デウス・ウルト! 俺がそれを望んでいる! 作:Unknown
霧の艦隊が海域封鎖を行うにあたって完全に封鎖が難しい地域がある。それは海峡や運河である。そう言った場所の中には陸地と陸地の距離がとても短く、その気になれば簡単に渡河出来る場所もある。
そう言った箇所を封鎖する為に霧の艦隊は地上への攻撃を行った。アドミラリティ・コードでは地上への直接攻撃を禁止しているが海域封鎖において必要だというのなら地上への攻撃は行われても問題ないとなっている。それをついて海域封鎖の為に周囲から人間を追い払う乃至皆殺しにした。これにより人類は更にバラバラになる事となった。
そして、バブ・エル・マンダブ海峡などには霧の艦隊が停留しており絶対に通らせないようにしていた。
「まぁ、俺達には関係ないけどな」
そんな彼女達もデウスの前に膝をついた。紅海に入るべくインド洋を突き進んだデウスたちはバブ・エル・マンダブ海峡にいた霧の艦隊を一隻残らず沈めて悠々と通過する。ムサシが決戦の為に艦隊を引き抜いた事もあり被害は軽微で済んだが、再び霧がここに来るまでの間人類が渡れる唯一の海域へと変貌した。
霧の艦隊を沈めて紅海に侵入したデウスたちはそのままスエズ運河を目指す。地中海はイタリア艦隊をモデルとした艦隊が海域封鎖を行っているが、超戦艦ムサシの招集によりここも手薄となってしまっていて本来の三分の一程度しか艦艇が存在していない。
「欧州では内戦が続いており、イギリスは島国ゆえに難を逃れるも孤立化……」
「ではイギリスが次の目的地ですか?」
「内戦中の国に行ってもいい事など無いだろうからな」
マーキナーの言葉にデウスはそう答える。イギリスも孤立化し滅亡寸前ではあるが、人間の内戦などという余計な事態に巻き込まれるよりはマシだと考えていた。
「その前に地中海を堪能しようではないか。こういう機会でもないと中々来る機会は無いぞ」
デウスはそう言うと目の前に見えて来たスエズ運河を見る。入り口が二つしかない地中海に定住する気がないデウスは、移動以外で地中海を訪れる事は無いだろうと思っていた。その為、次に来ることが二度となかったとしても問題ない様に楽しむ予定だった。無論、デウスが行う"楽しむ"は一般のそれとは大きくかけ離れているが。
「……デウス。貴方はまた同胞を沈めますか?」
「ん? 邪魔をするのなら沈めるさ。別に態々見つけ出してまで沈める気は無い」
「ですが貴方は娯楽目的の為に何隻も沈めてきました。今回もそうすると思っても仕方ないと思います」
「それはそうだ。だが俺だっていつも沈めようと思っているわけではない。今日はそう言う気分が一切ない日だ」
「「……」」
デウスの言葉にイ400と402は無表情だが明らかに信用していないと言わんばかりの視線を向ける。実際、デウスの気分はコロコロ変わる。特にどうでもいい事に関しては全力で回るスクリューの如き回転を見せる。数分前には沈める気がなかった船を気が変わり沈めた事もあった。
「……分かった。ならば何か物々交換と行こうではないか。俺は霧の船を不必要に沈めない代わりにそれに見合う何かをお前らが何か俺に差し出せ」
「……私達にはあなたを満足させるだけの物は持っていません」
「ナノマテリアルを創造し、資源に余裕のある貴方が満足できる物を我々が用意できるとは思えません」
客観的に見て今の二人は捕虜と言う言葉が最も似合っている。敵対する相手の船に武装を奪われた上で身動きが取れない状態で傍に置かれている状況をそれ以外で表すには不適切だろう。それゆえに、二人がデウスに差し出せるものなどある筈がなかった。
「ふ、所詮は人間の外見だけを模したメンタルモデルか。ならばきちんと伝えてやろう。お前らは俺の奴隷として奉仕せよ」
「意味が分かりません」
「貴方も霧の船です。奉仕するような事など……」
「否定ばかりだな」
論理的に話しをする二人にいい加減デウスは飽きを感じ首輪とつながる鎖を生成するとそれを思いっきり引っ張る。唐突の前方への力に二人はなすすべなく倒れ込むも、メンタルモデルがその程度で傷つくはずもない。しかし、首輪をした女性二人を這いつくばらせるという行為にデウスは満足げに鎖を消した。
「確かに俺はメンタルモデルだ。男性型と言う唯一無二の特徴を持つ存在だが、基本的な事は変わらない。だからと言って何も感じないわけではない。食事を摂れば味を感じるし、運動をすれば充実感が得られる。そして、見てくれの良いものたちに奉仕されれば心は満たされるわけだ」
「……つまり性的な奉仕を求めるという事ですか?」
「はん、俺はそんなものに興味はない。性欲と言う物はいまいち理解できんかったのでな。だが感じないのは性欲だけだ。満足感は感じる故に、奉仕をしてもらうぞ。喜べ、お前らが奉仕をするだけで霧の艦隊の被害は格段に減るんだぞ」
デウスの要求は圧倒的に理不尽な命令とも言えるが、実際彼は上位者であり、神を自称するだけの力を持っている。二人としてもそれで監視任務が滞ら無いのなら問題は無い。むしろ被害を減らせると考えればお釣りがくる。機械的に頷く二人に、デウスは口角を上げて嗤う。
そんな彼らは紅海を抜け、地中海の入り口たるスエズ運河に突入しようとしていた。