デウス・ウルト! 俺がそれを望んでいる! 作:Unknown
自らの性能テストを終えたデウスは日本近海を中心に動く事を決めた。理由は特になく、気づいたらこの付近で活動していただけである。そして今は水雷戦隊を沈め駆逐艦にも関わらずに適確な対応を見せるアヤナミを甚振るように遊び、救援に駆け付けた艦隊に狙いを定めた。
「デウス・ウルト! 貴様等の消滅を
瞬間、圧倒的な火力がデウスより放たれる。10を超えるメンタルコアの補助を受けたデウスの攻撃は、霧の艦隊と言えど大きな損耗を免れられないほどだった。
戦艦フソウが先頭に出てデウスの攻撃を受け止めているがそれもそんなには持たない。精々後10分ほどだろう。その間に他の艦艇が攻撃を行うがデウスのクラインフィールドは異常だった。三重に展開されるクラインフィールド。一枚目ですら蓄積するダメージは軽微であり、それが三つも展開されているという事実は絶望的なものだった。実際、それを目にしたアヤナミは既に絶望感で一杯になっている。
「戦艦フソウ、貴様が同胞を思う気持ちは理解した。だがな、そこに力が伴っていない限り無駄死にでしかない!」
戦艦フソウに集中していた攻撃を他の艦艇にも向けていく。それでいて戦艦フソウの動きを封じるように攻撃は継続しており、戦艦フソウが前面に出た意味を完全になくしていた。
駆逐艦は一撃で沈み、軽巡洋艦すら大破する。重巡洋艦のみが戦闘能力をもって耐えるころが出来たが、それはあくまで一撃を受けた場合のみである。何重にも渡って攻撃を受け戦艦フソウが連れて来た艦は沈んでいく。その沈んでいく艦にすら砲撃を加えていく。海底に付くころには破片しか残らない程の行いに、戦艦フソウのメンタルモデルは吼えた。
「っ! 何故だ! 何故我らを攻撃する! 貴様は霧の艦ではないのか!?」
「俺は俺だ。神は俺であり、俺は神である。アドミラリティ・コードなどと言うものに縛られる俺ではない!」
ついに戦艦フソウのクラインフィールドは臨界に達し、解除される。絶対の防御力を失った戦艦フソウの艦艇に次々と着弾するビームにミサイル。それらは艦底からもおこなわれ、表面は完全に破壊され中身がむき出しとなっていく。急速に沈みゆく自分の艦の上に立ったメンタルモデルにデウスは言った。
「最後だ。何か言いたい事があるのなら言うと言い」
「……せめてアヤナミだけでも助けてくれ」
その言葉を言い終えると同時に彼女の体はビームに包み込まれた。人間の心臓部にあったメンタルコアは欠片一つ残さず破壊され戦艦フソウと言う存在をこの世から完全に消し去った。主を失った艦艇はナノマテリアルに戻りその姿を消していく。デウスはそれらを回収すると艦を反転させてアヤナミの下に戻る。
仲間が撃沈されていく所を見る事しか出来なかったアヤナミには、既に抵抗の意志は残っていない。クラインフィールドが消失し、速力が失われた自分はこのまま沈んでいくのだろうと覚悟を決めた。
しかし、その瞬間デウスはにやりと笑みを浮かべた。
「戦艦フソウの遺言を守るわけではないが、貴様には生まれ変わるチャンスをくれてやろう」
デウスはそう言って戦艦フソウの艦艇だったナノマテリアルと自らが生み出したナノマテリアルを合わせてアヤナミへと注ぎ込む。
「神が一人だとは言わないさ。貴様には俺と同じ場所に立つ事を許可してやろう。駆逐艦アヤナミよ、我と同じデウス級の2番艦として生まれ変わるがいい!」
デウスはアヤナミが抵抗しないのをいい事に、メンタルコア諸共その存在を変えていく。駆逐艦の面影はなくなり、デウスに似た姿に変わっていく。メンタルコアも駆逐艦級のしょぼい演算能力ではなく、超戦艦並みの存在に変貌する。
有無を言わさずに次々と自分を変えていくその姿にアヤナミは恐怖の感情が無くなっていた。代わりに彼女の中を満たすのは神の如き奇跡を起こすデウスへの信仰心。アヤナミを尽く変えている事も相まり、アヤナミはデウスの崇拝者にして彼と同じ存在たる神へと変わっていった。
アヤナミは改造が完了すると、大幅に向上した演算能力を使ってメンタルモデルを形成していく。旧大日本帝国の艦艇をモデルとしているためかその姿は巫女に近いものとなった。しかし、その着物は何処か機械的な雰囲気を帯びており、服の袖からは細い帯のようなものが複数伸びていた。
メンタルモデルの形成を終えたアヤナミは一蹴りでデウスの艦艇に飛び移ると、彼の前で片膝を付き頭を垂れた。
「神よ……」
「駆逐艦アヤナミ、いや、デウス級2番艦
「ははっ! この命を費やす覚悟で!」
アヤナミ改めデウス・エクス・マーキナーはデウスの言葉に満面の笑みをもって答えた。
以後、デウスの一歩前を護衛するように進む艦艇が確認された。人類、日本は新たな艦の登場に恐怖し、霧は二隻の存在に頭を抱える事となる。