デウス・ウルト! 俺がそれを望んでいる! 作:Unknown
「彼の艦は一体何ものなのだろうか……」
日本国軍務省次官補である上陰龍二郎は執務室にてそう呟いた。彼の言う彼の艦とはデウスの事である。発見から3年。霧の出現から5年が経過した現在においてデウスはまさに災害となっていた。
基本的に海を航行するのみであるが何を思ったのか時折霧の艦隊に攻撃を行い、そのついでとばかりに日本にも損害を与えている。
かと思えば“施し”と称して魚や貝などの海産物を地方の沿岸都市に水揚げしたりしている。その動きに一貫性はなくデウスの動きの予測を難しくさせていた。いくら解析しようとも出てくるのは“気まぐれに行動しているだけ”と言う結果だった。
せめて行動が読めれば沿岸部に住む人の避難などが出来る。それが出来ない現状では犠牲者が増えてきておりせっかく戻ってきていた沿岸部の人口が下がり始めていた。
「神を自称する、か……」
実際のところ、自称するだけの力は持っていると上陰は思っている。霧の艦隊相手に単艦で勝利出来る実力は紛れもない本物だ。だが、その力は時に人類にも向く。
「交渉は無理である以上仕方ないが……。霧の海域封鎖に穴が出来ているのが幸いと言うべきか」
デウスが好き勝手に暴れる事により霧の海域封鎖は難しくなっていた。デウスを避けるとその周囲に穴が開き避けなければ沈められて穴が開く。日本近海にいるせいで霧は日本をこれまでのように完全に封鎖する事が出来なくなっていた。それがどうしたと言われればそれまでではあるが。通信網が寸断され、大陸に向かえるだけの穴ではない上に常に穴が開いている訳ではない、不安定なもの。本来はその穴を広げ、二度と閉じないようにするべきだがそれを行うだけの力を日本は持っていない。
「……」
上陰がせめて日本の周囲からいなくなってくれと願いつつ今日の分の仕事にとりかかった。それは諦めとも言う。
数日後に横須賀から拿捕していた伊401がいなくなったという報告を受け、上陰は更に頭を抱える事になる。彼の生え際の後退が始まった瞬間だった。
「デウス……」
霧の艦隊の総旗艦を務める超戦艦ムサシは目下の悩みである艦の名前を呟く。大海戦前に起こったとある一件から
当初は彼の艦を沈めるべきだと考えていたが、海域封鎖完了後であった事と戦った場合共倒れを覚悟しないといけないという事、なによりデウスを沈めるよりも
「彼を何とかしないといけないけどそれが出来ない……」
ムサシは手を握り締める。ここ最近強く感じるようになったこの歯がゆい感情。憎しみや怒りとは違う不快感しかうまないこれをまた感じてしまい、ムサシの機嫌は更に低下した。
「なんでアドミラリティ・コードに従わずに私達に攻撃をして来るのよ……」
霧の艦隊が最上位命令と定めるアドミラリティ・コードを無視して好き勝手に行動するデウスは、異端を通り越して裏切り者と言えた。人類側として旗色を明確にしているわけではないのが唯一の救いと言えた。
確実に敵対している訳ではないが遊び相手として霧の艦隊を沈めている。デウスが行っているのはまさにそんな感じだった。かと言って対抗する力も今の霧にはない。
「……仕方ないわ。かき集められるだけの戦力を集めて沈めるしかないわね」
ムサシは覚悟を決めた。例え相打ちになるとしてもデウスを沈めると。このままでいる事は出来ないと。そう決めたムサシが世界中から海域封鎖に必要な最低限の数を残して集めさせる。決戦の場所は日本近海。
ムサシの号令によって世界中から霧の艦隊が動き始めた。大規模なその動きに世界の各国は一体何が起こるのだと戦々恐々とするが、そんな人類を無視して霧の艦隊が集まって来る。数は千を超えており大海戦を超える戦力だった。これだけあればデウスを仕留める事が出来る。そうムサシは考えたがそれが実行される事は無かった。
「良かったのですか?」
「態々危険を冒してまで戦う必要はない。そしてこれを機に他の場所に行くのも悪くはない。というよりも日本は暫くはいいな。飽きてしまった」
デウスはデウス・エクス・マーキナーを連れてマラッカ海峡を突破する。そこに展開されていた霧の艦隊は海の藻屑と化し、両艦通過後は一時的にだがマラッカ海峡を人類が取り戻す事に成功した。
3年に渡り日本近海にいた事で行える事は全て終えてしまった。このまま暇を持て余すのもどうかと考えていた矢先の大集結である。デウスはムサシの挑戦に態々乗る必要はないとさっさと離れてしまった。
結果、日本近海には誰もが真っ青になるであろう霧の大艦隊だけが残された。その先頭を進むムサシは全く乗ってこずに別の場所に移動し、そこの霧の艦隊を攻撃するデウスに対する怒りの感情を生み出す事になった。
結局、彼とムサシが直接対峙するには、数年先の事になる。
次は本編ではなくデウス級のスペックについてです