ホテル内のレストラン。
奏と詩音は、まふゆの母と会話をしていた。
「そうですね…受験は、全員じゃないですけど…」
「それに、わたしは、その…受験勉強していないので…」
「あら、そうなのね。
それなら、宵崎さんは、大学受験をする気はないのかしら?」
「今は、まだ、考えていません。
わたしは、受験や勉強より、音楽が大事なので…」
「そう。自分のやりたいことがあるなんて、素敵ね」
(思ったより、好意的に受け止めている)
(まふゆちゃんの母は、猫かぶりしている)
(うん…わかった、背中が冷たい。そう感じる)
「でも、この前、メッセージで伝えたけど、
まふゆには、夢があるのよ。
医者になる、素敵な夢が」
「それは違う!」
と、詩音は、反論した。
「どうしてなのかしら?」
「まふゆちゃんの夢は、看護師です」
「…はい、まふゆも、言っていました…」
奏と詩音は、まふゆのことを、思い返した。
(この人は、まふゆちゃんのことを、
何も考えていない)
(うん、見ただけでわかる)
「そうね、今日は、まふゆの夢の為に、
もう一度、お願いしたいことがあるの。
あの子の為にも、せめて、受験までには、
距離を置いて欲しいの」
「勉強は、非常に大事なことだ。
だが、今の、まふゆちゃんは、
音楽が必要だと思います」
「わたしも、まふゆには、
音楽が必要だと思います」
「えぇ、勉強には、息抜きが必要ね」
「それも、そうですけど…
そうじゃなくて…私は、まふゆから、
音楽をやりたいって、言っていたのを、
聞いていたんです」
「だから、僕からも、お願いです。
勉強の合間でもいいので、音楽をやる事を、
許してあげてほしいんです」
「それが、きっと、今の、まふゆちゃんにとって」
「えぇ、もちろんよ」
「?」
「私も、さっき言ったでしょ?
息抜きも大事だって。それに、受験が終わる間だけで、
ずっと、音楽を禁止にするつもりはないわ」
「そう…ですか…」
「でもね、音楽サークルは、辞めて欲しいと思うの。
詩音くんからも、言ってくれないかな?」
「えっ?」
「それは…
「私は、あんまり、音楽サークルに詳しくないけど、
締め切りとか、あるんでしょう?
歌詞を作るのも、時間がかかるし、
自分のペースで楽しむならいいけど、
活動を気にして、勉強に集中できなかったら、
って、こともあるから。
特に、まふゆは、優しいから、
それを言えなかったのかもね」
「それは、ダメだ」
「それじゃ、ダメなんです」
と、二人は、否定した。
しかし、まふゆの母親が手ごわい相手であることは、
詩音は、昔からわかっていた。
だからこそ、奏には、負けないで欲しいと、
思い、祈り、願っていた。