猿人類となった男と見える子ちゃん   作:好きな領域は【誅伏賜死】

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~ある日の匿名作者~
「日間ランキングで新鮮な秀作に出会う瞬間が、一番生を実感するゥ!」
「ん?なんか見覚えのあるタイトルあるな?」
【日間ランキング3位】
「」
【 日 間 ラ ン キ ン グ 3 位 】
「何らかのスタンド攻撃を受けているッ!」

と言うわけでどうも。ランキングに滑り込んだ物の二日で引きずり下ろされてある意味泡沫の夢だから実質シーザー、匿名作者です。
推しが復帰したり推しのグループ曲がカラオケ配信されたり推しが復活したり某ゲネイオンに菓子言葉で「あなたが嫌い」を不法投棄したり推しの誕生日グッズが届いていたので投稿が遅れました(威風堂々)

いつもよりちょっとだけ長いから許して。あと今回のは本二次小説の仕様上原作とは展開の前後が異なるのでご注意ください。


【第五視】不意な遭遇(エンカウント)はアクションでもホラーでも心臓に悪い

 私は今日、街の中でも“下町の商店街”に区分される箇所へと来ていた。目的は最近姿を見ていないとある同業者の顔を見に行くことと…追加でみこちゃんについての見解を聞きに行く。

 

時折声をかけてくれるご年配に挨拶を返しながら暫く歩き、簡素な文字で【占い・お祓い ゴッドマザー】机上に如何にもに水晶玉を乗せ。これまた如何にもな紫のローブを羽織った老婆の前で止まった。

 

 商売道具である水晶玉には目もくれず、老婆は今どき珍しい便箋の手紙を読んでいるようだった。

 名前は見慣れないものだったが、苗字は覚えのあるものだったので老婆が手紙の人物とはどのような関係性なのかはすぐに察しがついた。

 

「息子さんからの手紙かな?」

「…覗き見かい、趣味が悪いねぇ」

「アコギな商売してるなんちゃって占い師に言われたくはないよ」

「その口調も、目上に対しての物だとは思えないが?」

「厳しいな。だがこれが私のキャラ付けみたいなものだから」

 

 久々な気もする夏油様の口調を意識しながら対面早々毒を飛ばしあうが、元々この老婆――下町のゴッドマザーことタケダミツエさんは毒舌なのが常のようなものなので特に気にしない。

 

「そっちは相変わらず“駆け込み寺”の真似事してるようじゃないかい。儲けてるのかい?」

「評判が広まって偶に取材が来るので、意外と貰ってますよ?」

 

 アハハハハと互いに乾いた笑い声を出す。

 

「…やめましょうかこの話」

「そうさね。虚しいだけさ」

 

 生々しい話は多少は心の健康にいいが過剰摂取は体に毒、塩と同じであるからこのぐらいにしよう。

 

「で、なんの用だい?」

「顔を見に来ただけだよ。怨霊の類になっていないか心配だったからね」

「こんな歳になったら未練なんてそうあるもんじゃないし、まだ死ぬ気はないよ」

 

 『霊能力者は死後強力な怨霊となる』

 この話は霊能力者に取っては避けて通れないことであり、常に頭を悩ませる問題だ。…まぁ確かにタケダの婆様は早々死にそうにないが。

 

「そういえば最近霊が見えるような子に会ったんだ」

「へぇ、親に相談でも受けたのかい?」

「いや…実はここ最近見えるようになったらしい」

「…それは珍しいな」

 

 興味が湧いたのか、タケダの婆様は雰囲気ありげに手を翳していた(因みに特筆してパワー的な何かを注入していた訳ではない)水晶玉から手を離して私の方に向き直る。

 

 そして、そう。みこちゃんのように生まれてすぐではなく高校生から急に見え始めたというケースは非常に珍しい……というか少なくとも私は見たことがない。タケダの婆様もそれは同様らしく、疑問よりも困惑の方が多いような顔をした。

 

「呪物でも取り込んだかい?」

「聞いてみたが、覚えはないようだ。しかも本人は呪力の類は生成出来ないようだしね」

「変な呪い(まじない)か…()()()()()とかは」

「それもナシ。私より数段上の存在なら知覚できない可能性もあるけどね」

「オマエよりも数段上か…もしいたらそれは本当に神かナニカなんだろうね」

「神が居たら取り込んでみたいけどなぁ」

「縁起じゃないこと言うもんじゃないよ」

 

 全盛期では準1級一歩手前の2級相当、現在は3級程度まで落ちているが。その深い見解と経験則に頼ったのだが……どうやら空振りに終わったらしい。神様は…本物の神様は神さんしか見たことがないから実力は測れないが、少なくとも荒神や祟り神といった仮想怨霊や土着信仰ブーストを受けたヤツらは倒してきたので大丈夫だろう。

 

 ともかく、望んだ情報や推測は得られなかった。

 

「ではこの辺で失礼。次も生きていることを祈りますよ」

「この水晶玉、割れると案外鋭いぞ?」

「せめてそこは呪い殺すとか言わないかい?」

 

 刻んだ歳を表すように皺が目立つ指先でコンコンと水晶玉を叩いてみせるタケダの婆様に思わず一歩下がる。流石に水晶玉でぶん殴られる訳にはいかない。

 

「…ったく、相変わらずヘンな所で肝っ玉が小さいヤツだねオマエは」

「用心深いと言ってもらいたいね」

「ほら帰った帰った。営業妨害でサツ呼ぶよ」

「サクラ使ってるから逆にしょっ引かれるのでは?」

 

 最後まで毒を吐きながらも私はその場を離れる。そもそもタケダの婆様はついでだ。早く()()()()()()()まで急がなければ――

 

 商店街を抜けて指定の場所まで早足で歩く。

 夏油様ボディは身長が高いし某現代最強の術師ほどではないが腰の位置も高い。まぁ本来なら走った方がいいのだが、仮に夏油様が必死の形相で走っているのは一人称視点だとしても見たくはない。

 

 という訳で走りはしないが全力の早歩きだ。まさか前世含めれば60行きかねない歳で先生に言い訳する学生みたいなマネすることになるとは思わなかった。

 

 多少の羞恥心を抱きながらも道を進む。

 

 

 

 ―――因みに数日後みこちゃんから覚えのある数珠の欠片を受け取ったため様子を見に行き、案の定“閉店のお知らせ”という張り紙を見かけたのは完全に余談。

 

 

 

 

 あの後無事に目的地に着いた冬月は、その後みこと無事合流。二人は歩きながらも話を続けていたが、みこは冬月にとある相談していた。

 

「数珠かい?」

「はい。勿論守ってくれてる【拳威】さんは強いんですが…」

「…正直に言うと、あまりオススメは出来ないね」

 

 今のところ【拳威】の自衛能力によって問題はないが、一匹の呪霊に執着する特性もあるのでもし複数の呪霊に囲まれた際の予備の自衛手段が欲しいという話だった。

 手首の辺りを撫でるみこに対し、冬月は苦笑しみこのリュックにストラップとして付けられていたゴングを見てそれに対しての意見を述べ始める。

 

「…どうしてですか?」

「先ず、市販の数珠じゃ効果が全然ないからだね。それに壊れた数珠に対して呪霊が反応することもある。そもそも――

 

 

 

 

 

 

 ――君のすぐそばに強力な呪霊、いるよね?」

「あっ……」

「確かに拳威は今君のボディガードだけど、強力な呪霊であることには変わりないよ?そこら辺の線引きはしっかりしといた方がいい」

「そうですね…」

()が遠くに離れている状況ならまた話は別だけどね。まぁそれはさておき――今日は君の家にいる呪霊の除霊だっけ?」

 

 二人が今日集まった理由はこれであった。

 

「…昨日今日で助けてもらって図々しいとは思うんですけど」

「気にしなくていいよ?なんならそれが本来の仕事だからね」

「本当に無料でいいんですか?」

「高校生からお金取るほど落ちぶれてないし、ご家族にも内緒なんでしょ?なら無料(タダ)でやるのが都合がいい」

 

 冬月にとってみこは既に「無償でも助けるべき存在」となっており、既に脳内ではどう家族に誤魔化しながらどうみこの家族に悟られぬよう呪霊を祓うかを考え始めた。階位の低い呪霊なら無条件での調伏が可能ではあるが、もし準1級以上であれば彼自身が戦闘し調伏する必要性がある。

 

(私一応長モノが得意なんだけど…室内なら最悪肉弾戦か。みこちゃんにはなるべく呪霊操術での呪い合いを見せたくはない)

 

 ショルダーバッグに通常の日用品に潜ませるようにそこに配置された呪具を意識しながら、みこの家へと案内される冬月。

 拳威が護衛につくようになってからみこは以前ほど悲壮な顔は幾らか軽減され、さらに今回は冬月がいることもありみこはかなり和らいでいた。

 

「ご家族は家に?」

「いえ…うん、今日はみんな出かけてるはずです。恭介も買い物に行くって言ってたしお母さんもその筈…」

「………そう。分かった」

 

 冬月は弟、母親と来て父親の名前が出てこなかったことに一介の推測と寂寥を覚えるも声には出さずみこについていく。

 

(態々言わなかったのはそういうことなんだろうな……仏壇でもあればいいが)

 

 流石に線香をあげることは出来ないが手を合わせご冥福を祈るぐらいは出来るだろうとみこに案内されるまま住宅街に入った冬月は、ふと立ち止まったみこに合わせて立ち止まり、目の前の良くある一軒家に眼を向ける。

 

「ここが我が家です」

「あー…成る程。数はそれほどでもないね」

「5――いや4人位いるんですけど」

「猫の過密飼いからの飼育放棄かました廃屋の猫呪霊群とか凄かったよ。本来憑いてる筈の家から漏れ出て近隣に迷惑かけてた」

「ウチの近所の話ですか!?」

「? いや、いくつか県を跨いだ片田舎だよ。違法販売業者の仕業だったかな…」

「そ、そうですか…」

(猫関連でなにかあったのか…?)

 

 大きく胸をなで下ろし、直後大声を出した事を謝るみこを手で制しながらそんな彼女を不思議そうに見る冬月だが、察しの良さに定評がある彼でも流石に覚えがなく首を傾げた。

 せいぜい猫が主要因となった出来事で恐い目にでもあったのかぐらいしか推測出来なかった。

 

 考え込んでいる内にみこは既に玄関のドアを開け始めており、彼女が振り向く前に冬月は玄関前に移動しようとし、ふと()()()()()

 

「ただいまー」

 

 防犯の一環なのかクセとして染みついているのか、『家には(呪霊以外)誰もいない』と自身が言ったのにも関わらず挨拶を発する。

 

 

 

 

 

 

 だが、家にいるのは呪霊だけではなかった。

 

 

 

 

 

 

「おかえり姉ちゃん」

「きょ、恭介!?」

 

 誰もいない筈の家の廊下からひょっこりと出てきたのは、彼女の弟でもある【四谷恭介】だった。

 

「なっなんで家に!?出かけたんじゃ」

「途中で止めた」

(そもそも昨日急にオレと母さんに「明日は家を出る?」って聞いてきて…怪しすぎる)

 

 普段から猫のように細く気弱な人からはそれだけで威圧感を与えかねないその目を六割増しで細めてみこを見つめ、彼女がドアの外に視線を向け、直ぐさま外したことに気付いた。

 

「友達でも連れてきた?」

「なんでもないよっ!それより何買ってきたのか見せ」

「………!」

 

 早急に恭介の興味を逸らそうと靴を脱ぎ距離を詰めようとしたみこ。しかし恭介は『靴を脱ぐ』という数秒とは言えないが数瞬と例えるには十分なその“隙”を縫ってみこのわきを通り過ぎる。

 

「ちょっと待って――」

 

 動こうにも脱ぎかけの靴によって行動を阻まれる。ドアの取っ手に手を掛けた恭介を何も出来ずに見送るみこは、思わずこのまま冬月と恭介が鉢合わせた場合を脳内でシミュレーションする。

 

 身分上女子高生であるみこと、以前訪ねた時に着ていた僧衣ではなく。かといってプライベートな祓除なためスーツでもなんでもないラフな格好をした冬月。

 

 …第三者から見たら完全に事案である。

 

 仲を邪推される程度ならまだマシ、姉に対する思いが人一倍強い恭介の場合玄関前で大声を出し閉め出す程度はやる。というか以前「恋人が出来たかもしれない」という推測だけで姉を尾行しキスマークの有無を確認するため風呂に乗り込んでくる彼は確実に殺る(ヤル)

 

 尾行の件をみこ自身は知るよしもないが、それでも彼女はせめて恭介がマイルドな反応と対応を祈るのみだった。

 

「さぁ姿を表せ!」

(冬月さん……!)

 

 ……

 

 ………

 

 ……………

 

「なんだよ姉ちゃん、だれもいねーじゃん」

「へっ…?」

 

 恭介の言葉に釣られてみこも玄関の外に眼をやると、確かにそこには冬月の姿はいなかった。

 急いで靴を履き直し外に出てその姿形を探す。最初は生垣やブロック塀に身を隠したのかと考えたが、既に恭介は人が隠れられそうな場所に顔を突っ込んでいるが。みこは表情を見た限り人を見つけたような顔ではなかった。

 

「なんだよ紛らわしいな……今度こそカレシでも出来たのかと思っちまった

 

 ボソリと呟いた言葉―特に後半部分―はみこの耳には届かず風へと消えていったが、呆然とするみこを余所に恭介は再度みこを見る。その顔は早とちりした自分が恥ずかしいのか、その後発せられた言葉もぶっきら棒なモノだ。

 

「なんかもう一度買い物行きたくなってきた。騒いでゴメン姉ちゃん」

「う、うん。いってらっしゃい」

 

 驚きの連続によってここ数千文字真面なことを言っていないみこはまたもや生返事と単語の組み合わせ単品という非常に簡素な文章を発声し弟を見送った。

 

(一体にどこに……?)

 

 みこは冬月を探すために周囲を見渡す。しかし周りには彼はおらず、みこは「もしかしてあの一瞬で遠くに行って帰ってしまったのか」と考える。

 

 そしてそんな彼女の頭上に影に落ちる。みこは「天気が悪くなったのか」とふと空を見上げた。

 

「やぁ」

「うひゃあ!??」

 

 頭上にはつい先ほどまで自分と恭介が探していた冬月その人。よく見るとその手には二人が初めて会ったとき彼が持っていた河豚のような形の呪霊がおり、かつてと同じように頭上を取り己の姿を隠していたらしい

 みこがその場から飛び退いたのを見届けた彼は呪霊から手を離し地面へと着地した。

 

「離れるまで屋根に避難してた。一応傷とかは付けてないけどなんかあったら言って…んぅ~~!」

 

 少しの音も出さないためにジッとしていて体が強張ったのかゆっくりと伸びをする冬月。その顔は急な弟の奇襲に対して、特に何か不快・憤りといった感情を持っているようには見えなかった。

 

「さっきはその、恭介がすみませんでした」

「気にしなくていいよ?あくまで君を思っての行動だろうからね」

 

 『寧ろ非があるのは咄嗟に隠れた私だよ』と続けた彼は眼を細め恭介が走って行った方向を見つめた。彼自身は「ちょっと姉好き(シスコン)のケがあるけどいい弟だな」程度にしか思っていない。

 

「さて、さっきは諜報員のまねをしたがここからが本業だ。私の後ろでいいから呪霊の場所を教えてくれないかな?」

 

 みこの方を振り抜き少々茶目っ気を含んだ顔でそういった彼に対し、みこはすぐ頷き今度こそ無人となったみこの家にお邪魔した。




【河豚型浮遊呪霊】
等級:準2級呪霊
発生源:特筆する程の感情なし。自然発生
嗜好・興味:特になし
嫌いなもの:特になし
概要:少し液状化した河豚に立派な長髭が生えたような姿の呪霊。浮遊能力は上下の移動に特化しており空中での移動手段というよりかは即席エレベーターとして使っている。髭を掴む事が多いが複数人で移動する場合は髭が千切れることも(前科二犯)

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