人里から少し離れた場所にある小屋にて
「紫さん。あなた寝過ぎです。働いてください。藍さんにいつまでも仕事を丸投げしてないで働きましょう。もう一度言います。
働いてください。」
「そこまで言う?なんだか私が無職の怠け者みたいじゃない。」
「実際にそうでしょう?紫さん。ちゃんと体動かさないと、腰とか悪くしますよ。そしたら、膝、背中、肩と段々色んなとこ痛めて最終的に太りますよ?「あー!!わかった!!わかったから!!」」
幻想郷で紫に対してこんな事を言える者は居ないだろう。
幻想郷で最強クラスの妖怪 八雲紫。
彼女は今、ダメ出しを受けていた。
「女の子にそこまで言わなくてもいいじゃない!!このおさわりくんが!!」
イラッ
「さーて!!藍さんに有る事無い事吹き込むか!!らーんさー「あー!ごめん!ごめんって!おさわりくんって言った事は謝るから!!」
「紫さんって本当に最強の妖怪ですか?ギャグ漫画に出てくる残念美人みたいですね。」
「うぅぅ...残念美人...」
「紫さんは美人なんですから、もうちょっと規則正しい生活をしましょうよ。定期的に体を動かさないと姿勢が悪くなって紫さんの良い所を台無しにしてしまいますよ。」
「はい...肝に銘じます...」
どっちが最強の妖怪なのだろうか...
今、八雲紫と話している者は人間である。
また、男である。
紫と話せる者。強い男や美しい男をイメージする人が多いだろう。
しかし
今、紫と話している男は
頭部が残念な状態になってしまっているオッサンである。
スキンヘッドのオッサンが美人の紫を叱っている。
何も知らない人から見ると、父親が娘に説教しているように見えるが、男性の方が遥かに歳下である。少なくとも10倍以上の歳の差がある。
にも関わらず、紫は歳下の男性に叱られているのである。
しかも、能力も持たないただの人間に。
嗚呼。これが幻想郷で1番偉い妖怪である。
この有様を見れば、どこぞの文屋がネタにしそうである。
「じゃあ、紫さん。そろそろマッサージしますよ。」
「ふふ♪待ってました!おさわ...仁さんのマッサージは本当に気持ちいいのよねぇ♪」
「しれっと、またおさわりくんって言いかけましたよね?次言ったら本当に藍さんに有る事無い事吹き込みますよ?」
「うぅ...すみません...」
「全く...それじゃあ、肩周りからやってきますよ。」
仰向けになっている紫に男はマッサージを始めた。
「んん...」
肩に親指を当てた瞬間、紫の柔らかい肌が服越しに伝わってきた。良い匂いと合わさって男は少しドキドキしていた。僅かな吐息と先程の声がとても男の欲を刺激するが、欲をしまいこみ、マッサージに集中した。
「あぁ〜気持ちぃぃ〜」
普段の紫ならこんな間の抜けた声は出さない。つまり、それほど男のマッサージは気持ちいいのである。
「仁さんは本当に良いマッサージをするわよね。流石は外の世界で『ゴッドハンド』と言われていただけあるわね。頭は寂しいけど。」
「そうそう。俺は髪の毛と引き換えにこの技術を引き継いだ...って、やかましいわ!!俺が禿げてること弄るのやめてもらえません?結構気にしてるんですよ?」
「ごめんごめん。いやーホントに気持ちいいわ。」
(あっ、話逸らした。)
肩、背中、腰、足、とマッサージをし、最後に足の裏のマッサージをし、男はマッサージを終えた。
「いいですか、ちょっとでいいんです。働いてください。動いてください。あと、柔軟運動もした方が良いと思います。股関節周りの筋肉を柔らかくするだけで姿勢が良くなりますよ。」
「はいはい、わかったわ。働きますよーだ。」
「全く、ホントに分かったんですか?妖怪に言うのも変ですが健康には気をつけてくださいよ?仮にも貴女は幻想郷のトップなんですから。」
「はーい!気をつけまーす!」
なんだろう。なんだか馬鹿にされてる気がする。
「それじゃあね。お・さ・わ・り・く・ん!!」
そう言って紫はスキマを使って帰った。
なお、男は...
「コラーッ!!また言ったなぁ!!このバカチンがー!!今度来たら懲らしめてやる!!妖怪BBAめ!!」
「....はぁ....疲れた....飯食って寝よ....」
そう呟き、男は夕飯を食べ、床に就いた。
職業 柔道整復師
沢利接骨院 院長
この話は幻想郷にひょんな事で流れ着いたアラサーのおじさんと幻想郷の住民とのお話し。
ピヨピヨ
チチチ
鳥のさえずりで目が覚める。
現代人からすれば理想的な目覚めかもしれない。
しかし、幻想郷に来て1週間ちょっと。この鳥鳴き声を聞くのにも慣れてきた。つまり、鳥のさえずりで目が覚める事に新鮮味がなくなってきた。
結構、目覚まし時計が鳥のさえずりに変わっただけである。
ところで今、何回鳥のさえずりって言葉使ったっけ?
それは置いておいて、今日も今日とて仕事である。
俺の仕事は柔道整復師。まぁ、わかりやすく言うと、肩こりとか腰痛とかの人にマッサージとかストレッチをして体の痛みを無くしていく人の事を言う。あと、スポーツでの怪我の治療も含まれていて、スポーツトレーナーの柔道整復師もいる。てか、俺もそうだった。
さて、今日も仕事だと言っていたが、今日のお客さんは1人である。いや、1匹?1頭か?まぁ、1人でいいか。
今日のお客さんは昨日の紫さんの部下である、藍さんである。紫さんが全く仕事をしないため、藍さんは物凄い量の仕事をしている。本人曰く、大丈夫と言ってるが、一度仕事をしている所を見たことがあるが、笑えない量であった。だって、書類の山が2、3個あったし、結界管理の外回りも大変そうだったし...
だから、藍さんに施術をする時はあの
基本的に俺の店に来るのは紫さんと藍さん、たまに橙ちゃんが遊びに来る。てか、今のところ幻想的で俺のこと知ってる人はこの3人しかいない。
話せば長くなるけど、なんやかんやあって接骨院の経営がヤバくなって、途方に暮れてた時に幻想入りして、今、紫さん達の手を借りて、幻想郷でも接骨院の院長として開業しようとしている。
紫さんの事をポンコツとか言ってるけど、実際ものすごく感謝してる。紫さんの助けが無ければ俺妖怪に食われてるかもしれなかったし。機材の運び、家の修理など、何から何まで手伝ってくれた3人には本当に頭が上がらない。マジで感謝。
だが、紫さん、俺のことおさわりくんとかハゲとか言うのは許さん。
てか、御先祖。何故沢利なんて苗字を付けた?沢なら沢村とか付ければ良いじゃん。何故沢利と言う苗字にした?俺は今、この苗字で苦労してるんだが?マッサージする上で沢利なんて苗字だったらエロ漫画とかに出てくるキャラみたいじゃないか。御先祖様。今、あんたが付けた苗字のせいで子孫はおさわりくんとか言うあだ名をつけられてるよ。
ガラガラ
「失礼する。仁いるか?」
あーだこうだ言ってる間にお客さんが来た。
声のした方を向くと導師服を着た金髪の美女がいた。それだけでなく、彼女の臀部から生える九つの尾が彼女が九尾である事を意味している。
ちなみにこの尻尾は施術をする際は妖術でなくしてしまう。尻尾が邪魔になってマッサージ出来ないからね。
(いつも尻尾無しで生活すればいいのに。と、思ったが、尻尾を無くすと妖力が下がってパワーダウンしてしまうらしい。何より自分のアイデンティティでもあるから尻尾を出してるらしい。)
「お疲れ様です。藍さん。仕事上がりですか?」
「ああ。とりあえず、これでしばらくは仕事がない。」
そう言う藍さんを見ると疲れが目に見えてわかるくらい疲れている。
九尾の大妖怪が働いてる....昔は傾国の女とか言われていた大妖怪が働いてるよ....
初めて藍さんに会った時は驚いた。だって、九尾って某忍者漫画とかに出てくるイメージだったし、何しろ紫さんくらい綺麗なんだもの。
元気な時の藍さんは割とお茶目だ。紫さんとは違ったベクトルのお茶目である。
以前紫さんと藍さん、橙と一緒にご飯を食べた時も「男はこういうシーンにドキッと来るんだろう?」と言ってあーんしてきた。
あれはヤベェ...可愛さと綺麗が混ざって破壊力抜群だった。
それだけじゃ終わらなかった。なんと紫さんと橙もやってきた。紫さんは大人のお姉さんって感じがしてとても色気があった。
やめて。これ以上俺の息子を刺激しないで。アラサーでもまだまだ元気だから。
橙のあーんはとても、とーっても可愛かった。いや、ホントに。まるで妹が出来たみたいで萌えてしまった。
話を藍さんに戻そう。藍さんのお茶目エピソード、それは俺の事を偶に弟扱いしてくる所だ。
いや、藍さん?見た目なら親と子くらい離れてますよ?俺が弟でいいの?
俺は藍さんにこう聞いてみた。
すると
「私は別に気にしないぞ?それに仁の反応面白いしな。」
と言って来た。
うん、俺遊ばれてる。絶対遊ばれてる。弄られてる。
まぁ、俺的に1番覚えてる出来事が"尻尾"についてだ。
俺が藍さんに「その尻尾暖かくて気持ち良さそうですね。」と言うと
「試してみるか?なんなら、抱きついてもいいぞ?」と、俺の方に尻尾を向けて来た。俺は遠慮せずに藍さんの尻尾に飛び込んだ。
ヤベェ...マジでヤベェ...あれは人をダメにするソファの数倍の威力を持ってるよ...
整えられた尻尾のもふもふ、俺の周りを包み込む九つの尻尾。そして石鹸と女性特有の匂い、微かに香るケモノっ気のある不思議な匂いが混ざりあって俺を不思議な感覚に誘う。気づけばあの時俺は寝てた。起きた時も「おやおや、寝てしまったか。」と藍さんは微笑みながら言った。
大昔、藍さんに騙された貴族の皆様。
うん。これは惚れるわ。ぶっちゃけ、可愛いとか、綺麗とかだけじゃなくて、母性。母性が凄い。
あれ以来、藍さんに会うたびにドキドキする。
紫さんの家に言っても割烹着で「いらっしゃい」って言ってくるけど、破壊力が高すぎる。だいたい、藍さんは金髪で日本人離れした容姿なのに割烹着が似合うってどゆこと?割烹着が凄いのか藍さんが凄いのか。
「うーん。今日も疲れが溜まってますけど、特に足の疲れが目立ちますね。今日は飛ばずに歩いたんですか?」
「ああ。結界の管理をしてたからな。どうしても細かい場所も確認しなければならないから、わざわざ歩いて確認したよ...」
声のトーンで疲れてる事がわかる。
ホントにお疲れ様....藍さん.....
藍さんの疲れな原因は歩いた事であろう。
ふくらはぎ付近の筋肉や太ももの裏、お尻周り、腰に疲れが溜まってる。
ちなみにお尻とか言って、エッチな事を考えてるそこの君。
殺されるよ。
初めて藍さんに会った時に
「変な事をしてみろ貴様を八つ裂きにするぞ。」
と、殺気マシマシで言われた。
忘れてはならないのは藍さんや紫さんは大妖怪であり、俺みたいな人間は雑魚である。マッサージとかしてる時もムラムラするけど、しっかり抑えています。じゃ無いと死にます。
藍さんは他の人(妖怪)に比べて大きく、それなりに重い尻尾を持っている。それが原因で疲れが溜まりやすい。
藍さんにとっては日常生活での尻尾の扱いには慣れてると思うけど、やはり尻尾がある事で姿勢が悪くなる。そして、姿勢が悪くなる事で疲れが他の人よりも溜まりやすくなっている。
特に今日みたいに歩く時は尻尾が左右に揺れるため、その分体に負荷がかかる。
「ふくらはぎも張ってますね...やっぱり靴の影響かも。」
「多分な。私もあの靴は気に入っているんだ。それに九尾がスニーカー履いてたら変だろう。」
「確かに」
歩くならスニーカーや運動靴が良いが、やっぱり女性はオシャレをする人が多い。外の世界でもハイヒールを履いた事で疲れが溜まる人が多い。
数分後。
「あーーー!体が軽い!!仁。ありがとう。」
「いえいえ。自分にできることはこのくらいなので。」
「特別な能力が無くても疲れを癒す事が出来る。お前の技術も私は素敵だと思うぞ。私は疲れてる時お前に救われてるからな!」
そう言った藍さんの笑顔はとても綺麗だった。
笑顔の破壊力が高すぎる...
これに惚れない男はいねぇだろ。
「じゃあ、また来る。紫様もだらけさせないようにする。」
「はい。紫さんにもよろしくお願いします。体は大切にしてくださいね。藍さんが体を壊すと俺も心配しますから。」
「ああ。無理をしないように頑張るよ。それじゃあ、また。」
そう言って藍さんは帰って行った。
「全く。藍さんを働かせすぎだろ紫さん。今度来たら説教してやる。」
沢利はそう囁いた後に店の片付けをして床に就いた。
彼と少女達の物語は続く...
主人公
アラサーの男。顔はそれなりに整っているが、ハゲていて、ちょっと老けている。ぱっと見お坊さんに見える。
ホントに息抜きで作ったので続かないかもしれません...