デウス・ウルト! 俺がそれを望んでいる!   作:Unknown

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第五話「神の漁」

 デウスの艦艇スペックは霧の艦隊すら凌駕している。巨体故の鈍足さも人類の船を軽く超えるだけの速力はある上に、最大速力で動く事などほとんどない。彼にかかれば大陸の端から端まで詳細な情報を手に入れる事はたやすい。

 それが何を意味するのか? 簡単である。彼の前に()()()()()()()

 

「……2隻か」

「潜水艦イ400、402ですね。総旗艦艦隊所属の潜水艦です」

「総旗艦、と言うとヤマトだったか?」

「いえ、今はムサシが運営を行っています。どちらにしろ我々の監視が目的でしょう」

「別にみられて困るような事はないがただ後ろから見られるだけというのもつまらない……。よし、マーキナーよ、()()を試すぞ」

「了解しました」

 

 デウスは一瞬考えを巡らせる。僅かな時間のこととは言え、人間を軽く超える演算能力を持つメンタルモデルが行った思考は人の何千、何万倍にも匹敵する。

 そんなデウスが考えた()()の実行をデウス・エクス・マーキナーは正しく理解して準備に入る。デウスの後ろについたマーキナーは艤装を動かしとある兵器を露にした。それは銛を打ち出す発射装置だった。しかし、その対象は魚や鯨などではない。それらを捕らえるにはあまりにも大きすぎる銛だった。そんな銛が狙う相手は勿論、潜水艦だ。

 

「ハープーン発射します」

「メンタルモデルがいるであろう艦橋部には指すんじゃないぞ」

「勿論です」

 

 10本の銛が一気に投擲される。水中での摩擦など無いとばかりに高速で突き進むそれに、監視任務についていたイ400と402は反応し、回避行動に移る。しかし、その進路に合わせて銛の動きも変わりマーキナーが設定した箇所に寸分たがわずに突き刺さる。

 

「全て命中しました。引き揚げます」

 

 瞬間、銛は巻き上げられすさまじい勢いで両潜水艦は海上に引き上げられる。それに抗おうと機関を全力にして反対方向に船体を向けつつ魚雷を発射する。しかし、そんな抵抗もデウスは許さない。補助に回るようにデウスはレーザーを放つ。水中で爆発音が響き渡りそれ等を突っ切るようにデウスから放たれた魚雷が両潜水艦に激突する。クラインフィールドを展開してそれらを防ぐも絶え間なく続く魚雷に呆気なく臨界点を迎え消失する。

 

「……? 主よ、両潜水艦の抵抗がなくなりました。クラインフィールドの臨界点突破が決め手となったようです」

「よし、引き揚げろ」

 

 やがて両潜水艦は海面に浮上する。5本ずつ銛が突き刺さった2隻の潜水艦にデウスは跳躍する。イ402の船体に飛び移ったデウスは言った。

 

「おい、見えているんだろう? 顔を出せ。沈められたくないならな」

 

 その言葉に噓偽りはない。ここでメンタルモデルが姿を見せないのならデウスは沈める気だった。ただ沈めるだけでは面白くないからこその今回の行動であり相手が従わないのなら律義に沈めずにいる理由などなかった。

 数分後、二人の少女が姿を現した。姉妹艦らしく顔立ちはそっくりな二人は無表情でデウスを見ていた。しかし、警戒していない訳ではないようでその瞳はデウスの一挙手一投足を見ていた。

 

「お前らが400と402だな?」

「あっている。貴方はデウス?」

 

 感情など感じさせない平坦な声でデウスの言葉に答えた400。デウスは彼女達に近づくと笑みを浮かべて言う。

 

「ムサシ? だったか? そいつの命令で俺の監視をしていたな?」

「肯定する」

「ムサシからは貴方の動向を監視して報告するように言われている。もし捕まった場合は正直に言って構わないと言われている」

「成程な」

 

 無駄な抵抗をするよりは少しでも心証を良くして生き残る確率を増やさせる。ムサシの考えを察したデウスだが別に不快には思わない。というよりも相手にしていない。ここに居ない奴の事を考える気などサラサラないのだ。

 

「そうか。霧の艦隊は少し沈め過ぎた。ムサシの命令にも納得する。良いだろう。お前達が俺を監視する事を許可しよう」

 

 普通は監視するのに対象の許可など必要はない。そもそもバレている時点で監視と呼べるはずがない。それでもデウス相手なら仕方ない事でもあった。

 

「いいの?」

「デウス・ウルト! ()がそれを望んでいるのだ。別に問題はない」

「ならば私達の船体に刺さっている銛を抜いて欲しい」

 

 イ400と402は不思議な生物でも見るようにデウスを見る。デウスとしても攻撃するわけでもなくただ後ろをついてくるのはカルガモの雛の様に思っている為問題はなかった。それゆえに402は監視をする上で必要な船体の解放を要求するが……。

 

「は? 何故だ?」

「? 銛が刺さっていては船体を動かす事は出来ない」

「貴方が許可を出した以上銛を外すのが自然」

「確かに監視する事は許可を出したがそれに船体は不必要だろう?」

 

 その言葉に二人は察する。デウスは潜水艦を用いて後方から監視をする事を許可したのではなくメンタルモデルに手が届く距離での監視を許可したのだと。そんな二人の考えを裏付けるようにデウスは二人の首に手を添えるとナノマテリアルを使った首輪が巻き付いた。

 

「何を……」

「勝手な行動を阻害する為のものだ。お前ら潜水艦程度の演算能力ではそれを外せないし効力を消すどころか弱める事も出来ない。それは常にお前らの位置を俺とマーキナーに伝える。他にも色々あるがまぁ、その内わかるさ」

「……これでは私達が監視されているのと変わらない」

「何を言っている? お前らとムサシの通信は妨害なんてしていない。好きなだけ監視報告をするがいい。その代償として自由を失っただけだ」

 

 デウスはまるで飼い猫を拾って自分の物にするかの様に二人を扱う。デウスの監視任務は前提条件から崩れ去り更には傍で監視できる代わりに報告以外出来ない不自由な身へと二人はなった。

 

「よし、マーキナー! こいつらの船体をきちんと固定しておけ! その内役にたつかもしれないからな!」

「了解しました」

 

 こうしてデウスはマーキナーの他に二人のメンタルモデルを連れてインド洋を航行する。彼が目指すのは地中海に通じる紅海の入り口、バブ・エル・マンダブ海峡である。

 

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