ブラマス短編 作:ミュータント・アタッカー
――小惑星地下。
G-ソフィアが強いミュータント反応を検知したその星には、資源採掘用にくり抜かれ、作業機械やコンテナが打ち捨てられた、坑道があった。
補強・舗装された坑道は、いくらか老朽化しているのが見て取れたが、崩壊しそうにない状態の良さで、ミュータントの巣となっていた。
作業や大規模搬入出のための大坑道をメインストリートとして、ネズミの抜け穴のようにして小さな通路が点々と存在した。
それらの通路は坑道の各地と繋がっていて、見たところ、メンテナンス用通路であったり、作業従事者用の詰め所であったりするようだったが、今はやはりミュータントに好きに荒らされていた。
旅の間、このような無人設備を見るたび、持ち主――見も知らぬどこかの文明の安否を気にしてしまう。
他の
『ジェイソン? 何か気になるものでもあったの?』
「……いや、なんでもない。先に進もう」
小型ミュータントを片付け、この小惑星の探索ももう一息で終わる。
集中しないとな……
『その通路の先、大きな空洞になっているみたい。強いエネルギー反応もあるから、気をつけて』
「ああ」
今の所、坑道の中枢となる設備は見当たらないままだ。
恐らくは、この先にそれがあって、ボスミュータントがそれを守っているのだろう。今となっては見慣れたパターンだ。
ロックされた金属質の自動扉の先、果たしてそこにはボスミュータントがいた。
流線型の体表は灯りの下でなお濃淡がわからないほど黒く、両手の鋭いツメはうるさいほどに光り輝いている。
遭遇と同時、俺のヘルメットのバイザーに、エネミーコードを伴って警告画面が表示される。
ラグモ・ログマ、か……初めて見るな。ひとまず、ツメに注意して動きを観察していこう。
……
戦闘開始から十数分後。
二度の変形・巨大化を経て完全な異形と化した漆黒のボディに、二度の攻撃でヒビ割れたコアが露出した。
無数に枝分かれする首から噴き出す毒液のシャワーをすり抜け、首の根本――コアめがけて、サブウェポンを「振るう」。
「トドメだ!」
試作サブウェポンの二つのブレードが、硬い手応えの後に首ごとコアを切断した。
制御を失った十六対の腕が、ドーム状の空間のあちらこちらをかきむしりながら自壊していく。
……これじゃあ、奥へ進むのは無理だろうな。
『ジェイソン!』
「わかってる!」
もと来た通路を走って引き返し、ソフィアへ飛び乗る。
キーライフルスロットにGーライフルを差し込むと、車体のものとは別に坑道からの振動が伝わってきた。外を見れば、さっきまでいた通路の入り口はもう、舗装用の構造材や岩で塞がっていた。
「間一髪だったな……」
できれば、あの奥にあったであろう管理用コンソールから、残ったデータを回収したかったんだけど……命には替えられない。
ヘルメットを外して脇に置こうとすると、後部座席から出てきたイヴが俺の手からそっと取り上げた。
「お疲れさま、ジェイソン』
「ああ、ありがとう」
イヴがヘルメットを置くのを横目に、水を一口飲むと、気分が落ち着いてくる。
俺は自然と今の戦いを振り返り、ラグモ・ログマへのトドメにもなった、調整中の武器についての感想が浮かんだ。
「あの武器……ぶっつけ本番だったけど、役に立ったな」
つい最近作った、試作サブウェポン――使用者を中心に公転し、自身も自転するブレード。これは、全く同様の武器を見かけ、それを模して作ったものだ。
「ジェイソンって、これまでにもいくつかそういう武器を作ってたわよね」
「"そういう"って?」
「ほら、スティンガーとフラッシュストライカーとか、ウィップに……あと、インパクトウェーブとか」
「……?」
「えっ、ホントにわからないの?」
わけもわからず頷くと、イヴは額に手を当ててため息を吐いた。
「似たような戦い方を見て作った武器のことよ」
「ああー、言われてみれば。そうだった……気がする」
人差し指を立て、子供に言い聞かせるようにして言うイヴを前に、ようやく朧気に思い出した……ような、そうでもないような。
俺が煮え切らないからか、イヴはさらに呆れ顔になった。
「気がする、って」
「正直、何に着想を得たのかほとんど覚えてないんだ。このブレードに関しては、"なんとかかんとかのイクス"って称号を持つらしい人の武器だったと思うけど……」
「じゃあもう、武器の名前に"イクス"ってつけちゃえばいいじゃない。そうすればきっと忘れないでしょ?」
「おいおい……忘れるとか忘れないとか、お年寄りみたいに言わないでくれよ」
別に、俺が忘れっぽいわけじゃない。
前のはどれも、地球で偶然ちょっと見かけただけで、話を聞く暇もなかったから記憶が曖昧なだけだ。……と思う。
「実際に忘れてるんだもの。誰かを参考にしたなら、敬意を払わなきゃ」
「うーん……わかったよ」
イクス、か……
どんな名前にしようかな?