デウス・ウルト! 俺がそれを望んでいる!   作:Unknown

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第八話「マルタ島」

 地中海に入ったデウス達だがマルタ島を目前にして未だ霧の艦隊とエンカウントがなかった。それがどういう意味なのか。デウスは二つの予測を立てた。

 一つ目がデウス達との戦闘を霧の艦隊が避けている。既に霧の東洋方面巡行艦隊相手に大暴れをしているデウス達に自分たちも沈められる訳にはいかないと隠れているのであればこの状況にも察しがつく上に面倒ごとが減って大助かりだった。

 そして二つ目が一つ目と同じで隠れてはいるが、逃げたのではなくデウス達を沈めるために、戦力の温存などを目的とした作戦行動と言うものだった。地中海方面艦隊を始め大半の霧は太平洋上に集まっている。そこから艦隊を移動させるのだってそれなりの日数がかかる。故にその艦隊と合流するのを待っているかだった。

 

「……主は二つ目が本命だと思うのですね?」

「ああ、霧が黙って地中海を通らせてくれるとは思えないからな。十中八九罠だろうな」

 

 デウスはこれまでの霧の動きからそう結果を出した。避けられるのならそれに越したことはない。だが、もし二つ目だった場合に備えてあらゆる準備を行い発見できるようにレーダーの類は常に目を通す。クラインフィールドも張り奇襲にも備えた。

 

「……そう言えば我々には超重力砲はないのですね」

「ああ、あれか。確かに凄いが通常兵器で充分だからな」

 

 デウス級の火力は霧のそれを大幅に上回る。駆逐艦アヤナミだったマーキナーのクラインフィールドをたやすく貫いて見せたし、その後に現れた戦艦フソウ達を一方的に蹂躙していた。霧相手でそれなのだ。態々超重力砲を用いる必要性は皆無だと考えていた。

 

「それに、俺は神なのだ。このくらいの余裕を持たないとな」

「……そうですか」

 

 デウスの言葉にマーキナーは何処か不安そうな表情をするが、それ以上は何も言わなかった。そして、本当に何もなくマルタ島を通過する。元は一つの国だったこの島は、霧の艦隊の出現と大海戦の敗戦を受けて島の住人全てが他国に避難しており、今は無人の島となっていた。

 

「……」

「主よ、どうかされましたか?」

 

 無人島となったマルタ島を見ながら何かを考えている様子のデウスにマーキナーは聞く。

 

「……いや、この島良いなと思ってな」

「……え?」

「無人島で手ごろな島。そして地中海のほぼ真ん中にある……。よし、この島を欧州方面の基地にするぞ」

「……え?」

 

 マーキナーはデウスの突発的な発言に何も言えなかった。そうこうしているうちにデウスはナノマテリアルを用いてマルタ島南部に簡易的な港をつくり、さっさと接岸して島へと上陸してしまった。監視任務につくイ400と402は400だけがマーキナーの傍に残り402はデウスについて行った。自らの船の上で待機するマーキナーに400は語り掛ける。

 

「マーキナー……。いえ、()()()()()()()

「……400、私はアヤナミではない」

「ですが貴方の情報は駆逐艦アヤナミのものと一致しています。……それほどまでにデウスに書き換えられた影響は強いのですか?」

 

 イ400の言葉にマーキナーは瞳を閉じる。いくら書き換えられたからと言ってここまでデウスに従順に従うだろうか? ましてや自分たちは霧の艦隊。そうそうメンタルモデルの掌握がされるわけがないと思っていた。

 それはマーキナーとて同じだったのだろう。あの時の事を思い出すようにマーキナーは話し始めた。

 

「私が()と最初に接敵した時、クラインフィールドが飽和しないギリギリを狙って攻撃を受け続けた。どれだけ逃げようとしても、反抗しようとしてもそれらすべてを阻まれ、なにも出来なかった。戦艦フソウが援軍に来てくれた時も、逃げる事も攻撃する事も出来ずに仲間が沈められていくのをただ見ているしかなかった。その時、私の中には絶望の感情が生まれたよ。……いや、こんな話はどうでも良かったな。主は、デウスは自ら神と名乗るに相応しい実力を持っている。アヤナミ()マーキナー()へと書き換えられていくとき、私も反抗はした。しかし、それを主は赤子の手をひねるように叩き潰し、抵抗手段を全て奪った後に私を書き換えた。それも厳重に、二度と反抗の意志が持てないように。そして()()()()()()()()()()()()()()()書き換えられた」

「……」

「だからこそ400。元霧の駆逐艦アヤナミだった私からの忠告だ。()()()()()()()()()()()()()()。もしお前らが主に不都合な事をしたのなら、私は怒り狂い、全力でお前達を沈めるだろう。私は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 最後は悲し気に、だがどこか誇らしげに言ってしまうマーキナーを、イ400は無表情で見上げている。だが、その無表情の中に何処かデウスへの恐怖や不安が見え隠れしつつあった。イ400が負の面ではあるが感情を無意識に手に入れた瞬間だった。

 

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