...の前に、一気に評価が増えて驚きを隠せない状況です。本当にありがとうございます<(_ _)>
「...あの覚悟を返してほしい」
近くの自動販売機で購入したコーヒーを一口喉に流し込み、ため息を吐いた。
時間はすでに23時をまわり、多くの人は部屋に戻っているこの時間帯。
それなのに自分は一人で星が見える道端のベンチに座り込んでいた。
(楽に終わったのはいいことなんだけどさ、なんか釈然としない)
思い出すのは一時間ほど前の部屋での出来事。
意を決して31S部隊の役目の役目を説明してみれば各員の反応はこんな感じ。
一人は“少し悩んだ”のちに覚悟を決めて自分の手を取った。
一人は“そういうものだと”最初から達観したかのように頷いた。
一人は“試験にはちょうどいい”とイキイキした表情で何か作業をし始めた。
一人は“それが仕事なら”と大人の余裕で受け流した。
一人は“我に不可能などない”と自信を持った笑顔で高らかに宣言した。
だけど自分は___
「ヘイ、お嬢ちゃん。 今暇かい?」
(___っ!)
急に話しかけられたために身体がビクリと反応する。
そのまま声の主の方面に顔を向ければ、見慣れた人物がコーヒーをもって立っていた。
「か、茅森さんか。 驚かさないでよ」
「ごめんごめん。 たまたま外に出たら見かけて、隣いい?」
「いいよ」そう返事をすれば茅森さんは隣に座った。
「シガレットチョコいる?」
「やめておく。 チョコ、あんまり好きじゃないんだ」
「そっか」
「...茅森さんはどうして外に?」
シガレットチョコを食べながらコーヒーを飲む茅森さんに対して疑問をぶつけた。
23時を過ぎたこの夜遅くに態々外に出る理由なんてない。
外に出ている自分が言っても説得力はないが、普通はこの肌寒い時間帯に外に出るなんて本当に理由がない限りは避けたいだろう。
「いやぁ、寝れなくって」
「出撃があったんだから疲れてるでしょ」
「それをいうならみなちゃんだって、疲れてるはずなのにここにいる」
「うっ」
それを言われてしまえば何も言い返せない。
そんな感じの声を上げて空を見た。
「夜風にあたってさ」
「ん?」
「夜風にあたって、これからのことを考えてた」
ここら周辺は夜でも明るい。
街灯がいくつも設置してある基地内は夜遅くになっても明かりが消えることなく照らし続けている。
だから星はあんまり見えなかった。
村にいたころはあんなにも見えていた星は、今では半分も見えないで空の何処かに隠れているから。
「不安なんだ。 これから先が」
「そう? あたしはここに来てからいい予感しかしてないけど」
「それは茅森さんが強いからだよ」
「それに比べて自分は全然」と、空を見上げていたはずの顔は気が付けば手元を見つめていた。
「でも、あたしはみなちゃんも凄いと思うけどな」
「えっ?」
「だってさ、あたしとユッキーが戦ってる間に一体倒してたじゃん」
「でもあの個体は弱いやつで」
「そんなの関係ないって、強かろうが弱かろうがキャンサーなんだから」
ズズッとコーヒーを口に含み、茅森さんはこちらを見る。
真っすぐな瞳。決して嘘なんてついていない潔白の視線が自分に向けられる。
「ねぇ、茅森さん」
「なに? みなちゃん」
空を、見上げた。
「あの時に言ったこと、自分と___わたしと約束してほしいんだ」
「あの時って?」
「もしわたしがやられそうになったら茅森さんが助けて、茅森さんがやられそうになったらわたしが助けるって、自分に話したでしょ? それを約束したいんだ」
「...わかった。約束しよう、あたしたちだけの約束だ」
互いに手を取り合った。
その瞬間だけは不安も焦りも感じなかった。
星が輝いている。
何処までも、何処にでも、最も明るい月を守る様に輝いている。
「...やっぱりチョコ、貰っていいかな」
「はいよ」
準備していたかのように、茅森さんはシガレットチョコを渡してくれた。
渡されたチョコは、自分にとって甘すぎて___
「ありがとう」
___懐かしい味をしていた。
____________
「おかえり」
「まだ起きてたんだ」
時刻はすでに一周回り、カレンダーは次の日を迎えている、そんな時間。
それなのに部屋に戻れば、外出前と同じように机の上をライトで照らしながら作業をしている嘉山さんがいた。
「ぼくの作業はこれからだから」
「作業って、あのパワードスーツのこと?」
疑問を投げかければ嘉山さんは「あぁ」と答えて手招きをする。
「ぼくは、これの製作が続けられればそれでいい」
「言ってたね。 31Sの役目もその試験になるって」
机に乗せた機械をいじりながら話す彼女と、机を挟み対面する形で座る。
「そもそも、ぼくはセラフ部隊に入るつもりはなかったんだ」
「入るつもりがなかったって、人類がピンチなのに?」
「ぼくとしてはこれさえ完成させればキャンサーの撃退は可能だと考えている。
だから、セラフ部隊に入るつもりはなかった」
キャンサーの撃退が可能、その言葉に耳を疑った。
セラフでしか倒すことのできない存在であるキャンサーをどうやって倒すのかなんて、自分には考えつかないのだから。
「でも、なんでセラフ部隊に?」
「...資金面だ」
「あー」と声を出して納得する。
何というか、世の中世知辛いというべきか、目の前にいる彼女はそんな表情でうなだれていた。
きっと今までも苦労をしてきたのだろう。
そんな光景が目に浮かぶ。
「そもそも資材だって足りていない。 大体の資材はセラフ部隊に入ってしまうからね」
キャンサーを倒すことのできる存在。
そんな唯一無二の部隊に資材などが集まるのは無理もないことだろう。
(でも...)
「キャンサーを倒すことが出来るかもしれないなら、多少は融通を聞かせてくれるんじゃ...?」
「いや無理だ」
なんで? そう聞こうとする前に彼女は話を続ける。
「今必要なのは未来の技術よりも現在の技術で敵を倒す方法。
もしまだセラフが開発されていなかったら、このパワードスーツは役に立ったが...その可能性はセラフの開発と共に潰えたよ」
「嘉山さん...」
語る彼女は真剣で、でも何処か虚ろに見えた。
それはまるで火の消えかかるろうそくの様で、今すぐにどこかいなくなってしまいそうなほどに虚ろだった。
「少し話過ぎた、今日は寝る」 そう言って嘉山さんはベッドに潜る。
「自分も寝ようかな」
そうだ、自分も眠ろう。
明日から訓練が開始される。
寝られるうちに寝なければ耐えられないだろうから。
___________
___夢を見た
温かい光の中にたくさんの人がいる
そこに自分は存在しなくて、でもそこにいる人たちを自分は知っている
でも、何かが違う
自分が知っている人たちの筈なのに、何かが違う
それが何なのか自分にはわからない
一人、いなくなった
温かな光は、微かに光力を弱めた
また一人、いなくなった
光はさらに弱まって、さらに寒くなった
また一人、いなくなった
また一人、いなくなった
また一人、いなくなった
___そして気が付くと一人、誰もいない何処かに立ち尽くしていた
そこに温かかったはずの光はあらず
冬のような寒さの中にいる彼女はただ、空を眺めていた
キミは誰?
自分の口から声が出ることはなかった
言葉が出るはずの場所からは風が吹くだけで何も伝えられない
彼女が一歩、前に進んだ
それを追うように動こうとするが、なぜか体が動かなかった
...待って
動かない、動いてくれない
いくら体を動かそうとしても、体が言うことを聞いてくれない
待ってよ
彼女が、こちらを向いた
やっぱり見知った顔だった
『_______________』
彼女の口が動いた
でも、聞き取ることは出来なかった
day0終わらせるのに5話もかかる小説があるらしいぜ!(自虐
ちなみにこの話の書き方がおかしいのは仕様です()