ある日の朝比奈家にて…
「失敗だったわ。
あなたに、パソコンを買い与えたのも、
楽器を使わせたのも!」
「おかさ、さん…?」
「知らないうちに、音楽なんか初めて、
2年間も、私に隠し事をして、
勉強を怠って、ネットで、
よく知らない子達や、
遂には、詩音くんに、たぶらかされて!
こんな事になるなら、
何も与えるんじゃなかった!」
「…あ…」
「よく聞いて頂戴。まふゆ。
あなたのことを想っているのは、
詩音くんでも、あの子達でも無い。
この私よ!お母さんなのよ!」
「…っ!」
(私を、本当に想ってる…?)
(お母さんは、本当に私のことを、想って、
…こう言っているの…?)
(わからない…)
(わからない…けど…)
絵名、瑞希、奏、詩音、
そして、ミク達が脳裏に浮かんだ。
(みんなといる時が、あたたかい…)
(わたし達は、ちゃんと、ここにいるから…
まふゆの想いを守って…)
と、ミクの声が微かに聞こえたような気がした。
(心が落ち着く…だけど…ここは…この場所は…)
(お母さん)
(お母さんは、本当は、私を…)
(わからない…わからない…?)
(でも、無理だ…)
(これ以上は…もう…っ!)
「…?」
ミクの歌声が聴こえる…そんな気がした。
(奏の曲…それに、ミクの歌声まで…)
(あたたかい…この、あたたかさに、
ずっと、触れていたい)
(もっと、聴きたい…)
「ごめんなさい。大声を上げちゃって…
でも、まふゆは、わかってくれるでしょう?
まふゆは、本当は、いい子で優しい子だと、
お母さん、信じているから」
「…っ!」
まふゆの瞳が漆黒に染まった。
もはや、光が存在しなかった。
(…お母さん…おかあ、さん…
オカアサンって、ダレダッケ…!?)
(そうだ、でも、苦しい、辛い、痛い、疲れる、
醜い、憎い、嫌だ…ナンダロウ、コノ、カンジョウ…!?)
(ごめんなさい。私が悪い…?
でも、もう、ここには…)
(ここには…っ)
(ニゲテモ、イイ…!?)
(でも、本当にそれでいいの…?)
(私がいなくなったら、お母さんは…?)
(お母さんを置いて…?
そんなの、私には…でもっ…)
「もう一度、頑張りましょう。
お母さんも、頑張るから!
ね?お願い。まふゆ」
「…っ!」
まふゆは、家を飛び出し、逃げ出した!
「まふゆ!」
まふゆは、奏の家にやって来た。
そこで、泣いていた。思いっきり…
冷たい雨の中、まふゆが走りながら、
宵崎家のドアを何度も叩き、泣き叫んでいた。
それを聞いた、奏が、走って、
まふゆを宵崎家の中へと入れ込み…
「奏、私!
私、ちゃんと、伝えたの!お母さんに!
でも…でも…!」
「…まふゆ…」
「どうして、私、ここにいるんだろう…
お母さん、すごく、怒っていて、悲しんでいて…
それなのに…私!
全部、私が悪いのかな…?
もう…死にたいよ…」
「…大丈夫だよ、まふゆ。
大丈夫…大丈夫だから…」
奏は、まふゆを温かく抱きしめた。