猿人類となった男と見える子ちゃん   作:好きな領域は【誅伏賜死】

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みこちゃんカワイソウカワイイヤッター!
と言えたのは神社突撃の下りまで、どうも匿名作者です。
原作とは程々関係ない日常の一シーンでかなり短めなので気軽に読み飛ばしちゃって下さい。


【第零視】とある寺院の長髪住職

 皆は「呪い」や「霊魂」を信じるだろうか?

 

 死者/生者

 

 人霊/動物霊

 

 生物/非生物

 

 村の大家の謀略によって滅ぼされた一族の怨霊、悪魔が乗り移りブリッジ歩きをしだす少女、事故や自殺などによって曰く付きの場所になったトンネルや山奥、個人の恨み辛みが籠った藁人形と鉄釘。

 

 挙げ始めればキリがないのでここで打ち止めとするが、この世にはそうした「呪い」や「霊魂」による仕業や影響があるとされる場所やアイテム・体験談などが山のように存在する。

 

 また得てしてこれらの事は「非科学的」「噂の独り歩き」「作り話やほら話の類」と一笑に付し信じない人の方が大多数だろう。

 

 しかし、これらの事は現実に存在する。

 

 寂れた村の地主の家を多種多様な殺され方をしたであろう呪霊達が取り囲み、少女の体には憑依し無茶な動きをさせることによる苦痛でエネルギーを得る性根の悪い悪魔が憑く。

 自殺の名所とされる場所では四肢の砕けた“先駆者”たちがまた一人また一人と崖下から手を伸ばし、その手の技術を持った者が藁人形に釘を打ち込めば対象の人物は体調不良や不可思議な不運…最悪死に至るケースも出て来る。

 

 だがこれらの事を行う【呪霊】達は大多数の人の目には見えないし、見える人だって何かしらの対抗手段を持っている。

 

 もし、そうした対抗手段を持っていないやつにソイツらが“見える”としたら……?

 

 半ば事故のような形でこの世界に来てそうした奴らを見る素質と対抗手段を持たせてもらった俺が言うのものなんだが、随分と生き辛いものだろうなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フム…不眠ですか」

「は、はい。最近全然眠れてなくて…医者にも罹ったんですけど、異常はないと取り合ってくれないんです」

 

 町の住宅街にポツンと立つ寺院の僧坊。そこでは二人の男性が向き合って座っていた。

 片方は僧衣に身を包んだ男性の僧侶、身の丈は185以上と高く。また鍛え込んでいるのかかなりがっしりとした肉体をしておりまた髪型も基本坊主頭の僧にしては異様に長い。

 もう片方は…有り体に言えば中肉中背で、その背は猫のように曲がっている普通の男性。これと言った特徴は敷いて言うならば……最早特殊メイクの一種と言われても信じれてしまえそうな程の病的な“隈”を持っていることだった。

 

「コレのせいで最近仕事にも支障が出てきてしまいまして…最後の頼みの綱とばかりに、先生のところへ来ました」

「そうだったのですか…その苦労、お察しします」

 

 項垂れその視線を畳へと逸らした男性を尻目に、僧侶はふと男性の周りに目を滑らす。

 

 当事者の男性には心当たりがなかったが、彼の対面に座る僧侶はその原因をしっかりと()()()()()いた。

 

『オマエダケネルナン、テ。ユルサネエ…』

『ネムイ…ネエエエムウウウイイイヨオ!』

『オレトオソロイダナァソレエエ…』

 

 ボサボサの頭に乱れたスーツ姿の老若男女…しかし真っ白な彼ら彼女らの目下には男性と同じようなパンダの如き“隈”が刻まれた【呪霊】達が、男性の周囲を取り囲み浮遊していた。

 

(――“2級”半歩前の“準2級”。見たところ人が抱く不眠への不満・危機感から生まれたって所か…現代社会の闇だねこれは)

「少し失礼」

 

 そう言い座布団から立ち上がった僧侶は、淀みない歩調で男性へ近付き――

 

『『『クギュ』』』

 

 無造作に男性の周囲にいた呪霊を握り拳で薙ぎ払い、次の瞬間僧侶の手の中にはたこ焼き大の黒いボール状の球体が握られていた。

 

 風圧を感じた男性は、拳を横に振り切った僧侶の姿を不思議そうに見上げる。

 

「あ、あの…?」

「眠らずとも、目を閉じるだけでも随分と違うと聞きます。温湯で温めたタオルをもって来るので少々横になってはどうでしょうか」

「いやそういう段階の話じゃなくて――」

「こちら枕代わりの座布団です、では少々お待ちください」

 

 焦燥した顔でそう言う男性との会話を半ば強制的に打ち切り、数分後言葉通り湯気を上げるタオルを手に持ち部屋に入ると…

 

 

「おやおや…掛けるまでもありませんでしたか」

「スー…スゥー……」

 

 畳の上に横になった状態で男性は健やかに寝息を立てて寝入り、その顔は幸福感すら感じられる程だった。

 

「さてと――そんなに眠りたいなら好きなだけ眠るといいさ。ただし、私の中でだがね」ゴクリ

 

 男性の口元に垂れた涎を静かに拭き取った僧侶は、先程手に握った球を口元に運び勢いよく飲み込んだ。

 

「……マッズい。これだけは慣れそうにないな」

 

 眉を顰め口元をへの字にした僧侶は、その手に持った温タオルで今度は自分の口元を拭った。

 

 

 

 

「すみませんでした!!!」

「お気になさらず、不調が治ったようでよかったです」

 

 寺院の前で、目を閉じての休憩という名の爆睡をしていた男性が勢いよく頭を下げる。

 

 辺りはすっかりと紅くなっており、男性が来た時には真上にいた太陽は地平線の彼方へとその身を隠そうとしていた。

 

「ただでさえ不眠を解消してもらったのに、それにも関わらず寝てしまって本当に。本っ当に…!」

「貴方のそれが治るタイミングがこの日この時だっただけです。私はお話と、休む場を整えたに過ぎませんよ」

 

 恩人とはいえ他人の前で勉強に疲れた学生のように惰眠を貪ったことへの羞恥心と、悩みが解消されたことへの喜色が入り混じった男性のおかしな姿に、思わず漏れ出そうになった笑いを何とか抑え込んで僧侶はそう言った。

 

「それでも、ありがとうございます!」

「いえいえ…あぁ、では。次は参拝などでまた来て下さると嬉しいですね?」

「っ!是非そうさせていただきます!!」

 

 最後に僧侶の手を握り大きく上下に振るった男性は来た時とは真逆の晴れやかな様子で帰路へと着いていった。

 

「…まぁ、調伏させてもらった呪霊がお代替わりだったりするんだけどもね」

 

 それを最後まで見送った僧侶はそう呟くと寺院の中へと入っていった。

 

 ――(冬月水賀)は転生者である。

 

 それもただの転生者ではない…その身に幾百、幾千の“呪い”を使役し操る術式【呪霊操術】を持つ、言わば別世界の呪術師である。




読了ありがとうございます。
次回からは原作キャラが出てくるんです!本当なんです信じて下さい!!
今回のオリ呪霊は猿(非術師)の「不眠」によって生まれたんですけど自然とか人とかが特級なら不眠の呪霊も結構な等級ありそうですよね。
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