘ではキャンサーを倒すのは難しいと言われているも同義であり、自分一人では無力なのだと言われているようなものだ。

 

「それは嫌だ」

 

力が足りなければ誰かを守ることは出来ない。

 

もう、あんな思いはしたくない

 

「...?」

 

一瞬、脳裏に何かがよぎって動きが止まる。

 

それが悪かったのだろう。

よぎった何かが消えたころには、目の前でノッカーがその大きな腕を振り上げていて___

 

「__カハッ!」

 

セラフを構えデフレクタが攻撃から身を守るようにクロスする。

だが、薄いデフレクタでは守りきれず体は宙を舞う。

 

 たとえ投影された実体のないキャンサーだとしても、地面や壁にぶつけられた痛みはある。

だから地面に叩きつけられる前に態勢を立て直して着地するが、ノッカーはそれを予想しているかのように再度、その巨大な腕を振り上げていた。

 

「くっ!」

 

無理やり身体を捻るようにその巨大な腕を避ける。

反撃する余裕はない。

防戦一方としか言えない状況に焦りが募る。

 

(じり貧だ)

 

距離を取ろうとしても先ほどのダメージのおかげか思うように身体が動かず、ノッカーとの距離を離すことが出来ない。

 

「だったら!」

 

後ろに下がるのではなく、前に出る。

ノッカーとすれ違うように脇を通り、握っているセラフで一発攻撃を入れる。

 

「よし」

 

小さくガッツポーズをしながら距離を取る。

悲しいことにノッカーへのダメージはなく、自分も吹き飛ばされただけなのでデフレクタ残量がちょっと減っただけでほぼダメージはなく。状況は振出しに戻ったのだが、ここからどうやって倒すかを考えるもの部隊長としての仕事だ。

 

 考える、思考する。

目の前の敵を倒す方法を模索する。

ダメージを与える方法を、31S部隊全員がいるならばどうするか。自分一人ならどう戦うかを脳内でまとめ上げる。

 

(いけるか...?)

 

 足に力を入れる。

目の前にいるキャンサーは一体だけなのだから、時間をかけるより一撃で倒した方がいい。

たとえ攻撃が通りづらいとしても、セラフにはそれをも貫く力があるはずなのだから。

 

 

デフレクタ残量を使用する短距離ワープは使用しない。

この足で、目の前のノッカー向けて走り出す。

 

 脳裏に浮かぶのは、防衛戦時の茅森さんの技。

前にやったすれ違いでの一撃ではなく、正面からの一撃。

 

(確か、名前は___)

 

足に入れた力を一気に解放する。

ノッカーへの距離は一気に縮まり、両手に握った二刀のセラフを大きく振り上げて、そして目の前のキャンサー(ノッカー)

 

「___クロス切り!」

 

全力で振り切った。

 

 確かな感触。

それは冷凍された餅を切るような鈍いものだったが、それでもキャンサー相手に自分の斬撃が意味を成したという真実を表していた。

 

「よし!うまくい___ってうわぁぁっ!」

 

有り余った力は逃げ場をなくしたのか、跳躍からの斬撃だったからか身体はバランスを崩す。

セラフを重心に回転しながら重力に従って落ちていく自分の身体は、顔面から地面に激突する。

 

「いっててて...」

 

痛む鼻を摩りながら態勢を正して座り込む。

幸い、目標だったノッカーは撃退できたらしい。周囲の警戒として一度見渡してみるがノッカーの姿が見えないので安堵する。

 

「倒せたー!」

 

座ったまま、大きくガッツポーズをする。

中型のキャンサー一体の撃破という小さな結果だが、それでも自分にとっては大きな一歩なのだ。

 

(これでみんなの負担を減らせるかな?)

 

今日の訓練、もっと自分が頑張ることが出来れば計画通りに戦えたはずなのだから。

今よりももっと力をつけていかなければ、戦いは終わる。誰かの犠牲が増える前に。

 

「ん? おっ、みなちゃんじゃん!」

 

聞きなれた声が、ガッツポーズをしている自分の後ろから聞こえた。

 

「あれ...茅森さん?」

 

 見慣れた姿。

小麦色の髪の毛から見える赤い瞳の少女が、片手を自分に向けて挙げながらこちらを見ていた。

 

「やっほ、アリーナにいるってことはみなちゃんも訓練?」

「少しね。 今日の訓練で思うような動きが出来なかったから」

「真面目だなー。 もう少し気楽に動いてもあたしはいいと思うんだけど」

 

茅森さんの言葉に苦笑いをしながら目をそらす。

確かに、自分でももう少し気楽にいてもいいとは思う。

だけどそれは、それはなぜかやってはいけないのだと、自分の中で誰かが言っているように感じるのだ。

 

「そういえば茅森さんはどうしてアリーナに?」

「あたしも訓練をしようかなって」

 

当たり前のように答える茅森さん。でも茅森さんが訓練ってイメージが湧かない、と考える。

防衛戦での戦いは今の自分よりも圧倒的に強かった。それこそ、そこらの中型のキャンサー程度であれば一人で倒すことが出来るのではないかと思うほどに、彼女はキャンサーと戦えていた。

それに彼女の性格。

楽観的と言っていいのかはわからないが、自分の様に考え込む性格ではないと短い付き合いの中でも理解できた。

だからこそ茅森さんが自主的に訓練するというイメージが湧かなかった。

 

「みなちゃんも一緒に訓練するかい?」

 

セラフィムコードを唱え、その特徴的な二刀のセラフを出した茅森さんはこちらを見てそう言った。

 

 誰かとの連携の訓練もしておくべき、これはそのいいチャンスなのかもしれない。

 

「なら自分も一緒にやらせてもらうかな」

 

立ち上がり、もう一度セラフを握る手を強める。

先ほどの訓練で多少なり疲れはあるが、一戦程度なら問題なくこなせるだろう。

 

「いいね。じゃあななみんお願い」

「わかりました」

 

茅森さんが少し遠くにいる七瀬さんに合図を送れば、また視界が赤く染まる。

 

自分と茅森さんそれぞれが同時にセラフを構える。

 

「行くよみなちゃん!」

 

出現したキャンサーに、自分たちは走りだした。

 

 

 

_______________

 

 

「ふぃー、お疲れ様」

 

出現したキャンサーは三体。

そのうち自分が撃破したのは一体、茅森さんが二体撃破した。

 

「ハァ...ハァ...、やっぱり強いね」

「それほどでもある」

「...そこはそれほどでもない、じゃない?」

 

おちゃらけながら答える茅森さん。

そんな彼女の様子に、どこか安心する。

 

「でもみなちゃんだって結構戦えてると思うよ?」

 

そう言ってくる茅森さんに、少し考えこむ。

 

〈戦えていた〉

 

それは確かにそうだ。

自分は茅森さんと共に投影された偽物ではあったがキャンサー三体と戦い、撃破した。

互いにカバーし合い、それぞれが互いの動きを見て行動をして戦えていた。

でも、それでも足りないと、自分の力が足りていないのだと強欲に力を求めてしまう。

 

「...もっと強くなれるはずだから」

「みなちゃんは何を目指してるのさ...?」

「え? あ、声に出てた!?」

「そりゃもうバッチリと声に出てたよ」

 

口に手を当ててみれば、バッチリ口が開いていた。

それは息をしていたとかそういう話ではなく、しっかり自分の考えていることを口にしていたという証拠でもある。

 

「やっぱりさ、みんなを守るためには力がないと駄目だと思うから。

 人類最後の希望。

自分たちはそう呼ばれる【セラフ部隊】だから、強くなりたい。みんなを守れるくらいには」

 

心の何処かでつっかえる何かが、強迫観念の様にそう言い続けている。

強くなれと、守れと。そう言い続けている。

 

「...そっか」

 

小さく返答する茅森さん。

 

「本当に大変な時はあたしに頼ってよ」

 

そんな彼女に、自分は感謝を言うことしかできなかった。

 

___不安そうにこちらを見ている茅森さんに気づかないまま。

 

 

________________

 

 

 茅森さんがアリーナを出た後。

その背中を見送るようにアリーナから出れば、既に太陽は沈み、空には月が浮かんでいた。

 

 たとえ太陽が無くても、街灯がついて明るい寮への道。

今日は少し遠回りをしようとナービィー広場の方へ足を進めることにした。

 

「やっぱり少し冷えるな」

 

腕をさすりながら目を閉じる。

 

もう桜の咲いている季節だというのに、服を貫通して肌に触れる風は冬を連想させる冷たさで通り抜けていく。

 

いい時間だからだろう。ナービィー広場方面には誰もおらず、そこはまるで自分以外の人がいなくなってしまったのではないかと錯覚してしまいそうな光景だった。

 

(...もっと、強くなれるのかな)

 

全てが足りていない。そう、思えてしまう。

たとえ本当は足りているとしても、どれだけ頭がよくてもテストで不安になる高校などの期末の様に、不安で不安で仕方ないのだ。

 

「セラフ、か」

 

セラフやデフレクタ。

自分は知らない技術であるそれらを信用しきれない。

 

 確かに便利な装備だろう。

唯一キャンサーを撃退することが可能な武器(セラフ)と、圧倒的な質量とスピードで攻撃してくるキャンサーから身を守るための(デフレクタ)

これらが無くてはキャンサーの撃破など到底不可能だ。

それはこれまでの戦闘や、それらの資料から分かっている。

 

では逆に、一般人である自分がこれらの装備を使用しないでキャンサーを倒せる方法を思いつくかと言えば思いつくことはないだろう。

 

(...調べてみよう)

 

セラフを使用してキャンサーを倒す部隊の中には必ずセラフに関する知識を持った人物がいるはずだから、まずはその人物を探して聞き出す。

 

(セラフについて知っている人物...嘉山さんなら何か知っているかも)

 

パワードスーツの時にセラフについて話していた嘉山さん。

彼女なら何か知っているかもしれない。

 

そんな希望を胸に、31Sの部屋である自室に足を進めた。

 

 




感想とか貰えると嬉しいです。主にやる気的な意味合いで。

PS.数日飛ばすかもしれません。
day3とか下手したらもっと飛ばすかも
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