猿人類となった男と見える子ちゃん   作:好きな領域は【誅伏賜死】

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 …よぉ 4年ぶり(適当)だな。ライナー

 気まぐれに更新しまーす!べ、別に久しぶりに感想欄見返したら嬉しくてとかじゃないんだから、勘違いしないでよね!!


【第七視】出張僧侶/良かれと思って

 

「おぉ、冬月さん。よくぞこんな片田舎まで…ご足労お掛けしました」

「仕事ですから。それでコクデイ様とやらに聞いてもいいかな?」

 

 電車(結果寝過ごしはしなかった)で村への最寄り駅前へ到着し、そこからバスを経由して冬月は依頼があった村へと到着した。

 目の前の村長と名乗った男性は、一般的な“村長”という立場にいる人間にしてはかなり若く…見た目は大方40〜50程度に見えた。

 

「勿論。まず初めに…コクデイ様は我が村に()()()()()()神さまです」

「『コクデイ様の体は全てを飲み込む黒い泥。その泥は滅びと共に豊穣を齎す』……村に代々伝わる言い伝えです」

 

 『以前まではただの言い伝えだと思っていたのですが…』という男性の顔は青白く、彼は自身の背後にある新聞を指さした。

 

「これは?」

「村の地方新聞です。今の落ち着かない自分よりも状況をよく把握出来るかと思い準備しました…」

「…では、失礼するよ」

 

 村長自身心労が深刻なのか、新聞を渡すなり自分の鼻の根元を摘まみ疲労の誤魔化しを図り始めた。そんな彼に内心同情しながら冬月は新聞に眼を走らせ…ることもなく目的の情報が載っている記事にたどり着いた。

 堂々と一面の見出しを飾っている記事には、おどろおどろしいフォントでこうあった。

 

コクデイ様の祟り!?本月四人目の変死体

 

 内容については変死体(流石に死体の写真を載せることは憚られたのかある程度デフォルメされた再現絵だった)の絵と警察の見解。そしてあくまで科学的見解からアプローチを仕掛ける警察機関をバカにするような内容だった。

 

(夏油様ならここで「猿共が」とでも吐き捨てるんだろうな)

「状況は確認しましたよ。こうなるに至った経緯を聞いても?」

「えぇ勿論……」

 

 そうして語り始めたのは、村の悪き風習と。それに立ち向かった一人の男の物語――

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ描写するのは作者がメンド……読者の皆様の精神衛生上良くないので省くが、要約すると以下のような内容だった。

 

・村には昔からコクデイ様の伝説があり、それは怒れる神でありながら“供え物”をすれば豊穣を約束してくれる。

・供え物の内訳はとどのつまり“生贄”であり、若い女性であれば尚更良いとされる。

・ここ数百年間、村では当たり前のように生贄を捧げることが当たり前となったが。数十年前若くして村長となった依頼主はコレを良しとせずこの風習を廃止。

・しかしその風習を廃してから暫く経った現在、村で突如変死体が発生し。その付近には黒いタール状のものが目撃される。

・無論警察は調査を開始したが、現時点まで進展なし。村では「コクデイ様への供え物を止め彼の神を蔑ろにしたからだ」という意見も出て来る始末。

・とてもじゃないが生贄なんてものを許容できない村長は怪異の専門家としても知られる冬月に依頼した。

 

 と、冬月が村長から聞いたのはこのぐらいであった。

 

「うん、大体把握したよ……まず知見を言おうか」

「!?もう分かるんですかっ?」

「それっぽい残穢が辺りに見えるよ。間違いなく呪霊の仕業だね…」

「で、では…神の仕業ではないのですね!」

「神格が呪霊に堕ちるもしくは呪霊と癒着する事例もありますが…この場合は単なる呪霊ですね。一部の呪霊はある程度の知能や不可思議な技を使うので、きっと過去の村の方々はそれを神だと思ったのでしょう」

 

 口に出しながら、冬月は内心『にしても仮に同一個体だとすれば一級以上は確定。そして生贄による長期的な己への利を理解している知能レベル……十分に特級相当だね』と思考を巡らせ、久々の大仕事になると気合を入れた。

 

(今回の殺人は大方、突如生贄を捧げなくなった村人への“見せしめ”か……ふざけたことをする)

 

「今晩にでも取り掛かりましょう。深夜に“お祓い”するので夜間帯は家から出ないように徹底してください」

「見届けることは、出来ないのでしょうか?」

「……可能ではありますが、危ないですよ」

「構いません」

 

 決意の硬いらしい村長の言葉に、冬月は肩を竦める。

 

「褒められた行為ではありませんが、私個人としてその姿勢は嫌いではありません。いいでしょう…一緒に見届けましょうか」

 

 感謝の言葉と共に頭を下げる村長に気にしないようにと言葉を投げかけつつ、冬月は今回使う手持ちの選別を始めた。

 

 

 

 

 みこはふと、自宅の祓除が終わり帰る寸前『そうそう』と言いながら自分に振り返る冬月の姿を思い出した。

 

『私がいない間、大体の呪霊は拳威の力でなんとかなると思うけど。もし拳威でもどうしようもないヤツとあっちゃったら……苦しいと思うけど、無視を決め込んでほしい』

『あの、敵わないヤツって。どう見分けすれば…?』

 

 冬月との会話で呪霊にも階級があることは何となく察していたみこだったが、その見分け方は皆目検討もつかないため聞いてみたが。

 

『んー…みこちゃんなら、()()()()()()んじゃないかな』

 

 ぼかすような言い方をした冬月だったが、もう日も暮れたことでこれ以上引き留めるのは申し訳ないと送り出したことをみこは思い出していた。

 

 なぜいまそんなことを思い出したのかと言うと……

 

『………』

 

「みこ〜? どうしたの、顔なんだか歪んでない?」

「ううん…そんなことないよハナ」

 

 みこは今日。友人であるハナと一緒に映画を見るためお出かけをしようと駅前でハナを待っていた。

 少々待っていると、待ち人であるハナはやってきた。やって来たのだ……背後に二人羽織と千手観音を無理やり接合し栄養剤をぶち込んだような呪霊を背後に伴いながら。

 

(なになになになになに!?)

 

 自分ではなく明らかにハナをマークしている。そんな意識外からのショックにみこは脳内を疑問符でいっぱいにしながらも笑顔は崩さずに原因を探ろうとする。

 

「お、遅かったねハナ。どこに寄り道してたの?」

「いやーそれがワンちゃんを助けようとしたら時間がかかっちゃって!」

「ワンちゃん、どこで助けてきたの…?」

 

「呪いビル」

 

「なんでなのっ!?」

 

 その口から出てきたのはあんまりにもあんまりな事実。アレが見えるようになる前も背筋が凍るような予感と、見えるようになってからは明らかにヤバいオーラを漂わせていたその場所に。親友のハナはわざわざ足を運んだという……仮に霊感のない彼女に言ったところで詮無きことではあるのだが。

 

 見ただけで分かる、アレは明らかに強い。

 

 普段呪霊が近づけばカタカタと鳴り出すゴングが沈黙を保っている…血気盛んなあのボクサーが黙って相手を観察している様からも明らかだった。

 

(冬月さんはお仕事に行ってるそうだから、ここで電話しちゃうのは迷惑だよね…。うぅ、どうしよう……!)

 

 本来であれば用意していた筈の対抗手段が通じないという緊急事態。しかし人を思いやる性格であるみこはそこで遠くに行っているという冬月に連絡するという選択肢を捨てた。

 

 ならばどうすればいいのか、とみこは思考を巡らせ始める。

 

 ターゲットは自分ではなくハナで。ハナは引き寄せやすい体質であるが同時に()()()()()()という体質であるらしいから無視をしていても問題はないはずだが……そこで見て見ぬフリは絶対にしないあたりまたしてもみこの人の良さが垣間見える。

 

(とりあえず足を動かそう。ずっと立ち止まってるのはハナにも悪いし…アレにも不審感をあたえそうだから)

 

「じ、じゃあ行こっか。ハナ」

「うん! しゅっぱ〜つ!!」

 

 そのまま興味を失って去ってくれないか。そんな淡い希望を持ちながら歩き出したが、人の願いは儚きかな呪霊はハナの隣をピッタリとついてきていた。

 

(パワースポットみたいな…それこそ霊験あらたかな〜みたいな。神社でも行ってみようかな)

 

 ツイツイと手元のスマホを動かし、みこは周囲の神社の検索を始めた。それがさらなる災難を呼び込む事態になるとは……流石に遠くの方で祓除に勤しむ冬月にも予想がつかないことだった。




【コクデイ様】
等級:特級呪霊
発生源:苦しい環境・状況からの抜け出せない苦しみ
嗜好・興味:生贄を選ぶ会議で長く醜く争う人の様子を見ること
嫌いなもの:足掻く奴
概要:抜け出せない=底なし沼として流動性の体を持つ呪霊。村からの畏れなどの信仰ブーストを受けて特級と成り、苦しむ人を見て楽しむなどの知能を持つに至り生贄を求め始めた。決まった形を持たないため呪力を込めた物理攻撃が当てづらくまた異常な防御性を持ち。逆に自分からは物理的な干渉が可能かつ体内に閉じ込めての窒息死を狙うなど強敵扱いされているタイプのスライムのような能力を持つ。
 また術式として己の体積を媒体として『相手を強制的に足を取らせ沈ませ拘束する底なし沼』を召喚する。沼に足を取られたら自力での脱出は込められた呪力が尽きるまでほぼ不可能であり、またコクデイ様自身が持つ膨大な呪力量で沼が自然解除されることはまずない。これ自体が一種の領域のようなもの。
 ちなみに豊穣の与え方だが山からの湧き水を件の村に優先的に流し他の村への水の出を制限することで『相対的に』村が豊かになったかのように見せかけていた。

 ……え、なんでまだ直接出てもない呪霊の紹介してんだって?

 底なし沼、または潮干潟でもいいんですけど。確かにあれって足取られると自力で抜け出すのって難しいんですけど近くに引っ張り出してくれる「第三者」がいたら全然普通に抜け出せますよね。

 つまりそういうことです。
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