猿人類となった男と見える子ちゃん 作:好きな領域は【誅伏賜死】
原作通りにいくと神社に行くイベントをオリ主を見逃すわけないので別イベを発生させ別行動してもらうぜ!!
「ッ!」
『チコクスルワヨオオオオオ!!』
爪による薙ぎ払いを身を屈めることで避け、反対側の腕での振り下ろしを体を翻し動物型呪霊と距離を縮める。躱す際体の動きについてこれなかった髪が何本か切られ、周囲に舞い散った。
「これでも手入れは大変なんだけどな!シィっ!!」
『ハヤクオキナサアアアイ!』
懐に飛び込み、拳に装着した鈍く光るメリケンサックの呪具を強く握りしめ強烈に穿つ。
何とも形容し難い感覚に打ち込んだ冬月は顔を顰めるが、だからといって攻撃の手は緩めない。
「動き回れないのはそっちも同じじゃないかい!?」
『コワイイイッッ?』
手を地面に突き頭部へ向かって蹴り上げを放つ。呪具を使っていないが、威力は充分。仰け反った呪霊に対し再びメリケンサックでのボディブローを打ち込む。
最も得手とする呪術戦を(自主的に)封じられて尚、冬月は1級と思わしき動物型呪霊を体術で圧倒していた。そも彼の体のモデルとなった夏油傑も特技・趣味の欄に態々格闘技と書く程に武術に秀で、相方の五条悟に至っては体術のみで特級を手玉に取り殴り飛ばした人がビルを貫通するほどである。
正直
(術式の類はない、シンプルにフィジカルに偏った呪霊。室内なのは予定外だが想定内だ!)
「フゥゥウウ…ッ!」
『オキテヨオオオオ』
床材が壊れない程度に踏み込み体の捻りも加えて体の勢い全てを掌底に集約。痛みによって苛立っているのか呪霊は四肢を縮め飛び掛かり、冬月の首筋にその牙が合わさる寸前。
「噴ッッッ!」
『オフロガワ――』
カウンター気味に突き刺さった僧兵が使ってそうな打撃技ナンバーワン(作者調べ)の掌底打ちが呪霊の体を浮かせゆっくりと崩れ落ちた。
「久しぶりにちょっとは骨のある呪霊だったよ。じゃあ入ってもらおうか」
『』
調伏と相なった呪霊は冬月の手の中で球となり、それを飲み込んだ。
「もう大丈夫だ。あとは3、4級しかいないから手を出すまでもない」
不恰好になった髪を少しでも見せられるようヘアゴムで結びながら冬月はリビングに声をかけた。
「………」
「どうだい?初めて見た祓除の感想は」
「なんというか…思ったより殴ったり蹴ったりでイメージと違うって感じでした」
「札と呪文で戦うイメージ?」
「はい。なんかTVで見たのもそんな感じでだったので」
「私達呪術師が使うのは生命力や霊力といった“正のエネルギー”じゃなくて“負のエネルギー”だからね。打ち消すんじゃなくて強い方が押しつぶすからああいう肉弾戦になるのさ」
そう言うと床や壁をつぶさに観察し始める冬月。廊下で見ていたみこからはその長い長髪で本人の顔が隠れ見えなかったが、もし彼女が回り込んでその顔を見れば呪霊との一連の戦いで汗一つかいてなかった彼が僅かにだが冷や汗を流している場面を見ることが出来ただろう。
(フローリングがハゲてたり、壁に罅入ってたりしないよね…!?)
普段は
本編では商業ビルだろうが一般生徒が通っている学校だろうが、果てには新宿や京都といった大都市で総力戦をかますなどして派手にやっている彼らだが。この世界では一部の依頼を除いて基本自己責任であり、もし冬月が浮ついてみこにいいとこ見せようと【うずまき】でもぶっ放した場合彼は多大の金銭を吐く羽目になっただろう。
「……よし、無事だね」
「えっと、どうしたんですか?」
「何でもないよ!さぁ一番の大物は終わったからここからは消化試合だ」
声を掛けられたため急ぎ取り繕いなんでもないように振る舞う。みこは少し不思議そうだったが「戦って疲れてしまったのだろう」と彼女は納得し、他の呪霊の場所を伝えるため家の案内を再開した。
そして、彼の言葉通りその後はほぼ消化試合同然だった。
みこの家にいたほかの呪霊はいずれも低級呪霊であり、その場合は手を翳すだけで終わるものだった。強いていうなら一体みこの部屋の布団の中という一種の強ポジに居座っていた者がいたが、部屋の主に許可を取り布団を引っ剥がし終わった。
「家の警護についてだけど、鴉の呪霊を何体か上空に置いておくよ」
最後の点検のため庭にでた冬月は、そういい上空を指さす。
そこには鴉というには些か巨大な呪霊がその大きな羽を広げて飛び回っている。霊的存在が見える人にしか見えないのが幸いだがもし普通の人に見られたら「庭か家に死体でも埋まってるのか」と邪推されてもおかしくはないだろう。
「何から何まで…本当にありがとうございます」
「
「あっ……」
「…話しかけるとか目を合わせるとかはしないようにね。下手に未練を持たせると呪霊に変異しかねないから」
リビングでこちらを見つめる眼鏡をかけた男性――二階の仏壇の顔からしてまず間違いなく四谷みこの父親――の霊に聞こえないようにみこに耳打ちする冬月に、みこは少しだけ辛そうな顔をしたが頷いた。
死者と生者、そして呪霊の均衡はそこに他意がないならともかく意識的に崩すものではない。というのが冬月の信条である
やってきた冬月に対して『だめだぞ!?そんなヤンチャそうな人、父さんは認めないぞ!!』と言っていた彼も呪霊になってみこや恭介、そしてその母親に襲い掛かるなんてことはしたくないだろう。と冬月は心中で呟きみこにそう注意したのだった。
「そうですよね…折角“仲直り”出来たんですし、このまま大丈夫だってみせないと」
「その調子その調子。……あぁそうそう、私明日から数日間ここから離れるから」
「え?」
「みこちゃんと同じで『本業』としての仕事が入ってね。話を聞く限り結構な大物らしくて、移動も含めると数日かかるのさ」
「なるほど…頑張って来てください」
「どうもありがとう――まぁ元より負ける気はさらさらないけどね」
勝気に笑って見せる冬月に、頼もしさを覚えたみこは「この人は大丈夫だ」と確信し。二人はその後互いに頑張ろうとエールを再度送りあいその日は別れる。
―――みこはその数日間の間最大級の呪霊と遭遇し、更に強力な何かに魅入られる羽目となったが、それを冬月が知るのは随分後となってからだった。
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ガタンゴトン、ガタンゴトン――
定期的に体を揺らすそのリズムに思わず目を閉じ睡魔に身を委ねかけたが、手元のペットボトルの茶を呷りギリギリで吹き飛ばす。
日常的に利用する駅だというなら最悪寝ても体内時計が働くが。今回向かうのは立ち寄ったことが一度もない土地のため確実に寝過ごす危険性が高い。さすがにビジネスとして行っている祓除で時間通りに行動できないのはまずいだろう。
「地方都市か…都会とも田舎とも言えない場所で、呪霊の質は如何ほどのものかな……?」
そんなわけで私こと冬月水賀はとあるローカル線に乗って依頼主の元へと向かっていた。依頼は当然呪霊絡みの事件である。
メールと電話では簡単な話しか聞いてないが、依頼主曰く―――
「――――【コクデイ様】ね」
ここの原作話見返すとみこちゃんお父さんの霊と一回も話してないんですよね。まぁ下手に反応したら今回祓った霊が襲ってくる可能性もあったからなのかもしれませんが……
あと特に意味ないんですけど1D3のダイス振りますね。