バレンタインいろはス   作:まさ(GPB)

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前回の続き。今回も突貫です。


ホワイトデーいろはス

 holoXの総帥、ラプラス・ダークネスは待ち合わせ場所である駅前で一人、約束の相手を待っていた。

 ――おせーな、いろは。

 待ち合わせをしているその相手――風真いろはから「もうすぐ着くでござる」という連絡が来てから、既に三十分が経過していた。

「まさか迷ってんじゃねーだろうな?」

 ラプラスはそう口にしながら周囲を見渡すと、見覚えのある頭と刀の(つか)が物陰から出ているのが見えた。

 ――アイツは何してんだ……?

 半ば呆れながら、ラプラスは何故か隠れている待ち人に近付く。

「おい、いろは」

「わああっ!?」

 突然声をかけられて驚いたいろはが姿を見せる。

「急に大きな声を出すなよ、周りにメーワクだろうが――」

 そこまで言って、ラプラスは彼女の格好を見て言葉を止める。

 目の前にいるいろはは普段の格好ではなく、以前にラプラスが選んだ服を着ていた。

「似合ってんじゃん」

「っ……!」

 ふっと笑いながら言うラプラスに、顔を赤くするいろは。

「ってか着いたんなら着いたって言えよ。なんで隠れてんだよ」

「だっ、て――恥ずかしいじゃん!」

「別に恥ずかしがることねーだろぉ? つーか、それよりもツッコミたいんだけど――」

 彼女はいろはが背負ってる刀――チャキ丸に目を向ける。

「なんでデラックス日輪刀持って来てんだよ」

「日輪刀いうな! チャキ丸だわ!」

 こほん、といろはは咳払いをすると、チャキ丸をいつでも抜けるように位置を調整する。

「かざまは用心棒でござるからな。いつ襲われても対処できるように、備えておくのは当然でござる」

「いや、こんなところで襲ってくるような奴はいねーだろ」

「念の為の用心でござるよ」

 いろはの言う事にラプラスは「そんなものか」と思い、それ以上は気にしない事にした。

 ――ま、認識阻害で周りも気にしないし、別にいいか。

 

 「それで? 今日はどこ行くんだ?」

 今日のこの待ち合わせはいろはから誘ってきたものだった。それは数日前までに(さかのぼ)る。

 

 × × ×

 

「うーん……」

 その日、いろはは悩んでいた。

「甘い物を避けるのは当然として……――」

 あのバレンタインの日、彼女にとってとんでもないサプライズをしてきたラプラス(ちびっ子総帥)へのホワイトデーのお返しをどうするか、という事に。

 ラプラスは甘さが口の中に残るのがダメ、というのを前々から公言している。その為、いろはもお返しとしては甘くないお菓子を選ぼうと思っていたのだが……。

 ――いや、きっとみんなそういう甘くないお菓子を渡すはず……それで埋もれちゃうのもなんかやだなぁ……。

 そんな考えが頭を(よぎ)り、結局ホワイトデーのお返しは何にするか、というのが決まらずにいた。

 

「いろはー」

「ひゃあっ!?」

 いつの間にその悩みの相手であるラプラスが近くにいたのか全く気付かず、声をかけられたいろはは驚いて思わず飛び上がった。

「なに急にびっくりしてんだよ?」

「な、なんでもないでござる!」

「ふーん……まぁいいけど。それでちょっと仕事の話なんだけどよ――」

 先程まで悩んでいた事もあり、いろはは妙にドキドキとしてしまってラプラスの話が入って来ない。

「――おい、聞いてんのか?」

 怪訝(けげん)な顔で聞いてくるラプラス。

 ――どうせならラプ殿と二人で……。

「ラプ殿!」

「うぉ!? な、なんだよ……」

「3月14日、デートに行くでござる!」

 

 × × ×

 

「いやー、まさかお前の方からホワイトデーにデート行こうって誘って来ると思わなかったわ。しかもめちゃくちゃ真剣な顔で」

「言うなぁ……!」

 いろははその時の事を思い出して赤面する。

 そんな彼女に連れられて、二人がやってきたのはアクセサリーショップだった。

「んで、こんなとこに来て何を買うんだ?」

「そうでござるなぁ……」

 しばし悩むふりをして、予め目を付けていた物を手に取る。

「これとかどうでござるか?」

 そう言っていろはが手にしたのは、色違いの二つのネックレスだ。それをラプラスはまじまじと見る。

「おそろじゃん。ほーん……ま、いいんじゃね?」

「……なんか適当じゃない?」

 ジトリ、とラプラスを見るいろはに、当の本人は「別にー?」と言うだけだ。納得のいかない様子のいろはだが、気にせず会計を済ませる事にした。

 

 会計を終えたいろはが戻ってくる。

「ラプ殿」

「あ?」

「はい、ホワイトデーのお返し」

 彼女は買ったばかりのネックレスが入った袋をラプラスに渡す。

「中身が分かってるプレゼントってどうなんだ?」

 笑いながらそう言う彼女に、いろはも「いいじゃん」と言って笑みを浮かべる。

「んじゃ、もう一個ホワイトデーのプレゼント貰っちゃおっかな」

「なんでござるか?」

「吾輩の晩飯作って!」

「……もう、しょうがないなぁ」

 呆れるように口にしているいろはではあるが、その表情は優しく柔らかいものだった。

 

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